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なるほど四時じゃねーの

作者:社 九生
 【引用・はてなキーワード】なるほど四時じゃねーの、について
 twitterにおいて毎朝4時に「なるほど四時じゃねーの」と発言してくれるツール、あるいはその発言。(続く)

 ――深夜1時過ぎ。
 男は寝床で罪悪感に苛まれていた。
 殺人を犯してしまったからである。相手は才能豊かな男だった。
 それに嫉妬していたのだ。
 とある日の飲み会の帰り……たまたま男と帰り道が一緒になって……人目のない夜道……摂取したアルコールの全てが狂気に変わったのか……正気を取り戻した時には、眼前に血まみれの男が倒れていた。
 自分の拳は鈍痛を宿し、しわがれた白いシャツは返り血を浴びていた。
 逃げた。怖くなって逃げた。人間があんなにあっさりと死ぬ。恐るべき事実だった。
 男は「自分はすぐに捕まるだろう」と思っていた。しかし、一日、三日、一週間。ついには一カ月と、自分のところに逮捕状を持った警察官が現れるどころか、有能な男が一人いなくなったために、上司が「奴の後釜を頼む」とA4紙で事実上の「昇級」を告げる一枚状を自分の前に持ってきた。
 これはいったい……。
 皮肉なことに、男を殺害した夜から万事が好転したのである。
 しかし、男の心には深い罪悪感と、日々誰かに監視されているような緊張感が拭えず、その精神はもはや限界に達しつつあった。
 ――深夜2時過ぎ。
 男は「自分は人殺しなのだ」と、誰でもいいからぶちまけたい衝動に駆られた。
 同僚でもいい。友人でもいい。親でもいい。嫌いな上司でもいい。このアパートの大家でもいい。良く行くコンビニの店員でもいい。本当に、本当に、誰でもいいのだ。
 男は寝床であがいた。薄手のシーツがぐちゃぐちゃにしわを作る。
 俺は人殺しなんだ! 同僚も上司も友人も、俺を「優秀なプログラマー」と言うし、気さくに話しかけてくれるが、俺はまったくのエゴで一人の尊い未来を奪った殺人鬼なんだ!
 男は心の中で叫び続け、ついにその内言語が口から出て部屋中に鳴り響いたが、同時に「刑務所にいれられたくない」という恐怖心があるのも確かだった。
 この告白をしたらみんな何と言うだろう。毎日、自分の隣のデスクでプログラミングに没頭し、業績も良かった物腰柔らかな男が、実は狂った殺人鬼。
 同僚や上司はこぞって身震し、大きな失望を露わにするだろう。彼らでさえそんな有様なのだから、両親が聞いたら「息子の代わりに」と言って自殺してしまうかもしれない。
 男は一人身もだえした。悪寒と冷や汗が止まらない。心臓が張り裂けそうで堪らない。
 ――深夜3時近く。
 男はおもむろに、デスクトップパソコンの前についた。
 初めはSNSのマイページか、それとは別にやっているブログ、ツイッターで自分の犯した罪について告白するつもりだった。
 しかし気が付くと、男の手はキーボード上でまったく意図と反する動きを見せていた。
 優秀なプログラマーの手つき。
 テキストに英数字を駆使していくつものタグをプログラミングしていく手つき。
 そしてその作業は画竜点睛を前に、深夜4時を迎えようとしていた。
 自分は「殺人鬼」と告白したいが、それを大々的に行えば残りの人生を全て棒に振る事になる。刑務所での孤独な死を迎えることになる。
 その精神の激しいせめぎ合いが生み出したのが……〝なるほど四時じゃねーの〟というBotツールだった。
 誰でもいい。誰か、気付いてくれ。自分からは言えないから。救って、とは怖くて言えないから。
 しかし男はツールを作り、その配信作業も終えると、正気に戻ったかのごとく笑いだした。
 何を馬鹿なことをしているんだ? こんなので誰が俺の罪に気付くんだ?
 恐らく誰も気づかない。語呂だけはいいので、利用するユーザーはいるのだろうが。
 男はまた寝床についた。虚ろな、生気の欠片もない、幽霊のような目付きで。

 【引用・はてなキーワード】続・なるほど四時じゃねーの、について
  ……このツールにどのような意味があるのか、またどういった意図で設置されたのか定かではないが、2010年6月23日現在、5000人以上が利用しており、そこそこ人気のツールともいえる。
 午前四時ごろ5000人が一斉に「なるほど四時じゃねーの」とつぶやく様は異様である。
自分もつい先ほど、このBotのアカウントを取得しました。

※マイページにて連載中↓ 

ブラック★ロックシューター -No cry and Distance-
http://ncode.syosetu.com/n8109l/

VOCALOIDのファンフィクションです。
絵師・Toporoさんと合同で製作しております。
こちらも良ければ是非。

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