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クウガ戦記
作:zero8



第七話 憎しみの連鎖《後編》


 空を無数に飛びう砲弾の嵐。装甲を船体を砲門を人を命を破壊し、蹂躙じゅうりんし、焼き尽くし、そしてまた破壊する。この血で染められた戦場の中をどの戦闘船よりも早く駆け抜けたのは、ザンジバルでもゼピュロスでもましてや修一のコンシュレットでもない。
ドンッ!!!エンジン部分が爆発し、また一機沈んでいく。その機を撃墜したのは砲門から白い煙を立ち上らせる、十字の蒼いラインが特徴の戦闘船メイネルであった。蒼き狼・・・・・かつて敵の船乗りからそう呼ばれ、恐れられたメイネルはその牙を更にとがらせ次の獲物を求め飛んでいく。


修一は今敵の戦闘船二機と戦っていた。敵はどちらもバルナ型である。一度撃墜した事があるとはいえ、互いが無防備である背後を守るように攻めてくるため同じ戦法が効かない。修一の船には決して少ないとは言えないほどの傷を受けていた。それは開戦と同時に両方の司令塔から砲弾が発射され、回避し切れなかったためのものである。このときの砲撃で両国の戦闘船数機が墜ちていった。
「ちっ、これじゃきりが無いな。」
修一の船をしつこく狙う二つの敵船。時折り撃ってくるが、たくみな操作でそれら全ての砲弾をさけ、すでに数十分が過ぎようとしていた。なんとか体勢を立て直したいのだが、コンシュレットには後ろに砲門がないため追い放すことが出来ない。このままでは撃墜されるのも時間の問題である。
「こうなったら・・・」
修一は操縦桿を一気に引き下げると、高度を下げていく。それに続いて敵船二機も追随ついずいするように降りてきた。最高速度で追い追われる三つの機影。厚い雲を突き抜けるとそれまで見えなった岩肌が飛び込んでくる。

「「千夜少尉(修一)っっ!!!」」

修一の後ろで砲撃手の二人が悲鳴を上げる。しかし、修一はそれでもまだ操縦桿を下げ続ける。後ろの敵船はこれ以上は危険と判断したのかスピードをゆるめ始めたというのに。そして、眼前に岩肌が差しせまったとき、初めて修一の操縦桿が動いた。操縦桿を横に思いっきり倒し、同時にブレーキを踏み込む。機体は急ブレーキを掛けながら、その体をほぼ垂直に横に倒し、岩肌との接触を後数センチというところで回避することに成功する。
急激にブレーキをかけたことによりセラスとアリアはその場でよろけてこけるが、修一は微動だにせず山間部を回り込むように飛ぶと敵船からその姿をくらました。

後ろの敵船が見えなくなると、ほっとした様子で体から力を抜く修一。しかし、すぐに表情を引き締めると立ち上がろうとしているセラスとまだこけていたアリアに
「二人とも今から俺の言うことをよく聞いてくれ。」
と船内用スピーカーを使い注意を促す。
「いった〜〜〜い!!!ひどいよ修一っ!後でお仕置きだからねっ!!」
「・・・・・・・・覚えておいて下さいね?」
銘々めいめいの感想を漏らしながら返事をする二人。修一としてはこの状況を振り切るための策だったのだが、いきなりされた二人にとっては命を縮める行為以外にほかならない。今怒っているアリアのお仕置きよりもセラスの怒りを無理やり押さえ込んだ一言の方が恐ろしいのは気のせいではない。絶対に。修一はこの戦闘が終わった後の自分の運命を悲観しながら
「す、すまない。だけど聞いてくれ。俺はこのまま山間部を一周し、バルナ二機と正面からぶつかることにしようと思う。」
「何言ってんのよっ!!そんなことしたらこっちがやられちゃうじゃない!」
アリアが激しく怒鳴る。それはそうだ。バルナ二機と正面衝突なんて狂っているとしか思えない。砲門数だけをみても十対三だ。勝てる見込みなど砂粒よりもありはしない。それを自分の上司とはいえ修一はやろうというのだ、怒鳴るのも仕方が無いだろう。セラスにいたっては沈黙している。
「そうだな、アリアの言う通り普通なら、あっという間に撃墜されるだろう。けど俺はまだここで死ぬわけにはいかないし、セラスやアリアを道連れにしようとも思わない。だから今一度、一度でいい、信じてくれないか、この俺を。頼む!」
修一の懇願こんがんするような声に黙り込むアリア。そしてしばらくの沈黙の後
「・・・・わかりました。私は千夜少尉を信じます。」
「セラス曹長?!」
「アリア。ここは千夜少尉を信じてみませんか?最初の戦闘で本来なら私たちがサポートしなければならないのを、少尉は自分で作戦を立て見事撃墜しました。それも無傷で。なら、今回もなにか作戦があるはずです。そうでしょう?千夜少尉。」
「ああ、成功率は限りなく低いが必ず成功させてみせるさ。」
その自信にあふれた修一の言葉がアリアの心をふるい立たせる。
「わかった。私も修一のことを信じる。」
二人から了解を得られた修一は早速作戦内容を説明する。そのあまりに無茶苦茶な作戦に、あきれて到底無理だと思う二人だが、一度言ったことを今更取り消すことも出来ずどうしようもなかった。


