第一話・俺とバカとアレの最悪の無人島生活がいきなり幕を開けたとさ…
「人生悔いを残さないようにこれだけはやっときたい!って事、ノブヨシ君にはある?」
数日前に、同棲して1年になる彼女のナミエにそう尋ねられた俺は、某バラエティー番組の影響もあってか即座にこう言った。
「そりゃあ、無人島サバイバル生活かなあ。なんか男のロマンって感じだよなあ~♪」
ああ、……あの時あははっ♪と脳天気に笑った俺のアホ…。
つーか、あの時の俺に告ぐ。マジ100回くらいあの世とこの世を往復しとけ。。。
俺は重苦しいため息を砂の上に落として膝を抱えてうなだれた。
途方に暮れ沈黙の後、顔を上げて細める目で見渡す眼前は、海、海そして海っプラスピーンと真っ直な水平線!&後ろはなんか草ぼーぼーで鬱蒼とした山っぽい景色……。
そして、俺の隣にはなんか、枯れ枝みたいに悲壮感漂うオッサンが一匹。
何?この状況ってか……?
長いぞ。話すとすっげえ長いからな!
心して聞いてくれ…。
遭難しました。
はいっ、終わりっ!!
はぁ?何?短ぇ〜だと……?
もっとしっかり説明しろだ?
はぁ〜ん、あっそう…。あれだね…、あんた達相当な捻くれモンのどSだな?そうやって俺に嫌〜な事思い出させて、心をエグッて楽しんじゃおうってか?
ま・さ・に・他人の不幸大好き人間だなっ!
そうかい…ああそうかい…。
そんなに知りたいか。
そして、俺が地の底深くマントル辺りまで沈んで焼失するのを楽しみたいってワケ−−−−
ガキョッ−−!!
「!!!−−いっっで〜〜〜〜っっ!!」
後頭部を鈍器で打ち付けられました!
衝撃からして、きっと棒キレであろう−−
「え、何っ??俺、原住民に襲われ−−」
「さっきから一人でブツブツキモうるさいっ!」
興奮したチンパンジーのような金切り声の女−−相原風音が俺の後ろで、何故かイチローの真似して棒キレで素振りしちゃってるよ!
はーい、あいつ…明らかに俺を撲殺しようとしてます!
誰か〜、ヘルプみ〜。
「意味不明な腐ったボヤキはやめろ。マジ引くから。」
再度俺の頭を棒キレで振り抜いた。あ、すげえ。なんかひよこと星がでた…。
マジわかんねー…、あいつに俺が殴られる意味が全っ然わかんねーよ。
俺はそのまま真横にふらぁあ〜っと倒れて意識を失った。
◇
意識を失い夢を見る。
あぁ、俺とナミエの愛の巣…。愛しき彼女の笑顔。
−−え、ひざ枕?
あははっ、やめろよ、マジで照れるじゃね〜か…。
…でも嬉しいなぁ。
ナミエの柔らかい膝。
このままキスして、ベッドへ−−−
性格も優しいし、料理もうまい。
ああ、でもその前にナミエの作る超上手いカルボナーラが食べたい。
「腹減った・・・ナミエぇ、カルボナーラ食べたいよぉ〜・・・」
自分の寝言で目が覚める。
頭に人の温もり。
−−あぁ、夢じゃなくて本当に膝枕されてたんだ……。
チンパン−−じゃない、相原にも優しいところはあるんだな…。
ゆっくりと目を開けた正面にちょっと頬を上気させ照れた笑み−−即ちはにかんだオ、オッサンかよっっ!!
俺は即座に飛び上がり、オッサンと数メートル距離を置いた。
「……。」
え?何…?そのしゅんと残念そうな伏せ目がちな悲しい笑みは。
「ぶっ!!あ〜っはっはっはっはっはっ!!」
チンパンが俺を指さしげらげら爆笑・・・
おのれぇ…、チンパン……。お前、眠ったらマジおっぱい揉んでやっからなぁ…、覚えとけやゴラァア!
