学校からのいつもの帰り道。
特別車の多いこの横断歩道。
急ぎ足の人とぶつかる事も少なくはない。
彼は腰の曲がった小さなおばあさんの手をひきながら渡っていた。
左手にはおばあさんの重そうな荷物を持っていた。
黒くツンツンした短めの髪。
一重でキリリとした細めの目。
筋肉のなさそうな細い体。
同年代に比べて低い身長。
どちらかというと白い肌。
そう、彼はどこにでもいそうなタイプ。
見た目は特にこれといった特徴はない。
毎朝交差点で見かける彼。
名前はまだ知らない。
どうやら誰かと待ち合わせしているようだ。
きっと相手は彼女だろう。
ある朝私は遅刻しそうになり自転車で登校した。
遅刻しまいと必死でこいだ。
いつもの交差点、彼はいた。
優しい彼は来るまで彼女を待ってるのだろう。
たとえ遅刻しようとも。
私は彼を追い抜いた。
時計を見ると結構な時間だ。
私は彼の元へ引き返した。
「乗りなよ。遅刻しちゃうよ。」
有無を言わせず彼のカバンをカゴに積んだ。
彼を乗せて必死にこいだ。
話す言葉が見つからないまま学校に着いた。
私は汗まみれの顔を見られまいと、うつむきながらカバンを手渡し教室へ走った。
それから卒業まで彼とは話していない。
毎朝交差点で見かける彼。
今日も誰かを待っている。
きっと彼女を待っているのだろう。
私の一日は彼を見て始まる。
あと少しの勇気が持てなかった苦い思い出。
私の精一杯の初恋。
|