aタイプの年齢……うわっ、考えちゃいかん!
友和とaタイプの乗るVF型時空機は、地球の日本の、そして東京の子ノ渡市に戻ってきた。
もちろん、出発した日と同じ〝時空間〟に。
上空にホバリングしている機内で、友和が興奮している。
「おおっ着いた着いた。子ノ渡市の夜景だ! 駅が見える。電車って結構綺麗なもんだな。──
レオ子ノ渡は空から見ても、さすがにでかいな。
おっ、太田ビルが見える。会社も見えるよ。モンローの看板にラブホ・セーヌの看板だ。
ははは空から見てるんだ! 凄い、こいつあ凄いな!」
銀河系宇宙を飛び回ってきたくせに、飛行機にもヘリコプターにも乗った事のない友和は、子供のようにはしゃいでいる。
aタイプが言った
「もうすぐよ。屋根から飛び出して来るわ」
はたして滞空しながら待っていると、子ノ渡文化会館の屋根に、ポッカリとまん丸い穴を開けて、VF型時空機が凄い勢いで、外宇宙目指して飛び出して行った。
宇宙蛭との戦いを終えた友和とaタイプ、それにエンタメ大佐が、「惑星温泉」目指して飛んで行ったのだ。
「あははは。選手交代って感じだな」
と友和。
aタイプは巧みに操縦桿を操り、子ノ渡文化会館の屋根に開いた丸い穴を通って、展示場の中にゆっくりと機体を降ろした。
「これで振り出しに戻ったって訳だ」
と友和が言った。
さっそくハッチを開けると、なんとあのダミ声が聞こえてきたのだ。
「よう、お二人さん、グッドタイミングだ。さすがだねえ」
エンタメこと銀河連盟軍情報部の、遠藤為五郎大佐が待っていた。
「ダンナ、宴会の最中に突然消えちまったと思ったら、古代ローマへ行ってカエサルを助けたんだってな。特異点、暇なしって訳か?」
元々、小肥りのエンタメは益々太っていた。メタボリック丸だしの体形である。どうせ遊びに行った泥棒兄弟の所で、贅沢三昧をしてきたに違いないのだ。
「好きですっ飛んだんじゃないんだぞ。宇宙の正義を守る為だ。わははは。それよりエンタメさん、なんで此処に?」
「まったく。何言ってんだか。俺だって宇宙の正義の仕事だよ。〝閉じられた空間〟や〝超光速エンジン〟を、地球人の中に放置しとく訳にはいかんじゃないか。……aタイプ、申し訳ないがこの時空機は、情報部でいただいていくよ。こいつあ証拠物件なんだ」
aタイプはふくれっ面だ。
「そんなー! せっかくマイ時空機が手に入ったと思ったのにー!」
「まあ、そうむくれるな。そのうち俺が手頃なやつを買って、いや、手に入れてやるよ」
エンタメはきっと泥棒兄弟から、盗品を入手するつもりなのだろう。
「大佐あ、きっとですよお。約束ですよお。そうだ! 超電導式のWXY型の時空艇が欲しいな」
「馬鹿もの! そりゃ最新型のやつじゃないか!」
キャバクラでオジ客にブランド品をねだるギャルホステスとちっとも変わらない。
ところでaタイプはいったい、いくつになるのだろうか?
いや、それだけは考えちゃいけない。
どのみち一万年は生きるというaタイプクローンの事だ、どうせ何千歳とか……、つまり、そういう事なのだろう。
少々若いといったところで、何百歳に違いないのだ。
恐ろしや。これは興ざめである。
──帰りの時空艇の中、二人っきりの宇宙空間、無重力でのむにゃむにゃ……はあ、ため息が出る。
──それなのに……、ため息のaタイプが何百歳? うわ! 考えちゃいかん!
しかし、まあ良いではないか、目の前にいるaタイプは若々しく、初々しく、みずみずしい青春真っ盛りの、色白で肌のきめも細かい、髪の色はピンクだけど、小柄の可愛娘ちゃん以外の何者でも、ありはしないのだから。
エンタメは鼻歌をうたいながら、自分の個人タクシーのトランクの中に、外観は昔のオート三輪ほどの、VF型時空機を、あっという間にしまい込んだ。
まるでドラえもんのポケットだ。
このトランクの中も〝閉じられた空間〟というやつなのだろう。
「よし、これで一仕事終わった。再会を祝して一杯やろうぜ。──
あいにく川っ端の屋台は満員貸し切り状態なんだ。
ダンナ、どこかいい店、知ってるかい?」
とエンタメが言った。
「ああ、流行らない店だけど、行きつけの店がある」
と友和が答える。
さて、ここは地球なのだ。
日本なのだ。
久しぶりに帰ってきたのだ。
だから、ちょっぴり気になる友和だ。
世間様の中でのaタイプは、いったいどんな風に見えるのだろう? と。
銀色の245ヶ星系軍のパイロット服は、レスキュー隊のようでもあるが、まあ良いだろう。
むしろ、寒い時期で良かったと考えるべきだ。
何しろパイロット服の下には、あの、バンピレラも逃げ出す銀河系最新モードの超キワドイ衣装を、1枚だけしか着てないのだから。
──1枚ってアナタ、まるで紐のような衣装じゃないか。1本ってんだ。良く言って網だな。
──暑くなってパイロット服を脱いだりしたら、……うん。おっちゃん達は絶対、腰を抜かす。
──それにしても、まっピンクの、このヘアーときたら。オッドロイちゃうよ。
──まったく、フェロモン号の女どものファッションセンスときたら、地球じゃ露出狂のコスプレマニアってとこだな。
惑星温泉に出発する前の、あの麗しの黒髪に戻ってほしい友和であったが、今夜は仕方がないって事だ。
三人は、バー、「ジャック・ルビー」へと向かった。
エンタメの個人タクシーは、子ノ渡文化会館から土手の脇道を、文太橋まで戻って橋を渡リ、そのまま大通りを20メートルばかり進み、左側の道端の4階建ての小さな古ビルの前に止まった。
このビルの1階が、バー「ジャック・ルビー」なのだ。