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フラワーショップ ぺこり
作:晴天



砂糖菓子のデージー


【フラワーショップ ぺこりの花は思い
                 出いっぱい】


今日のポップは長すぎたらしく中途半端な2段書きです。
それって、どうよ?
しかし、そんなことを気にしないのが天才少女ミチ!


今日は店長が、おかしな物を仕入れて来ました。
花の形をした砂糖菓子です。
しかも大量に。
短いプラスチックの丸い棒の天辺に
「青いチューリップ」や
「黄色いひまわり」そして
「赤いデージー」。
どうやら、花を買いに来た子供のおまけに上げるつもりのようです。
活き活きと砂糖菓子を並べる店長には申し訳ないのですが、今時の子供が砂糖菓子を喜ぶとは思えません。
思えませんとも。


喜ばれました。
お母さんと、仏壇に飾る菊を買いに来た男の子に、ひまわりの砂糖菓子を渡したらチュパチュパと食べて喜んでいます。
甘い甘い、どこまでも甘いだけの砂糖菓子。
でも、男の子以上に喜んだのが店長です。
「砂糖菓子は美味しいのよ。お砂糖の味しかしないのが美味しいの。」そう言ってニヤっと笑いました。


それを見ていたミチは、デージーの砂糖菓子を3本とカスミ草で長さ5センチぐらいの小さな花束を作りました。
その花束を、デージーの鉢の横においてプライス・アップです。
これって、天才?

ミチの作った砂糖菓子付きのデージーは評判が良く、大量に仕入れたはずの砂糖菓子の中でデージーだけが無くなってしまいました。

夕方近くに小さい女の子がお母さんと一緒に来たときには、売り切れてしまっていました。

女の子はぺこりの前を通りがかった時に見た砂糖菓子の花束がとても気に入り、お母さんに、おねだりをして買いに来たそうです。

「ひまわりとチューリップで花束を作ってあげようか?」残念そうにしている女の子にミチが言いました。
「デイジーがいい。デージーの砂糖菓子がいい。」女の子は、そう言って首を横に振りました。
「明日になったら、また作ってあげるから。」ミチは女の子の言いました。

そして、耳元で小さな声で、こう付け足しました。

「特別に大きいのを作ってあげるよ。」

女の子は、ニッコリ笑ってミチの耳元で言いました。
「ほんと?」

ミチは、大きく頷きました。

女の子が帰った後に、ミチが奥に居た店長に
「明日もテージーを仕入れてくるように!」偉そうに命令しました。

店長は、ひまわりの砂糖菓子食べながら
「あれは、店じまいのお菓子問屋から仕入れたから、もうないわよ」髭づらに砂糖をベタベタつけたまま店長はオカマ言葉で言いました。

「オーノー」ミチが頭を抱えてその場に、しゃがみ込みました。

それから、ミチの砂糖菓子作り大作戦の開始です。ミチ隊長の指令のもと、僕と店長は砂糖を溶かす作業に取り掛かります。

深夜になって完成したデージーの砂糖菓子は、どうしても花には見えません。

僕には鼻血を拭いて丸めたテイッシュに見えてしかたありません。

さすがのミチも頭を抱えてしまいました。

「ふふふ。」ミチは突然、不敵な笑いを浮かべ和菓子屋の若旦那に電話をしまいた。
「もしもし、若旦那?寝てる場合じゃないんだよ!今すぐデージーの砂糖菓子を作って持ってきて。」

「・・・・・・」

「あー誰のお陰で今の幸せが手に入ったと思ってんの?明日の朝が早いだー?
アンタにだけ、お天道様が早く登る訳ないだろう!
四の五の言ってる間に作って持ってきな」
ミチは、言い終わると携帯を切りました。

和菓子屋の若旦那は、この界隈のNO.1ホステスの美津子さんに、恋わずらいをしていましました。
その仲を偶然にも取り持つたのが、ミチなのです。
(詳しくは、
「よ、若旦那!ピンポン菊です。」を読んで下さいね。)

