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Machu Picchu ライブ連動読み切り短編集 作者:Wayra♪
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答え探して

メガネを掛けている人が、必ずしもレンズの外を見ているとは、限りません。
《何かお探しですか?》
 不意に視界左隅に笑顔の女性が現れ、話しかけて来た。
「ええ、まぁ……」
《宜しければ、ご一緒にお探ししますよ》
「いや、こればかりは自分で探さないと……」
《そうですか、ではごゆっくり》
「ああ、ちょっと待って」
《…… 何でしょう》
「その…… 自分でも何を探しているのか解らない場合は、どうしたらいいでしょう……」
《…………》
「あ、すいません…… 意味解りませんよね、何でもないです」
《…… (まれ)に、そういう方もいらっしゃいますよ》
「いるんですか?」
《はい…… そういう場合は、あるものをお見せしています》
「あるもの?」
《ご自分の、人生です》
「…… 見れるんですか? そんなものが……」
《見れます。ただし…… それを見たからといって、お探しのものが何なのか解るとは、お約束出来ませんが……》
「かまいません、是非見せて下さい」
《承知しました。ではこれから準備に取り掛かりますので、メガネ(***)は外さず、そのまま五分程お待ち下さい》
 バーチャルグラスの中でにこやかに微笑んでいたコンシェルジュが、フッと消える。
 自分の人生…… これまであまり深く考えた事はなかった。準備と言っていたが、たった五分で僕の三十年分の人生が編集されてしまう訳か…… 何とも薄っぺらな人生だな……
 今、僕の頭の中を他人が覗き込んでいる。たった五分の間に、ここはいる、ここはいらない、とかやってるんだろうか…… ていうかそもそも他人の記憶を選別する事なんて出来るんだろうか…… 僕にとっては大切な記憶でも、他人からすればどうでもいい日常の断片だと判断されてしまうかもしれないし、またその逆もあるはずだ。だいたい三十年を、どのくらいにまとめるつもりなんだろう…… 一時間か、三時間か、それとも意表を突いて十二時間とかもありえるな…… 
 そこで僕はハタと気づく。
 十二時間はないな…… そんなに持つはずがな(**********)()…… だいたいここ三年はひきこもりなんだし…… その前の人生だってこれといって大きな波があった訳でもない。何となく就職し、何となく辞めた。今となっては親も完全に諦めている。格云う僕自身が、自分の人生をどこか他人事のように思ってしまっている。このメガネだって、前に外したのがいつだったか思い出せない……

《お待たせしました》
 先程のコンシェルジュが、にこやかな微笑みと共に再び現れた。
《お客様、ご準備の方は、宜しいですか?》
「えーっと、時間、どのくらい掛かりますかね?」
《お客様が、お亡くなりになるまでです》
「…… は?」
《それでは、メガネをお取り下さい》
「…… いやいや、メガネ取ったら見れないし、だいたいお亡くなりって─――」
《―――私は、”人生” とは申しましたが、”これまでの” とは申しておりません》
「えっ?!」
《先日、ご両親様からご依頼がありました。もし息子様が、当社の提案(**)に乗ってくるようなら、その時はメガネを壊してくれと…… そして、その事によって当社が(こうむ)る購買機会損失分の代金も、既に頂戴致しております。なので、例えお取り頂けなくても、今から一分後には、全ての機能が失われます》
「そんな……」
《あと五十秒》
「いやいや、おかしいおかしい」
《あと四十秒》
「ちょっと待った待った待った…… え、何これ、ドッキリか何かですか?!」
《あと三十秒》
「だから! ちょっと待ってくれって! そんな事、急に言われたって……」
《あと二十秒》
「僕だって! こんな生活から抜け出したいさ! このままでいいとは思っちゃいないさ!」
《あと十秒》
「ここで何かを見つけてから取るつもりだったんだって!! ホントだって!! ずっと…… ずっと探していたんだ!! でもまだ何も見つけていないんだ!!」
《永らくのご利用、誠にありがとうございました。これを持ちまして、アカウントを停止させて頂きます》
 コンシェルジュは深々とお辞儀をし、少しの沈黙の後、最後に笑顔でこう言った。

《探し物を見つける為の壮大な旅、それが、人生なんじゃないんですか?》




            「答え探して」       完
まずは最後までお読み頂き、感謝感謝です!

表題作「答え探して」は、2016年12月29日 大塚WELCOME BACKライブにて、パンフレット掲載された小説です。

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バンド「Machu Picchu」の活動内容を詳しく知りたい方は、是非下記にアクセスして見て下さいネ^^

マチュピチュ オフィシャル ウェブサイト 
http://machupicchu.art.coocan.jp/
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