「おはよう」 「おはよう」 そんな何気ない会話でさえ嬉しい。心がふわふわするような優しい気持ちになれるんだ。君の声・・・優しくて温かい・・人を和ませてくれるような・・とにかくすごくいいんだ!そんな声を聞きながら毎日を過ごしている僕はなんて幸せ者なんだろう。きっと世界中の誰よりも・・・宇宙の誰よりもシアワセだろうなあ・・。
でも、悲劇はあまりにも突然だった。
「え?・・」
僕は自分の耳を疑った。
「うちの子が・・」
電話の奥で泣きじゃくる母親。何が起きたのかも考えたくなかった。
彼女は大型トラックの玉突き事故に巻き込まれて、意識不明の重体だった。
僕は彼女の母親をなだめるのも忘れて、無我夢中で病院まで走った。
「はあはあ・・っつ」
僕は今ICUの前にいる。声を掛けてあげたい。・・でもそれすら叶わない。僕はただ傷だらけの彼女を遠くから見つめることしかできなかった。それが悔しくて、やりきれなくて、。。。僕はギュッと下唇を噛んだ。
まるで地の果てにまで落ちたような顔で。そんな僕を気使ってか、彼女の姉が僕にゆっくりと話し始めた。
「妹が事故に遭う前、あなたの事を嬉しそうに話していたの。」
僕は一瞬何の話かと戸惑ったが、彼女の真剣な表情を見て聴き続けた。
「あのこ、あなたの事本当に大好きだったんだね。私と話していてもずっとあなたの話ばかりしていたわ」
何故か彼女の姉はもう彼女が僕の前に戻って来ないと言う様な口振りだった。
「あなたの事を話しては一人で照れてみたり、本当に輝いていたの。」
そこまで言い終えると、彼女の姉は目に溜まっていた涙を一気に零し始めた。
「あ・・のこ・・の事、ず・・っと・・忘れない・・でね」
まってよそれじゃ彼女はもう居ないってことか?・・・嫌だ・・違う・・何かの間違いだよ。だって昨日まであんなに元気だったのに?・・・違う・・・嘘だ・・うそだ・・ウソだ・・
そのとき、僕の目の前に彼女が現れたんだ。・・・ほら、やっぱり生きているじゃないか。だってここに・・今僕の目の前にしっかりと立っているじゃないか!
そのとき、目の前に居る彼女の口が微かに動いた。
「・・・り・・う」
「えっ?」
「ありがとう」
今度はしっかりと聞こえた。・・ありがとうってなんだよ!もうさよならみたいじゃないか。違うだろ?ほら今だってそこに・・・
「あ・・れ?」
居なくなっていた。幻だったのか?いや違う。僕はしっかりと聞いたんだ、彼女の声を・・・・・
彼女の葬式にはたくさんの人が来ていた。もちろん僕もその中にまじって泣いている。・・・あの後、彼女の死が僕にも告げられた。その時は涙すら出て来なかった。でも今の僕は葬列の中の誰よりも泣いていた。
もう彼女は戻って来ない。わかっていてもまだ彼女が生きている気がして、似ている人を見ると今でもつい目が行ってしまう。・・いくら探したって彼女はどこにも居ないのに・・・
葬式が終わり、僕は一人家路に着いていた。もう泣かないって決めたんだ。彼女のためにも。だから僕は笑顔で彼女とさよならをするんだ。
優、今まで本当にありがとう。君のおかげで僕は人を愛することを知りました。
大好き・・いや、愛しています。君は最後に言ったよね。
「ありがとう」
って。僕も君にたくさんのありがとうを言いたい。
「ありがとう。本当に愛しています」
僕は空に向かって大きな声で言った。
僕はまた歩き出す。
目の前に見える光に向かって。
|