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ユキウサギ
作:寿々


ゆっくりと、音も無く、また 尸魂界ソウル・ソサエティに朝がきた。
朝と一緒に、雪がちらちら降ってくる。

「・・・・雪、か」
太陽が静かに昇るその横で、日番谷冬獅郎もまた、静かに朝を迎えた。
「隊長〜、おはようございます〜。う〜寒い〜っ」
眠い目を擦りながら、松本乱菊がふらふらと執務室へ来た。
長い金髪の髪がゆらゆら揺れる。

「日番谷はーん。お土産持ってきたでー」
乱菊の眠気がようやく覚め、いよいよ仕事だというのに、やっかいな奴が来た。
三番隊隊長、市丸ギン。
「何の用だ」
「お土産・・・じゃなくて書類!書類持ってきたで!」
日番谷のどす黒いオーラに負けて、市丸は素直に書類を差し出した。
「・・・分かった。早く帰れ」
「つれないなぁ・・・」
市丸は、そのまま帰らず、乱菊が座っていたソファに座った。
「ふぁあ!?」
いきなりの出来事に、乱菊は驚いておかしな声を上げた。
(ちょっと!帰らなくていいんですか!?うちの隊長怒ったら怖いんですよ!)
(だってー帰るん寒いしー。もうちょっとおりたいんやもん)
市丸はけらけらと笑いながら、乱菊が持っている書類に目をやった。
虚退治の命令だった。
「ふぅーん。なぁなぁ日番谷はん。これ、いつ行ったん?」
日番谷は市丸を睨みつけて小声で言った。
「昨日だ。俺は行ってないがな」
その声は、少し悲しそうだった。

(あーあーギンの野郎。隊長を傷つけたわねぇ)
乱菊は、もう一度書類を手に取り直した。

昨日、虚退治に行った十番隊の隊員を一人失ってしまった。
日番谷はその場にいたわけでもないし、隊員の勝手な行動、
という事で日番谷はお咎めを受けなかった。
でも、指示を出したのは自分だ。
自分に一番の責任があった、と日番谷は悔いているのだ。
乱菊は昨日のことを頭の中で回想させながら、日番谷を見た。
市丸と何か言い合っているが、とても悲しそうな目だ。
(隊長、ちっちゃいのになんでも背負いすぎなんですよ・・・・)
「何か言ったか?松本」
日番谷は意外に地獄耳である。
「何にも言ってませんよ」
乱菊も軽いため息をつきながら、天井を見上げた。

「あれ?市丸隊長は?帰ったんですか?」
くるっと周りを見ると、もう市丸はいなかった。
「さっき追い返した」
日番谷は、何か文句あるか?という風に答えた。
十番隊に、静けさが戻った。
(こんな空気じゃ、サボれないよ〜)
乱菊は、一生懸命重い空気に耐えていた。

それを破ったのは、やはり市丸だった。
「日番谷はん!」
ばたばたと廊下を走ってくる音が聞こえる。
「・・・っ」
日番谷の怒りは限界に達していた。
そして、おもいっきり怒ろうとした時・・・・
「見て!」
市丸の大きな手に、小さく兎が乗っていた。
本物じゃなくて、雪で作った兎。
「・・・・俺はこどもじゃねぇ」
「いいから、日番谷はんにあげる」
その冷たい兎を、日番谷の手に押し付けた。
「わっ!つめた・・・」
兎は冷たかったが、それ以上に市丸の手が冷たかった。
きっとこの寒いのに、上着も羽織らずに外へ出たのだろう。
「市丸隊長!いたいた!帰りましょ・・・わっ!」
飛び込んできた吉良イヅルを、乱菊が取り押さえる。
「なっ!何するんですか・・・」
「しーっ!静かに。今イイとこなんだもんっ」
乱菊は笑いながらイヅルを押さえていた。

「どしたん?日番谷はん、やっぱりいらん?」
市丸が日番谷の顔を見下ろすように尋ねた。
その瞬間、日番谷は机の上にあった雪兎を窓から投げ捨てた。
「「「!?」」」
その場に居合わせた、日番谷を除く三人が、驚きの表情を浮べた。
(あー・・・隊長怒っちゃったかぁ)
(ら・・・乱菊サン。この場はいったいどういう状況なんですか・・・?)
乱菊とイヅルがごにょごにょ密談をしているとき
日番谷の大きな怒声が響いた。
「このクソ馬鹿狐!」
よく見ると、日番谷の目は涙目だった。
「この寒いのに外に飛び出して・・・風邪引いたらどうすんだ馬鹿!」
そう文句を言うと、市丸の手をぎゅうっと握った。
温かい手だった。
「日番谷はん・・・泣いてはるん?」
「なっ・・・泣いてねェよ」
日番谷は真っ赤な顔で市丸の手を握り続けた。

(これって・・・めでたしめでたしなんですか?)
(ん〜・・・そうなんじゃない?)
その少し後ろで、乱菊とイヅルがくすっと笑った。

(良かったですね、隊長)


日番谷の顔は、はにかんだ笑顔で飾られていた。

その笑顔を、市丸が笑うまでは。

「あはは!日番谷はんがわろてる!」
「な!文句あるか!?」


直後、市丸の頬に日番谷の平手打ちが直撃した。


めでたし、めでたし・・・


















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