一話
『愛華へ……
そっちの世界でも元気にやってるか?
僕や海、桜も、相変わらずこっちで退屈な日々を送ってるよ。愛華のいない世界は本当につまらない。
だからこうして、届くことのない無意味な手紙を書いてるんだろうな。
でも、これはあまり良いことじゃないかもしれない。
もしこの手紙が君に届いて、返事が来たとする。そしたら僕は、今度は愛華の声が聞きたくなる。
もし天国と電話が繋がっても、声を聞いたら会いたくなってしまう。
……全く、国境越えた遠距離恋愛よりもたちが悪い。
ああ、まただ。愛華を思い出すと、どうも頬が濡れてしまう。そろそろ涙も涸れる頃だよな。
愛華……君はもうこの世にいないけれど……
もう、二度と会うことはないけれど……
それでも僕は、今も君を愛している。
……大地より』
「おい大地、授業すっぽかして何を書いてんだ?」
チャイムと同時に、背後から親友である海が、僕の机を覗き込んできた。慌てて手紙を学生服のポケットにしまう。
僕と愛華の関係を知っていた海なら、この手紙を見られて恥ずかしいという気もしない。
ただ、僕が未だに愛華の死を引き摺ってるとは思われたくなかった。
「学食行くんだろ?僕も今日は弁当持ってきてないから」
肩に乗っけられた海の手を振り払い、教科書類を机にしまって僕は立ち上がる。
赤い眼を見られないように、足早に教室を出た。
廊下を進む僕の後ろに海が続く。
僕達二人の姿を確認してか、廊下にいた数人の女子生徒が騒ぎ出した。
「さすがバスケ部主将の海、副主将の大地ね。あなた達が歩けば、金魚の糞みたいに百人の女子が続くと言われる」
「僕達はいい迷惑なんだよ、桜。
大体、大して強くないだろ?この高校のバスケ部って」
いつの間にか僕達の隣を歩いていた桜は、その言葉を聞いて溜め息を吐いた。
「バスケ部かどうかじゃなくて、見た目だよ見た目」とはしゃぐのは海だった。
こいつは自分のルックスに自信があるらしいが、一方の僕はよく分からない。ただ何度か告白されているから、まぁそういうことだろう。
「二人は学食でしょ?私も行く」
僕と海と桜。……そして愛華とは幼少からの付き合いで、高校に入っても変わらぬ仲だった。
最初の頃は、僕や海と仲良く話す桜に嫉妬の目が向けられていたが、一年もすれば僕たちが幼馴染みなんだと噂が広まり、嫉妬する女子も消えた。
中には、相手が桜だという理由で諦めた女子もいたという。
これも僕には分からないが、桜は男子から絶大な人気を誇る程のルックスの持ち主だかららしい。
「本当、美男美女トリオだよね」
廊下を歩いていると、他のクラスの教室からそんな声が聞こえてきた。
本当なら四人だ……
そう思うと、胸が苦しくなった。
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