・・・やりすぎた
「嗚呼、これが最後の一本か・・・」
ただいまの時刻は三時のおやつ時。だが持ってきたお菓子が底をついた。
幻想郷に来てから約二ヶ月。すぐになくならないように節約していたのだが・・・
ついにチュッパチャップス(プリン味)一本になってしまったのだ。
「悔いの残らないように味わって食べよう・・・いただきます」
泣く泣く最後の一本を口に入れ「あら、おいしそう。私にも頂戴」・・・・・
「ぐすっ、俺のチュッパチャップス・・・最後のチュッパチャップス・・・」
「う~んおいしい♪」
紫に食われた。最後の一本を食われた。残しておいた一本を食われた。
人のものを奪っておいて悪びれた様子もないスキマ妖怪八雲紫。この加齢臭め。
最後を一本の味わって食べるのがどれだけ大事なことか分かっていないんだ。
なんかもう新しく創る気も失せた。というか生きる気も失せた。いっそ土に還りたい。
四時間後・・・
「藁人形に・・・藁人形に・・・藁人形に、五寸五寸五寸釘・・・」
「レン・・・そろそろご飯作ってくれない?」
ずぶとい大妖怪も少し焦っている。家事をやるはずの人間が部屋の隅っこで体育座りをして
うつむいて、ずっとなにかの呪いの様な物を呟いているのだ。そりゃあ焦るだろう。
罪悪感も少しだけ出てきたようだ。しかし俺の傷ついた心はいまだに下降している。
紫が本気で謝ってきても許す気はさらさらない。食い物の恨みは恐ろしいことを教えてやる。
さらに四時間後・・・
「ぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱるぱる」
「レン!謝るから!私が悪かったから!お願い、もうやめて!」
俺は二時間前くらいからずっとぱるぱる言っている。能力を使って息を吸う時間を無くして
延々とぱるぱる言っているのだ。ちなみに罪悪感増大のおまけ付き。
これにはさすがの紫も耐えられなかったようで、必死に謝ってきた。
きちんと反省しているようだ。だがまだ許す気はない。死にかけるまで繰り返し繰り返す!
一時間後・・・
「えぐっ、レン・・・ごめ、ひぐっ、ごめんな、さい」
泣いてしまった。うん、なんかね、逆にこっちが罪悪感たっぷり。
このまま繰り返していたら自殺するかもしれないのでやめることにする。
というかこの現状を見て続けることなんて人として不可能。能力使っても不可能。
念のためゆかりんが泣いている写真をさまざまな角度から撮ってから許すことにする。
それにしても泣いているゆかりんなんてレアすぎる。あらためて自分の能力のすごさを思い知った。
「あ~はいはい、もう怒ってないよ。ごめんな~」
紫を抱きしめて頭をなでて言葉をかけて落ち着かせる。勿論安心感増大のおまけ付き。
十分ほど経って紫から寝息が聞こえてきた。泣き疲れて寝てしまったようだ。
ちなみに寝るまでずっと紫は『ごめんね』と繰り返していた。
さすがにやりすぎたと俺も反省しました。泣くとは夢にも思わなかったもん。
あと、これは俺の憶測だが、紫はもしかしたら生まれて始めて泣いたのではないだろうか?
妖怪の実力社会の中でいろいろあっただろう。自分の力をよく思わないもの。
自分を利用しようとするもの。殺そうとするもの。信頼できる人(妖怪)なんていなかっただろう。
そんなことを考えていると急に紫が愛しく思えた。
なにがあっても俺はこいつを守ろう。そう勝手に決めた。
「おやすみ・・・」
俺は布団に紫を寝かせ、そっと部屋を出た。
若干壊れかけましたね。
ゆかりん論者の方には申し訳ございませんでした。
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