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うちのかわいいかわいい猫 作者:しまうま
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うちの猫の隠れ家

 うちの猫はときどき思いがけないところにいる。

 クローゼットの中やカーテンの陰、ソファーの後ろなんかにじいっと座っている。
 そういうときは隠れているつもりなのか、呼んでも返事をしないことが多い。

 いなくなった!? 帰ってこない!? と家中を探し回って、ようやく見つけると……無言でこちらを見つめるだけ。

「お願いだから、呼んだら返事をしてくださいよ」

 と言っても知らん顔だ。




 あるときは洗濯機の中にいた。
 洋服を放り込もうとして、僕に戦慄が走った。

 ――うちの猫がいる! こんなところに!

「ここに入ったらダメですよ!」

 と言ってもうちの猫は返事をしない。

「いいですか、ここに入っていて、もし僕が気づかずにふたを閉めちゃったら、洗濯されちゃうんですよ! おいそぎコースでびしょびしょになっちゃいますよ!」

 うちの猫は「このひとなに騒いでるのかしら」という顔で、毛づくろいをはじめていた。洗濯槽の中で落ち着いてしまっている。

「本当に危ないんですよ。怪我をするかもしれないし、それに濡れるの嫌でしょう?」

 うちの猫が「何かしら? これ?」という感じで覗き込んでいた湯船の中に足を滑らせたときのことを思い出した。

 水に濡れて慌てふためいて、「ギャワー!」という叫び声と「シャー!」という威嚇の声が入り混じった奇妙な鳴き声をあげて、湯船をガリガリ引っかき、その後助けた僕に怒って、「何でこんなことをするのよ!」というふうに爪を立てたのだった。

 あれはあんまりだった。二度とあんなことにはなってほしくない。


 うちの猫は、大きな音と振動を出す物も大嫌いで、掃除機をかけるといつもいそいで逃げていく。

 それなら今回の洗濯機も苦手なはずなのだけど、動いてない間は安全だと思っているようだ。

 洗濯槽の中に入る危険性が伝わっていないようなので、僕は洗濯機を抱えて、「ゴゴゴゴ!」と言いながら揺らしてみた。うちの猫の嫌いな音と振動だ。
 猫は慌てて飛び出して、「クワー!」と僕を威嚇してから去っていった。

 ――まあ、これでいい。

 と僕は思った。
 洗濯機を使うときは、中をしっかり確認してから使うようにしよう、と心に決めた。




 週末、時間をかけて大掛かりな掃除をして、終わってみると、うちの猫が見あたらなくなっていた。
 まあ、ドタバタやっていたし、掃除機もかけたので、うるさくて外に逃げたのだと思う。

 だが――虫の知らせというやつだろうか。うちの猫が大変なことになっている予感がした。

 掃除をしたときにいろいろなところを開けたり閉めたりした。普段は触らないようなところもだ。そのどこかにうちの猫が入ってしまっているかもしれない。

「どこですかー?」

 声をかけながら家の中を探す。もちろん家の中にいるとは限らない。外にいるのかもしれないけれど、念のためだ。

 まず、危険そうなところから探すことにした。

 ガチャリ、と扉を開く。
 扉の中には丸いお皿。猫の姿はない。
 うちの猫は電子レンジには入っていなかった。

「まあ、そうですよね。いくらなんでもここには入ってないですよね」

 次の扉を開ける。小さな部屋の中にはうちの猫の姿はない。
 いちおう、便座のふたを上げて確認する。見あたらない。
 うちの猫はトイレにもいなかった

「いませんか。ここは水に濡れてしまいますしね」

 床下収納にも、本棚にも、クローゼットにもいなかった。

 続けてたんすや押入れの扉を開いて回っていると、妙なものが見えた気がした。押入れの中だ。だが、布団が積み上げられた押入れには、うちの猫が隠れる隙間はなかったはずだ。

 もう一度開いてみる。
 積み上げられた布団と布団の間に、うちの猫の小さな頭が挟まっていた。体は奥に隠れていて、頭だけ出して、挟まっている状態だ。

「どうやって入って、どうやって挟まったんですか……」

 眠っていたらしい。目を細めたまま顔を僕のほうへ向けた。

「呼んだら返事をしてくださいよ……。ここはダメですよ。下手したら一二ヶ月、開けないかもしれない場所ですよ?」

 そう言いながら、布団の間から前足を探して、つかんでうちの猫を引きずり出すと、「んぶぅ……」というような変な声でつぶやいていた。

 熟睡していたようだ。体の力が抜けてくったりしている。本当に危機感のない猫だ、とあきれてしまった。




 夜、寝ようとしてベッドに入るとうちの猫の頭が見えた。

 ベッドと壁の間には、こぶしひとつ分くらいの隙間がある。その狭い隙間から、うちの猫は頭を突き出していた。

 僕が「えっ?」と思っていると、静かに頭が沈んでいき、完全に見えなくなってしまった。

「……今度はそこに隠れるんですか?」

 返事はない。かわりにゴロゴロとのどを鳴らす音が聞こえてきた。どうやらお気に召したらしい。

「そこは別にいいんですけど……」

 と僕は立ち上がってベッドに手をかけた。こぶしひとつ分は、さすがに狭い。うちの猫は普通の猫よりもちょっと体が小さいけれど、それでも窮屈だ。

 思い切り引っ張ると、ベッドが少しずれた。これでこぶし二つ分くらいにはなっただろう。床に傷がつくのは、気にしない。

「それじゃあ、おやすみなさい!」

 部屋の電気を消した。隠れているつもりだろうから、撫で回すのは我慢した。
 暗くなった部屋で、しばらくの間ゴロゴロという音が聞こえていた。

     (=‘x‘=)<読んでくれてありがとうニャー
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