第38話 勇者side 7
普段、ユーザページから執筆したり、感想を返しているので気づいていなかったのですが、総合評価がいつの間にか2万PT越えてました(*´ω `*)
ブックマークや、評価してくれた皆様、ありがとうございます!!
これからも『異世界召喚に巻き込まれた異常者』をどうぞ宜しくお願いします!!
俺達が異世界に召喚されて半年が経とうとしていた――――――
俺達は召喚されてから今の今まで、指南役を引き受けてくれた騎士団長であるロイさんから剣の指導を受けたり、宝石を身体中につけた胡散臭いオバサンに魔法を教えて貰ったりと、戦う術を学んでいた。
未だにダンジョンに行く、といった事はさせて貰えていないが、結構力がついたと思っている。
俺と疾風こと零也、そして漆黒のオタク3人衆はかなりの頻度で城の外を散歩をする、と城の警備兵に一言言ってから何度も魔物を狩りに行っていた。
魔法のあるファンタジーな世界に憧れていた俺達と、どこかの勇者とではやる気の格が違う。
勇者の称号を持った御堂先輩はレベル30程度だったが、俺はレベル43だ。もう勇者ってだけでは埋めれない実力差がある。これが隠れオタクの本気よ。
半年の間、一月に一度はクラスメイトのステータスを鑑定で確認し、ノートに書き込むといった行為を続けていたが、最近鑑定を使われた事に気付く生徒が現れ始め、そろそろステータス調査も潮時かな、と思っている。
異世界に召喚された初日、俺達はディジェアさんにステータスプレートを渡された。ステータスプレートは、使用した者のステータスが表記されるといったアイテムだった。
今後の方針の為に、と一度俺達はディジェアさんとロイさんにステータスプレートを渡していた。
その時にディジェアさんは漆黒のスキルを見て、使えない、役立たず等と言い放った。そのせいでか、その日以降漆黒は城の兵士などから白い目で見られるようになった。
錬金術の凄さが分からないとは……あの王女、無能だな。
そして漆黒を馬鹿にするとは……ピンチになっても絶対助けてやんねぇ。
俺と零也は意気消沈してしまった漆黒に、見返してやろう!! などといった元気づける言葉を掛けて毎日のように訓練が終わった後、城の外に連れ出しては一緒に魔物を狩った。
そんな生活を半年程続けたが、漆黒が魔法を使える日が来る事はなかった。
その日も俺と零也は魔物を狩る準備をした後、いつも通り漆黒を誘おうと声を掛けた。
「おい、漆黒!! さっさと行くぞ!! 長時間、外に出ていたら部屋のメイドや王女に不審がられる事は10日くらい前に身をもって知っただろ!! 時間は限られているんだ、急ぐぞ!!」
10日程前、俺達オタク3人衆はいつも通り魔物を狩りに城から外に出たのだが、その日はいつもとは違い、見たこともない2本の角が生えた巨大な魔物が城の外の草原のような場所を徘徊していた。
訓練はいつも朝から昼までで、それ以降の時間は各自、自由時間となっていた。
俺達はその自由時間を使って魔物を狩っているんだが、一応魔物との戦闘は王女が禁止している。
なので、外で誰かとばったり会う事もなく、外では白い目で漆黒が見られないので、魔物を狩る時間は気に入っていた。
俺達は昼から狩りをする為に城を出て、夕食前には帰る、といった生活をしていた が、その日は巨大な魔物に苦戦した為に帰る時間が大幅に遅れ、王女に何していたのか、といった質問攻めにあった。
それ以降、帰る時間には気を使っている。
「なぁ、常闇、疾風。俺に魔法はやっぱり使えねぇんじゃないか? もうかれこれ半年だぜ? 普通なら使えてもいいだろ……試しにあの胡散臭いオバサンの杖を1本パクって使ってみたが魔法は発動しなかったしよぉ……」
