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ダイバダッタ
作:尾久令



未来編5


 ユマという二十代半ばの女は、ヤルナ一族の出自らしく、ダイバダッタは詳しい話を聞くべく、彼女の元へ若者のルイザに案内してもらった。
 この時代の人々のほとんどは同族同士で集団を形成し、日々を共に過ごしているようだが、子孫を残していく過程で血が濃くなりすぎないようにと、ときたま他の一族から嫁を迎えるらしい。
 また、ラグジリ族は男の生まれる割合が強いそうで、そのため他の一族との交流が活発でもあった。
 洞窟が別れたところの先に女子供の部屋があった。三人の女たちが明るく談笑しながら毛皮のようなものを繕いでいる。
「ユマ姉さん」
 ルイザが呼んだ女は背中に赤ん坊をおぶっていた。
「ちょっといいですか?」
 ユマとやらは、先ほど見かけた怪しい子供のダイバダッタをちらと見やり、腰を上げた。赤ん坊を年増の女に任せると、ルイザとダイバダッタのあとをついてきた。
「何でしょう」
「いや、この前話していた女性のことを聞きたいんです」
 ルイザはとある部屋に入り、持っていたランプの火を燭台に移した。
「ヨウちゃんのことね」
「ええ。額に黒子みたいな出来物があるという」
 三人はその場に腰掛け、ルイザが事情を話した。ダイバダッタのことを伝えると、それまで視線の冷たかったユマは、途端に抱いていた両膝を地べたにつけて、正座に変えた。
 その態度にダイバダッタはふんと鼻先を突き上げた。
「ヨウちゃんは不思議な子なんです」
 ユマはヨウという同族の者の話を始めた。
 女らしい。齢は十七、八ぐらいで、見てくれからして他の者とは違うようである。
「髪は新雪のようにさらさらと柔らかく、とてもいい香りがするのです」
 というのも、今の時代の人々は体を洗う日がほとんど無いようである。実際、目の前のユマも髪は縮れていて、鼻下には産毛のようなものがうっすらと確認できる。ダイバダッタがかつて見てきた人々の派手さや華やかさな皆無だ。
「おでこの出来物もそうですが、生まれたときから変わった痣を持っています」
 首には輪のようにして縄状の痣が、腹には十字の線があると言う。
「小さいころは不思議な記号を壁に並べてもいました。それがなんなのか訊ねるとモジだと答えました。私にはよくわかりませんでした」
 ダイバダッタは小さい頭でよく考えてみた。もしやと思い、忘れかけの記憶をなんとか引っ張り出した。
 大昔、山賊の山田豊次は眉間の上を鉄砲で打たれて死んだ。永田重良は割腹自殺をし、安永亨は首を吊って死んだ。
 ダラニだろうか。ダイバダッタはうーんと唸りながら、両手で頭を抱えた。
 ダラニは今まで男として誕生してきた。だが、そのヨウとやらは女である。また、今までのダラニは転生前の傷どころか記憶も消している。
 しかし、もしもダラニだと考えてみたとき、すべて合点が合う。
「他にはなんかないの」
 ダイバダッタは目の色を変えていた。ダラニかもしれないのである。まして、ダラニはようやく救世主となって生まれたのかもしれないのである。
「いっぱいあります。ただ、一番印象に残っているのは、ある日ヨウちゃんが、私に言ったんです。ユマお姉ちゃんは、前の世界にいたときの娘に似ているって」












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