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夢の外の真世界
作:氷乃涙



黒髪黒眼の来訪者〜其の五


「何色?」
 目を輝かせながらイライザはアキラに問いかけた。
「白ですけど……なんでわかったんです?」
 問いかけてきたイライザにアキラは問い返した。
 何色と聞いてきた時点でイライザが光の色を認識できていないのは理解できたのだが、なぜ体が光ったことに気付いたのかアキラには解らなかったからだ。
「えっとねー、さっきまでの君に魔力は感じ無かったけど、今の君からは魔力を感じ取れるからかな」
 イライザは軽く流しながら答え、さらに続けた。
「だけど……白? 黒髪黒眼だけでも十分珍しいのに、魔法の属性まで珍しいってすごいね。せっかく君が魔法を使えるようになったら、色々教えてあげようと思ってたのにこれじゃ計画が台無しさ」
 苦笑するイライザを見て、アキラは疑問を抱えた。
 イライザが言っていた属性は火・水・風・雷・大地の五属性であり、そのどれかに属するというものが先程の説明だったのだが、その話の中に出てこなかった色をしていたと言っているにもかかわらずイライザはあまりに冷静だった。
「珍しい? さっき説明された色の中に、白なんて無かったように思うんですけど」
 疑いの眼差しで見つめるアキラにイライザは答えた。
「魔法を使える人の中で、十万人に一人って言われてる属性の説明なんか普通するかい? しないよね? だから、あたしもしなかったのさ」
「そうなんですか? じゃあ、白色の属性って何なんです?」
 当たり前の質問をしたアキラは、次のイライザの発言で激しく困惑した。
 内心では、イライザの説明を聞いたときに風か雷の属性がいいと安易に考えていたのだが、イライザが言った属性は予想すらしておらず、そんなものがあると考えもしなかった。
 そして、イライザによれば五属性は各五大貴族によって研究が進められ、もっとも効率的な訓練方法が確立されているのだが、その属性に限っては研究対象が乏しいために、その属性を使えるものに教わるのが一番確実だという。

「それじゃ、自分でなんとかするしかないってことですか」
 肩を落としながらアキラは深くため息をついた。
 十万人に一人が都合よくいるわけが無い。そんな当たり前の結論から言った言葉だったのだが、イライザが意外な名前を出した。
「エレンに頼めばいいのさ! 君と同じ属性だよ」
 アキラは目を点にし口を大きく開けた。

 ――今この人は何と言った? エレンさんが俺と同じ? この属性は十万人に一人のはずだろ? どう考えても都合が良すぎる。
 この安易なシナリオを考えたのは誰だ!? ……お前か? ――

「変な顔して固まってないでさ、とりあえずエレンに頼んできたら? 今ならお嬢の所に居るはずだから」
「お嬢?」
 それに該当する人物がわからず頭を抱え悩んでいると「レイラだよ! レ・イ・ラ! あいつ呼び捨てにすると、すぐに怒ってくるのさ。お嬢様って柄でもないんだから、あたしは呼び捨てでいいと思うんだけどね」
 イライザは、仮にもフォルネウス城の王女であるレイラを呼び捨てにしただけでなく、あいつ呼ばわりし、まるで自分の方が偉いとでも言わんばかりに言った。
「だいたい――」
 イライザの怒りに似た不満が加速的に上昇していくのを感じたアキラは、イライザに一礼すると逃げるように研究室を去った。

「ちょっと! 人の話は最後まで……」
 早足で去っていくアキラを、玩具を取り上げられた子供のような顔で見ながら、思い出したように独り言を言った。
「あれ? そういや、エレン買い物に行くとか言ってたような……」

 ◇◇◆◆◇◇

 レイラは珍しく寝坊をした。
 昨日の晩アキラと話をしたエレンは、レイラが聞こうと思っていた質問もいくつかしており、その話の内容をレイラに教えていた。
 話を聞いたレイラは朝方まで「あーでもない。こーでもない」と考え込んだ後、エレンに買い物を頼み眠りについたのが三時間ほど前のことである。
 
 レイラが深い眠りについていると、誰かがその部屋の戸を叩いた。
 城の者ならば、レイラからの返事があるまで決して戸を開けることは無い。だが、その人物は返事があるかどうかなど気にもとめず戸を開いた。
 戸を開いた人物は部屋を見渡し、ベッドで眠りにつくレイラを見つけゆっくりと歩み寄った。
「……可愛いな」
 眠っているレイラの姿を見た人物がぽつりと呟くと、その気配に気がついたのかレイラは目を覚ました。
「ん……もう帰ってきましたの?」
 うっすらと瞳をあけ、ぼんやりとした視界に人がいることを確認したレイラは、再び目を閉じその人物に背を向けるように寝返りを打った。
「あと一時間だけ……」
 レイラは、ぼんやりとした視界の中で捉えた人物をエレンだと思い込み再び眠りにつこうとした。
「いつまで寝ぼけてるんだお前は? いい加減起きろ! 王女様ってのはそんなに暇なのか?」
 突然降りかかってきた男の声に驚いたレイラは完全に目を覚まし、ぶつぶつ言うや左手でキルトを握り締め、キルトで身を隠しながら勢いよく振り返ると、どこから出したか解らない蒼白く輝く剣が男の首筋に当てられていた。
 男は予期せぬ出来事に腰を抜かし砕けるように座り込んだ。
「な、何すんだよお前!」
 男は怒鳴り声をあげた。
「何をする?」
 レイラは不敵な笑み見せた。
「それは、私のセリフですわよ! レディの部屋に断わりも得ずに入ってくるとは、どういう神経をしておられるのかしら!? いえ、そんなことはこの際どうでもいいですわ。あなた、私の寝顔を見られたのですわよね?」
 怒り心頭のはずのレイラは、不気味に微笑みながら目の前で腰を抜かしているアキラに問い尋ねた。
「あ? 可愛らしい寝顔してたぞ? それがどうした! てか、早くこの物騒な物をどけてくれ」
 アキラの答えを聞くと、レイラは思いつめた表情をしながら言い放った。
「そうですの……なら仕方ありませんわね。いくらあなたが未知の情報を握っているとはいえ、このまま生かしておくわけにはいきません!」
 直後、レイラは右手に握っていた剣をアキラに向かって大きく振りかざした。







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