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探し果て

作者:キュウ
 夜の町中。吹き荒ぶ刃風に身をやつした一人の少年が、止められた足を震わしながら立ち尽くしていた。
 “彼”が居なくなってからというもの、少年は毎晩一睡も取らずに“彼”を探し回っていた。どこに居るかなんてまるで分からない。居なくなった訳も分からない。思い返してみてもいつでも一緒だったのに、どうして急に姿を消したのか。少年の心においては疑問や不安、縦横十文字に飛び交う寂寥感が意識の中心で渦巻き続けていた。
 少年の歩く路地を照らすのは、ほんのり霧のように白い街灯のみだった。空を見上げても何も見えない。厚い雲に隠された月の光は、どんなに手を伸ばそうと届かない。いや、手を伸ばすべき所が判然としないのだから、届くはずもなかった。
 真っ暗な世界をわずかな白が照らし、少年の歩く路は、色を失った灰色だった。疾駆するような砂埃が目先をかすめて通り、どこか遠くで鳴り響くサイレンが耳を脅えさせた。ここが色を取り戻すのはいつになるのだろう。そんな時は来るのだろうか。
 黒い外套のポッケに入れていたしわがれの手を出す。瞬間、凍り付くようにひんやりとして彼は顔が歪めた。その震える手を見ると、ところどころ皮が剥けておどろおどろしく、失わないはずの色を失って指先まで真っ白く、まるで死人のそれを見ているようである。少年の顔は募る恐怖に余計に歪み、歯の根の合わないままに瞳もぶらつかせ、やがて少年はサッと手をポッケに戻した。たったこれだけのことに、妙に必死になってしまっていた。
 そしてまた、ゆったりと歩き出した。
 既に脚は限界寸前だった。前に一歩出す度に脹脛はキュウと締められたように痛み、腿はずっしり重たく足かせのように姿無く身体に巻き付かれ、時折ガクンと崩れ落ちそうになってしまう。
 そんな時彼は、“彼”のことを思い浮かべたものだった。それだけで、想いにもかけない限界へ没義道に達するのを阻み、それを手繰り寄せては引き延ばし、手繰り寄せては突き放した。
 オォン!
 不意に、遠くからその声が聞こえた。少年は激しく雷に打たれたように衝撃し、突如脇目も振らずに駆けだして声のした方を目指した。さっきまで痛んでいた脚にもどういうわけか力が湧いてきた。……似ていたのだ。その声は“彼”の声にひどくそっくりだったのだ。しばらく聴いていなかったのに、耳に馴染んだその感覚はまだいくらか残っていた。そんな思いにわずか高揚を覚える。
 辿り着いたのは空き地だった。一面に雑草が生え、「私有地」と書かれた看板が立てられているのが正面に据えられ他の侵入を強く拒んでいた。
 少年が視線を下した先、看板の真下にはみすぼらしいすすだらけの段ボール箱が在り、その中には一匹の犬が居た。
 少年はガックリとして肩を落とし、その犬に弱々しい足取りで歩み寄った。どうやらさっきの声もこの犬だったようだ。
「お前……捨てられたのかい」
 そう呟いて頭を撫でる。段ボール箱には「拾ってください」の一言。……まったく、こんな無責任がどうして赦されようか。その犬の表情は笑っているようだが、どことなく寂しさをも覚えさせた。
 不意にいくらかの景色が頭をよぎった。その姿は、以前の少年のようだった。親や周囲に放られた少年。遠くから同じ年頃の子供達を眺めて常に羨望の眼差しを送り、反対に見つめ返されれば訳も無く惨めな気持ちになり、顔を背けていかにも平静を装って立ち去っていた。
 そんな彼を救ったのが“彼”だった。彼に寄り添う唯一の味方と成り、そのさもしい容姿など意に介さず、彼の勇気そのものとして、ずっと一緒だった。「……一緒だったのに」
 ふと、看板の後ろに目が移った。
「う……、あ……」
 そこには、無残にも矩形に曲がった首を力無く冷たい地面へ垂らし、全身を赤黒く染めて街灯の光を不味に反射している“彼”が、グッタリと倒れていた。何があったか、容易に想像できた。……撥ねた者は、そのまま怖くなってここに捨てたのだろうか。
 “彼”を探し続けてはや半年。結局それ以来、少年の歩がまた動くことはなかった。
 ――果たして、“彼”と少年が再び逢うすべは、在るのだろうか……。
このお話に関連してぜひ『サンタのオクリモノ』を読んでください。
彼と”彼”の結末は、このままで流れてしまうのか。
それはまた後日ということで♪

HP(→http://kyunote.blog.fc2.com/)にて
コメントや編集後記、ほかのお話のまとめも掲載しておりますので
ぜひこちらにもどうぞ

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