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第47話 面倒事からは逃げられない

短めです。

スミマセン(´ ; ω ;`)

 「…………は? 乱心?」



 俺は目の前の少女が言った言葉に対し、驚愕といった表情を浮かべながら反射的に率直な感想を口にしていた。

 


「そうじゃ……あれは3年前の事じゃったか。神の子と名乗っ「あー、待って待って。ストップ。ストップ」」



 少女は俺の言葉を耳にした直後、天井を仰ぎながら一人勝手に回想に入ろうとしていたので左の手のひらを前へと突き出して億劫そうな声でストップをかけた。



「あー、えーっと……俺ってそういう重そうだったり、長そうな話とか苦手なんだよ。説明をしてくれるのなら20文字……いや、30文字くらいに掻い摘まんで言ってくれないか?」 



 少女は過去話をする気満々だったのだろう。は? と小さく呟きながら呆気にとられていた。

 だが、そんな事はお構い無しに俺は急き立てた。



「そういう無駄なリアクションはいいからさ。早く説明をするなら説明してくれないか?」



 俺は表面上では面倒臭そうに早く早くと急き立てているように見えているだろうが実は内心、焦燥感を凄く掻き立てられていたりする。



(うおおおおおぉ!! ヤバイヤバイ!! かれこれ転移させられて10分弱は経ってるって!! うわあああぁ!! 何であの時の俺、さっさと済ませればいいとか言っちゃったんだよ!! これ、ティファ絶対怒ってるよ!! 魔王の子供、言うなら早く言ってくれ!! 面接官の人が耳の遠いお爺ちゃんだったって理由でも精々1時間程度しか時間稼ぎができねぇんだよ!! 移動手段は召喚獣(アスディーグ)を使うとして……今から50分で戻れるか!? いや、外から帰ってくる時点で言い訳不可能だろ。うぎゃあああぁぁあ!! どうしよう……マジでどうしよう) 



 頭の中で様々な考えを巡らせていると少女はしどろもどろになりながらも口を開いた。



「し……シルファス!! 神の子と名乗っていたシルファスが父上を操っているに違いないのじゃ!! 全部あやつのせいなのじゃ!!」



 俺はその言葉を聞いたコンマ1秒後には結論が出ていた。

 その考えを楓に言おうと向き直る。



「……楓、帰ろうか」



 面倒事に巻き込まれ、運良くいけば魔王を倒した英雄となれるがティファからのキツイお仕置き有り。か、面倒事に巻き込まれずにティファからの比較的緩いお仕置き有り。のどちらを選ぶかと尋ねられれば俺は一瞬の迷いなく後者を選ぶ。



 ハッキリ言って魔王とかは勇者が倒してくれればいいんだよ。確か勇者の名前は……三好先輩とかだったっけな。ま、面倒事は三好先輩に押しつけておけば万事おーけーだ。

 


 楓もわざわざ魔王と戦おうとはしないだろうしさっさとアスディーグに乗ろう。と思っていたがそうは問屋が卸さないようで。



「ダメだよイオ君!! 魔王が近くにいるのなら倒しにいかないと!! その為に私も訓練していたんだから。早く魔王を倒して日本に帰って結婚式を……ううん、イオ君が18歳になった事だし早く籍を入れにいかないと……」



 先程までトリップしていた筈だったのだが、話は耳聡く聞いていたようで魔王を討伐する気満々だった。

 途中、何やら言い直していたが全然言い直せていない。寧ろ悪化している。



 俺はどうやって楓を止めようか、と頭を悩ませていると「早く行くよ!!」と彼女の口から発せられ、言うが早いか手錠が嵌められていた右手を引っ張られる事となった。



 楓の急な行動に上手く対応を出来なかった俺はどんくさくも足を躓かせ、尻餅をついてしまった。

 だが、楓はそんな事はお構い無しに歩を進めるので尻が床に擦れながら引きずられる事となった。



「あ、痛い!! 痛い!! 尻が擦れてる!! 待って!! 俺も魔王討伐に行く!! 行くから待って!!」



 だが、俺の悲痛の叫びは何故か鼻歌を歌っていた楓には届かない。



「あっ、痔になる!! 痔になるって!! 異世界にボラギ○ールないからッ!!」



 俺の思いは欠片も届かず、そのまま洋館の外まで引きずられる事となった。








 俺と楓が居なくなった後、少女が一人ポツンとなったのだが、氷に拘束されたままだった。



 実は楓が俺を引きずっている途中に「あっ、ちょっと、出ていくならこの魔法解除して……」と小さく呟いていたのだが、「あっ、血が出てきた!! おしりがヒリヒリするッ!! 痛い、痛いいいいいぃ!!」という悲痛の叫びによって掻き消されていた。




「……儂、これからどうすればいいんじゃろうか」



 少女は自身を拘束する氷を見詰めながら人知れず、弱々しい呟きを漏らしていた。

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