その事を恩着せがましく盾にとって無理難題を言う、この女子高生は花屋よりも他の商売のほうが向いている気がするのですが。

真夜中に、律儀で腕の良い和菓子職人の若旦那は、店長が仕入れてきたのとは比べ物にならない精巧で繊細なデージーの砂糖菓子を持ってきました。

「ミチちゃん、これでいいかい?」若旦那は眠そうな目でミチに聞きました。

「まあ、こんなこんなもんか?
で、美津子さんとは、うまくいってんの?」ミチは横柄に言いました。

「おかげさまで、先日もね・・。」若旦那がノロケ話を始めようとすると、すかさずミチが話を切りました。

「ありがとう、明日は早いんだから帰ったほうがいいよ。」そう言って追い返して、しまいました。

僕と店長は唖然として声もなくトボトボ帰る若旦那の後ろ姿に、小さく手を振りました。



**********


翌日、デージーを買いに来た女の子は、大喜びです。
本物そっくりの砂糖菓子の花束と、デージーの鉢を持ってニコニコと帰って行きました。

女の子が帰った後でお母さんがクッキーを焼いて、お礼に持ってきてくれました。
クッキーもデージーの形をしています。

女の子は、デージーのクッキーとデージーの砂糖菓子を持ってお友達のお誕生会に行ったそうです。
お友達は大好きな男の子で、どうやら初恋の相手のようです。

去年のお誕生会の時は、お腹をこわしていて途中で帰って来てしまったのだそうです。
その事を、一年間ずっと気にしていたらしく今年は、お腹をこわさないように大好きなアイスもずっと我慢していたのです。

女の子にとってデージーは、その男の子との大切な思い出の花なのです。

去年、男の子と一緒に花壇の花に水をあげるている時に咲いていたのがデージーだったのです。

男の子は、こっそりデージーを1本抜いて女の子に、くれたそうです。

女の子は、デージーを大切に教科書に挟んで押し花を作ったそうです。
お母さんは、女の子の初恋の話を僕とミチに言った後に恥ずかしそうに、こんな話もしてくれました。

「デージーは、私にとっても初恋の花なんですよ。
昔、父の転勤で知らない街に引っ越しばかりの頃に母と二人で良くデパートに買い物に行ったんです。
母は買い物が終わると必ず、ばら売りのお菓子売り場に連れて行ってくれてお菓子を買ってくれたんです。私が好きだったのは、甘い甘い砂糖菓子。色んな花の形をした砂糖菓子の中でもデージーの砂糖菓子が一番好きだったんです。

ある時、デパートの中で母と、はぐれてしまった私はウロウロと母を探してデパートの中をベソをかきながら歩き回ったの。

そして、疲れてお菓子売り場の前にしゃがみこんで泣いていると、男の子が声をかけてくれたの。

「どうしたの?泣いちゃだめだよ。」そう言って砂糖菓子を私にくれたの。
私の大好きなデージーの砂糖菓子。

私は、その男の子がすぐに好きになっちゃたの。砂糖菓子につられたのかしらね。」お母さんは、笑いながら言いました。

「で?その男の子とはどうしたんですか?」僕は、お母さんの初恋話の先を聞きたくて言いました。

「その男の子とは、それっきり。
でもね、その話を大人になってから恋人に話したの。
私の初恋話としてね。

そうしたら、何日かして恋人はデージーの花と砂糖菓子の入った花篭を持って来てくれたのよ。」
「で、その人とは今?」僕はついでに聞いてみました。

「その人が言った通りになったわ。」
お母さんは、鼻の穴を少し広げて自慢気に言いました。

「と、いいますと?」僕は、話の先をせかしました。

「今度のデージーは、最後の恋です。って主人が言ったの」
お母さんは子供のように恥ずかしそうに言いました。

「明日の朝は早いので、早く帰って下さい。」僕は笑いながらお母さんに手を振りました。
「ごめんなさい。」お母さんは、大笑いしながらクッキーを置いて帰って行きました。

「デージーの花言葉は、
【乙女の無邪気】
ですよ。」
僕は、恥ずかしそうに帰っていくお母さんに、わざと大きな声で言いました。







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