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うちのかわいいかわいい猫 作者:しまうま
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うちのさじ加減

 ――おお、いっぱい咲きましたね。

 3センチほどのちいさな花。鮮やかな白のマーガレットが、庭の片隅にびっしりと咲き乱れていた。

 ――こんなにちいさな花でも、群生しているとなかなか見応えがありますね。

 近くには別の花も咲いている。同じ白い花だけど、長い茎の先に、すぼめたように花びらが並んでいる。めいいっぱい花びらを広げようとしているマーガレットとは対照的だ。
 たしか、これはニラだったはず、と茎を千切って臭いを嗅いでみる。

 ――うん、ニラですね。

 潰した茎からは、ラーメン屋のような臭いがしていた。
 僕が庭に座り込み、そんなふうに花を観察しているあいだ、周囲では奇妙な光景が繰り広げられていた。

 シマシマシッポが走っていく。そのあとを、うちの猫が追いかけていく。そのまま隣の家へ消えて、しばらくすると、今度はうちの猫を先頭にして戻ってくる。

 ケンカをしているようではない。唸ったり、噛みついたりもしていない。ときどき、うちの猫がシマシマシッポを叩いているだけだ。
 シマシマシッポはぴょんと跳びはねたり、お尻をフリフリしたりして、楽しそうに走っている。

 一方、うちの猫はやや必死だった。
 耳をペタンと寝かせて、ドタバタと足を動かして走っている。すぐにシマシマシッポに追いつかれるし、置いていかれる。

 また二匹が走ってきて、裏庭のほうへ消えていった。

 ――うーん? 仲良くしているんですよね……? 怒ってないみたいですし……?

 まだ子猫のはずのシマシマシッポのほうが動けているのはどうかと思うけれど、うちの猫は家のなかで生活しているから、これは仕方ないことなのだろう。
 うちの猫の必死な表情が気がかりだけど、ケンカをしているわけではないし、止める必要はなさそうだ。

 ――遊んでもらえてよかったですね。

 と思いながら、僕は家のなかへ戻った。


   ***


 夜、何かの気配を感じて僕は目を覚ました。
 うちの猫だ。
 僕の顔のすぐそばで、うちの猫がゴロゴロとのどを鳴らしているようだ。
 頬に温かい息がかかっていた。
 目を開けると、10センチほどの距離で、うちの猫が僕を見つめていた。

 ――ええ!? 近すぎるでしょう……。

 においを嗅いでいるわけでもない。
 ただ座って、ゴロゴロのどを鳴らしている。

 ――これは……甘えたいんですか!? ……それにしても近すぎですよ……?

 普段は手の届かないくらいの距離を保とうとする。なのに、この近さだ。
 いつものつれない態度とはまるで違う。
 とはいえ、それ以上のことはしてこない。
 首を伸ばして、ぺろりとなめることだってできる距離なのに、座っているだけ。
 暗い部屋のなかで、僕とうちの猫は、しばらく見つめ合っていた。

 うちの猫がもぞもぞと姿勢を変えた。
 夜、眠るとき、僕は首の辺りまでしっかり毛布をかぶって眠る。
 いまもそうだ。
 その鎖骨の付近の毛布を、うちの猫が押し始めた。
 ゴロゴロとのどを鳴らしながら、一生懸命、前足で交互に押している。

 ――これ、お母さんに甘えるときのやつですよね……。

 けっこう力を込めて押しているし、ちょっと握る感じで爪をたてているようで、毛布がバリバリと音をたてている。
 これではとても眠れない。

 ――シマシマシッポをかわいがったから、不安になってるんですか? 心配しなくていいですよ。あと、近すぎますよ……。別にかまわないんですけど……。

 うちの猫が僕の肩に向かって座っているから、僕の顔のちょうど横にうちの猫のおしりがある。
 さっきから、ちょっとよくわからない距離感になっていた。

 ――いつもは甘えないから、さじ加減がわからないんでしょうか……。

 暗い部屋のなかにバリバリという音がいつまでも響いていた。


   ***


 翌朝、キッチンにうちの猫を見つけた。

「おはようございます。昨日は眠れなかったですね……」

 と手を伸ばして撫でようとすると、するりと逃げてしまった。
 少し離れた場所で、「うっとうしいのが来たわね……」という感じに目を細めて、毛繕いをしている。
 これはいつもの態度だ。
 昨日の夜とは違う。

「あれ? ちょっと……おかしいな……? どういうことですか……」

 もう一度触ろうとすると、やはり逃げられてしまう。
 毛繕いをやめて、僕から距離をとって、うちの猫は「ふんっ」と鼻を鳴らした。
 そして、しっぽをピンと立てて、ゆっくりと歩き去っていった。

「ちょっと甘えたからって、調子に乗らないでよね」

 そう言っているようだった。

     (=‘x‘=)<読んでくれてありがとうニャー
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