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うちのかわいいかわいい猫 作者:しまうま
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うちのいつでも遊びたい猫

 うちの猫がネズミの人形を運ぼうとしていた。

 口に入れるには少しサイズが大きいのか、なかなか咥えることができない。
 どうにか咥えても、ぽとり。
 すこし歩くと落としてしまう。

 何度も繰り返して、ようやく僕の前まで来ると、

「わかるわよね」

 という顔で見上げてきた。

「わかりますよ……。自分で持ってくるなんて珍しいですね。じゃあ、遊びましょうか」

 僕がネズミにつながった棒を持ち上げる。それだけで、うちの猫は目を輝かせていた。  




 最初のうちは、テンション抑え目。比較的冷静だ。

 ネズミの人形を目で追って、タイミングを見計らっている。
 人形の動きをゆっくりにすると、すかさず走りこんでくる。
 捕まえそうになるぎりぎりのところで、ネズミについた紐を引っ張って逃がしてやる。

 取り逃がすたびに、ぎらぎらと瞳の輝きが増してくる。 

 ネズミをぶらぶら動かして、床に落としてみた。
 飛びついて、叩いて、押さえつける。
 ネズミは動かない。

 くんくんとにおいをかいで、僕を見つめる。
 首をかしげて、

「ネズミ死んじゃったわよ。おかしいわね」

 という表情。
 動かなくなったネズミから、少し離れて観察してみたいようだ。
 警戒しながらも、去っていこうとする。

 うちの猫が背を向けた瞬間、僕がネズミを動かすと、

「ああっ! やっぱり生きてた! ネズミ生きてた!」

 と目を輝かせて飛びついてくる。

 そのうちにテンションが上がって、ネズミを抱きかかえてキックをしたり、べろべろなめまわしたりし始めた。

 こうなるともうネズミを動かす必要はないので、放置することにしている。

 胸のところにネズミを置いて、うちの猫は満足げな表情。
 ふうっ、と息を吐いて、ときどきネズミをぺしぺし叩いたりしていた。
 油断して遠くを見つめて、それから思い出したようにぺろぺろなめたりもする。

 ――よかったですね。ネズミの人形は逃げ出さないですからね……。いくらでも油断できますよ……。

 しばらくして落ち着いてきたようだ。

 ――よく遊びましたね。

 僕が立ち上がった拍子にネズミの人形が動いた。
 するともとどおり。うちの猫のテンションがマックスになる。

 ――もういいでしょう……かなり遊びましたよ……。

 ネズミが動くのを待ち構えているうちの猫の頭をぽんぽんと叩いて、僕は自分の部屋に向かった。




 夜中に物音がした。
 コツン、コツン。
 階段のほうから聞こえているみたいだった。
 物音の主は……当然うちの猫だ。

 ――眠れずにうろうろしているんですか……? 早く寝てくださいよ……。

 そう思って、ベッドのなかで目を閉じる。
 しかし、音はいつまでも続いている。

 仕方なくドアを開けて、

「寝ましょうよ……。何してるんですか」

 と声をかけると、うちの猫が階段の一番下に座っていた。
 そばにネズミの人形が落ちている。

 咥えたまま階段を上がろうとして、口から外れてぽとり。ネズミが床に当たってコツンという音をたてている。
 もう一度挑戦しても、また同じように落としてしまう。

 ネズミの人形には振り回すための紐がつながっている。
 その紐がどこかに引っかかっていて、そのせいで運ぶことができないようだ。

 何度持ち上げても口から外れてしまうネズミの人形を、

「なんで?」

 という顔になって、うちの猫は見つめていた。
 口はネズミを咥えたときの状態。半開きだ。
 そのまま僕のほうへと視線を動かした。

「……そんな顔しないでくださいよ」

 階段を下りながら僕は言った。

「遊び足りなかったんですね……。ちょっと遊んだら寝ますからね。それでいいですよね」

 ふんっふんっと鼻を鳴らして、うちの猫は待ちきれない様子でうろうろしていた。


 真夜中にリビングの電気をつけて、ネズミの人形を振り回して、猫と遊んで。

 ――僕はいったい何をやってるんですか……。

 かたわらでは、うちの猫がネズミが動き出すのを待ち構えていた。
 じっと見つめて、目を輝かせて。
 すぐには眠ってくれそうにはない。

 ――まったく……困った子ですね。

 どうやら、もうしばらくのあいだ、遊んであげないといけないみたいだった。

 

     (=‘x‘=)<読んでくれてありがとうニャー
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