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僕のインタビュー。

作者: 安孫子太郎


「いつから日常のことを記録に残しはじめたのですか?」




「んー、いつからだろうな。

ただ、最初はその日どこで誰と何をしたかを忘れないように、書き始めただけなんです。

それが、気付いたら習慣となっていて、書かなければ何だか悪いことをしているような、後ろめたい気持ちとなってきました。

で、書いているうちに、どうせ書くのなら、誰かに見てもらいたい、感想を貰いたいと思うようになってきまいした。」




「なるほど。最初はただの日記から始めたのですね。では、作家になる予定なんて全くなかったのでしょうか?」




「そうですね。

今言いましたように、ただ自分の周辺で起きたことを書き残して忘れないようにしたかっただけで、それを本に出来るなんて微塵も考えていませんでした。

また、それを世に発表したところで、面白がってみてもらえるなんて思いもよりませんでした。

なんといっても僕は何でもない普通の人間でありますし、特別な地位のある職業に就いている訳でもないので。

そんな何処にでもいて何処の誰かか全く分からないような人に、他人が興味を持つなんて驚きですよホント(笑)」




「どこにでもいる。そういう普通なところに皆、人々は興味も持ったのではないでしょうか。

先生が、日常の中で感じたこと、思ったことを綴っているのを読んで、自分もこういった事経験したなと、自分をそこに重ねて観ているのでしょうね。」




「はあ、そうなのですかねえ。あまりそういった事を考えたこともありませんし、想像力も豊かな方ではありませんので、ただ、空想の話を書くのが苦手で、自分のことを書いていたに過ぎないのですがね。

まあ、そんな事を評価されるなんて思って無かったので喜ばしい限りですが。」





「私自身も、先生のモテなかった学生時代のエピソードや、一人で過ごす退屈な休日の楽しみ方など、凄い共感出来ますし、読んでいて、自分意外にもこんな事を考えている人がいるんだと、なんだか生きる希望が持てましたから。

先生の観察力は素晴らしいと思います。何も考えずぼーっと時が過ぎるのを待っているだけの私としては、何気ない一瞬を的確な言葉で表現して、芸術的な文章へ昇華していく作業は惚れ惚れしますよ。」





「いや、そんな褒められましてもホント困ります。全然そんな事は無いので。。

ですが、確かに、結構日常をじっくり研究というか、何に対してもこれってなんだろうなと考えるようにしています。考えるようにしているというと、何だか学者か何かのようで偉そうですが、興味を持つようにはしています。

というか、基本的に僕は物事を考えるのに時間が掛かる人間なので、スパっと結論を出せず、ウダウダと頭の中で考え続けてしまうのですよ。

で、それを文章にするときも、ああでもないこうでもないと悩み続けているので、かなり時間が掛かっています。」





「では、今この文章を書いているのも結構時間が掛かっているというこでしょうか?」





「そうですね、結構時間が掛かっていますね。このようなインタビュー形式の文章を書くなんて初めてのことですし、これには多少想像力が必要でしたからね。そもそもインタビューなんて受けたことが無いもので、どういう風に書き出せばいいのかと悩みましたよ(笑)」





「コーヒーのお代わりはいかがですかー?」


間延びしたウエイトレスの声が僕を現実に引き戻した。



「あ、はい、お願いします」


空いたカップに注がれる湯だつ黒い液体は香ばしい酸味を帯びた香りをたて僕の鼻腔を刺激した。

注ぎ終わると、僕の食べ終えた、照り焼きサンドの載っていた皿を手に持ち、厨房の方へと去っていった。


(ああ、この遊びも飽きたな…)


僕は時たま、こうやって、駅前の喫茶店に来ては、架空のインタビューごっこを楽しんでいるのだ。

僕はそもそも作家なんかではない。ただのサラリーマンであるし、本なんて書いたこともない。

こうやって、時々、会社の資料を作成している合間に、ついつい妄想にふけってしまう。



(次はどんな遊びをしようかなー)


さっきコーヒーを淹れに来たウエイトレスと僕との恋の話でも書いてみるか。



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