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優しいキス
作:キヨ



第4部


 
 バレンタイン

 「ねえ、美月?」
休み時間、後ろの席の猪飼千里(いかい ちさと)が話しかけてきた。
「なあに?千里ちゃん」
「今週の土曜日バレンタインだけど、美月は彼氏に何をあげるの?」
「あ」
美月は慌てた。忘れてたのだ。

「やっぱり忘れてたんだ、美月」
「うん;」
あはは と、美月は冷や汗をかきながら言った。


・・・。


「どーしよー!?」
「知らないわよ!そんなの!」
美月が勢いよく立ち上がったので千里は後ろに椅子をひいて逃げた。

美月は1人で『あの絶対零度の微笑みで殺されてしまう』とかなんとか言っていたが
千里には理解できなかった。

「とりあえずさ、簡単なのにしちゃえば?」
「うん。そうだね」


ーーー*

ーバレンタイン当日ー

千里は美月に付き合わされ、明のいる大学の門のとこまでついて来ていた。

 「どうしよう・・」
「どうしようって、作ったんでしょ?チョコ」
「うん」
可愛らしく包装されている包みを持ちながら美月は青ざめていた。

「だったら良いじゃない。それで?何を作ったの?」
「トリュフ」
「ふ〜ん?良いじゃないのよ」
千里がそう言うと美月が勢い良く頭を横に振った。

「だって、『明は甘いものが嫌いだからせめてビターにしよう』って
思ってたんだけど・・;」
「忘れてた?」
「うん;;」

2人は無言になった。

ーーー*

 「あの、長瀬先輩」
「何?」
「コレ、受け取ってください!」
1人の女の子が明にチョコを差し出していた。
「悪いけど僕、彼女いるし、しかも甘いのは嫌いなんだ」
そう言うと女の子は「そうですか」と残念そうに言うと走り去った。
最初の内は、
『あまり得意じゃないんだ。ゴメンね』と、
比較的丁寧に断っていた明だったのだが、
あまりの多さに半ばキレかけであった。

「ぉぃおい、長瀬。もったいね〜なぁ、今の子で何人目だよ」
同級の有馬が鞄を肩にかけながら言う。

「そんなのいちいち覚えてないよ」
明はため息まじりに言うと鞄を肩にかけ直した。

「あ〜あ、貰うだけ貰っといたら良かったのによ」
と言うと明は、
「本命の子から貰えればそれで良いよ」とさらりと言ってのけた。

 「そう言えば、さっきから門のとこでお前の彼女が待ってるぜ?」
有馬が窓の外を指差しながら言った。
「え?」
明は窓の外を見た。
雪が降っている中で美月が門のとこで1人立っていた。

「早く行ってやれよ」
「分かってる」

ーーー*

「(遅いな〜、明)」
千里は既に帰ってしまい、美月はたった1人で雪の中、明を待っていた。

「美月!」
明が美月に走り寄った。

「ごめん。待たせちゃったみたいだね」
「ううん、そんなことないよ」
美月は笑顔で言った。

「明、コレ・・」
美月が顔を赤くしながら言うと明は「ありがとう」と微笑んだ。

「実はね?明」
「ん?」
「そのチョコ、ビターにするの忘れてたの」


・・・。


「別に良いよ?」
明はさらりと言ってしまう。
「え?」
「だって、美月が心込めて作ってくれたんだろ?」
そう言うと美月は控えめに頷いた。

「だいたい、僕は美月が心込めて作ってくれたモノにいちいちケチなんかつけないし、
今までだって無かっただろ?」
明は微笑みながら美月の肩に積もってきている雪をはらった。
  そして、

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突然のことに美月は顔を赤くし、

「お返し、期待しといてね」
明は意地悪っぽく笑った。
                                   fin












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