これは……
約束する男……
男を待ち続ける女……
二人の幸せを願う女……
彼等の紡ぐ、愛と希望の物語……。
終話
To:ダイちゃん
やっぱり、サクラちゃんは凄いよね。綺麗だし、運動神経も抜群だし……。私は可愛いって言われるけど、サクラちゃん程じゃないし、運動が得意ってわけでもない。
だから、こんなサクラちゃんに劣る私の告白をダイちゃんが受けてくれた時、本当に嬉しかった。溢れた涙で溺れるくらい嬉しかった。
でも、私はサクラちゃんに負けた。私の幸せの為に、私はダイちゃんを不幸せにしようとした。だから、サクラちゃんに負けた事に悔いはない……って言ったら嘘だけど、ダイちゃんとサクラちゃんが幸せになってくれるならこの暗闇も我慢できると思う。
寒くて、暗くて、寂しくて、悲しいけど、ダイちゃんをこっちに呼ぼうとした罰と思えば少しは気が楽になる。自業自得だからね。
……だから、ダイちゃんはサクラちゃんと幸せになって。辛いから、私を忘れてとは言いたくない。せめて、心の片隅にでも私を置いていて! 時々、私を思い出すだけでいいから……。
さようなら、ダイちゃん。私は、ダイちゃんのことを世界で一番愛しています。
過去も、現在も。そして、これから先も…………。
From:愛華
此処は何処だろうかと、暗い茨道を歩いた矢先にこのメール。
「嘘……だろ?」
口から漏れた言葉は虚空へと消えていく。
僕は現実を認めたくなかった。
――さようなら。
この一言に挫けた。
何故僕は此処にいるのだろうか。何故僕は今――生きているのだろうか。
周りを見渡して思う。暗い、と。
やはり、愛華がいない世界なんて何処も同じだ。ただ絶望が広がっているだけ。
「…………」
膝の力が消え、倒れ込む。起き上がろうとしても、膝が笑うだけ。
生きる気力の失った僕は人形。
貪欲に愛華を求める僕は屍。
感情の消え失せた僕はロボット。
そう、僕は既に……。
「…………え?」
人間じゃない。
その言葉は飲み込んだ。何故なら、感じるはずのない温もりを僕は感じているから。
誰かが僕に抱き付いている。
「誰だ? ……愛華?」
僕に抱き付いている誰かは答えなかった。だけど、その温もりは気持ち良くて、眠たくなってきた。
今寝たら、僕に抱き付いている誰か――恐らく愛華――に会えなくなる。
だけど、『人間』として性理現象には抗えなかった。
重くなる瞼が僕の瞳を覆うと同時に重なる。唇と唇が。
重なる唇、甘い吐息。僕の世界は、唇が離れる前に暗転した。
「……此処は…………何処だ?」
そう言ってみたものの、大体検討はつく。
清潔感を煽る白い天井、カーテン、ベッド、僕の体に着いている数々の管やらマスク。
間違いなく此処は病院。そして僕は生きている。
「……ふわぁ」
欠伸を噛み殺す。
「……う…………ん」
それと同時に、丹田辺りに抱き付いている何かが動く。
「……大地?」
「あっ、ごめん、起こした」
その何かは桜だった。
――だったら、さっきのあれも桜?
そう考えに老けていると、突然桜が泣き出した。
「ごめん……じゃないよぉ…………死んだかと思ったんだからぁ……」
小学生みたいに泣きじゃくる桜。僕は場の雰囲気を和ませようと、言葉を発した。
「泣くなよ桜。人を襲ったくせに」
「……へ? 襲う? 私は大地に抱き付いて寝てただけだよ?」
……って事は、
「……あれは愛華…………?」
「何か言った?」
「いや、何でもない。それより……」
そこで言葉を切る。これから先を言うには、多少なりとも勇気がいる。
「あのさ、桜。僕が……僕が大人になって、今よりも余裕があったら、そのさ、い、言うから……」
「……待ってるよ」
僕の曖昧な言葉に、桜は笑顔で答えてくれた。
――これで良いんだろ? 愛華。
『……お幸せに』
何処からか、そんな声が聞こえてきた。
『ダイちゃんが私を忘れても、私はダイちゃんを愛し続ける』
『次会う時は、一緒に幸せになろうね? ダイちゃん』
『結婚して、子どもつくって、みんなで幸せに笑うの』
『ふふっ、考えるだけで楽しみ』
『私がこうして笑っていられるのもダイちゃんのおかげ』
『ありがとう、ダイちゃん』
『私は今、とっても、とーっても』
『幸せだよ!!』
『されど愛しき……』遂に完結しました。
実は涙脆い作者。自分で書きながら涙ぐんでおります。
ただの変人ですが、物書きとして当然の如く作品に情が移ってしまいました。感動です。
では、ここで別れの挨拶を。
最後まで読んで下さった方々、有り難う御座いました。あとは誤字、脱字をちまちま修正するだけです。
遅筆な作者がこの作品を完結させる事が出来たのは、皆様方のおかげです。有り難う御座いました。
『されど愛しき……』は終了しましたが、大地たちの物語は続きます。
どんな困難が待ち受けようとも、大地と桜なら乗り越えてくれることでしょう。
そして来世では、今度こそ愛華と大地は幸せに生きていきます。
大地と愛華と桜と、最後に出て来なかった海たち四人、彼等の幸せを願いつつ、私はここで筆を置きます。
蒼空風雲――彼等の永遠の幸せを祈り、今日もまた生きていきます。
皆様方も、今この瞬間を大切にして下さい。
……以上、蒼空風雲より。
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