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異世界食堂 作者:犬塚惇平(犬派店主)
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コロッケ

・一応ファンタジーです。
・剣も魔法も存在しますが、あまり活躍はしません。
・店主は普通のおっさんです。料理以外できません。
・訪れる客は毎回変わります。ただしたまに常連となる客もいます。
・店内での迷惑行為があった場合、入店禁止とさせていただくことがあります。

以上のことに注意して、お楽しみいただけると幸いです。
東大陸には4人の英雄がいた。

東大陸に住むものの中で光の神に誰よりも愛され加護を受けた、光の神殿が誇る聖人、レオナルド。
王国一、否、全世界の人間の中でも最高峰の魔術の使い手である天才。大賢者アルトリウス。
ハーフエルフが持つ長い長い寿命の大半を戦場で過ごし続け、剣一本で魔王すら打ち倒した剣の申し子、剣神アレクサンデル。

……そして、アルトリウスに匹敵する魔術の才能とアレクサンデルと互角の西方に伝わるサムライソードの腕前、そしてレオナルドと同じくらい深い、闇の女神からの愛。
それら全てを駆使して何百年もの間終わることが無かった悪しき魔族との戦いに終止符を打ち、その命と引き換えに魔王が深き混沌から現世へと引き釣りだした邪神を討ち果たした英雄、ヨミ。

この4人の活躍で悪しき魔族はその力を著しく失って衰退し、東大陸に平和な人間たちの時代が訪れた。
それが今から70年近く前の出来事である。

最後に邪神と共に命を落としたヨミを除く生き残った3人の英雄。
彼らはそれぞれの道を歩んでいた。

レオナルドは誰にも覆すことの出来ない偉業を成し遂げた、光の神殿の信徒たちを束ねる法王として。
アルトリウスはその天才的な頭脳で、大陸史に残るほどに魔術を発展させた大賢者として。
……そしてアレクサンデルは絶える事の無い戦場の中を、旅から旅へ渡り歩く伝説の傭兵として。

まるでハーフリングのように自由気ままに旅をし、時々魔物や盗賊をぶちのめす、伝説の剣士。
彼が王都を訪れ、旧友の下を尋ねたのは、とある冬の日であった。
「アレク。まさかお前が尋ねてこようとはな……相変わらず元気そうでなによりだ」
その日、大賢者アルトリウスは実に数十年ぶりにアレクサンデルとの再会を素直に喜んだ。
「うん。アルも変わらず……って言いたいところだけど、やっぱ老けたね。完全にジジイじゃん」
アルトリウスに対しアレクサンデルは歯に衣きせずに言い放つ。
あの戦いから70年。
かつては自分に比肩するほどに整った顔立ちであった若き天才魔術師は、痩せて今にも折れそうな、枯れ木のような老人になっていた。
「……本当に相変わらずだな、お前さんは」
そうだった。アレクはあの頃既に齢70を越えていたくせにこういう奴で、若い頃の自分やレオンとよく言い争いになっていた。
今更思い出すそんなことすら懐かしく思え、今となっては腹も立たない。
……きっと、それが『老けた』ということなのだろう。
「それで、今日は何の用だ?お前さんが男に会いに来る以上は、なにか用事があってのことだろう?」
気を取り直し、アルトリウスはアレクサンデルに尋ねる。
共に旅をしていた頃、『前に本物の姫を抱いたことがある』と豪語していたこの目の前の男は、女を口説き落とすためならば労力をいとわないが、男のところには何か用事が無い限りは絶対に来ない。
それは恐らく70年経った今でも変わっていないはずだ。
「……うん。相変わらず話が早くて助かるよ」
見た目は枯れても頭の方はまだまだ現役であることを確認しつつ、アレクサンデルはわざわざ王都まで来た理由を伝える。
「実はさ……異世界にある食堂って奴に行ってみたい。ちょっと食べてみたいものがあるんだよ」
ハーフリングや同業の冒険者から、噂だけは聞いていた。
7日に1度だけ現れる不思議な異世界にある食堂と、そこで出される美味な異世界の料理のこと。
そしてそこに、いつ行っても枯れ木のような魔術師の爺さん……生きる伝説とまで言われた大賢者がいるということを。
「……なるほどな」
アレクサンデルの言葉に、アルトリウスも納得する。
思えばこの30年、異世界食堂でアレクサンデルを見たことは無い。
そしてアルトリウスが知らないということはまず間違いなく、アレクサンデルは異世界食堂に来たことが無いということだ。
「そういうことであれば、案内してやろう……明日の夕刻にな」
かつての友……それも命がけで背中を守りあった戦友の頼みだ。
アルトリウスは快諾し……持ち前の頭脳でとっさに修正を加える。
「夕刻?何で?」
その言葉に、不思議そうに問い返すアレクサンデルにアルトリウスは答える。
「……うむ。お前に会わせるとロクなことになりそうも無い客がいるからな。彼らが帰るまで待て」
そう答える、アルトリウスの頭に浮かんだのは2人の常連。
目の前の女好きが不肖の弟子の方ならともかく帝国の姫君の方を口説きだしたら異国の王子との決闘騒ぎになりかねないし、獅子の頭を持つ魔族の剣闘士はこいつに負けて剣奴に堕ちたと聞いたことがある。
あそこはアルトリウスにとっても大事な店。