「どこに行ったんだ。おい、そちらからは何か見えるか?」
敵船バルナの操縦者がもう一機の操縦者に無線で問いかける(以下二機のバルナの操縦者をA,Bと表示)。
「いや、こちらからは何も見えない。この山間部だ、探すのは骨が折れるぞ。」
Bがそう答える。
「確かにな。しかしあの速度から回避するとはあのコンシュレットの操縦者、相当腕が立つぞ。気を引き締めてやらなければな。」
「ああ、そうでなくとも俺たち二機の砲撃を一度も食らっていないんだ。奴は危険だ。この場で必ず撃墜しなければ。」
どうやらA、Bにとって修一の見せた技量はただの敵から畏怖いふの対象へと昇格したらしい。無線を切った後も背後を警戒しつつ、捜索を続けるAとB。すると二人の正面から自分たちの探していた敵船が向かってくるではないか。
「おい、奴は一体何を考えているんだ?俺たちの正面から来るなんて自殺行為だぞ。」
Aがそう答える。
「何かの罠なのか?しかし、それにしては何も見えないようだが・・・。」
「俺たちは奴を買いかぶりすぎていたのかもしれん。どうやら、激突寸前のショックで気が変になったんだろう。ならば、俺たちの手であの世で正気に戻させてやるとするか。」
「あ、おい。ちょっと待てっ!」
Bの制止を振り切り、修一の船に近づいて行くA。そんなAに対し慌ててBも後を追う。しかし、敵船の操縦者が気が変になった等とどこにそんな確証があるのだろう?戦場では油断や慢心といったものが即致命傷につながる。いくら無謀に見えても彼らは様子を見るべきだった。そうすれば助かったかもしれないのに。

「砲撃開始っ!」

セラスとアリアが交互に敵船に向けて砕煙弾を砲撃する。
しかし、敵船との距離は砲撃射程からわずかに届いていないし、そもそも高さが合っていない。敵船をというよりも敵船のはるか頭上といった方がいいだろう。何もない空中を砕煙弾は撃ち上げられ、むなしく落下していく。いったい、何の意味があるのだろうか。射程距離にも入っていないのに撃つなどと・・・。
敵船Bもそれを見て本当に敵が狂ったのだと信じられずにはいられなかった。しかし、空中には何もないはずなのに、落下していった砕煙弾が途中で破裂、その黒い煙を吐きながら霧状に飛び散る。しかも一発ではない。修一の船から砲撃音が響くたびに発射される全ての砕煙弾が次々と空中で破裂する。一発、二発、三発・・・。一体何が起きたか分からないAとBが呆然ぼうぜんとする中で、砕煙弾はその黒い煙を破裂するたびに大きくしながら広がっていく・・・。

気づけば、修一の船はすでに黒い煙におおわれて見えなくなっていた。それは同時に敵船であるAとBが修一を見失ったことを示している。ブレーキをかけるのが遅かったために、黒い煙の中に突っ込んでしまったAとBは急いでその煙の中を抜け出そうとするが、なかなか煙がまとわりついて離れない。そして、ようやく煙から解放されたときには正面に修一の船は居なかった。
「くそっ、どこだどこに行った!!」
「馬鹿野郎っ!!レーダーを見てみろっ!!!」
Bの絶望が入り混じった声を聞きながら、すぐさま手元のレーダーを確認するA。そのレーダーには自分らと修一の船の反応が重なっている。それはつまり・・・

「雷鳴弾、発射!」

二発続けて撃たれた雷鳴弾は敵船バルナの真下から心臓部分であるエンジンを正確につらぬいた。打ち込まれた雷鳴弾からは特殊な電磁波が発生し、風石を直撃する。風石が発するエネルギーが阻害そがいされ、AとBが操縦するバルナは徐々にその機動力を失っていく。
このとき初めてAは己のあやまちを知った。うかつに敵に近づくんじゃなかったと。自分たちの敵は狂ってなどいない、むしろ狡猾こうかつに、獲物が罠にはまるのを待っていたのだと。
そこまで考えたとき、AはB同様、絶望が自分の顔をむしばんでいくのを感じていた・・・・・・・・。