漆黒の口調は酷く弱々しかった。
「おい、漆黒。もう諦めるのか!? 諦めるのは時期尚早だろ。もう少し頑張ってみろよ……半年程度使えなかったくらいで諦めるなんて情けないぞ!!」
零也がそう言うと漆黒は一瞬だったが、下唇を噛み、怒りで声を震わせながら言い放った。
「っ!? ……はぁ……魔法が使えるお前らには俺の気持ちなんて分かんねぇよ。もうモチベーションとかも限界なんだ!! 城のやつらは馬鹿にしてくるし、クラスメイトの連中はこれ見よがしに魔法を見せつけるように使ってくるしよぉ!! 書物を漁っても錬金術の使い方は書いてねぇし、ゴーレムを作ろうと思っても作り方が全く分からねぇ!! もう俺は疲れたんだ……今日は一人にしてくれ……」
怒鳴った漆黒は言い終わると同時に俺達から離れていこうとする。
そんな姿を見た零也は漆黒を引き留めようとしたのか追いかけようとするが、俺は零也の肩を掴んでそれを阻んだ。
「疾風、漆黒を少しの間一人にしてやろう。あいつも悩みたい事があるんだろ。確かに魔法が使える俺らが魔法の使えない漆黒を励ましてもストレスが余計に増えただけだったかもしれん。今は大人しく引き下がろう」
何か嫌な予感がしたが、無理に引き留めるのも良くないと思った俺は、零也を止め、そのまま2人で狩りに出掛ける事となった。
――――その日、漆黒は俺達の前から姿を消した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
漆黒が城から姿を消した日の夜、俺は零也を自室へと招き、床の上で胡座をかきながら話し合った。
「疾風、漆黒の事をお前はどう思う? 漆黒がいなくなった事は城の奴らと魔法が使えない事が原因だった思うんだが、やはり俺達の言動や行動にも責任があった気がするんだ。レベルアップさせていけばいつか魔法のスキルが現れる、なんて浅はかな考えを俺が漆黒に言わなければ……」
俺は難しく眉を顰めながら口を開いた。
「確かに俺らの発言があいつを苦しめたかもしれんな……常闇、俺はお前のその考えは間違ってなかったと思うぜ。実際、魔物を狩っている時の漆黒の表情は少なくとも、城にいる時よりかは晴れていたさ。あの時お前が俺を引き留めた事を責めるつもりは無い。どうせいつかは今の状態になっていただろうしな」
少々俯いていた俺の背中を元気を出せよと言わんばかりに叩いてくる。
そんな零也を見て、俺は薄く笑いながら口を開いた。
「嘘でもそう言ってくれると、楽になるよ……。はぁ……漆黒を追いかける事はあの糞王女が許可を出してくれねぇし……もうちょいレベル上げたら勝てると思うんだがな……俺らが弱い今は強引に城を出る事が出来ねぇから、書庫でも漁ろうか。錬金術に魔法、色々と調べる事が多くて忙しくなりそうだ。城を出る時には良い土産を持って漆黒に詫びようか」
「そうだな……よし、んじゃ、気晴らしにコッソリ外にでも出て飲み物でも買いにいこうか!! ささっと出て、ささっと帰ってくりゃ問題ねぇよ!! バレなきゃ何をしてもいいってやつだ。今のままじゃ、寝つけねぇったらありゃしねぇよ」
零也はそう言うと同時に立ち上がり、両手を上へと伸ばし、伸びをした。
「よし、じゃあ行くか!! ………ってあれ!? 俺の金がねぇ!! どこいった!? 俺の金貨10枚が無くなってやがる!! あれ? あれれぇ!?」
俺はいつも金を入れている袋をクローゼットから取り出そうと思い、立ち上がってからクローゼットを開くが袋には何も入っていなかった。
こうして漆黒のいない異世界生活が始まった。
ここでどうでもいいネタ回収('ω' )w