プロローグ
僕は紫暮カイト。ついこの前の一月十五日に十才になったばかりだ。
僕には四つ年上のコノハお姉ちゃんがいる。お姉ちゃんは四年前、霧の沢スキー場で行方不明になってしまった。
いま僕は父さんや母さんに内緒で、コノハお姉ちゃんを捜しにそのスキー場に向かっている。電車で一人で出かけるのは初めてだけど、前もって何度も行き方を調べておいたから大丈夫!
なぜ四年も経った今、お姉ちゃんを捜しに行くのか。それにはちゃんと理由がある。
二週間前、霧の沢スキー場の立ち入り禁止区域の崖の下で、つぶれた頭蓋骨とバラバラになった人骨、スキーウェア、折れていくつもの破片になったスキー板が見つかった。
そのスキーウェアと板は、お姉ちゃんが行方不明になった日に使っていたものと同じ柄、色のものだった。だから、頭蓋骨や骨もお姉ちゃんのもの、とみんながそう思った。実際に、DNA鑑定で「紫暮コノハの骨」という結論もでた。
でも不可解な、説明のつかない事実がいくつかある。
なぜ四年前に行方不明になった人間の骨が、雪の上にあったのか。発見した人の話だと「まるで前の晩に空から降ってきたように、雪の上に散らばっていた」という。
そして、つぶれた頭蓋骨。「崖から落ちたからって、こんなつぶれ方はしない。まして、雪の深い冬に。まるで何か、薄く硬いもので殴られたみたいだ」と警察の人が言っていた。
極めつけは「十才当時の紫暮コノハよりも背が高い」ということ。
こんな事実のせいで「紫暮コノハは誘拐監禁され、数年後に殺されたのではないか」と、警察は殺人事件としてまだ捜査をしている。
でも僕には分かってる。それはお姉ちゃんじゃない。お姉ちゃんは今も生きて、どこかにいる。証拠はないけど、感じるんだ。それに、あの夜にしていたネックレスも見つかっていない。
そして今夜、お姉ちゃんのお葬式だ。
僕がこの四年間言い続けてきた「お姉ちゃんは生きてる」の言葉も、もう誰も聞いてくれないし、信じてくれない。だから、僕がお姉ちゃんを捜し出して見つけるしかないんだ!
電車から見える景色が夕焼け色に染まってきた。もうすぐ、霧の沢駅に到着する。四年も経ったから、駅やスキー場はいろいろ変わってるかも知れない。
でも、お姉ちゃんが僕を助けるためにあの崖から落ちていった場所、そのあと捜索のために何度も行った崖下の景色はよく覚えている。
四年前のあの出来事、あの日のことを、僕は決して忘れない。
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