余計な騒ぎを起こしたくは無かった。


そして夕刻。
アルトリウスの研究室に彫られた魔法陣を使い、2人は扉をくぐる。
チリンチリンと軽やかな鈴の音が響き、2人は異世界にいたる。
「いらっしゃい……おや、今日はもう来ないのかと思ってました」
店主はアルトリウスを見て、意外そうに言う。
店主が知る限り異世界の客の中では一番の古株である常連は、大体昼までに来るか、最後まで来ないかのどっちかだ。
今回みたいに日が暮れた頃になって姿を見せるのは珍しい。
「いやなに。今日は連れがいてな」
コホンと一つ咳をしたところで、朝方から夕刻までどこにいたのか、かすかに女物の香水の臭いを漂わせたアレクサンデルが挨拶をする。
「よっ!アンタがあれか!異界の料理人って奴か。おいらは……まあ野郎に名乗ってもしゃあねえか。とにかくよろしくな!」
「は、はあ。よろしくお願いします」
いきなりの、軽い挨拶に戸惑いながらも、店主はぺこりと頭を下げる。
「……ま、まあ悪い奴ではない。よろしくしてやってくれ」
そんなアレクサンデルのノリに内心冷や汗を流しながら、アルトリウスがとりなす。
「大丈夫ですよ。若い子ならこれぐらい元気な方がいいですし……っと、メニューはどうします?」
目の前の少年がアルトリウスのざっと倍の年齢だなんて思いもせず、店主はアルトリウスに注文を尋ねる。
いつもであれば、わざわざ聞かない。

いつものロースカツとビール。
それで済むからだ。
だが、今回は連れがいる。
初めて見る顔の、異世界人の客だ。何を好むかは分からない。
「ああ、私はいつもどおりでよいが……」
「コロッケをくれ。それと飲み物はこの爺さんと同じで」
アルトリウスも同じ疑問を抱いたところで、アレクサンデルがはっきりと答える。
「……そういえば、お前さん。食べたいものがあるとか言っていたな」
その迷いの無い態度にアルトリウスは昨日、アレクサンデルがそんなことを言っていたことを思い出す。

