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フラワーショップ ぺこり
作:晴天



祖母の七草


【お疲れ様にぺこりの花を】


ミチ。何度も言うようだけどドリンク剤は売ってないよ。
薬局のおじさんに怒られるよ。



今日は仕事の前に4人揃ってお粥を頂きます。
和美さんが1日遅れの七草カ粥を作ってくれました。

「七草粥は、お正月に疲れた胃を労わるために青菜のお粥でビタミンを取るのよ。
私が子供の頃は、祖母が「七草叩け、七草叩け 唐土の鳥が、日本の土地に、渡らぬ先に、合わせて、バタクサバタクサ」って囃子歌を歌いながらまな板を叩いて作ってくれたの」
和美さんは、囃子歌を歌いながらお粥をお椀に取り分けてくれます。

「その囃子歌は、どんな意味があるんですか?」ミチは、お粥をフーフーしながら和美さんに尋ねました。

「私もよく憶えてないけど」和美さんが、お婆さんから聞いた話を聞かせてくれました。

和美さんの実家は東北の農家で、今でもご両親はお米や野菜を作っているそうです。
子供の頃は、両親と妹、弟に祖父母が一緒に暮らす7人家族で、近所には親戚も多く住んでいたので賑やかなお正月だったそうです。
元日から親戚一同が集まって酒宴が開かれ、二日、三日は近所の人達が年賀に来るそうです。
あまり賑やかなことが好きでなかった和美さんは、祖母の歌う囃子歌を聞くと、やっと静かになるのだと安心したそうです。

「祖母と母が歌いながらお粥を作る台所で私も囃子歌を歌ったわ。
私にとって七草粥を食べる朝が、家族だけで迎える静かなお正月みたいな気がしたの。

前日の夜に七草をまな板の上で叩いておくのが本当らしいのだけど、家では7日の朝に準備をしていたわ。

「七草叩け、七草叩け」囃子歌とトントン、トントン響くまな板を包丁で叩く音は、私の春を待つ音だったのね。」

「キクちゃんは、春の七草を知っている?」店長がお粥の粒を髭に付けながら僕に聞きます。

「えーと、大根ですね」僕は、椀の中を箸でかき回しながら言いました。

「バーカ。セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザときてスズナ、スズシロ♪」ミチが歌うように教えてくれます。

「大根も間違いじゃないわよ。大根をスズシロって言うの。ズズナはかぶのこと。
それ以外は、普通は食べない野の草ね」和美さんが店の奥から七草篭という7種類の草が入った篭を持ってきて説明してくれました。

「店に出ていたのに気づかなかったか、バカ者め」ミチは今年も僕をイジメることに快感を覚えているようです。

だんだん、僕も心地よくなっている気がして怖い。

決して、僕はその手のDVDは借りません。


「祖母と最後に七草粥を作った時に、囃子歌の意味を教えてもらったの。

『唐土の鳥』というのは唐の国、今で言う中国の鳥が
『日本の土地に渡らぬ先に』は、日本の来て作物を荒らす前って言う意味なの。
だからトントンとまな板を叩いて追い払うのよ。
豊作を願う囃子歌だったのね」和美さんは、もう一度囃子歌を歌いながら机を指でトントンと叩きました。




花言葉

セリ(清廉潔白)
ナズナ(あなたに、すべてを捧げます)
ゴギョウ(温かい気持ち)
ハコベラ(愛らしい)
ホトケノザ(調和)
スズナ(助け)
スズシロ(潔白)

来年に備えて部屋で勉強した僕は、幼かった和美さんと祖母が古い台所に立っている姿を想像しながら囃子歌を歌ってみました。

「七草叩け、七草叩け 唐土の鳥が、日本の土地に、渡らぬ先に、合わせて、バタクサバタクサ」机代わりのダンボール箱をトントンと叩きながら。

僕にお嫁さんが来たら、この歌を教えてあげよう。
なんでミチの顔が浮かんだのだろう?
電気を消して寝ます。







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