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うちのかわいいかわいい猫 作者:しまうま
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うちのスッキリ猫

「あー、こんなところにいたんですか」

 夜中に麦茶を飲もうとリビングに降りてきたところで、うちの猫を見つけた。
 テーブルの上に寝そべっている。
 首だけ起こして、「なによ。こんな夜中に」という顔で僕を見ている。
 暗かったところに電気をつけたから、目がしょぱしょぱだ。

「最近おとなしいですよねー。寝てばっかりです。まだ夏バテですか?」

 人差し指で鼻をツンツンする。
 うちの猫はまんざらでもない表情で指のにおいをかぐと、ゆっくりと前足で僕の手を押さえつけた。
 どうやら寝ぼけているようだ。
 力が入っていない。

「あれ? うーん? ちょっと痩せましたね?」

 とうちの猫の顔を見つめる。
「ジロジロ見ないでよ」と顔を背けるのでわかりにくいが、頬の辺りがスッキリしている気がする。

 ――まあ、そういうこともありますか。夏バテしているみたいだし。

 僕も寝ぼけていたので、すぐにベッドへ戻った。


 別の日に、うちの猫を撫でようとしたときのことだ。

 ――やっぱり痩せてる……?

 と僕は手を止めた。
 目がキリッとしているし、あごの周りが以前よりも尖っている感じだ。

「えー? 大丈夫ですか?」

 つついても、あまり反応はない。
 カリカリを持ってきても興味なさげ。
 寝ているだけだ。

「ただの夏バテならいいんですけど……体調が悪かったら言ってくださいね」

 こういうときに、猫の言葉がわかればいいな、と思う。
 ちょっと痩せている感じで、あまり動かない。
 それだけだと、深刻な状況なのか、痩せた気がするだけなのかわからない。

 ――病気とかではない感じですけど……。

 暑い中動きたくなくて、のんびりしているだけのようにも見える。
 はっきりした兆候がないので、どうにも結論が出せずに、注意して見守るくらいしかできなかった。

***


 夜中に、「ドン!」という音で目が覚めた。
 音は僕の部屋のすぐ外で聞こえていた。
 そこは倉庫の近く、簡易的なトタン屋根の庇がつき出ている部分だ。

 僕の部屋にはふたつ窓がある。
 ひとつは下に何もない、地面を見下ろせる窓だ。
 ここを時計で12時の方向とする。
 すると、3時の方向の窓の下に、トタン屋根がある。
 窓から1メートルほど低い位置だ。
 屋根だから、地面からも1メートル以上離れている。
 2階のほかの部屋には、6時の方向へ向いている窓もある。
 そのすぐ下には、一階部分の屋根がある。
 こちらはトタン屋根ではなくて、ちゃんとした屋根だ。
 この屋根は窓と同じくらいの高さにあるので、人間でも、窓から出入りできる。
 うちの猫も、その窓から出入りしていた。

 ――いまの音って、もしかして……?

 ちょうど猫くらいの大きさのものが落ちた音に聞こえた。
 だが、トタン屋根と一階部分の屋根は繋がっていない。
 屋根づたいに移動することはできない。
 ジャンプして登れる高さでもない。
 中途半端な高さにあるせいで、トタン屋根の上にいく方法はないはずなのだ。

 ――でも、まさか……いないですよね?

 そっと窓を開けて、屋根の上をたしかめた。
 するとうちの猫が僕を見上げていた。

「えー、なんでそんなところにいるんですか」

「にゃーん」

 うちの猫は、途方にくれたという感じで、じっと座っていた。

「降りられないんですか? ちょっと待ってくださいよ」

 窓から身を乗り出して、手を伸ばす。
 ベルトのバックルを窓枠にひっかけて、落ちてしまわないようにしながら、精一杯トタン屋根にからだを近づけた。
 これでも届かないけれど、僕の手にうちの猫が掴まってくれれば持ち上げることはできるはずだ。

「さあ、こっちに来てください」

 しゃべるのも困難な体勢だ。
 僕はいま、ほとんど逆さまになっている。
 この状態を維持するのは厳しい。
 山登りの映画で見たことがあるような光景だ。
 逆さまのままガッと手を掴んで、引き上げるのだ。

「はやく、こっちへ……掴まって……」

 うちの猫を探すと、ちょっと離れたところで毛繕いをしていた。
 念入りに背中の毛まで整えている。
 近づこうとする様子はない。
 このままでは、ただ僕が苦しいだけだった。

「ぐう……なにそれ……」

 助けようという僕の意思は伝わらなかったようだ。
 ひっぱり上げるのは諦めて、窓を開けておくことにした。
 かなりの高さがあるけれど、もしかすると、自力で登れるかもしれない。

 しばらくすると、うちの猫がひょいと窓に飛び乗ってきた。

「あら、本当に登ってこれましたね! 良かったですねー!」

 うちの猫は特に何の感情も浮かばない顔で、僕を飛び越えて、トコトコと部屋から出ていってしまった。

「まあ……良かったです。思ったよりも元気そうですし」

 体調が悪かったら、あの高さをジャンプすることはできないだろう、と思った。


 その後カリカリにかつおぶしをかけるようにしたら、うちの猫の体型はすぐに元通りになった。
 本当にただの夏バテだったようだ。

     (=‘x‘=)<読んでくれてありがとうニャー
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