エピローグ
新クロスで作ったゲートには、旧タイプのあのイヤな感覚はまったくなかった。まるでドアをくぐったように簡単に僕とお姉ちゃんは自分たちの世界に帰って来れた。僕はお姉ちゃんと手をつないだまま、しばらくボーっと目の前を歩く黒服の人たちを見る。
「ねぇ、カイト。これって、誰のお葬式なの?」
「え?」
お姉ちゃんから話しかけられてハッとした。そういえば全然説明してないや。
「これ、お姉ちゃんのお葬式だよ? 正確には、体をお姉ちゃんと入れ替えたヒュルムの、だけど」
「私は覚えてないけど・・・・。そっか。ヒュルム、殺されちゃったんだよね、黒の妖精に。そっか・・・・」
お姉ちゃんはちょっとだけ考えて、
「お線香あげに行こう?」
と言って僕の手を引っ張って歩き出した。
僕たちを見た周りの人たちがザワザワと騒ぎ始めるなか、お母さんとお父さんがいる一番前のほうへと、僕の手を引いてお姉ちゃんはズンズンと歩いてゆく。
その後のお葬式場は、死んだはずのお姉ちゃんが帰って来たということでずいぶん騒がしくなった。
お母さんもお父さんも、お姉ちゃんのことをちゃんと『お姉ちゃん』だと分かってくれた。背が四年前と同じなのはやっぱり不思議がっていたけれど。
お姉ちゃんは驚いて落ち着かない二人に、
「私はコノハだけど、この人もコノハなの。だから、ちゃんと弔ってあげて」
と言って、ヒュルムのお葬式を最後までやってほしいと告げた。
二人とも全然意味が分かってないみたいだったけど、始まっていたお葬式はちゃんと最後までやることになった。
僕とお姉ちゃんは昨日の夜から寝てないせいですごく眠かったから、式が終わるとすぐに家に帰って寝ることにした。
久しぶりの二段ベッドの下側にお姉ちゃん、上に僕が入る。
「うわぁ、なつかしー。昔のまんまだねぇ」
下からお姉ちゃんが話しかけてきた。
「お姉ちゃん。僕すごく眠いから、もう寝るね。おやすみなさい」
「ねぇカイト、ちょっとこっち来て」
「なぁに? もう寝ようよぅ」
僕はアクビをしながら布団から出て、仕方なく二段ベッドのハシゴを下りる。
「ほらほら、入って」
お姉ちゃんは掛け布団を持ち上げて僕を誘った。
「僕もう十才だよ? 六才のころみたいに甘えん坊じゃないもん」
「いいじゃない。まだ子供なんだし」
「子供じゃないよ、大人だよ」
「十才なんてまだまだ子供よ? なに恥ずかしがってるの」
お姉ちゃんはクスッと笑う。
「べ、別に恥ずかしがってなんてないけど。んもう、僕は上で寝るからね」
二段ベッドのハシゴに手をかける。
「ええー? お姉ちゃんさみしいなぁ。やっと家に帰ってこれたのになー。ずっとこうやって、またカイトといっしょに寝たいと思ってたのにぃ」
気のせいかもしれないけど、お姉ちゃんはなんとなく棒読みでそう言ったあと、頬っぺたを膨らませた。
「んー。もう、仕方ないなぁ。今日だけだよ」
自分の枕を持ってきてお姉ちゃんのとなりに置き、布団のなかに入る。僕と同じくらいの背丈のお姉ちゃんと寝るのは、ホントを言うとけっこう恥ずかしい。
「よしよし」
そう言ってお姉ちゃんは僕の頭を撫でたあと、手を握ってきた。僕の中で甘えたい気持ちがまた出てきて、手を握り返す。
「おやすみ、カイト」
「おやすみなさい」
お姉ちゃんの体温を感じると、昔みたいになんだか安心できる。
枕元に置いた「水色の涙」が、ぼんやりと水色に輝いていた。
ウリミッツです。
お楽しみいただけましたでしょうか?
この「姉捜し異世界トリップ」は私が初めて書いた長編作品です。
書き始めた当初、私は短編を二つ(一つは当サイトでは未発表)書いただけの超初心者でした。
設定も大雑把、プロットって何? という状態で書き始めてアップし、「五、六ヶ月で完結させよう」「長編三部作にしよう」などと、無謀としか言えないことを考えスタートしました。
結果、当然のように行き詰まり、自分の遅筆さに驚き、でも「連載途中で投げ出すことだけは絶対にしたくない」と何度か決意を新たにし、時間に追われながらも書き続けてきました。
五、六ヶ月のハズが十九ヶ月かかってしまいました。内容的にも文章的にもいろいろと問題があると思います。まだまだ勉強しなければいけません。
さて。
前述したとおり、書き始めた当初私は「長編三部作にしよう」と考えていました。本文中にはそのための伏線も張ってあります。
カイト君はようやく大好きなコノハお姉ちゃんを救い出し帰ってきましたが、四年後はどうなるのでしょうか?
四年後、つまりカイト君は十四才です。思春期真っ只中です。ああ、読んでみたい。私が。
でも、もし続きを本当に書くとしたら、設定から練り直さなくてはいけないと思っています。本文も少し書き直すかもしれません。それを考えると・・・・・ちょっと、お約束致しかねます。(汗)
現在のところは続きを書くのか書かないのか、はっきり決めていません。
ではでは。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
西暦2010年9月5日
ウリミッツ
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