第19話・話が急展開過ぎてかなりテンパる俺の頭!!(誰だっ!俺の頭をじっくり見つめてニヤニヤした奴は!)
若干ムカつく呪文(?)でスライドした岩の奥へと進むと、幅は人一人分くらいの狭い石造りの急勾配の階段(下り)が。
その壁はやはりヒカリ苔がびっしり生えててうっすら明るい。その階段を下りたら、なんかだだっ広い空間へ出た。
「おほ〜っ!なんか罠とかありそうだなぁ〜♪ほら、天井から何か落ちてきて串刺しになるとか、振り子式に鉄球がドオーンっとか♪」
雄叫ぶチンパン。
「お前、本当不吉な事並べすぎ…。」
もう条件反射ですでに俺の警戒レベルはすでにマックスだ…。
「…何だか、遺跡みたいな感じですね…。」
日陰氏は薄暗い空間をぐるりと見渡す。
その時、
「…まさかここまでたどり着いちゃうなんてね…。」
空間の奥から響く声。
「「「セシル!!」」」
俺達は声を揃えてその名を呼ぶ。
「無事でよかった〜!」
日陰氏はセシルに駆け寄ろうとするが、
「ちょいストップ、ひかっち。」
相原は語気を強めて日陰氏の足を止めた。
「何か様子がおかしいぞ…。」
相原は唇の片端を上げて鼻を鳴らして呟く。
「セ、セシル?」
不安げに名前を呼ぶ日陰氏に、
「…見つけたんだよ。」
セシルの発した声は、普段のセシルとは全くの別人のように感じた。
普段から冷静でどこか冷たい雰囲気を纏っているけど、今距離を置き目の前に佇むセシルは、冷たさだけじゃなくて何だか危険な空気−−即ち殺気に似た何かを含んでいるような気がした…。
「み、見つけたって何をだよ…?」
俺の問い掛けにセシルは、
「…復讐の為の鍵。」
そう言うと、セシルは高笑いを響かせた。
「復讐って、誰に?」
相原は睨みを効かせて腕を組み、セシルに問い掛ける。
「もちろんナヤパサ。」
セシルは楽しげに笑う。
「どういう事だよ!」
叫ぶ俺に、
「パパとママが死んだのは、ナヤパサのせいだ…。私がこの島に閉じ込められたのも、みんな………ナヤパサのせいだったんだよ。」
セシルは低く、くぐもった声でつぶやいた。
「セシル…」
日陰さんは胸の前にギュッと右拳を握り、唇を噛み締めた。
「親がナヤパサを守る為に戦争で死んだってのは嘘だったのかよ!!」
「嘘じゃないよ……まあ、ナヤパサが無くなって悲しいってゆうのは大嘘だけど…
…ねえテルアキ、本当は知ってたんでしょ?私が《アル・パサ》の末裔だって事。」
セシルは口元だけで小さく笑い、日陰さんを睨みすえた。
「………。」
俯き言葉を無くす日陰さんに相原は、
「…アルパサって、それ何なのさ。」
かん高い声が空間に反響し響く。
「…《アル・パサ》とは、『神に廃除されし者』つまり、私はナヤパサにとって害悪となる存在。…ね、そうでしょ?テルアキ。」
セシルは平静を装うが、発する言葉の端々からは憎悪の冷たい空気を感じる。
「私達一族は、昔からトリスタ国民から忌み嫌われて迫害されていた。その理由は、私達一族がルギャッサを呼び寄せる悪しき力があるとされていたから。」
「……。」
何も言わずに俯く日陰さんにセシルは話を続ける。
「ツルンゲピアとの戦争だって、兵士としてこの島に送りこまれたのは、《アル・パサ》と忌み嫌われる私達一族数十人だけ。私達一族の大半が死に絶え、戦争の形勢がツルンゲピアに傾くと、トリスタ人はこの地下にある坑道から、この国では見た事もない異国の大量の兵器をこの島に持ち込み、ツルンゲピアに猛攻を仕掛けて、あれよと言う間に国を滅ぼした。そして、あっという間に引き上げた。怖くて山の中に隠れていた私に気付かずに。」
「そんな武力があるなら、なんで始めから使わずに…?」
俺はセシルに問い掛ける。
「《アル・パサ》の一族を根絶やしにする為。むやみに虐殺すれば、平和の地トリスタの神の法典の意志に背く事になるから。けれど神の為の戦争で犠牲になれば、一族が死に耐える事はなんの問題もなく済む話。」
セシルは、一冊のノートをこっちに投げ捨てた。
「…パパの日記だよそれに《アル・パサ》一族は本当は何をしていたか書いてある。」
一言つぶやく。
拾い上げて、それに目を通す日陰さんは、小さく震えていた。
「日陰さん……。」
つぶやく俺に、
「《アル・パサ》の話はトリスタに来て、すぐに聞きました。もうすでに滅んだ一族として…。」
うなだれて首を振り、
「しかし、この島でセシルを見つけて、もしかしたらこの子はと……」
