第121話
祠の制御室に向かった私、リィーネ、カノン、チルカの4人。
「久々に見ましたが、やはり不思議で興味深いです」
「一応大事なものだから、あまりべたべた触らないでよね」
「はーい」
思いっきり機械を弄ろうとしていたカノンをリィーネが止める。やれやれ、といった感じだ。
「えと、それでこれからどうするんですか? 私なにも聞かずについてきちゃって……」
「今から先輩がすごいもの見せてくれるから、よーく見てなさい」
「全く、ハードル上げてくれるわね……」
しかし後輩を前に無様な姿は見せられない。連戦だろうと余裕で……
「折角ですし、同時に相手します?」
「え゛」
「ちょうど第六層はコロシアムみたいになってますし、そこに同時に出すことも可能です。というか第六層がそういう形状なのは、そのためみたいですね」
「強敵を2体同時に……わくわく」
「先輩の本気、ぜひとも見てみたいですね!」
後輩2人の期待の眼差しを向けられ、断るに断れない状況に……。
「やばかったら止められますし、やるだけやってみたらどうです?」
「はぁ、しょうがないわね。最近学園祭の準備ばかりで少し鈍ってそうだから、ちょっとやってみますか!」
「それでは、第六層で待っててください。2人も周囲の観客席みたいな場所なら間近で見れますよ」
「やった!」
「それじゃあ行くわよ」
例の昇降機を使って第六層へ。
幸い昇降機は被害を受けておらず、前通りに使えた。
そして操られた先生と戦った、あのコロシアムに足を踏み入れる。
「危ないだろうから、2人はそこから出てきちゃだめよ」
「「はーい」」
『それじゃあ始めますね。第五層、第六層の守護者を同時に出す以外は特に制限はないです。本気でやっちゃってください』
「ふん、言われるまでもないわ!」
太刀を構える。さて、鬼が出るか蛇が出るか……。
『では、出現させます!』
リィーネの声と共に、目の前に巨大な二つの影が現れる。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオ」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアア」
その姿は、巨鬼と大蛇。まさか本当に鬼と蛇が出るとは……。
「まずは蛇からっ!」
鬼は背が高く皮膚も堅そうなので、まずは蛇を狙う。
「グオオオオオオオ」
「ギャアアアアアア」
向かってきた私に向けて、鬼は足で押しつぶそうと、蛇は牙を向けてこちらに突っ込んでくる。
鬼の足をかわし、突っ込んできた蛇の頭に太刀を突き立てる。
「ギャアアア」
「あんなデカブツ2体を相手にすごい……」
脳天を突きさされ、蛇は叫ぶ。しかし流石に今の一撃で倒れるなんてことはなさそうだ。
立て続けにくる2体の攻撃をかわしていく。
なんとか攻撃を仕掛けようとするが、鬼と蛇の動きのスピードに差があり、共闘しているわけではないのにだんだんと交互に攻撃が来るようになり、なかなかこちらから仕掛ける隙ができない。
「先輩、苦戦してますね……」
「でも先輩、話に聞く大技を出しませんね」
『意外と隙が大きいのよ。今までは単体相手か、誰かしら協力者がいたから使えたけど、1対多の状況っていうのはあまりなかったからね』
「なるほど。となると、ずれてきた鬼と蛇の攻撃が次に合うタイミング、そこが狙い目ってことですか」
「でもでも、それを逃したらまたかわすばかりの消耗戦に……」
『まぁ、あの人のことだから次で決めるか、決まらなくても消耗戦になる前に無理矢理押し切ろうとすると思いますけどね』
後輩たちの言う通り、次の2体の隙が合う瞬間を狙っている。
問題はどの技を使うかと、まとめて狙うかせめて片方を確実に落とすかの選択。
どうしたらいいか……。
「グオオオオオオオオ」
「あっ」
と、一瞬考えてしまった隙を鬼に突かれ、蹴りを受けてしまった。
「うっ、ぐぅ……」
「先輩っ!」
うぅ、体格があるからただの蹴りでも思ったより痛い。
「だ、大丈夫ですか!?」
「うん、大丈夫よ。それより見てなさい……!」
次の攻撃がチャンスのタイミング。これで決める!
「グオオオオオオオ」
「ギャアアアアアア」
「よっと!」
同時に来た攻撃を最初と同じようにかわす。……が、
「あっ」
さっきの攻撃で少し痛めたのか、ちょっとだけ動きが遅かった。
「いったぁ……」
蛇の攻撃が少し体を掠めてしまい、やや負傷。これ以上はちょっと分が悪いかな……。
『先輩、止めますか?』
「……いや、まだやるわ」
次回更新日:多分日曜(10/16)あたり