序章
序章
デリア歴196年。
この地、フラウテリア大陸はその各地に戦乱の火種を抱えている状態にあった。
この大陸は半世紀前に、この時群雄割拠の時代の中で一際輝きを見せていた『フランク=リヌス』の圧倒的軍事力と並ぶ者なき仁徳をもってこの地を統一し、リヌス帝国を起こし、現在まで統治している。
しかし、建国より半世紀の年月を経た結果、当初の信念は失われ、幼少の現皇帝とそれに群がり利用せんとする奸臣の相次ぐ政争によって、かつては大陸一の発展を見せていた帝都ホーリーゲイトと周辺領国は、民の嘆きを含んだ完全なる腐敗の道を歩んでいた。
中央の乱れはやがて地方の統制を欠いていき、各地で野心、信念を抱いてた諸侯が個々に帝国打倒の契機を窺っていた。
そんな状態が続き……。
デリア歴197年、国の小さな綻びが、ついに大陸に表面的な事件とし表れた。
ホーリーゲイトより、西方に位置する商業国カラルに赴任していた太守、ジルド=エラメントが帝国討伐の兵を挙げ、近隣帝国領三国に侵攻、そのことごとくを陥落させ、帝国の勅令なしに王位に就き、エラメント王国を興した。
このジルドの蜂起に呼応する形で、各地で挙兵の狼煙が相次いで上がる。
大陸北部に位置し、建国以来、帝国に臣従していた騎馬民族国ヌーカスが蜂起し、旧所領国攻め落とした上で独立を宣言。南部では、帝国領エラーブスに仕官し、かねてより野心家として知られていたドルト=ゼルクが謀反を起こし、太守を殺害、同志数名と共に同国を占領した。
この反逆を鎮圧すべく、帝都より騎士団長キャスバル=ジルモントが派遣されたが、早くから帝国を見限っていたキャスバルは出陣と偽り、呼応した東南帝国領三国と共に帝国に反旗を翻し、ミリアルド連邦を起こした。
各地で戦乱の炎が上がる中、西南では、初代皇帝フランク=リヌスと同じ志を持ち、共に大陸統一向けて戦い、リヌス建国に大いに貢献した小国アルテイルがあった。アルテイルでは、先主ヨガン=アルテイルが若くして死去し、一人息子にして、将来を有望視されていたシュン=アルテイルが若干十七歳で跡を継ぐことになっていた。
シュン=アルテイルは当初、従来通り帝国臣従の方針を示していたが、エラメント軍のアルテイル侵攻時に、帝国はアルテイルからの援軍要請を黙殺、アルテイルは一時危機的状況に陥ったが、有能な家臣の奮戦に加え、シュン自ら陣頭に立ち、応戦したため、辛くもエラメント軍を撃退することに成功した。
これまで、先代まで続いていた帝国への忠義を何より重んじていたシュンであったが、この度の帝国の対応に加え、家臣の進言もあり、遂に現帝国との決別を決意するに至り、半世紀振りにアルテイル王国の再興を明言、今の帝国体制を打倒し、かつてのリヌス帝国再興を掲げた。このシュンの決断により、帝国は事実上の孤立状態を、自らの手で招く結果となり、その他大小様々な反乱は止むことを知らなかった。
時はデリア歴198年1月……。
こうして、フラウテリア大陸は再び、血で血を洗う戦乱の時代を迎えたのだ。
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