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第一話 六才の誕生日
 六才になった一月十五日、僕は貯まったお年玉を持ってお姉ちゃんとデパートに行った。
 そこのおもちゃ売り場で、そのころ大ファンだった「新獣戦隊 ガオガオダー」のゴゴアラの変身ブレスレットをお姉ちゃんに買ってもらったんだ。
 ゴゴアラはコアラで臆病で、強くないけど、一生懸命レッドのラライオンや仲間たちといっしょに敵と戦う。
 それがとてもかっこいい!
 怖くて震えて、泣きそうでも、自分と仲間を信じて、逃げないで戦う。
 その姿をみて僕は、毎週のようにテレビの前でうるうるしていた。みているとき、手はいつも興奮でグーになっていた。
 僕もあまり強いほうじゃないし、どっちかと言うと臆病だし、たまに、だけど・・・いじめてくるヤツから逃げちゃうことがあったから。
 ゴゴアラの変身ブレスレットは全体に金色のメッキがしてあって、コアラが怒ってる顔のコインが一枚、腕時計みたいについてる。コインの裏側に「対象年齢6才から12才用」って書いたシールが貼ってあった。
 買ってもらってすぐその場で、僕は左の手首につけた。もううれしくてうれしくて、思わず叫んじゃったんだ。
「必殺!ゴアビィィィーーーーム!」
 僕はゴゴアラみたいに右手をひらいて前に押し出すポーズをとった!
「ちょ、ちょっと!」
 お姉ちゃんは小さい声で言って、僕を人の少ないところまで連れていき、少し顔を赤くして
「恥ずかしいから!もう、やめなさい」
って言ったんだ。
 僕はクスクス笑って「はぁーい」って言ったよ。
「ねぇ、お姉ちゃん。僕、もう少し見たいのがあるんだ」
 僕はおもちゃ売り場にまた戻って、水色にキラキラ光るガラス球がついたネックレスを買った。
「これ、お姉ちゃんの誕生日プレゼントね!」
 お姉ちゃんはビックリした顔をして
「ええ?あ、・・・ありがとう。でも、私の誕生日って九月よ?」
「うん。知ってるけど。今ならお年玉もあるし。九月じゃなくなっちゃうから、ね?」
「んー、・・・うん」
 運動好きで負けず嫌いで、男の子とケンカもしちゃうお姉ちゃん。髪型もショートで、心身ともに女の子っぽいところがあまりない。そんなお姉ちゃんだけど、そのネックレスはとても似合うような気がした。
 水色に光るガラス玉をしばらくジーっと(少し困ったように)見てから、とても女の子っぽく、手で口をかくしながら笑った。マンガだったら「うふふ」とか書いてあるような、そんな感じで笑ったあと、ポンポンっと僕の頭を軽く叩いた。
「じゃ、帰ろっか」
「うん」
 僕たちがデパートを出ると、もう空はオレンジ色になっていた。

 その日の夜は父さんも母さんもいつもより早く帰ってきて、みんなでケーキを食べる。・・・はずだった。
 母さんは五時くらいに仕事から帰ってきた。それから父さんを待ってたんだけど、七時を過ぎても帰ってこなくて、しょうがないから先に三人でケーキを食べた。
 僕とお姉ちゃんは同じ部屋で、二段ベッドで寝る。お姉ちゃんは寝てるときも元気がいいから下の段、僕は上の段だ。
 夜九時をすぎて、僕とお姉ちゃんがベッドに入ったころ、玄関のほうから音がした。父さんが帰ってきたんだ。母さんが何か大きな声で話してる。父さんも、母さんと話してるうちにだんだん声が大きくなってきた。
 そうだ。また、ケンカしてるんだ。

「カイト、起きてる?」
 下からお姉ちゃんの声がした。
「うん」
「私、前から考えてたんだけど・・・・お父さんとお母さんに仲良くしてもらうには、みんなで旅行とかいいんじゃないかなって」
「うん?」
「ねぇ、ちょっと、下におりてきて」
 お姉ちゃんに言われて、僕は二段ベッドの上からおりた。
「ほら、寒いから入りなさい」
 お姉ちゃんは僕をひっぱって自分の布団のなかに入れる。そこは、お姉ちゃんの体温であったかくなってて・・・。
 余計に眠くなった。
「ねぇ、雪がたくさんあるところに行ってみたくない?」
「うーん。おもしろそう」
 そう言いながら、僕は頭まで布団のなかにもぐる。
「ちょっと、カイト。聞いてるのー?」
 いつもそうしてるみたいに、布団の中でお姉ちゃんの手を両手で握った。そうすると、安心するんだ。
 「もう、」とお姉ちゃんは小さく言う。でも、手をほどこうとはしない。ただ少しだけ、ギュって握り返すだけ。

 お姉ちゃんの布団のなかは、他のどこよりもあたたかくて、とても、やさしかった。



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