春風のコオリヤナギ
【本日開催!ぺこりフラワーアレンジメント】
今日のクレヨン看板は、和美さんのフラワーアレンジメントの告知です。
ぺこりグマがピースをしているのは何故?!
和美さんは月に一度、店の奥でフラワーアレンジメントを教えています。
生徒さんは、近所の主婦やOLです。
その都度、募集するのでメンバーは毎回違います。
季節ごとに、テーマを決めて一人でも多くの人に花を楽しんでもらうのが、ぺこりフラワーアレンジメントの狙いです。
そろそろ生徒さんが集まって来ました。
今日の生徒は、近所の賑やかな主婦連5人と初めて来るOLが1人の6人です。
今日のテーマはコオリヤナギという白い枝の柳を使った【春のお祝い】です。
コオリヤナギの枝を春風のように優雅に花瓶の周りを流して行く和風のアレンジです。
賑やかな主婦連は、ちょっと作ると和美さんを呼んで修正をしてもらい、ちょっと作ってお喋りを繰り返しています。
いったい何をしにきているのか分かりません。
OLのお姉さんは、一人で黙々とコオリヤナギとガーベラの形を整えています。
「春一番かしら?」和美さんがOLのお姉さんに話しかけました。
「え?」お姉さんは、何を言われたのか分からず聞き返しました。
「少し、コオリヤナギの風が強すぎるみたいね。」和美さんは、コオリヤナギを修正しながら言いました。
「そうですね。春の穏やかで優しい風がいいですね。」お姉さんは、恥ずかしそう花に目を落としました。
それから数日して、お姉さんが店に来ました。
今日は、会社を辞める同僚に贈る花を買いに来たのです。
「どんな花がいいでしょう?」お姉さんは和美さんに話しかけました。
「マリーゴールドなんてどうかしら?可憐で素敵な花でしょう。バラのように華やかではないけど私は好きよ。」和美さんは数本の黄色い花びらのマリーゴールドを手にとって言いました。
「可愛い花ですね。彼女に似合いそう。」お姉さんは寂しげに言いました。
「親しい同僚の方が居なくなるのは寂しいわよね。」和美さんとお姉さんはマリーゴールドを選びながら話を始めました。
お姉さんの仕事は、大きな銀行の支店で窓口業務をしているそうです。最近は、人員削減で残業が続き大変みたいです。
それでも支店の雰囲気は良く、気持ちよく働けていたそうです。
今までは。
それが、最近になってギクシャクして挨拶さえも刺々しい感じがするそうです。
原因は、新しく来た傲慢な支店長にあるようす。
成績が悪いと、皆に聞こえるように厭味は言う。飲んだ席では、他人の悪口をいう。
女性職員は機械のように扱う。
その上、お世辞を言うヤツには笑顔、意見を言うヤツは飛ばす。
今や、皆の気持ちがバラバラになってしまったそうです。
今日の送別会で辞めていく人は、お姉さんの先輩で教育係りとして面倒をみてくれたそうです。
失敗して泣てる時は、厳しく励まし、何度も辞めようと思った時にも親身になって止めてくれたそうです。
お姉さんは、和美さんの作った花束を持って寂しそうに帰りました。
「マリーゴールドの花言葉は、 悲しい別れ 」似合い過ぎていて嫌ね。
和美さんは、独り言のように言いました。
1ヶ月ほどして、お姉さんがお店に来ました。
もう一度、コオリヤナギのアレンジメントをしたいそうです。
しかし、その日は和美さんがお休みだったのでミチ先生が教えることになりました。
花束に関しては天性の才能を発揮するミチ先生ですが、アレンジメントは・・・・・僕は和美さんの居る日に改めるて来ることを薦めたのですが。
「私のアレンジもなかなか評判いいですよ。」ミチは自信満々にお姉さんを奥に連れて行ってしまいました。
ミチのアレンジが評判なのは、あまりに芸術的過ぎて美しさを誰も理解できない評判です。
まず、花篭に収まることは一度もありません。
だから、お客様に届ける前には、そっと和美さんが手直しをするのです。
もちろん、ミチに気づかれないように。
和美さんの手に掛かると、ミチの超芸術作品も不思議と優美さを持つから不思議です。
ミチは、お姉さんに超芸術的な花篭を作らせました。
前回のが【春風】ならば、目の前にあるのは【台風1号】とでも名付けましょうか?
「なかなか躍動感があって良いですね。」ミチ先生は、腰に手をあてて作品を評価しました。
「そうね。このぐらい自由でも良いわね。なんだか前のより見ていて元気になる気がするわ。」お姉さんも何故か満足気です。
僕には、台風の後に道路に散らばった柳にしか見えないのですが。
「あら、斬新なアレンジね。」店長がシナを作って現れました。
たぶん、自分では柳腰を表現したかったのだと思います。
「私、やっと会社を辞める決心をしたのです。
嫌なところで我慢していても良いことはありませんからね。
今までやりたい事も見つけられなくてグズグズしていたけど、やりたい事を見つけるために辞めるのも良いのかなって思って。
躓いても、失敗しても何度でもやり直せますよね。」
お姉さんは自分に言い聞かせるように、店長に話しかけました。
「コオリヤナギの花言葉のように しなやかな心 があれば何度もやり直せるの。」
店長はアレンジされたコオリヤナギを少し修正しながら言いました。
ビックリするぐらいアレンジされた花篭の表情が明るく変わりました。
僕は、店長の魔法にかかった気分になりボーとしてしまいました。
お尻を触られているのも忘れるほどに。
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