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この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

イーランシェラ世界

180年目のドラゴン

作者:arun
6月にカッとなって考え付いたネタです。
私の名はアイギューン。
艶のあるなめらかな灰青色の鱗、その下に脈打つしなやかな筋肉。
そして自分でも気に入っている煌く黄金の瞳。
21世紀に生きた前世の日本人女性の記憶を持っている事以外は、私はいたって普通のエンシェントドラゴンの雌だ。

基本的に、ドラゴンの図体は人間よりも遥かに大きい。
私のようなエンシェントドラゴンは普通のドラゴンよりも2倍は大きい。
イメージ的にはエンシェントドラゴンが成人、普通のドラゴンが小学生低学年という感じである。
ちなみにその比較で言えば、人間は全長小指ぐらいでしかない。

この世界は人間は弱い方の存在だ。寿命も100年程度しかない。
人間以外にもエルフやドワーフ、獣人等能力が人間よりも優れている種族がいる。
獣人は寿命は人間とさほど変わらないが、エルフやドワーフは数百年は生きる。

しかし私は人間を侮ってはいない。
人間は他種族よりも繁殖力が強く、数で圧倒している。
また、無力な人間が化け物に立ち向かう時。
塵も積もれば…戦いは数…というか、果敢に集団となる事で化け物を下してきたからだ。

蟻に集られた事があるだろうか?
私は(前世に)ある。
蟻は簡単に指で潰せるし、足で踏みにじって殺せる。
けれども蟻でも何千、何万と集まれば力になる。
何倍もの図体を持つ私を恐慌状態に陥れる程に。

この世界の人間もまた、私を恐怖させている。
丁度、今の様に。

「邪竜アイギューンを討ち、宝を何としてでも持ち帰るのだ!!」

数え切れない程の軍隊で私の巣を急襲してきた人間達の、指揮官と思われるやつが叫んでいるのが聞こえた。
私はブレスをやつらに吹きかけているが、人間も賢く全滅しないように散開して一斉に向かってくるため、ブレスの範囲外からどんどん近づかれている。
そうしている間にも私は追い詰められ、とうとう空に逃げた。
正に多勢に無勢。

指揮官が叫んだように、彼らの狙いは財産――といっても地球の伝説にあるような竜によって溜め込まれた宝物ではなく、私の抜け落ちた鱗や排泄物だ。
ドラゴンは石・岩を糧として生きる種族。
石・岩には大地の力が豊富に詰まっており、聖地などにある質の良いものは10年の生命維持を可能とする。
勿論他の生き物を食べる事もあるが、基本ドラゴンは岩石食だ。
そんなドラゴンの排泄物。
体内に取り込んだ岩石は、排泄されると特殊な宝石と変貌する。
ドラゴンの属性にもよるが、そのドラゴンが欲している魔力が抜け落ちた岩石は純化され、宝石になるのだ。


***


私の住処を荒らして意気揚々と宝石を運び出していく人間共を眺め、眉を顰める。
しかし私単体ではなすすべもない。
風の精霊魔法を使うと、「ドラゴンも我らには勝てぬ」「一生遊んで暮らせる」「王国の威光に屈した」等と下種な言葉が聞こえてきて、温厚な私の堪忍袋の緒は切れてしまった。
他人の住居に大勢で押しかけてきて強盗しておきながら自分を恥じない、それを正義とさえ思う人間共。
指揮官は帰ったら王に褒美をたんまりもらうのだろう。


ドラゴンを神として崇める宗教を持つドワーフ・獣人といった種族達ならば、向こうからへりくだって宝石を分けてくださいと願ってくるだけで住処に侵入して荒らすという事はない。
エルフはドラゴン教ではないが、ドラゴンに対する時は極めて礼儀正しい。
宝石を分けてやる時はあちらも聖地の岩石という対価をちゃんと払う。
そうした礼儀を持つ種族達には私も宝石を分ける事に吝かではない。
そんな時はちゃんと出向いていって設けられた巨大な祭壇の上に宝石を投下して分けてやるぐらいのことはする。

始末が悪いのはいわゆるドラゴン教のない人間の王国である。
神の名は興味もないし忘れたが、人間が万物を支配するように神が作られたのだと言って憚らない傲慢な宗教を国教としているのか、絶対強者であるはずのドラゴンであっても自分達に従うべきであるし、その宝石も自分達のものだと考えているのだろう。
人間って本当にしつこいものだとつくづく痛感した。

欲望の力は凄い。

そういう王国のやつらは一度襲ってきて、敗北して逃げ帰り立て直して再び襲ってくるまでに大体180年。
ドラゴンの感覚では180年が一年のようなもの。
前世で悩まされた、毎年梅雨時期に家に入ってくる蟻の軍隊のような存在なのだ。
一人一人潰したりブレスかけたりで対応できる内はまだいいけど、何千何万となってくると発狂しそうになる。手作業で殺していくのは甚だ非効率的だ。
色々な方法も試した。
人間の死体を山にして警告代わりに置いたり、人間が嫌がる物を隙間とか侵入経路と思われる場所にばら撒いたり。
でも効果はあんまりなかった。やつらは必ずどこかから侵入してくる。
人間が襲ってくるたびに住処を変える必要にさらされるのはもううんざり。
永遠に悩まされないようにするにはどうすればいいのか。
前世では、確か…。

