東京のある場所に、何処からどう見ても皇居としか思えない三千院家のお屋敷がある。この三千院家のお屋敷には、主人の三千院 ナギとメイドのマリア、執事長のクラウス、執事の綾崎 颯。通称、ハヤテが暮らしている。他に虎のタマ、子猫の白野威がペットして飼われている。
「何処に行くのだ、マリア?」
ツインテールの少女、三千院 ナギは、荷物を持って玄関を出ようとしていたメイドのマリアに訊ねた。
「あ、ナギ、今日は早いのですね」
「馬鹿か?もう昼だぞ。いくら私でも昼過ぎまで寝ている訳が無い」
「そうですか・・・。では、私はちょっと出掛けて来ますので、留守の間宜しくお願いします。今日はクラウスさんもハヤテ君もいませんので、ナギ一人になってしまいますが・・・」
マリアは心配そうな顔で言った。
「お前今、私が一人ではいられないとか思っただろ?」
「それじゃあ、行って来ますね」
マリアはナギの問いをスルーし、ドアを開けて出て行った。
「聞いてんのかマリア!?」
しかし、その声はもう届かない。
「ただいまぁ!」
少年がドアを開けて家に入ると、そこは蛻の殻で、家具なども全て無くなっていた。ただ一つ、残っていたのは、部屋の中央に置かれた封筒だけだった。
少年は靴を脱ぎ、部屋の中央に行き、その封筒を拾った。
ハヤタへ──封筒にはそう書かれている。
少年の名は、朝月 隼太。通称、ハヤタだ。
ハヤタは、封筒の中から一枚の紙・・・否、借用書を取り出した。その額3億円。ハヤテの借金の二倍の額である。
(ん、まだ何か入ってる?)
ハヤタは、封筒の中からもう一枚、今度は普通の紙を取り出した。その紙には、こう書かれていた。
お父さんとお母さんは訳ありで借金を返す事が出来ません。そこでお父さんとお母さんは考えました。ハヤタを売ろう』
(待て待てっ、何だよこれは!?僕を売るだってぇ?)
まるでハヤテである。
「気のせいかな?あまりの額に頭がおかしくなって幻聴が聞こえて来た」
気のせいでは無い。
「まただっ、また聞こえた!」
と、その時、ドンドンドンッと玄関からドアを叩く音が聞こえた。
「朝月、いるのは解ってるんだ!早く出て来い!」
(やばいっ、借金取りだ!)
そう直感したハヤタは、素早く玄関から靴を取り、部屋にある窓の前に向かった。同時に、ガタンッとドアが開き、黒尽くめの男が数人入って来た。先に言っておくが、コ○ンに出て来る黒尽くめの男、ジ○とウ○ッカでは無い。
「朝月、もう逃げられねえ!」
しかしハヤタは、捕まってたまるかと、窓を突き破って飛び下りた。
「兄貴、逃げましたぜ!」
「追えっ、絶対捕まえろ!」
と言う訳で、ハヤタは今、とある公園の茂みに身を潜めている。そして目の前には、メイドのマリアがいる。
(仕方が無い、こうなったらあのメイドを誘拐して身代金を要求しよう。何、メイドの事だ。何処かのお金持ちが雇っているのだろう)
ハヤタがそんな事を考えていると、眼鏡を掛けたデブと眼鏡を掛けた細い男がマリアの前に現れた。
「そこのメイドさん、僕達と一緒に来ない?」
デブが言った。
「嫌です!」
「そんな事言わずに遊びに行こうよ?」
そう言ってデブは、メイドの腕を掴んだ。するとマリアは、デブの腕を掴み返し、背負い投げをした。
ドン!──デブは地面に激突。気を失った。
「あっ、てめえ!」
細い男は怒って、メイドに襲い掛かった。
「織田倉の敵!」
細い男はそう言って、殴り掛かった。が、マリアはひょいと避け、回し蹴りを放った。
細い男は、飛んで来た足を掴んだ。
「メイドさん、僕はね、空手、ムエタイ、柔道、合気道、カンフー等、色んな武術をやっているんだ。僕勝てると思わない方が身の為だよ」
サンデー的にはケンイチだな──ハヤタはそう思った。
(あら、どうしましょう?)
「メイドさん、僕達と一緒に来るよね?」
(助けなければ!)
