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第40話 飛べないカバ

 イディスに依頼書を渡し、依頼に関しての注意を受けた後、俺とティファールは依頼をこなす為に裏ギルドを立ち去った後、寄り道をする事なくジェルンダと呼ばれていた街を後にした。



「俺が決めて本当に良かったのか?」



 馬とは比べ物にならないくらいの速さで疾走するジョニーに俺とティファールは跨がり、目的地であるラギシス王国へと向かっていた。



 俺は確認をするように裏ギルドで一度掛けた言葉を自分の後ろで俺と同じくジョニーに跨がっていたティファールに向けてもう一度言った。



「ええ、何も問題は無いわ。一応、王城で一度メイドとして働いていたから偽装スキルで顔を少々偽る必要があるかもしれないけれど」



 金色の髪を靡かせ、微笑みながらティファールは返答をした。

 途中、ジョニーに跨がっていた俺達は冒険者と思しき人、数十人とすれ違ったが、相手の顔を確認する前に通り過ぎるので好奇の目で見られても一切気にしていなかった。



 俺とティファールはラギシス王国に向かう際、自分で走って向かうか、アスディーグに乗るか、ジョニーに乗るか、等といった案を出しあったのだが、アスディーグに乗るのは論外で、自分で走る事も面倒臭い。という理由で却下され、消去法でジョニーに乗る事になった。



 かれこれ1時間程ジョニーに乗っているが、ラギシス王国とエーデル王国の境界にあるクェーク渓谷すら見えない……ま、普通は馬を使って1週間掛けて渓谷に向かうらしいのだが。




「それにしても遠いなぁ……ん? あの吊り橋壊れてないか?」



 暫くジョニーが木々や魔物など、行く手を阻む物全てを蹴散らしながら森を疾走していたのだが何もする事がなく、俺は暇だったので吸血鬼化を使用していた。



 身体能力が向上している事を最大限利用しながら、目を凝らして周囲を見渡していたのだが少し先に存在していた木製の吊り橋を発見し、ティファールに同意を求めるように呟いた。



「んー……壊れてるわね。そもそも全く繋がってないし、吊り橋じゃなくてただの木片の塊じゃないかしら」



 俺の腰に手を回して抱きついていたティファールは前が見えるようにと、頭を右に傾けて目を少々細めながら吊り橋を確認し、言葉を返した。



 自分の見間違いでは無かった事を確認した俺は、地響きのような足音を響かせていたジョニーに向かって少し大きな声で言葉を掛けた。



「ジョニー!! この先にある吊り橋が壊れてるから俺が氷魔法を使って新しく橋を造る。ま、そういう訳なんで一旦止まってくれ」



 声を掛けるが、ジョニーは俺の言葉を無視した。

 聞こえていないのか? と思い、背中をペシペシと叩きながら声を再度掛けるが、 返ってくるのは五月蝿い足音のみ。



「こいつに乗りながら橋を造る事は出来ないの?」



 俺が慌てている事に気がついたティファは、発していた言葉から事の全貌を理解し、誰でも思いそうな疑問をぶつけてきた。



「あー、いや、氷魔法ってのはさ、結構繊細な魔法なんだ。破壊を無差別に撒き散らすのなら話が別なんだが、橋を造るとかそういう事に関しては落ち着いて……ってちょい待て!! おいジョニー!! 橋が目の前!! 目の前!! 思いとどまれジョニー!! お前の翼はただの飾りだろ!! おい――」



 勢いのついた物体は急には止まれない。それを理解していた俺は事前に止めようと試みたものの、それは見事に失敗し、俺の叫び虚しくジョニーは跳んだ









 ――――20mくらいだけ。




「うっはー!! 超おしいよジョニー。あと10mくらいだったな……じゃなくてぇ!!! うぉぉぉぉ!! 落ちるぅぅぅぅ!!!」




 崖から崖へと飛び越える事が出来なかった俺達はそのまま落下する事となった。

 下を見ると川が流れていたが、俺の目にはかなり小さく映った。ていうか殆ど見えない。



 気持ち、高さ100mくらいから紐なしバンジージャンプってところか。あ、足元に馬鹿(ジョニー)と背中にティファがいたや。



「うぎゃぁぁぁぁぁ!!! せ、背に腹は変えられんッ!! 『我と契約せし召喚獣よ。血の盟約に従い、姿を現せ。名はアスディーグ!!』マジで助けてッ!!」



 吸血鬼化によって伸びていた犬歯を使って手のひらを慌てて噛み切った俺は、足元の虚空に血を浴びせ、アスディーグを喚んだ。

 


 ティファールは落下しているにも拘わらず、悲鳴一つ上げずに幸せそうな顔をさせながらまだ俺に抱きついていた。



 余裕だな!! おい!!



 足元の虚空に向かって血を浴びせた事あって、丁度俺達が背中に乗るようにアスディーグはいつもお馴染みの亀裂から姿を現した。



 GAAAAAAAAAAAAAA!!



 今日は何故だかいつもうざく感じる鳴き声が頼もしく思えるな!!



「このまま真っ直ぐ進んでくれアスディーグ!!」



 俺は進路を伝えると急いで鱗にしがみついた。

 そして急いでジョニーの4本の足をアスディーグの鱗に氷でくっ付けた。



 連帯責任だジョニー。テメーも今から始まるゲロ旅にご招待だ。



 そして俺達のゲロ旅が始まった。





◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「「おえぇぇぇぇぇ……」」



 俺達はラギシス王国王城の近くにある森で俺達は休養という名の胃の洗浄をしていた。




 今、休養している森でアスディーグには飛行を止めてもらい、目立つので直ぐに帰って貰った。



 アスディーグに乗ってからラギシス王国に着くまでに掛かった時間が凡そ20分!! こんな事になるなら始めからアスディーグに乗っておけば良かったと酷く後悔した。



 ちなみに、元凶である馬鹿(ジョニー)は白目を剥いて気絶していた。



「……きょ、今日は野営をしようか……おえぇぇぇぇぇぇ……」



 近くにあった木の幹に両手をつきながらゲロを吐いていたティファに今日の予定を伝えた俺は、何度目か分からないゲロを地面に向かって吐くと同時に、召喚獣を移動手段として使う事を控えようと心に決めていた。


一度しか作中に書いていなかったのでジェルンダって何?と思われたかもしれませんが、ジェルンダは街の名前ですッ!!影薄くてスミマセンッ!!

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