友達色のラベンダー
【フラワーショップ ペコリは花畑】
毎回のコピーは、いつ?どこで? 考えつくのだろう?
今日も?マークが頭の中で踊りまくるミチの看板です。
今日は店長が大量のラベンダーを仕入れてきて店の前は、確かにラベンダー畑です。
通りがかる人達も紫の絨毯と爽やかな香りに頬を緩めます。
「ラベンダーは癒し効果があるのよ。お風呂にオイルを入れると気持ち良いわよ。」店長がうっとりと言いました。
僕は、絶対に想像しないようにしました。ひげ面で熊のようなオカマがラベンダー風呂に入る姿を絶対に。
うっ 想像してしまった。
「熊ちゃん、綺麗な花畑ね。写メをとってもいい?」そう言って店長の腕に絡みついたのは、僕の知らない背の高い綺麗な女性です。
なんで、こんな綺麗な人が店長の知り合いなのか不思議で仕方がありません。
「いいわよ。キクちゃんと一緒に写る?」そう言って店長は僕を指差しました。
「嬉しい。一緒に写真に入ってよ」背の高い女性は、僕の手をとってラベンダーの前に連れて行きました。
「じゃあ、撮るわよ。キクちゃん、もっとくっついて」店長はニヤニヤしならが携帯のシャッターをおしました。
「ありがとう。じゃあ会社に行ってきまーす。」背の高い女性は足早に駅に向かいました。
「今度は続くと良いわね。」店長は走り去る後ろ姿に呟きました。
「店長にあんな綺麗な知り合いがいるとは思いませんでした。」僕は走り去る後姿の綺麗な足に見とれていました。
「京ちゃん、綺麗でいい子よ。あんなに優しい子はいないわ。子供の頃からね。」店長は、ラベンダーに話かけているようでした。
その日の昼に京ちゃんから写メが届きました。今朝、二人でとった写真を送ってくれたのです。アドレスは店長に聞いたようです。
僕は、嬉しくてミチに見せびらかしました。
「馬鹿じゃないの。そんな綺麗な人がキクに似合うわけないじゃん。」
最近、ミチは僕のことをキクと呼び捨てにします。最初の頃は、花岡さん、次に菊さんに変わり今はキクです。
僕も、ミチちゃんから、「ちゃん」が外れたのですからお互い様ですが、一応、僕は年上です。
「そうね、ミチちゃんと一緒に写る?」店長が僕とミチをからかいました。
「結構です。」二人同時に言いました。
そして、二人同時にムカつきました。
僕に送られてきた写メを見ながら店長は、
「京ちゃんは、男の子に生まれてしまったのよ。神様のイタズラってこういう事を言うのかしらね。」
僕もミチも意味が分からず、顔を見合わせました。
「京ちゃんの名前は京介っていうの。」
僕は、店長の言葉に性同一性障害と言う最近知った言葉を思い出しました。
京介さんは子供の時から花が好きで、よく店に来ていたそうです。
ある時、店長は、
「僕はスカートを履いちゃいけないの?」
京介少年に聞かれ、「男の子は履かないのよ」普通にそう答えたそうです。
京介少年は、悲しそうに「僕は男の子なんだよね。」そう言って自分の股間に手を当てて寂し
そうに帰って行ったそうです。
小学校時代の京介さんは、男の子と遊んでもイジメられることが多く泣きはらした目で店の花を見ていたそうです。
中学に入ると、京介さんの頭の良さと中性的な美しさで女の子にも良くモテたようです。京介さんが花屋にいると、同級生の女の子がそっと遠くから見ていたのを店長は何度も目撃したそうです。
でも、京介さんが好きなのはサッカー部の男の子でした。部活が終わる頃になると店の奥に隠れ、その男の子を見ていたそうです。
もちろん、一度も声をかけることなどありませんでした。
店長は、そんな京介さんにかける言葉もなくただ、見守っているしかなかったのです。
高校に入ると、京介さんは友達を作らず勉強に励んだそうです。友達を作ってもすぐに離れていってしまうことに耐えられなかったのです。
京介さんは、猛勉強をして一流の大学に合格したそうです。
大学に入ると京介さんはスカートを履き化粧もして通学しました。
京介さんは自分の本当の姿で生きる決心をしたのです。
それでも、周りが京介さんの心の中を理解することは難しかったのだと思います。
時々、目を腫らして店に来ては花を見ていたそうです。
「男でも女でも私は私。」そんなこと呟いていたそうです。
京介さんは大学に入ると会計の勉強をして卒業する時には税理士の資格を取っりました。
でも、性同一性障害の男性を雇う会計事務所は少なく面接に行くたびに不合格でした。
やっと、今の会計事務所に入れた時は、店長と二人で抱き合って喜んだそうです。
面接で、会計事務所の社長は「君は京介君、京子さん?」そう聞かれたときに
京介さんは「京です。」そう答えたそうです。
すると社長は「分かった京ちゃんだね。」そう言って笑顔で迎えてくれたそうです。
会計事務所の人達にも、京として紹介してくれました。
だから、京ちゃんは事務所の人に女の人だと思っわれているようです。
数日して、京ちゃんが目を腫らして店に来ました。
京ちゃんは、事務所の男性に交際を申し込まれたそうです。京ちゃんもその男性を好きで一緒に仕事ができるだけで幸せでした。
でも、京ちゃんは断ったそうです。本当のことをいう事が出来ずに。
好きな人に交際を申し込まれて困るなんて悲しすぎます。
友達のままでいたいなんて辛すぎます。
京ちゃんは緑のラベンダーを買って肩を落として帰りました。
「紫のラベンダーの花言葉は 疑惑 なのよね。」店長は京ちゃんの後姿に見ないで呟きました。
次の日も京ちゃんは店にやってきました。
「会計事務所を辞めることにしたの。居づらくなっちゃって。」京ちゃんは、寂しそうに笑いました。
「そうなの?」店長は静かに言いました。
「彼に本当のことを言ったの、貴方のことは好きです。でも、私は男なんです。ってね。
彼、不気味な物でも見るような目になって何も言わなかった。慣れてるけどね。」
「そんなつまらない男は相手にしないことね。」店長はラベンダーの手入れをしながら言いました。
僕は、店長にお尻を少しぐらいなら触らせてあげようと思いました。
次の日には、スーツ姿の男性が現れました。
「すいません、この近くに京ちゃんという女性の家を知りませんか?」男性は僕に尋ねました。
「ちょっと待って下さい。」僕は店長を呼びに行きました。
「どちらさまですか?」店長は疑惑の目で男性を上から下まで舐めるように見ました。
「京ちゃんのと同じ事務所に働いています。今日、休んでるのは僕のせいかもしれないので、お見舞いに行きたいのです。」
僕と店長はピンときました。この男性が京ちゃんが好きになった男性です。
「僕、京ちゃんに振られちゃったんです。恋人にはなれないかも知れないけど、大切な友達にはなれると思うんです。」男性は照れくさそうに言いました。
「そうですね。恋人になるのは難しいでしょうね。でも、男でも女でも、その他でも友達にはなれますよね。」僕は男性に笑顔で言いました。
「はい。」男性も僕に笑顔を返してくれました。
「はい、これ。」店長は京ちゃんの家の地図と白いラベンダーの鉢を渡しました。
男性は、地図を見ながら店を出て京ちゃんの家に向かいました。
「白いラベンダーの花言葉は <私の気持ちを分かって><期待> どちらの気持ちかしら。」店長は、僕に寄り添うようにして言いました。
今日の僕は、そのまま店長の傍に居る事にしました。つまらない男には、なりたくないから。
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