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第33話 見た目で判断……いくない

 俺が虚空に向かって血を浴びせた直後、目の前の空間にヒビのような亀裂が入り、そこから召喚獣であるジョニーが悠々たる足取りでゆっくりと姿を現した。



 ちなみに、ジョニーの本当の名前はジョンクドルニーだ。

 だが、毎回ジョンクドルニーと言うのも面倒臭かったので略してジョニーといつも呼んでいる。



 どこかのドラゴンと違い、鼓膜が破れそう! と、思うくらい大きな声で鳴くことも無く、契約者に優しい召喚獣だ。



 もし、地球でジョニーを誰かが見たならこう言うだろう。



「なんかちょっと変なカバがいるよ」と。



 確かに見た目は人畜無害っぽく、全身が灰色のような色をしたカバだ。

 だが、このカバは……じゃなかった、このジョニーは普通のカバとは一味も二味も違う。



 なんとこのジョニーは純白の色をした翼が背中から2本生えている!!




 ………飛べないけど。




 かれこれジョニーとの付き合いも長いが、未だに翼の用途はサッパリだ。

 鑑定スキルを使っても相変わらずのポンコツスキルなようで、翼の用途とか一切知る事が出来なかった。




 だが、このジョニーの実力は本物だ。めっちゃ眠そうに欠伸してるけれども!

 実際、俺は悠遠大陸にいた頃に何度か、目の前にいるジョニーでは無いが、ジョニーに殺された事がある。

 勿論、吸血鬼化のスキルのお陰で生き返ったが。




 俺が召喚獣を召喚しようとした事をイディスは敏感に察知し、表情に緊張を走らせていたがジョニーが姿を現した瞬間、表情は一変して蔑むような目つきになり、ジョニーと俺を交互に見詰め始めた。



 ………あの変態、ジョニーがネタキャラか何かだと思ってるのか?

 ジョニーの凄さが分かってないな。仕方無い、ジョニー、現実ってもんを見せてやれっ!!




「よし、ジョニー、あの変態に魔法を一発お見舞いしてやれっ!!」



 俺がイディスを指差しながら、ジョニーに指示を出すと一度欠伸をしてからイディス(変態)目掛けて猛進した。

 物凄い速度で。



 イディスは自分に向かって猛進するジョニーを見て、慌てて持っていた2本の得物(ファルカタ)をクロスさせて防御しようとするが、そんな行為虚しく思い切り闘技場の端の壁まで吹っ飛ばされる。



 轟音が響き渡る。

 心做(こころな)しか、地面が揺いだ。



 砂煙が巻き上がっていたが、砂煙を度外視してイディスが吹っ飛ばされた場所を確認すると大きく壁が抉れていた。



「………さ、流石ジョニー!! その見た目でその速度!! マジで詐欺だな、そして結果オーライ!!」



 ジョニーって時々、俺の指示とは違う事をするがやはり名前を略したのがいけなかったのだろうか。

 まぁ、結果オーライだ。持つべきものは友…ではなく、やはりジョニーだな。



 ティファールは休む事無く俺への攻撃を続けていたが、ジョニーが姿を現してからというもの、勢いがガクンと落ちていた。



 まぁ、少々尻込むのも分からなくもない。ティファールは俺とは違い、ジョニーに殺されたり、殺されかけた回数の桁が違う。恐怖を刻みつけられたのだろう。



 ジョニーを視認しても尚、攻撃を止めて逃げないところを見ると、譲れない何かがティファールを突き動かしているのだろう。



 やはり童貞なのか? 童貞なのか!?



「………ゴホッゴホッ、アハハハ………ハ?」



 血をゴポリと吐き出しながらイディス(変態)は片腕が変な方向に曲がっていた  が、又しても立ち上がろうとする。

 が、何が起こった? と言わんばかりの表情を顔に浮かべながら膝から崩れ落ちる。



 恐らくジョニーの攻撃が膝に来た、もしくは出血多量が原因だろう。

 やっとか、手間かけさせやがって。




 これでイディス(変態)の動きは止まった。ティファはジョニーの登場によって動きが少し鈍くなっている……相変わらず剣は飛んできているが。

 


 今がチャンスだな。



「変態がちょこまかちょこまか動くから使えなかったが、変態の動きは止まった。そろそろ頭を冷やせティファ、物理的に」



 俺は取り出していたミスリルナイフをナイフホルダーに仕舞い、ティファールの攻撃を避けながら言葉を紡ぐ。



「『移り変われ、氷世界

我は傲慢にして不遜、抗う事も逆らう事も許さない。

万物は我の意思にて凍え果てる。氷寒に座せ!! 《氷蝕(グレイシエイト)》!!」



 俺の足元に小さな青色の魔法陣が浮かび上がる。

 魔法陣を中心にして、氷が侵食を始める。そして



 ――――世界が凍る。



 地面が、壁が。有りと有らゆる物全てが瞬く間に凍る。

 氷が辺り一面を支配し、闘技場が氷の世界へと移り変わる。



 ティファールの闇色に染まった剣も一本残らず凍り、ガシャンと音をたてながら落下していく。

 腕や足などは氷に覆われ、身動きはもう一切出来ない。



「………ふぅ……変に動き回られていると、上手く制御出来ないから誤って殺しちゃう、って難点があるから使用を躊躇ってしまうんだよな、この魔法」



 俺は白い息を吐き、安堵の表情を浮かべながら小さく呟いた。

 観客席も凍ってはいるが、人は凍っていない。



 驚愕の表情を浮かべている人が大半だ。

 だが、それよりもくしゃみがとても五月蝿い。




 俺はイディスを放置してティファールの下へと歩み寄る。

 彼女の下へと向かっている途中に未だ塞がっていなかった手のひらの傷口から滲み出ている血を虚空へと浴びせ、ジョニーには亀裂の先へと帰って貰った。



 俺は目の前まで歩み寄り、手足が凍り、なすすべもなくその場に立ち尽くしていたティファールの腰を抱き寄せた。



「……頭は冷えたか? まぁ……なんだ、今度からは冷静沈着に行動しろよ?」



 穏やかな口調で難しい顔をしていたティファールに向けて注意をするように声を掛けた。



「……………」



 返答は無い。

 何となくティファールの頭を撫でると、気持ち良さそうに目を少し細めた後、ええ、と返事をした。



 俺はこれで一件落着か、と思いながら闘技場を去ろうとしていた野次馬達に向かって満身創痍となったイディスを指差しながら叫んだ。



「おーい!! 誰かあの変態、じゃなかった、イディスを運んでやってくれ!!」



 野次馬達は「いやー、今回の戦闘はすごかったな」なんて会話をしており、俺の言葉は届く事なく野次馬達は闘技場から去っていく。

 そんな光景を見て俺は嘆いた。



「…………誰か連れていけよあの変態をぉおぉぉおぉ!!!」




 タイトルの『異常者』という部分が合ってない、という感想が多数寄せられたので変えようかと思っています。

 何か良い意見など有れば……下さい(ノω-、)


 確かに『異世界召喚に巻き込まれた異常者』よりも『異世界召喚に巻き込まれたコミュ障』とかの方が内容にしっくりくるんですよね……


 コミュ障って言葉があまり良くないので変えなかったんですが(´・ω・`)



返信遅くなる場合も有りますが、何か意見など有れば感想欄にお願いしますっ!!

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