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馬耳総論  作者: 馬耳東風
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小説を書くとき

 あくまで、自分が書くときやっている事なので、あしからず。人によって色々あるわけだし、いい作品を書きやすいやり方はある。以下の事は、自分がそうなるためにやっていること。


・何を書きたいか

 ジャンルでもいいし、材料でもいい。とにかく、これをやりたいと言うとっかかりがないといけない。絵を描くにしても、この風景を描きたいとか、動物を描きたいとか、色々な動機がある。この動悸が弱いと、企画倒れは間違いないと思うし、実際に自分もやってきた。これができないなら、リアルにチラシの裏に書いていた方がいい。


・プロット

 キャラクター設定とこれとどちらが先か、となると、人によって確実に分かれるし、作品ごとに違う。

 自分の場合、「こんなシーンを書きたい」、「この台詞を誰かに言わせたい」というポイントから前後を膨らませていくことが多い。それを言うに相応しい登場人物を作るわけだが、これは脇役を作るのに効果的だったりする。脇がいないと主役が引き立たないだけでなく、世界観が立体化しないし、奥行きが出ない。主役はあくまで動力であり、その主役が通る空間は脇役がプロットにそって形成していくことが自分の場合は多い。

 よくネットで見る小説や、最近の邦画はこのプロットの作り込みが浅いのではないかと思う作品が多い。自分がよくできているとは思わないが、その自分にでもプロットが浅いと思える作品は、やっぱり面白くない。

 プロットは、作品はラフスケッチやデッサンの段階。だが、これらができていないと、どんなタッチの作品であっても足元がおぼつかないものになってしまう。


・キャラクター

 やはり、主役には力を入れたいところ。だが、ただ思想や容姿、能力や性別などを描くだけでは、それは人ではなく記号に過ぎない。自分のキャラに命を吹き込むには、それ相応の手間がかかる。

 例えば、そのキャラの言動や思考は、一体どうやって形成されたのか、それを説明できるくらいでないと、確実にキャラがブレるし崩壊する。デューク・東郷の様に完璧に機械化し、記号でしかないキャラであっても、彼の言動やビジネスに対する姿勢は入念に作りこまれた結果であり、行き当たりばったりではない。過去があり、現在がある。だから、キャラに命を吹き込みたいなら、彼らの人生を作ってやることは、せめて主役クラスにはしてあげてもいいと思う。これは、結構楽しい作業だと思うのだが。

 我が愛しのノルン姐さんの場合、女性キャラありきで発進している。次に、世界中の女神の名前から、運命の女神と言う属性と互換の良さで、名前が決定。容姿を決めたのは、池波正太郎の剣客商売のキャラに明確なモデルがあるものがあったため。品行方正よりも、攻撃的な印象を持たせようと、黒木メイサやジェシカ・アルバをイメージすることで、段々生命が吹き込まれていく。

 次は思考パターンと行動に入る。思考と言うのは、色々な記憶や経験から作られていく。そこで、高すぎる理想を諦めきれず、それを何とか振り払おうとして多重人格寸前まで精神を病んでいる危険なキャラに。そこから、本当の自分を取り戻していくのは、カスパー・ハウザーやターミネーター2のT-800だったりする。登場直後のキャラは、完全に功殻の少佐。でも、それだとパクリだから食い道楽の酒好き、その上、すぐに手を出すS系にシフト。露出の多い服装を好んでいるわけではないがよく着用するのも、S.A.Cからと言うしかないが、ビジュアルイメージではそれよりヤバい方向になっている。


・世界観

 別に大げさなことではない。時代小説を書くときにどの時代を選択するか。これだって世界観の設定の一つ。問題は、その世界を成立させるための要素。これは、細かくやるときりがないほどやることが増える。

 例えば、魔法やモンスターが存在する世界。魔法は誰でも使えるのか? 特殊なものなのか、免許制なのか? モンスターは脅威なのか、共存可能なのか? 個人レベルで魔法が使える世界は、どんな政治体制なのか? 現実世界なら、どの時代が一番近いのか? 

 例えば、未来の世界。現代と何が違うのか? どこが変わっているのか? 現代と、どんなところで綿密に繋がっているのか? 未来らしい道具やイメージはどんなものか?

 例えば時代小説。どの時代の選択なのか? その時代を綿密に文化や風俗まで再現するのか? 手を加える場合、その結果社会にどんな変化が生じるのか? 虚構の要素をどこに紛れ込ませるのか? その思想はその時代に、破綻を生じないレベルで相応しいものか?

 例えば、SF。空想の域を出る前の段階の科学的考証はあっているか? 疑似であったとしても、それは理屈が通るものなのか? 現実世界とは違う世界である以上、その科学は生活にどんな影響をもたらしているのか?

 このように、作品を描く上で、世界観の設定はかなり面倒。しかし、巷で叩かれやすい小説のほとんどは、この世界観の設定が甘いために、途中で物語がおかしな方向に生きやすいと思う。もちろん、キャラやプロットの段階でおかしいのが大半だが、この世界観の設定をなめてかかり、キャラクターをコンパスも羅針盤も渡さない状態で太平洋の真ん中に漂流させるような状況になる。見当違いの場所に流れ着けばラッキー、大半は魚の餌、つまり打ち切りと言う名の死である。

 自分の場合、姐さんの活躍の場は最初から地球にする予定はなかった。光の国の設定を使いたかったからだ。だが、初めて光の巨人や怪獣に遭遇すると言うシチュエーションも使いたい。そこで使ったのが『宇宙救命ボート』ネタ。この秘密道具は、毎回のように、地球そっくりの星に行くのだけれど、重力が違ったり、義務教育過程が遅めだったり、知能や男女が逆になったりと、地球そっくりの環境と文化が存在する星が宇宙にはある、と言うSF=すこしふしぎの発想になっている。

 これを基に、「地球に良く似ているけれど、宇宙人や人類以外のヒューマノイドが一応の共存をしている。でも、怪獣には一度も遭遇していない」と言う、不思議な星が出来上がった。グリーゼと言う星の名前は、実際にある惑星で、地球に良く似た環境なのではないかという説があるので、そこから拝借。そして、そこは管轄外にあたる地域なので、姐さんの戦いは確実に孤立無援の戦いとなり、それでいて、ほぼ毎回互角以上の戦いを勝ち上がることで、上位ランクの力を有するサバイバリストである事も表現できることになった。ここは、無意識にゴルゴ13になっている。後は、原作に出てくる宇宙人やネタを随所に入れることで、オリジナル要素を入れつつも原作からかい離せず、空気を残せるようにしている。ちなみに、キャラが立ったことで原作要素をギリギリの所まで薄めたのが続編のコンセプト。なので、ほぼ毎回、ラストシーンで原作キャラがリファインされた形で登場する。その次があれば、続編の要素を携えた状態で、再び第一作の空気に戻ると考えている。


 このように、小説を成立させるには、面倒なプロセスが存在する。だが、それを面倒だと思うのは、心の底から小説作りを楽しめていないから。本当に好きな事なら、周りから苦行に見えることでも、本人にとっては何ともないのが常だ。もし、これから新作を作ることがあるのなら、この楽しくて仕方がない苦行を試してみることをお勧めする。そうすれば、愛すべき作品やキャラクター、世界観が生まれるはずだ。

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