コロッケ。

今はもう亡きとある常連が、この店の揚げ物でもっとも美味い料理だと言って譲らなかった思い出の料理。
風の噂によれば帝国ではその常連が考案したとかで、コロッケという名前の料理が出回ってると聞いたことがある。
(なるほどな。目当ては異世界のコロッケか……)
ついでアルトリウスは納得する。
アルトリウスの知る限り、アレクサンデルはエルフではなくハーフリングとの合いの子では無いかと思えるくらい好奇心の強い男だった。
その好奇心が彼にまだ見ぬコロッケを求めさせたのだろう。
「分かりました。コロッケとロースカツですね。それじゃあごゆっくり」
店主のほうも注文を聞いて頷き、厨房へと戻っていく。
「……さてと。こっちだ」
それを見送りつつ、アルトリウスはいつもの席へとアレクサンデルを案内する。
「……おう」
そんなアルトリウスに対し、アレクサンデルはそっちを『警戒』しながら座る。
「どうかしたか?何か気になることでも」
「ああ」
その言葉に、アレクサンデルはアルトリウスですら『気づいていない』ことを知り、ますます警戒を強めつつ、言う。
「……なあ。あそこに座ってるエルフの女、ヤバくね?」
「……!?な、なんと、また来ていたのか」
その言葉にアルトリウスは思わずアレクサンデルの視線の先を追う。

いた。

アレクサンデルの視線の先にいたのは、隅の席にひっそりと座る、異世界風の黒い服を着た女のエルフ。
……初めて来たときは歴戦の戦士である『カレーライス』ですら気配を感じ取れなかったほどに気配が薄いそれ。
恐らくはアレクサンデルでなければ、気づくことすら無かっただろう。
「……」
その少女は一言も喋らず、ただ古代の魔法装置か何かのように手を動かしてライスとカレースープを食らっていた。
……皿が空になるたびに魔族の給仕が突然少女に返事をして再びカレーを持ってくるのを見るに、精神に直接話しかけているのだろう。
「うん。あれはヤバい。絶対敵に回しちゃいけないものだ……」
100年以上を戦場で過ごしてきたが故の鋭い勘を持つアレクサンデルがかすかに冷や汗を流しながら言う。
彼は正確に悟っていた。自分では逆立ちしても適わない存在であると。
「ああ、だろうな」
アルトリウスもアレクサンデルの言葉に同意する。
アルトリウスもまた、7日前にあれがしたことを見たときから知っている。
あれは、絶対に敵に回してはいけない類のものだ……恐らく自分たちが命がけで倒した邪神よりも。
「お待たせしました。コロッケと、ロースカツ。それに生ビールです」
気づかなければ幸せでいられたそれに気づいたことによる重い沈黙を破ったのは、店主の声であった。
店主が持ってきた盆の上に乗せられているのは緑の葉野菜の上に並べられた揚げたてのロースカツとコロッケに黄金色のビール。
「……よ、よし。食うとするか」
「あ、ああそうだね。うん、美味そうだね、異世界のコロッケも」
その美味そうな姿を利用し、2人はそっと先ほど見たそれを忘れることにした。
下手にちょっかいをかけなければただいるだけの存在であり、向こうもこちらのことなど微塵も気にしていない。
実際、あそこに客がいることなど、気づいているのは店主と給仕の娘を除けばアレクサンデルとアルトリウスだけなのだから。

そしてアレクサンデルは、ついにそれと対面する。
「へえ……これが本物のコロッケって奴か」
アレクサンデルの目の前に置かれているのは、楕円状に整えられた、小麦色のコロッケ。
まだ揚げたてらしく、香ばしい油の香りがして、かすかに油が爆ぜる音を立てている。
「んじゃまあ早速……」
そのコロッケにごくりと唾を飲みながら、アレクサンデルはナイフとフォークを手に取り、コロッケの端を切り取る。
さくりと、小気味良い感触を残してコロッケが切れる。
切り口から見えるのは、細かな茶色いものが混じった、白いダンシャクの実。
鮮やかな明るい茶色と白の対比が鮮やかで、アレクサンデルは思わずごくりと唾を飲み、口に運ぶ。
口の中で広がるのは、香辛料と塩に、ほんの少しのバターで味付けされた、ほのかに甘いダンシャクの実と、臭みが無い、質の良い油を含んだ香ばしい衣の味。
ほんの少し混ぜ込まれていた茶色いものはどうやら肉だったらしく、そこから肉の脂が染み出してコロッケの味を高めている。
(……うん。やっぱ別物だな。これ)
予想以上のその味に、アレクサンデルは口の中の油を黄金色のビールで流して顔を綻ばせる。