「このっ!墜ちろっ!!」
ニーフェは殺気立ちながら、敵船ラモトレックを追っていた。ここまでで、すでにバルナを二機、ラモトレックを一機撃墜している。現在、ザンジバルをゼピュロスと援護に回ったマラカイトが三機で応戦し、ニーフェのメイネルと残る一機のマラカイトがそれぞれラモトレックを相手にしている。
メイネルの前方に配置された四門の砲門から一斉に弾が発射される。しかし、徐々に大きくなる怒りと焦りが操縦をにぶらせ、機体が乱れて思うように当たらない。
「オブライエン中佐!落ち着いて下さい!!仲間をやられたお気持ちは分かりますが、冷静に戦況を見極めなければ私たちに勝機はありません!こんなのいつもの中佐らしくありませんよ!!」
砲撃手の一人がニーフェに冷静になるように呼びかけるが
「黙ってっ!!あなたに何が分かるというの?!私は、私の大切な人たちを奪っていったあいつらが許せないっ!それなのに、それなのにいつも通りでいろって言うの?!!」
スピーカーから聞こえるニーフェの声は怒りと悲しみで濡れていた。
「・・・・ニーフェ中佐、確かに私たち砲撃手はニーフェ中佐の大切な人たちとは面識もありませんし、よく知っている訳でもありません。」
別の砲撃手から返事が返ってくる。
「なら・・・・」
なら、ほっといてよ!敵船に向けて砲弾を撃ちながらそう怒鳴り返そうとしたニーフェ。しかし砲撃音に負けないぐらいの大きな声でそれはさえぎられる。
「でもっ!これだけは言っておきます!!私は、いえ私たち砲撃手はニーフェ中佐、あなたのことを心の底から誰よりも信頼しています。あなたのためならこの命をけたって少しも惜しくなんてありません。中佐の大切な人たちには代えられませんが、苦しいのなら、つらいのなら、痛いのなら、どうかそのお心を私たちにも分けて下さい。私たちが中佐を、ニーフェ中佐を支えてみせます。ですから、どうかっ!!」

「・・・・・わかったわ。」
砲撃手の純真な心が届いたのだろう。ニーフェのけわしかった表情が元に戻り、血走った目からはゆっくりと殺気が抜けていく。しかし、彼女の心には復讐という闇が広がっている。この戦いが終わるまでその闇は消えることはないだろう。もしかしたらこの戦争が終わるまで消えないかもしれない。けれど、それでも確かに彼女の心の中に入ってきたものがあった。それは砲撃手達がもたらした信頼という名の光。その光は強く輝き、彼女が失った存在理由を再び照らす道しるべ。なら、今はそれにすがれば良い。いつか、自分が死んでいった大切な人たちの前で胸を張れるそのときが来るまで・・・・。

「ザンジバル!撃墜!!!!」

援護に回っていた別のマラカイトから無線連絡が入る。見れば、敵の司令塔であるザンジバルがその要塞とも呼べる機体を傾けながら墜ちていく。その姿に味方の誰もが見とれていた。戦いは終わったと思い気が抜けていたのかもしれない。マラカイトを撃ち破ったラモトレックが最後の一矢をむくいるべく、メイネルに真上から降下してくるのを気づいたものはいなかった・・・・・。
そして、砲撃音が鳴り響き発射された敵の砲弾がメイネルに向けられる。その直線状にあるのは操縦席に座るニーフェ。

「ニーフェ中佐ああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

誰もが気づいたがもう遅い。ニーフェも回避行動をとろうとするが避け切れないことは分かっていた。
(私は、ここで終わりなの?まだ、あなた達の仇を討てていないのに。ごめんなさい、みんな・・・・・・)
絶望が、幾多いくたの者を蝕んでいった絶望がニーフェの顔にも襲い掛かる。

















その時だった。

















「お前は俺の命に代えても絶対守ってみせる!!!!!!」
















その力強く、全ての絶望を振り払うような声が聞こえてきたのは。












ニーフェに向けられた死の砲弾が途中で破裂、砕けながら空中に飛び散った。そしてはるか向こうに見えたのはさっそうと現れた一機のコンシュレット・・・・。
そしてそのコンシュレットを操るのは、この世界に落ちてきた異星人。ニーフェを大切な人だと、守ってくれると言ってくれた人。その名は・・・・・千夜修一。




「セラス!アリア!」
修一が声を上げる。三門の砲門から火が吹き立て、残る一機の敵船ラモトレックに砲弾が突き刺さる。手傷を負っていたラモトレックはその砲弾により断末魔の煙をあげながら、墜ちていった。


作者:やっとおわりましたよ。集団戦。いや〜、長かった。一話で終わりませんでしたよ。
修一:それは作者の努力不足だろ。
如月:でも、ニーフェ中佐がこの回で立ち直ってくれて本当に良かったです。
作者:ええ、そうですね。まだ、遺恨はあると思いますが、とりあえず危険なところは乗り切ったと思います。
修一:・・・・・・・・・・・
作者:あれ、どうかしました?修一?
修一:俺を無視すんじゃねぇ!!!
作者:だって、ねぇ?
如月:ええ、マスターと言ったら・・・
作者(如月):この女たらし!!!!!
修一:ぐっ、貴様ら今ここで成敗してくれる!!!
作者:この間と一緒ですけど、如月?
如月:ええ、逃げましょう。
作者と如月は逃げ出した。(某RPG風)
修一:まてや〜!!!











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