フラワーショップ ぺこり(18/51)縦書き表示RDF


フラワーショップ ぺこり
作:晴天



クリスマスリース・カーネーション


【フラワーショプぺこりで素敵な一日を!】

今回も、前回の続きでフラワーアレンジメントに来た人のお話です。したがって、ポップもかわりません。あしからず。

今日は、月に一度のフラワーアレンジメント教室です。
クリスマスが近いので、クリスマス・リースを作ります。

生徒さんは、近くの会社に勤めるOLの良子さん。
そして、今年結婚した真由美さん。
それから、双子の女子大生の歩さんと薫さん。
もうひとり、ご主人が単身赴任中の知世さん。







双子の姉妹、歩ちゃんと薫ちゃんは、二人は、カーネーションを使ったリースを作り始めました。歩ちゃんは、赤で華やかに、薫ちゃんは、白でシックに。


二人は、お父さんは幼稚園の園長さんです。
お母さんは、二人が小さい時に病気でなくなりました。
子供の頃の二人は、幼稚園が終わると幼稚園バスに乗って一周回ってまた、幼稚園に戻ります。
途中で降りるお友達にてを振って、迎えに来ているお母さんに手を振って。
それから、二人はお父さんの園長さんの仕事が終わるまで幼稚園で遊びます。
小学校に入ってからも、学校が終わると幼稚園に戻ります。
中学生、高校生になってからも学校が終わると幼稚園に手伝いに行きました。
運動会の準備、お遊戯会の準備、お泊り会は一緒に泊まります。
だから、クリスマスは毎年幼稚園で園児達と遊びました。
そんなクリスマスも今年で最後です。
二人の幼稚園は、春の卒園式が終わったら廃園になってしまうのです。
古いままの園舎と昔から変わらないお遊びを続ける二人の幼稚園が人気が無くなったのと、園長が体調を悪くしたのが理由です。
園長は、古くなった園舎を何度も修理して大切に使い冷房も暖房も入れませんでした。
冬は寒く、夏は暑い。そんな普通のことを子供たちに感じて欲しかったのです。
そして、英語を教えたり算数の難しいのを教えることもしませんでした。
子供たちには、思い切り遊んで欲しかったのです。
何も特別なことがない代わりに園庭は広く、二人がかけまわるには十分すぎるぐらいだったそうです。

でも、時代はそんなにゆっくりとは進んでくれませんでした。日本の夏は、簾でしのぐには暑くなり過ぎ幼児教育の情報は嫌でも耳に入れさせられます。
だから、ふたりの幼稚園に入る子供たちが減ってしまうののも仕方がないことなのです。


最後のクリスマス会には、卒園生も呼び大勢でお祝いをしようと言い出したのが歩ちゃんと薫ちゃんです。
卒園生に招待状も、年長さんの「キリスト生誕」のお芝居の練習も、年中さんの賛美歌の練習も、年少さんのお遊戯の練習もバッチリです。
飾りつけは、父兄とふたりの大学の友達が手伝ってくれました。

当日は、ミチと僕もお手伝いに行きます。


*********



今年のクリスマス会は、土曜の夕方からです。
遠くからくる卒園生のために遅い時間からにしました。
冬の夕方は、暗くなるのも早く電飾に飾られた古い幼稚園は時代から取り残された空間のようです。

そして、何百本の蝋燭で作られた園庭の舞台は、おとぎの国への入り口のようです。
毎年のクリスマス会は、園舎の中で行うのですが、今年はたくさんの卒園生が来てくれることになったので、焚き火をしながら園庭で行います。
園庭には、大昔に幼稚園児だった大人やまだ、現役の幼稚園児と変わらないちょっとお兄ちゃん、お姉ちゃんまで懐かしそうに集まってきました。


園長さんの挨拶が終わりました。

いよいよ、おとぎの国の入り口に天使たちが舞い降りて着ました。
おどおどしてる子。ニコニコしている子。みんな緊張しています。

年少さんのお遊戯から年長さんのお芝居まで無事に終わりました。

最後に歩ちゃんと薫ちゃんが舞台に登場です。

二人の手には、ぺこりで作った赤と白のクリスマスリースがありました。


歩ちゃんが笑顔で話を始めました。

「みなさん、今日は最後のクリスマスに集まって頂きありがとうございます。

私たち姉妹は、幼いときに母親を亡くしました。

迎えに来てくれることも、帰って待っていてくれることもありませんでした。

だから、幼稚園にいる時間が一番好きでした。

お友達といる時間が一番好きでした。」


次に薫ちゃんが話を続けました。

「お雑煮も幼稚園でお友達と食べました。

ひな祭りも幼稚園でみんなで作った雛人形の前で雛あられを食べました。

誕生日も、幼稚園のみんなにお祝いしてもらいました。

クリスマスも毎年、幼稚園のクリスマス会が楽しみでした。

卒園してからも、クリスマスは園児達と一緒に楽しく過ごしました。」

薫ちゃんの話が終わるとふたりはリースを頭の上に持ち上げました。

まるで、天使の輪がふたちに降り注いだようです。

歩ちゃんが、また話を始めました。

「みなさんと、クリスマスを毎年出来たから寂しいと思ったことはありませんでした。

本当は、ちょっぴり家族で美味しいケーキをいっぱい食べられる子が羨ましかったけど」

みんなも、歩ちゃんも笑いました。

薫ちゃんは、少し泣きながら言いました。

「このリースは、私たち姉妹の大切な家族のために作りました。

幼稚園は、春に無くなってしまいます。

でも、ここに集まってくれた大切な人達はずーっといます。

今までの感謝と、これからも私たち姉妹の家族で居て欲しいという願いを込めて作りました。

みなさん、ありがとうございます。」

そして、ふたりは声を揃えて言いました。

「メリークリスマス!」

園庭にいる、みんなも声を揃えて言いました。

「メリークリスマス!」

「歩ちゃん、薫ちゃんありがとう。」「お姉ちゃん、ありがとう。」

「ありがとう」「ありがとう」「ありがとう」

園庭には、いつまでも「ありがとう」が続きました。




蝋燭が消され、焚き火の無くなった園庭には、
歩ちゃんと薫ちゃん、そしてお父さんの園長先生。
楽しそうに話をしています。

少し離れた、僕とミチにはどんな話をしているのか聞こえません。
3人だけの思い出話でしょう。


クリスマス会の片付けを手伝いに来てくれた和美さんと店長の手には大きなケーキがありました。

「カーネーションの花言葉は 母への愛」
店長がケーキをミチに奪われないように抱きしめて言いました。


ミチは、園の門に飾りつけたリースの前でケーキの箱にクンクンと鼻を鳴らしました。
その仕草は、可愛い子犬。
とは、到底言えません。
僕は、口直しに天使の姉妹を思い出すことにしました。
このクンクンする女子高生のことは忘れて。







携帯小説Ranking





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう