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フラワーショップ ぺこり
作:晴天



エプロンの芍薬


【花は心のお薬です・・ぺこり】

今日のクレヨン看板は、漢方薬の宣伝のようです。
しかも、ぺこりグマは聴診器をしてます。


僕は、昨夜から歯痛に苦しんでいます。右の奥が虫歯になったらしくズキズキして眠れませんでした。  それでもミチは休ませてくれません。
草でも噛んでれば治ると言うのです。

僕は、和美さんに訴えて、やっと歯医者に行けることになりました。


歯医者の待合室で頬を押さえて待っていると、小さな男の子が近づいてきました。

「お兄ちゃん、虫歯?」男の子は僕の顔を覗き込みました。

「そうだよ。痛くて痛くて」僕は大げさに痛がりました。

「歯を磨かないからだね。ちゃんと磨かないと虫歯君が口の中で暴れて虫歯になるって歯医者さんが言ってたよ」そう言って僕に虫歯君のイラスト入りの【歯を磨こう】の本を見せてくれた。
確かに歯磨きは苦手だ。朝は時間がないから、うがい程度。その代わり夜は丹念に磨いてる。その後にお菓子を食べるけど。


僕は、とりあえず治療が終わり帰ろうとすると男の子が、また近づいてきた。まだ順番が来てないのだろうか?

「痛いの治った?」

「治ったよ。今度は、ちゃんと歯磨きをしないとね。君は、まだ終わらないの?」男の子は、僕のしているぺこりグマエプロンに興味があるらしく、エプロンを右や左から眺めながら
「僕は入院してるから、ずっといるんだよ。」そう言いました。

僕の行った歯医者は、総合病院の中にあり、小児科も同じ建物の中にあるのです。



店に戻ると、やさしい和美さんと厳しいミチが待っていてくれました。
僕が男の子の話をするとミチは目を輝かせました。
「私が絵を描いてあげよう。」
ミチはポップ描きから勘違いが始まり自分が才能があると思ってしまったようです。


翌日、僕は、ミチの絵を携えて病院に行きました。
待合室には、昨日の男の子は居ませんでした。
名前も病室も分からない僕は、小児病棟の中を少しウロウロしていると、女の子が話しかけてきました。

「お兄ちゃん。虫歯の人?」僕のぺこりグマエプロンを指差しました。

「え、何で知ってるの?」見知らぬ小さい女の子に虫歯を指摘されたのには驚きました。

女の子は、7歳になるユミコちゃん。男の子は弟で5歳のヒロキくん。
ヒロキくんは、僕が聞いたことのない病気で一年以上も入院しているそうです。
本と絵が大好きでユミコちゃんは毎日、図書館から絵本を借りてきて読んであげてるそうです。
昨日は、大好きな本の話もそっちのけで、ぺこりグマの話をしていたそうです。
この、下手糞な熊の絵が何でそんなに気に入ったのか僕には分かりません。

ヒロキくんは、明日の手術のために今は検査中です。
僕はユミコちゃんにミチ画伯作の絵をヒロキくんに渡してくれるように頼んで帰ってきました。


店に戻って少しすると、ユミコちゃんが来ました。
ヒロキくんが、明日の手術を受けたくないとダダをこねているそうです。
ヒロキくんの手術は、これで2回目です。

困った、ユミコちゃんはぺこりグマのエプロンを貰って来てあげる約束をしたそうです。
すると、ヒロキくんは自分用の小さいエプロンが欲しいと言い出したそうです。
大人用のなら少し在庫があるのですが、さすがに子供用はありません。
ユミコちゃんと僕が困っていると、和美さんが白い子供用エプロンにぺこりグマを描くことを提案してくれました。

そうなると、ミチ画伯の出番です。
今回は、クレヨンから布に描けるペンに筆を持ち替えて力作を完成させました。
ぺこりグマの口からは、「ヒロキくん元気になって花を見にきてね」と描いてあります。

子供用のエプロンを見た店長は、
「ヒロキくんのために私も絵を描くわ。」そう言ってエプロンのポケットに芍薬の花を描きました。
ミチ画伯のとは比べ物にならないぐらいに上手です。店長の思わぬ才能に僕は今回もビックリしました。

「芍薬はギリシャ神話で医薬に関係しているのよ。」店長は言いながら僕の横によって来ました。
僕はお尻を触られないように離れました。

「つれないわね」店長が、そう言ってウインクするのをユミコちゃんは目を丸くして見ていました。


僕とユミコちゃんは、エプロンを持ってヒロキくんの病室に向かいました。
病室のベットの上にはぺこりグマ絵が飾られてあり、ミチの絵も役に立つことに僕は感心しました。

「お姉ちゃん、僕が手術している間はお姉ちゃんがエプロンをしていて。」ヒロキくんは僕から渡されたエプロンを見ながら言いました。

「ヒロキが起きるまでずっとしているからね。」ユミコちゃんはエプロンをしながら言いました。




翌日、僕とミチと店長の3人で小さめの芍薬を持ってお見舞いに行きました。
病室には元気なヒロキくんとユミコちゃん。そして、窓辺にはぺこりグマが乾してありました。
ヒロキくんは、ミチから芍薬の花を受け取ると香りをいっぱいに吸い込んで笑顔になりました。


一ヶ月ほどして、ユミコちゃんとヒロキくんが店に来てくれました。
ヒロキくんは、しっかりとぺこりグマのエプロンをして店の中の花を見ては和美さんに名前を聞いていました。
和美さんは、ひとつひとつ丁寧に説明してあげました。

芍薬の花を見つけると、
「あ、お姉ちゃんがオシッコをつけた花だ」そう楽しそうに叫びました。

ユミコちゃんは、手術が終わったヒロキくんのベットの横で手を握っているうちにエプロンをつけたまま眠ってしまったのです。ずっとヒロキくんを心配してトイレに行くのを忘れたので、おねしょをしてしまたそうです。
だから、病室にぺこりグマのエプロンが乾してあったのです。

ユミコちゃんは、恥ずかしくて顔を真っ赤にしてヒロキくんを叱りました。

「芍薬の紅い花は、妖精が恥ずかしがって紅くなった色が移ったのよ。
イギリスではね。
だから、芍薬の花言葉は 恥らう心 
店の芍薬はユミコちゃんのお陰でもっと紅くなるわね。」

店長がユミコちゃんの頭を撫でながら言いました。

僕は、コイツにも可愛かった頃があったのだろうかと、横にいるミチの大口を開けた笑い顔を見ながら思いました。







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