ハヤタは茂みから飛び出し、
「俺の獲物に手を出すな!」
と、眼鏡を掛けた細い男に飛び膝蹴りを放った。
「うわっ!」
男の頬に膝が命中し、男は怯んだ。
「何なんだ、お前?」
「通りすがりの少年さ、名乗る程の者でも無い」
ハヤタはそう言うと、距離を取った。
「あんた、最近この辺りで話題になっているメイド狩りだろ?」
「メイド狩りとは失礼な。僕はただ、可愛いメイドさん達を口説き、連れ帰って一緒に遊んでいるだけだ」
「いや、僕には無理矢理連れて行こうとしている様に見えましたが・・・?」
「無理矢理とは何だ、無理矢理とは!?兎に角、僕の邪魔をすると言うのなら、痛い目に遭わせるしか無い様だね」
「俺とやるって言うのか?」
ハヤタは目つきを変えて問う。
「売られた喧嘩は買うっ、それが僕の主義だ!」
男はそう言って、ハヤタに駆け寄ってパンチを繰り出す。
ブンッ!──男の拳がハヤタの頬にヒットした。
「ん、僕とやるんじゃなかったのかい?」
しかし、ハヤタはシカトした。
「黙ってねえで何か言え!」
男はそう言って、昇○拳を放った。その瞬間、ハヤタの体が宙に舞い、直ぐに地面に墜落した。
ハヤタの背中に軽痛が走る。
マリアは心配そうな顔で、
「通りすがりの少年さん、何故戦闘わないんです?このままではやられてしまいますよ?」
その問いにハヤタは、すっくと立ち上がってこう言う。
「メイドさん、これは貴女の戦闘いです」
マリアは頭に疑問符を浮かべた。
「何をゴチャゴチャ言ってる、真面目にやれ!」
と、男はハヤタの腹にヘビー級のパンチを喰らわせた。
ハヤタは前屈になり、後方へ吹っ飛んだが、巧い具合に着地して姿勢を立て直した。
「この男をどうするかは、貴女が決めて下さい!」
その言葉に、場は一瞬、静まり返った。
「それじゃあお願いします、通りすがりの少年さん」
マリアはニッコリ笑顔で言った。
「と言う訳だ。今度はこっちから行くぜ?」
ハヤタはそう言うと、目にも留まらぬ速さで男に接近し、男を殴り飛ばした。
ダンッ!──男の体が自販機に激突した。
「オッサン、空手と柔道、ムエタイに合気道、カンフーとかやってるんじゃねえのか?」
ハヤタは面白くないとでも言いたげな顔をして聞いた。
「ああ、やってるよ」
男はそう言って、再びハヤタに襲い掛かる。が、ハヤタはスッと避けた。
「避けるなよ!」
男は方向転換し、ハヤタに駆け寄って殴り掛かった。
「ラ○○○、キック」
ハヤタは頃合いを見計らって回し蹴りを放った。
放たれた回し蹴りは男にクリティカルヒット。男は吹っ飛び、壁に頭をぶつけて気を失った。
その男の頭を、見せられないよと書かれた看板を持った自主規制くんが現れて隠した。どうやら、とてもじゃないが見せられない物が、男の頭から出ているらしい。
「あの、助けて頂いて、ありがとうございます」
マリアは、そう言ってお辞儀をした。
「その、助けて頂いたお礼と言ってはなんですが・・・」
そこで、ハヤタがマリアの言葉を掻き消すかの様に口を開いた。
「メイドさん、僕は君が欲しい(人質として)。始めて見た時から、僕はそう決めていた」
その時、マリアの心臓が高鳴ったのは、言うまでもない。
(あら嫌だ、そんないきなり告白だなんて、でも・・・)
マリアは赤面した。
「あの、私で良ければ、その・・・・・・貰って下さい!」
この時、ハヤタは思った。こんなに事が巧く進んで良いのか、と。
(って、私は何を言っているのでしょうか?)
「じ、じゃあさ、ご自宅の電番号を教えてくれます?」
するとマリアは、電話番号を書いたメモをハヤタに渡した。
「メイドさん、そこでちょっと待ってて下さい」
ハヤタはそう言うと、何処かへと去って行った、3億円の借用書を落として。
マリアはその借用書を拾い、
(成る程、あれは告白じゃなくて、私を浚おうとしていたのですね。借金返済の為に・・・)
その後、マリアは戻って来たハヤタを三千院家のお屋敷に連れて行き、ナギに助けて貰った事を話し、お礼に3億円を渡して借金返済させたと言う。
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