私は一計を案じ、前回の襲撃から150年目ぐらいに海の底に大切な家財を隠した。
もう二度と人間に煩わされて住居を変える羽目にはなりたくない。

そして、月日は流れ。
とうとう約180年目がやってきた。


***


その年、私は礼拝にやってきたドワーフと獣人にそれぞれこのように言った。

「ドワーフの長ヴェルムグ、獣人の長カジートに伝えよ。我は人間共の横暴には我慢がならぬ。そなた達の力を借りたい。人間の王国を内偵し、我が領域に攻め込まんとする動きあらば我に伝えよ。その後、我は人間に住処を明け渡し、そなた達の住まう土地の近くに新たな居を構える。そなた達は人間の軍隊とは争ってはならぬ。ただ、事が終われば向こう180年の間、人間との宝石の取引を禁ずる。そなた達に必要な宝石は我が提供しよう。」

その伝言はすぐさま伝えられ、ドワーフ、獣人双方から承諾の返事を持った使者がやってきた。
仕込みはこれで十分である。

次の年。

その知らせを持ってきたのはドワーフだった。私はある細工を自分の排泄物に仕掛ける。
やがて人間が大挙して押し寄せて来た時、私は人間には敢えて危害を加えずに遠くに離れた。
人間が私の住処に入って略奪の限りを尽くすのも構わずじっと静観していた。



***


王の間。

カリンサ王国の宮廷魔術師ナジブ=ハック=ファーヒムは、信じられないという思いでその報告を聞いた。

邪竜アイギューンが全く抵抗せずに宝石を差し出した、という。
軍には一兵卒の犠牲もなかった、と。

「これもガハール=カリム=ダール=カリンサ陛下に神のご加護があり、かの邪竜アイギューンも陛下の御威光に恐れをなしたのでしょう。」

片膝を立てて礼を取る将軍にカリンサ王ガハールは無邪気に喜んでいる。
ばかな、とナジブは思った。
これまでの歴史を紐解いても、かの竜はかならず何らかの攻撃をして抵抗してきている。
この度の被害も甚大になるはずだった。
そうまでして竜の宝石を人間が求めてきたのはひとえにそれが生活の基盤だったからだ。

カリンサ王国では竜から奪い取った宝石は金銭的価値以外にも魔法的価値があった。
それは細かく打ち砕かれ、様々な魔道具や魔法行使の力の媒体として使われているのである。
生活する上で無くてはならない存在、それが竜の宝石であった。

その宝石の効力は、およそ180年。
故に、王国では180年毎に邪竜から宝石を奪わんと軍を差し向けてきたのだった。

宮廷魔術師は違和感を覚え、王の前に進み出る。

「何だ、ナジブよ。」

「王よ、かの竜は180年前には大層抵抗し、またその前の歴史を紐解いてみましても一度として抵抗しなかった事は御座いませぬ。このたび抵抗もせず宝石を明け渡すはおかしゅう御座います。」

「ナジブ殿、あなたは神のご加護の奇跡、ひいては王の御威光を否定されるのか?」

普段から宮廷魔術師と権勢を争い、良い印象を持っていなかった将軍が横槍を入れた。
自分の武功を、奇跡を否定するのか、と。

「いえ、そうでは御座いませぬ。何か不自然な、意図的なものを感じるのです。」

「ええい、そなたは宮廷魔術師として普段から物事を考えすぎなのではないか?竜の宝石は犠牲を出さずに手に入った。180年は我が王国は安泰であろう。将軍の申す通り神のご加護があったのだ。かの竜は我が王国の軍と戦ってきた歴史があるが、いつも宝石を明け渡してきた。とうとうこの度は諦めて宝石を明け渡す事にしたのだろう。」

尚も言い募った魔術師に、折角の喜びに水を差されたと不機嫌になった王。
ナジブは大人しく押し黙って引き下がるしかなかった。

竜が王国へ宝石を明け渡し、一人の犠牲も出さずに済んだ奇跡。
それは王の名を取って『ガハール王の奇跡』と讃えられることになった。
ガハール王の奇跡から20年、唯一アイギューンの行動に疑問を挟んだ宮廷魔術師ナジブはこの世を去った。

そして30年目――それは突如起こった。

大いなる災厄がカリンサ王国を襲った。
赤子や老人、女子供などから原因不明の疫病にかかり次々と死んでいく。
王国の半数以上がなくなったところで災いの出所がかのドラゴンより奪った宝石にかかった呪いだと判明するもそれを解く術はなかった。

ドラゴン教徒であるドワーフや獣人に助けを求めるも、彼らは人間達の自業自得だと言って見捨てた。
そして、数年もせぬ内に一つの人間の王国が文字通り全滅したのであった。

カリンサ王国と交流のあった国々も、カリンサ王国より輸出された竜の宝石を使っていた者はすべて亡くなってしまい、国力を大きく削がれた。
人間達の国家はカリンサ王国の悲劇に震え上がった。邪竜討伐すべしとの声も上がったが、各国で協議し、ドワーフや獣人といったドラゴン教徒を取り込んだ上で絶対不可侵の存在として恐れ遠ざけるという結論を出した。


***


廃墟となった人間の王国の首都上空を飛んで眺めながら、私は満足していた。
これでもう二度と人間達に家をかき回され煩わされることはないだろう。

毒を含んだ餌を巣に持ち帰らせて殺す。

蟻の巣コロリ作戦は効を奏したようでなにより。

6月頃、毎年のように蟻が家の中に群をなしてはい上がってきます。
蟻の侵入を防ぐ薬代が半端無いです。
蟻の巣コロリは…持って帰ってくれません。
アリメツも吸ってそのままその場で死ぬので汚れます。
色々な方法を試してお金がなくなっていく…本当、ほとほと蟻には悩まされています。

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