フラワーショップ ぺこり(12/51)縦書き表示RDF


ペットは愛情をかけると、応えてくれるそうです。僕は感想を頂けると、すごく喜びます・・・m(__)m
フラワーショップ ぺこり
作:晴天



老犬とネコヤナギ


【フラワーショップぺこりで思い出を!】

ミチの看板は更に意味が分からなくなってます。思いつくままに書いているので意味はないのだと思いますが。


今朝はミチのポップの他に探し犬のポスターも張りました。
毎朝、店の前を通る老夫婦の犬がいなくなったのです。
少し足が悪い年老いた犬で、ヨタヨタと二人の前を歩いていました。

犬がいなくなったのは一週間前のことで、二人は必死に探したそうです。ポスターを持ってきた二人の顔は疲労のためかグッタリとしていました。


翌日から老夫婦の散歩は、犬を探すための散歩になりました。
老犬の名前を呼びながら二人で歩く姿は辛そうでなりません。

見かねた店長は、老夫婦とは別の道を犬の名前を呼びながら歩き始めました。
「チコちゃ〜ん、チコちゃ〜ん。」
すれ違う人は、出来るだけ離れて足早に通りすぎます。子供を連れたお母さんは、子供の手を引いて来た道を戻って行きました。

熊のような髭面の男が、おネエ言葉で老犬の名前を呼んでいるのですから当然と言えば当然です。

その翌日には、ミチも参加です。店長とは別の道を叫びながら歩きます。
「チコ〜チコはいませんか〜白くてオイボレ犬のチコはいませんか〜」
なんだか恐い物売りです。
そのまた、翌日からは僕も参加です。ポスターにプラカードをもって二人とは別の道を練り歩きました。

ついに、そのまた翌日には三人で合同です。
熊のようなオカマと、やくざ言葉の女子高生。それにプラカードを持った若い男のパレードです。
不思議な三人組のパレードに面白がった小学生が後ろを付いてきます。その数は道を曲がる度に増えて行きます。
気がつくと、その長さは100メートルになっていました。
当然、最後に登場したのはお巡りさんです。
お巡りさんは、三人の中では、まともそうな僕に注意をしました。
コンコンと注意され、気が付くと店長もミチも姿をくらましてました。

僕の周りには小学生の輪が何重にも出来ていました。


店に帰ると、二人は何事もなかったように仕入れたネコヤナギを並べています。
僕は、和美さんに訴えました。和美さんは、笑いながら二人を叱ってくれ、二人は一応、反省した振りをします。いつものように。翌日からは、小学生と話を聞き付けた大人達によるチコ捜索大作戦の始まりです。
街中にチコの名前を呼ぶ小学生の声が溢れ、ポスターがそこらじゅうに張られました。
今やチコは街の有名犬です。

捜査の甲斐があって、小学生がチコの居場所を突き止めてくれました。
チコは、最近ビルを取り壊し空き地になった所にいたのです。
大パレードは無駄では無かったようです。

店長とミチと僕、それに老夫婦が小学生の案内で空き地に行くと、チコは空き地の片隅にある壊れかけた犬小屋の中にいました。
犬小屋は、ビルの管理人か住人が作ったのでしょう。
犬小屋の中にはチコの他に子犬が一匹いました。子犬は、右目が少し不自由なようで左目をキョロキョロさせながら、老夫婦を見つめています。
飼い主が右目の不自由な、この子犬だけを置き去りにしたのでしょう。

チコは、置き去りにされた子犬のために年老いた身体で餌を探していたようで小屋の中にはゴミの中から拾ってきたような食品の食べ残しが散乱してました。

老夫人は、汚れた子犬を愛しそうに抱き上げました。
ご主人はチコの頭を何度も撫でてあげました。



チコは、空き地から戻った翌日に眠るように死んだのです。
チコは子供に恵まれなかった老夫婦が、友人から譲り受けた犬で、チコの他の兄弟達はすぐに貰い先が決まったのに生れつき足の悪いチコだけが貰い先が決まらず残ってしまったそうです。

老夫婦は、これも何かの縁だと思い足の悪い子犬を飼うことにしました。
夫婦は、チコに自分達に飼われて幸せだったと思って貰えるように愛情だけは、いっぱいに注ごうと決めたそうです。

子犬のチコは、まっすぐ歩くことも上手に出来ず家中の柱やタンスにぶつかっていたそうです。
夫婦は、チコのために柱にも家具にも毛布を巻き付けてぶつかっても痛くないようにしました。
少し大きくなったチコは、二人と散歩が出来るようになったのですが、すれ違う犬とじゃれては怪我をしたそうです。
夫人は散歩から帰ると、チコの傷の手当てをするのが日課です。それでもチコは散歩もじゃれるのも大好きで外に出たがりました。
時々、目を離すと子供たちに足の悪い犬だから、からかわれたり、いじめられたりもしました。
そんな時は、二人とも悔しいやら悲しいやらでチコを抱いて帰りました。
それでもチコは散歩が大好きで雨の日も寒い冬も散歩を、せがんだそうです。
特にネコヤナギの穂が白くフワフワになる頃には川原の道を歩くの大好きで、不自由な足でネコヤナギの穂に飛びついていたそうです。

少しづつ夫婦と同じように年老いたチコは、良く昼寝をしていたそうです。その幸せそうな寝顔を見ると、自分達の人生さえ穏やかに過ぎて行く気がしていました。
そして、最後は眠るように穏やかに旅立ったそうです。
チコは最後まで夫婦に愛されて生涯を閉じることが出来たのです。

僕と店長とミチは、チコの葬式に参列しネコヤナギを献花しました。

ネコヤナギの花言葉は追悼。

そして自由・平等です。



チコの葬式から数日後、チョコと名付けられた子犬を連れた老夫婦が店の前を通るようになりました。


僕は、チコが死んだ後も夫婦が寂しがらないようにチコがチョコを引き合わせた気がします。







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