「きれい……」
彼女は思わず、この場にはとても似つかわない感想を呟いた。その舞いを目にして。
紅い青年と黒服たち。総勢十一人による、紅と黒の舞い。
いや。
正確に言えば、黒服たちは舞わされているだけだった。自分たちの意思とは、まったく関係なく。
舞っていたのは、目を瞑ったままの紅い青年たったひとり。
紅は、黒たちの動きに合わせるように、蹴りの応酬をステップを踏むようにして躱し。正拳突きの嵐を腕を振るだけで払い。間合い取りで移動したところに飛んできた裏拳打ちの遠心力を逆手に取り。体を回転させてそれをも躱し、さらにそこに襲いかかる上段蹴りを上体を反らしてやり過ごす。
一瞬の隙にジャケットの袷を掴み捕られ投げられそうになるも、力の掛かる方向に逆らわず宙を舞い、しなやかに着地する。
このようにして、黒たちの攻撃を次々と翻弄していく。
それも、極めて最小限の動きで。
一つの幕が終わり、二つめの幕は、紅から仕掛けた。
十ある黒の柱を一息で跳び越え、一つの背後に着くや、刹那のうちに気絶させて投げを放ち、すぐさま次の柱の背後に着くのを繰り返す。
狙う落下地点は唯一点。
その一点へ、最初に投げた柱が落ちるよりも速く、残りの柱も多様に投げ飛ばしながら移動し、こちらへ宙を舞って来る彼らへ振り向き様――
「破っ!!」
――気合一線。
その瞬間、紅と黒との間にある空気が紅く爆発的に膨れ上がり、それがそのまま黒い柱たちを直撃し、彼らを吹き飛ばした。
舞闘と、爆発がやんだその場所には。
紅い髪の青年と、先程まで黒服たちに追われていた蒼いワンピース・ドレスを着た少女だけが、残っていた。
― 幕 ―
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