「ベンツを買いたいので募金協力おねがいしまーす」
「おねがいしまーす」
さっきから募金活動をしてるのに誰も協力してくれない。
「なんて薄情なんだ日本人は」
「なぁ」
しかしぐだぐだ言ってても始まらない。
「ベンツを買いたいので募金協力おねがいしまーす」
「おねがいしまーす」
ダメだ。日本人は薄情だ。ちっとも協力してくれない。
オレたちは政府に協力を要請した。政府はお金をだいぶ持ってるからたぶん大丈夫だろう。
しかし断られた。
「なんでだ!」
「腐った国になっちまった」
オレたちはしかたないので国連に頼んだ。
やっぱり断られた。
「何て薄情な世の中になってしまったんだ」
「困った人を助けるのが国連なのに!」
オレたちはベンツがないので本当に困っているのだ。
しかたないので、銀行強盗でもすることにした。
なぜか逮捕された。
「なぜだ!」
「ただオレたちはベンツがほしいだけなのに!」
まったく世の中は狂ってる。
いつの間にかオレたちは刑務所の中にいた。
「くそう。早くベンツに乗りたいのに」
「こんなとこにいたらいつまでたってもベンツに乗ることができねえじゃねえか」
十年後、出所した。
銀行強盗はもう懲りた。
オレたちは、幼児を誘拐して身代金を取ることにした。
やっぱり逮捕された。
「なんでなんだ!」
「なんて狂った世の中なんだ。そんなにオレたちがベンツに乗るのを邪魔するのが楽しいのか!」
また刑務所にいた。
「ちきしょう。ちきしょう」
「こんなとこにいちゃベンツに乗ることができねえ」
ニ十年後、出所した。
わしたちはヨボヨボの爺さんになっていた。
知人の話によると、銀行強盗や幼児誘拐というのは「犯罪」というジャンルで必ず刑務所に入れられるので仕事としては効率が悪い、とのことだった。
「じゃー何をすればいいんじゃ?」
「募金活動とかしてみれば。地道にさ」
わしたちは街頭に立ち、再び募金活動を始めた。
「ベンツを買いたいので募金協力お願いしまーす」
「お願いしまーす」
誰も協力してくれない。
わしらは、ベンツに乗れないまま、街頭で凍死した。(了)
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