「だから、仲良しの振りをして私を見張ってたんでしょ?」
「……」
「日陰さん…、それ、本当ですか…?」
俺は日陰さんを見つめて答えを問う。
「…私も信じたくはなかったんですよ。人がルギャッサを呼び寄せるなんて。しかし、現実…セシルはルギャッサと共にあの洞窟にいた。セシルはあれがルギャッサだと知っての事だと思っていましたので……。」
つぶやく日陰さんに、
「うん。もちろんルギャッサの幼虫だって知ってたよ。」
セシルはなんの悪びれもなく言い放つ。
「だって、この島は元からルギャッサがタマゴを産む島だから。パパの日記にそう書いてあったでしょ?」
小さく笑い、ため息混じりに鼻を鳴らした。
「それから、ナヤパサの花から出る香りがルギャッサのメスを刺激して産卵の為の交尾を求めてナヤパサ畑に飛来する事−−−その周期が十五年に一度って事を《アル・パサ》一族は、国に内密にこの島へと足を運び、ルギャッサを調査して突き止めたとも日記に書いてあるでしょ?」
睨みを効かせて言い放つセシル。
「日陰さん…、そんな事マジで書いてあるの?」
俺は日陰さんを凝視して反応を伺う。
「…ええ…。そう書き記されています…。」
苦渋の顔で呻くように日陰さんは地面に向かいつぶやいた。
「じゃあ!《アル・パサ》一族は無実の罪をずっとかぶって迫害されてきたって事じゃん!」
相原の怒声が響く。
「迫害を受けてもパパ達は、トリスタを、ナヤパサを守る為に、ルギャッサの襲来の年を、トリスタ人にそれを伝えた…。
でも誰も一族には耳を貸さずに襲来の前の年に一族を戦地に追いやり…そして滅ぼした。
戦争が終わった次の年に予知通り、この島からルギャッサのつがいがナヤパサ畑へと飛びたった。」
セシルの声に怒気がこもる。
「十五年前のナヤパサ災害は、トリスタ人達が全部自分達でまいたものなんだよ。はっ♪ザマアみろだ!そう思ってこの15年この島で生きながらえてきた。
ナヤパサを失ったトリスタ人がどんな顔して、どんな生活をしてるかどうしても知りたくて、この坑道を探してた。そして、とうとう見つけたんだよ、この場所を。」
セシルは楽しそうに笑った。
「でも……テルアキがナヤパサを助けちゃったんだよね……。
状況は何も変わらずにトリスタ人は今も平和に暮らしてる…。私達の事を悪しき過去のモノ(産物)として簡単に片付けて……。」
瞬時に冷たい無表情になると、
「…だからね、私こう考えたの。どうせ《アル・パサ》として嫌われてずっと一人ぼっちでこんな島で生き続けなきゃいけないなら……」
セシルはひと呼吸置いて、
「《アル・パサ》の最後の生き残りとして、私は一族を滅ぼしたナヤパサを根絶やしにしてやる…。そう決めたの!」
セシルはそう叫ぶと、自らの右手を見つめてそれを俺達にかざした。
かざした右手には、小さな麻のような布袋だった。
「何なのさ、それ?」
顔色を変える事なく相原はサラっと尋ねる。
「この島で生まれ育ったルギャッサ三匹分とタマゴの親の《麟紛》だよ。この島に来てから、タマゴを産んで死んだルギャッサのツガイと、三匹羽化したルギャッサを私が殺したの。」
「何だと!?」
こんな10才位の小さなガキみたいな奴が、ルギャッサを三匹も退治した!?
「ルギャッサは成虫になるとね、とても弱いんだよ。頑丈なのは羽化する前の蛹の時だけ。」
再度小さく笑い、
「もしも仮に異国の兵器がナヤパサ畑に配備されてたなら、ルギャッサは畑にたどり着く前に簡単に殺されちゃう…」
セシルは袋を愛おしむように見つめて、
「だから、私はルギャッサを殺して、羽から麟紛をかき集めた。
−−−確実にナヤパサを滅ぼす為に全部で五匹分の麟紛をね。」
加えてセシルはこう告げた。
「最後の一匹はカザネが吹き飛ばしちゃったから、もうこの島のルギャッサは一匹もいなくなっちゃった。
だからね、この麟紛が最初で最後の私の切り札なんだ。そしてこの先の坑道が最後の鍵。」
ふふっと笑んだ。
「よっしゃ!セシル!その復讐っ、私も手伝うからっ!!」
なんの前触れもなく気合いの入った相原の叫びが響く。
「はぁあああああ!!??」
これはもちろん俺の叫び。
「か、かざねちゃんっ!何をいきなりっ!!!」
さすがの日陰さんもびっくり仰天で相原に向かい声を荒げた。
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