アレクサンデルの知る、帝国の『コロッケ』は、潰して塩を混ぜ込んだダンシャクの実を丸めて小麦粉を水で溶いた衣を纏わせ油で揚げた料理である。
主に屋台などで食べられる、庶民の味だ。
あれはあれで揚げたてを寒い冬空の下でパクつくには良いが、これは別格であった。
(あいつがわざわざ拘ったのも分かるかな)
口に運ぶたびに口の中で崩れ広がるコロッケの味に、アレクサンデルは思いを馳せる。

そもそもアレクサンデルが異世界食堂でコロッケを食べようときっかけは、たまたま知り合った中年のハーフリングから聞いた話であった。
酒の席で、笑い話として語られた、異世界食堂でこよなく『コロッケ』を愛していたという今は亡き一人の男の話。
そのハーフリングは笑いながら言っていた。『世界広しと言えど、扉のある場所にでっかい城を一つ建てたのはコロッケくらい』だと。
その言葉で気づいた。コロッケと呼ばれていた男の正体に。
……だからこそ、アレクサンデルは遥々王国まで旅をして、かつての戦友を頼ってまでこの場所に訪れたのだ。
「いかんな、アレク。コロッケはソースが命だぞ」
そんなことを考えながら、次を頼むべきかと考えていると、アルトリウスがあきれたように言う。
「ソース?」
「うむ。異世界の料理、こと揚げ物には決して欠かせぬもの……これだ」
聞きなれぬ言葉に首を傾げるアレクサンデルにそんなことを言いながら、アルトリウスは赤い瓶を渡す。
「それを掛けてみろ。この店の揚げ物には欠かせぬ味だぞ」
そういいながら笑いかける。
海の幸を使ったフライにはタルタルソースという強烈なライバルがいるが、それ以外の揚げ物にはソースは欠かせない。
「そっか。そんじゃ……」
アルトリウスの言葉にアレクサンデルは頷き、瓶を傾ける。
陶器で出来た瓶からとろりと漏れ出すのは、ほのかに茶色みを帯びた、黒い汁。
それがゆっくりと傾けた瓶の口から零れ、コロッケの衣に茶色い染みを作る。
その、茶色い染みが出来たコロッケをアレクサンデルは再び口にして……
「……なるほど。確かにこれがあると無いとじゃ大違いだな」
その味に大きく頷く。
酢のような酸味が中心ではあるが、それだけではなく、塩気が強くて、香辛料の辛みもあって、少しだけ、甘い複雑な味の汁。
それだけでは強すぎる味が、揚げ物の素材と衣の油の味と混ざり合った瞬間、奇跡のようなバランスとなり、口の中で広がる。
(なるほど……コロッケは、ソースを掛けて食うものなんだな)
ソースをしみこませたコロッケをパクつきながら、そのことに気づく。
コロッケはそれ単体でも美味かったが、ソースをつけたら別格の味となった。
少なくともアレクサンデルは、こっちの方が好みだ。
「残念だな。少なくともおいらたちの世界じゃ、こいつは手に入らないんだろう?」
「うむ。ヨミの奴も言ってたぞ。こっちの世界ソースは向こうじゃまだまだ作れないだろうと」
アレクサンデルの問いかけに上機嫌で答える。
……ついでに、かつての戦友に大事なことを伝えるために。
「……ヨミ?」
果たしてその名前を聞いた瞬間、アレクサンデルは思わずコロッケを食べる手を止める。
アルトリウスを思わずまじまじと見返すその瞳に宿るのは、驚き。
何故、今、その名前が出るのか。
そう、瞳が問いかけていた。
「ああ、ヨミの奴な……生きていたぞ」
そんなかつての戦友の驚きを心地よく感じながらアルトリウスは今から30年ほど前の再会……

