挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
うちのかわいいかわいい猫 作者:しまうま
54/122

うちの雪景色

 なにやらものすごい寒波がやって来たようだった。
 僕が住んでいる地域では、毎年、ほとんど雪が積もることはない。たまにちらちらと降ってきて、地面をしっとりさせるくらいのものだ。
 だが今回の寒波では、靴がすっぽり埋まるくらいの深さまで積もっていた。

 ――おお!? 結構降るものですね。まあ、お昼には止んでいるでしょうけど。

 とあまり深く考えずに、僕は家を後にした。


 夕方、帰ろうとすると、さらに雪が積もっていた。どこまでが道路で、どこが歩道なのかわからなくなっている。
 走る車もまばらで、ゆっくりじわじわと進んでいる。
 みんな慣れていないから、スピードが出せないのだろう。

 ――こういうときは歩くのが一番でしょうね。徒歩で帰りましょう。

 家までは歩いて30分くらいの距離だ。徒歩でもまったく問題はない。
 雪のなかを歩くことはなかなかなくて、ちょっとうれしくなって、足跡のついていないきれいな地面を探しながら歩き始めた。

 しばらく進むと状況が変わった。
 空が真っ黒になり、雪の勢いが増した。
 雪を巻き込んだ白い風が、横から僕の顔に叩きつけられている。
 まっすぐ前を向いていることができない。

 ――へへへ、遭難してるみたいですね。周りが見えないですよ?

 珍しい経験をしていると思うばかりで、まったく危機感は生まれなかった。
 こうして、僕は普段の三倍の時間をかけて帰宅することになった。

 この日はうちの猫はずっと布団の中にいたようで、僕が帰ってきても出てこようとはしなかった。

「雪が降ってますよ?」

 と布団の中をのぞくと、迷惑そうに目を細めていた。




 翌日、家の中にいるのが我慢できなくなったのだろう。
 うちの猫が「ドアを開けなさいよ」と鳴き始めた。

 ――でも、まだ積もってるんですよね。

 玄関を出てすぐのところにまで、雪が降り積もっている。
 うちの猫はそれを見て立ち尽くし、しばらく考え込んでいるようだった。
 そっと鼻を近づけて、雪のにおいをかぐ。
 前足でちょこんと触れて慌てて引っ込める。
 ぷるぷるぷると前足を震わせて、雪を振り落としていた。

 散々迷って、うちの猫が雪の上にダッと飛び込んだ。
 すぐにぺたんと耳を伏せて、戻ってくる。

「うぅーん、うぅーん」

 と悲しそうに鳴きながら、必死に前足をなめていた。
 毛づくろいのときとはスピードが違う。
 どうやら雪が足につくのが嫌なようだ。
 これでは外で遊ぶことができない。

「あっ、そうだ。それなら僕が連れて行きますよ。ちょっと家の周りを見てみましょうか」

 とうちの猫を抱きかかえて雪の上に踏み出すと、腕のなかで「ふぅん、ふぅん」と鳴き続けていた。周りを見ようとはしない。ちいさくなって動かない。震えているような気もする。

「……帰りましょうか。雪の日は家のなかが一番ですよね」

 雪の上に連れ出してちょっとからかってみようかと思っていたのだけれど、あんまり嫌がっている様子だったので、すぐに帰ることにした。こんなに元気のないうちの猫の姿は見たことがない。
 家のなかに入ると、ストーブの前に走りこんで、ちらっと僕をにらんで、ソファーをガリガリひっかき始めた。

 ――そんなに嫌だったんですね。もう無理に連れ出そうとはしませんからね。

 お詫びにエサ入れにカツオ節を用意すると、「フンッ」と鼻を鳴らしながら平らげていた。
 家に帰ってきてからはいつもどおりの振る舞いで、少し安心した。

 ――ボスやポッチャリは大丈夫ですかね。うちの猫よりは雪に耐えられるんでしょうけど。

 庭に猫の姿がないかを探して、僕はそんなことを考えていた。
 もし逃げ込んできたときのために、どこかに暖かい場所を準備しておいたほうがいいのかもしれない。

     (=‘x‘=)<読んでくれてありがとうニャー
小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