…声に出して吠えたいところだが我慢する。
命はやっぱり大事にしなきゃいけないからな。
◇
「じゃあ、ちょっとオツムの腐った主人公、佐々木ノブヨシ(二十九歳オス)の為に私達の身に何が起きたかちょっとおさらい。」
チンパン相原はまるで教師にでもなったかのように、細い棒キレを持って砂浜に立つ。
「いやっ!オツム腐ってねーぞコラァア!」
俺の指さしツッコミに、
「黙って聞けよ!ウッスラワカハゲ。」
「うぉっーーっふ!!」
チンパンが俺の心臓を言葉のナイフで躊躇なくひと突き。
−−てかそうゆう事を、普通〜に言っちゃえるお前のデリカシーのなさってよー・・・
鬼畜だな、マジでよ。
「くすっ…♪」
オイコラオッサン、何くすっとか笑っちゃってんだよ!
「そこっ!笑うなら遠慮がちじゃなく堂々と高らかに笑えやっ!」
オッサンを指さしながら、あ…、今自分で笑えやとか言ったくせに俺、めっちゃ傷ついてるぞ。
オッサンはエヘッっと肩を竦めて笑った。全くもって可愛くねーよ。
「気が済んだかね?ワカハゲ君。」
チンパンがいやらしいニヤケ顔で俺を見つめてる。
「……たのむ。話を進めて下さい。」
俺は半ば泣き出しそうな顔で俯いた。
「よろしい。」
勝ち誇ったような笑みで頷くチンパンは、これまでのいきさつを語り出した。
「いいかい?私達は見てのとおりのまんまだが、今遭難してる。」
うん、そこはわかってる。
「とりあえず、今現在の日付と時刻は私の腕時計(衝撃に強い防水タイプ)によると、トリスタ共和国現地時間の十二月二十日、日曜日、午後二時。現在地は勿論わかんないどっかの孤島。」
「十二月二十日?…って事は…」
俺の問い掛けにチンパンは、
「ああ…、トリスタ国立記念空港から小型旅客機が離陸して、海上に墜落してから、丸二日経ってる。」
「…俺、丸二日眠ってたのか……。」
どうりで腹減ってるわけだ。
「この島に流れついたのは残念だけど、お前と私と日陰輝明さんの三人だけ…。」
チンパンはため息を砂浜にひとつ落とした。
…オッサン、日陰輝明って言うんだ。また随分微妙な名前だな…。
オッサン−−もとい日陰さんをチラ見したら、また照れくさそうに笑った。
…あんた、まさか『も〜ほ〜』じゃねーだろうな…?
日陰氏のハニカミを見て、若干夜が不安になった…。
「踵落としっ!」
なんの前触れもなく俺の脳天にいきなりチンパンの踵が振り落とされた−−−。
「いってぇーーーっ!」
頭を抱えて悶絶する俺にチンパンは、
「日陰さんに熱い視線を送ってないで話を聞けやクルァアアッ!」
ガラ悪し・・・
相原風音三十一歳。もちろん独身!!(心の中で声のボリュームをあげてみた)
こんな女が俺の同僚だなんて…悲劇以外の何モノでもない。
そして、こんな女と海外出張先で飛行機事故で無人島生活なんて、本当…天の誰かさんの嫌がらせとしか言いようがねーよな…。
ああ…いっその事、墜落してそのまんま海の藻屑になればよかったかも。
…いやいやいや!
ダメだダメだっ!
俺には心配して帰りをまっててくれる心優しきハニーがいるんだ!!
何としても生き延びて、
日本に帰らなきゃ!!
「とにかく!生き延びて帰る方法をっ!」
俺は立ち上がり決意を固める。
「んじゃあ、まずは食料調達を兼ねて、山の探索へれっつらゴー。」
チンパンは声高らかに山を指さす。
「はい?」
あんたは行かないのかよ…と俺は目で語る。
「か弱きレディーに山歩きなどできるわけないだろうが。」
…何がか弱きだ。バカヤロ…。
「勿論ひかっちと二人で行くんだよ。」
ひ、ひかっちて…なにそのあだ名。
ぬふふっと笑うチンパン…。すげームカつく笑顔だなーこんちくしょー。
「言っとくけど、食料調達するまで帰ってくんなよ。」
はい、なんか今フラグっぽいの立った。。。
「さぁ、逝きましょうか?」
日陰氏…?なんか表現おかしくね?
つーか、はにかむなっ!そして手は繋がんでよしっ!!!
あ、なんかまたフラグが立った気がする・・・
かくして、俺のいきなりサバイバル生活が幕を開けたのであった……。
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