この店を初めて訪れた日のことを思い出しながら、答える。

「ああ、何でも70年前のあのとき、邪神の断末魔の暴走のせいでこの異世界に飛ばされたらしい。
 私が出会ったときにはもう完全にこちらの世界の住人となっていたよ……この世界に孫もいると言っていた」
ちらりと忙しそうに厨房と食堂を行き来する店主を見て、言う。
「……もしかして、ここの店主がヨミの孫?……にしちゃあ剣も魔法も使えるように見えないけど」
それだけで、察しの良いアレクサンデルはアルトリウスの言葉の意味を悟り、ついで疑問を呈する。
先ほど見た、この店の店主。
さっきまで食べてたソースつきのコロッケの味を考えれば料理の腕は良かろうが、筋肉のつき方は戦士のそれではないし、魔力も弱い。
どう見ても、ただの料理人にしか見えず、剣も魔法も天才的な腕前だったヨミの孫とは思えなかった。
「そりゃそうだ。この世界じゃ、剣も魔法もなんの役にも立たんらしいからな。教えるわけが無い」
そんな友人の言葉にアルトリウスは苦笑する。
あの日再会したとき、ヨミは真顔で言っていた。

―――こっちでは剣も魔法もいらないが、料理の腕だけは受け継いで欲しいね。

その言葉は現実となった。ヨミの孫……この店の店主は、剣も魔法も全く扱えないだろうが、料理の腕だけは天下一品だ。
「そういうわけでな、ヨミはヨミでこっちで楽しくやっていたようだぞ」
今から30年ほど前に再会したときのヨミの笑顔は自然で……かつて共に旅をしていた頃の、魔族を殺すことしか頭に無い、竜牙兵のような空ろさは微塵も残っていなかった。
まるで『普通の人間』のように変わり果てたかつての仲間の姿に、アルトリウスは大きな喜びとほんの少しの寂しさを感じたものだ。
「そっか……ヨミも、それなりに楽しくやってたのか……」
それを聞かされたアレクサンデルもまた、アルトリウスと同じく安堵を覚えた。
あの『自分は魔王を滅ぼすために作られた』と真顔で言い放ち、ただただ魔族を殺すことしか知らなかったヨミ。
最後に魔王が呼び出した邪神を倒し、面白いことなどなにも知らないままこの世から姿を消した……そう思っていた大切な仲間。
それが生き延びて、異世界で幸せに暮らしていたというのは、嬉しい知らせであった。
「そっか……よし、飲もうか。ヨミが生きてたお祝いってことで」
「そうだな。ヨミを受け入れたこの世界に感謝を込めて、な……すまない店主。ロースカツとコロッケの追加を」
アレクサンデルの提案に、アルトリウスも頷く。
そして2人はそれぞれの肴をアテに夜更けまで酒を飲み続けた。

そして、2人が異世界食堂を訪れた翌日。
「それじゃあ、色々世話になったね。ありがとう」
「ああ、またそのうち遊びに来るといい。どうせならドヨウの日にな」
長年気になっていたことが片付き、ついでに思わぬ吉報を知ったアレクサンデルは再び旅に出ることにした。
行き先は、風の向くまま気の向くままに決める。
それがアレクサンデルのやり方だった。
「さてと、物見がてら、アディと息子の墓参りにでも行くとするかね。よく考えたら名所ってわりにおいらは行ったことないし」
少しだけ考え、アレクサンデルはあっさりと次の旅の目的地を決める。

目指す場所は、帝都。
そこで、いまや帝都の象徴の一つとなったこの大陸でも屈指の豪華な霊廟に眠る、かつての恋人と息子の安息でも祈りに行こう。
若い頃『余に父親はいない。我が母アーデルハイドこそが、余にとってはただ1人の親である』なんて言っていたという息子は嫌がるだろうが、今さらだ。
ついでにあそこで息子があの店で何よりも愛したというコロッケを食ったことでも教えてやろう。
(親父であるおいらより早死にした息子だし、それくらいはいいだろ)
そんなことを考えながらアレクサンデルは旅立つ。
あの日、仲間たちの協力を得て旧帝都から逃がして以来、ついに一度も顔をあわせることが無かった、かつての恋人とその息子に会うために。
今日はここまで。
+注意+
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