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うちのかわいいかわいい猫 作者:しまうま
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うちのおしゃべりさん

「ニャアァー! ニャ?」

 うちの猫が僕の足元で鳴いていた。
 猫が鳴いているというよりも、子供が一生懸命しゃべっているという感じだった。

「どうしたんですか? 今日は良く鳴きますね?」

 普段のうちの猫はあまり鳴かない。
 鳴くのは怒っているときと、何かを要求するとき。
 あいさつをしたり、愛想を振り撒くタイプではないので、静かなものだ。
 必要なとき以外は、たいてい鼻をならしたり、しっぽを振ってアピールする。表情で伝えようとしたりもする。

 ――いつもはそれで伝わるんですけど……。

 今日に限って、どうしてこんなに鳴いているのか、わからなかった。

「ナウナウ」 

 うちの猫がトコトコトコと歩いていって、ぴたっと壁に体を寄せる。
 しっぽを立てて、おしりが丸見えの状態だ。

「ニャーウ、フルルルルン」

 のどをゴロゴロしながら鳴いているのでおかしなことになっていた。

「なんですか?」

 僕が近づくと、近づいた分またトコトコ歩いて、ぴたっと止まる
 どこかへ連れて行きたいようだ。
 とりあえずついていってみると、洗面所にたどり着いた。

「ああ、水が飲みたかったんですね!」

 うちの猫が洗面台に登って待ち構えていた。
 飲みやすいようにすこしだけ出すと、糸のように流れ落ちる水をじっと見つめる。

「ニャッ!」

 すぐに洗面台から飛び降りて、トコトコと歩いていってしまった。
 水はひとくちも飲んでいない。
 眺めただけだ。

 ――水じゃなかったんですか……?

 次にたどり着いた場所にあったのは、エサ入れだった。
 エサ入れの前で、行儀よく座っている。
 くちはつけていない。

「エサは……あれ? 入ってますよ? かつおぶしも少し残ってます。ほら」

 僕がエサ入れをかきまわしてみせると、鼻を近づける。
 においを嗅いで、それから鼻をならして歩いていってしまった。

 ――エサでもないんですか……?

 今度は爪研ぎマットの前に座って、僕を待っていた。
 座っているだけで、爪を研ぐ様子はない

「爪、研がないんですか? 僕が研いじゃいますよ?」

 僕がガリガリやっているあいだに、うちの猫がさらに移動する。
 玄関のドアの前だ。

「ああ、出かけたかったんですね! わかりましたよ! はい、いってらっしゃい」  

 ドアを開けると、うちの猫はトコトコトコと飛び出した。
 そしてぴたっと止まって、僕におしりを見せつける。
 そのまま動かない。

「あの……僕は出かけないですよ……。もう真っ暗ですからね」

 まだそれほど遅い時間ではなかった。
 でも、完全に日が暮れてしまっていた。
 うちの猫はあきらかに僕を待っている様子だけれど、さすがに暗闇のなかを出かける気分にはなれなかった。

「こんな暗いなかで、猫とうろうろしてたら通報されちゃいますからね? 足元も見えないですし。一緒に出かけるのは今度にしましょう。気をつけて遊んできてください」

 と言って、僕はドアを閉めた。


 コーヒーを淹れて、ちょうどいい温度になるのを待っていると、窓の向こうからうちの猫が見つめていた。

「いま出かけたところですよね……? お帰りなさい?」

 窓を開けるとすぐに入ってくる。
 テーブルに登って、コーヒーの周りをうろうろしていた。

「ウーン、ウーン」

 と鳴いている。

「どうしたいんですか……?」

 しかたがないので最終兵器を取り出すことにした。 

「ほら、ネズミですよ」

 うちの猫が僕が差し出したネズミをじっと見つめる。
 そして、ぱくっと僕の指をくわえた。

「うん、それは僕の指です。ネズミじゃないんですよ……」

 うちの猫は指をあま噛みしたまま、パチパチまばたきをしていた。
 指を離そうとはしない。
 それを見て、ようやくわかった。

「ああ……ネズミじゃなくて、僕で遊びたかったんですね……。しかたがないですね……」

 僕が立ち上がると、うちの猫はさっと指を離した。
 距離をとろうと慌てている。

 ――ちょっと大人になってきたと思っていましたが、たまにはこうして遊びたいですよね。

 うちの猫は、もう廊下の角のところで待ち構えていた。
 いつでも走り出せる体勢だ。

「はやく追いかけてきなさいよ」

 という表情で、しっぽをゆらゆら動かしていた。

     (=‘x‘=)<読んでくれてありがとうニャー
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