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第21話 語り部のモモ

本日は、ちょっと毛色の違うお話。


アメヤの村の狼牙族のお話。

テーマは『戦闘民族の生態』


少しアレな話ですが、お付き合い頂けると幸いです。



…あ!アンタでしょ!?傭兵ギルドに依頼出したホネスティのシゲルって!

一体どういうつもり!?

『アメヤの村にいる狼牙族について教えてほしい』って!

しかも報酬が『正宗』ってどゆこと!?


…は?手に入れた時期が微妙だったから固定化もしないで

倉庫の肥やしになってた武器?

無印は装備Lv50だからあの村の武士には丁度良いと思った?


…アンタ、正宗よま・さ・む・ね!

全武士にとって憧れの名刀!

手に入れるためなら何でもするなんて武士、ゴロゴロいんだからね!?


本当に大変だったんだから!

村の男どもが盛り上がっちゃって、しまいにゃ手加減なしで斬り合いして

最後に勝った奴が依頼を受けて正宗手に入れるなんて話になりかけるし、

それにタロ様とジロ様、おまけに何故かムサシ様まで参加しようとするし!


結局、センカから言われてあたしが依頼受けて、

正宗は村の共有財産にするってことで落ち着いたから良かったものの、

下手したら割とマジで殺し合いになってたんだからね!?


そうよ。アメヤの村の狼牙…

北方狼牙についてはあたしが教えてあげる!

ただし!隠し財産のありかとか、

非常用の脱出路とか、村の秘密は教えないよ!

ダメなら依頼は受けない!いい!?


…え?そういうのには元々興味が無い?

話を聞きたいのは純粋に『ジンルイガク的な興味』から?


何よ?ジンルイガクって…

……色々な民族の文化と歴史を調べる、ねえ…

んで、あたしらの文化を知りたいと。


なにそれ。


だってアンタってホネスティのシゲルでしょ?

アキバの武士の中でも屈指の実力者って聞いたよ?

なんでそれが分けわかんない学問を修めた元学者様って…

冒険者になったのは5年前に定年退官してから?

それまではフィールドワーク主体で色々な場所に話を聞きに行ってた?


……冒険者って本当に不老不死なんだね。

たった5年でLv90になってるのもおかしいけど。


まあ、それならいいよ。

ようするに、あたしらがエッゾでどういう暮らししてたかを話せばいいんだよね?


あ、一応名乗っとくとあたしはモモ。

アメヤの村長やってるセンカの側仕えだよ。

言っとくけど、この仕事にあたしより向いてる人なんて、

あたしのお母ちゃんとお婆ちゃんくらいなんだからね?


なんてったって、あたしの家系は代々の『語り部』なんだから。


『第21話 語り部のモモ』



まずは…どうやって暮らしてたか?

うん。分かった。


まず、暮らしてたところは、森とか山が多いかな。

ススキノの貧民街に住んでる『街狼』の連中もいるけど、

あっちはあたしらは帝国狼牙とか呼んでて、アメヤの連中とはまた違うから。


ん?エッゾならば平原が沢山あるんじゃないかって?

平原は大体巨人とかでっかいモンスターがいたり帝国人が住んでたりするから。

森なら獣も豊富だしね。魔物も多いから大変だけどさ。

規模?大体1家族から多くても30人位かな。幾つかの家族の集まりだね。

それ以上になるとどうしても所帯が大きくなりすぎるしね。


まあ、一応あたしたちが暮らしてたのは代々の狼王が暮らしてた、

狼牙族の集落としては一番大きいところで、

それでも今のアメヤの村の半分くらい…300人ってところかな。

帝国人の間では『帰れずの森』って呼ばれてたよ。

実際入った帝国人は大体殺してたし、強力な森呪遣いの魔術で

要塞みたいになってたしね。


日々の生活の糧は狩りと採取で得てたよ。

普通食べるのは獣の肉とか木の実、川で取れた魚、後は鶏を飼って卵かな?

たまに鶏狙いで来た獣を森呪遣いの魔法で仕留めてそれを食べたりもする。

あたしが今着てるような北方狼牙の服なんかも毛皮と樹の皮なんかで作ってたかな。

…へぇ、アイヌってのに似てるんだ。

服もそれに近い…ねぇ。まあ、聞いたこと無いけど。


それと…帝国人相手の略奪?シブヤの帝国人が随分恐れてたって?


それはこっちの縄張り荒らしたとか、帝国兵に襲われて食糧が尽きたとか、

そんな場合だけ…って言いたいけど、こればっかりはねえ。

やっぱり血の気の多い連中が住んでる集落は略奪も多かったよ。


ま、小麦だのジャガイモなんかは帝国みたいな畑が無いと作れないから、

手に入れようと思うとどうしても街で暮らしてる街狼と交換するか、

略奪するしか無いからね。


帝国でも更に辺境って言われるようなところだと狼牙ともうまくやってる

人間族がいて物々交換で手に入れてる集落もあるらしいけど。


…あ、言っとくけど、エッゾ離れてからは一切やってないよ?

亜人とかウエノの盗賊どもは護衛仕事の邪魔だから殺して

ついでに戦利品貰ってるけどそれを別にすれば。


センカがね、北方狼牙もこれからは変わらないと行けないって、略奪は禁止してる。

シブヤの帝国人とだって仲良くやるつもりらしいよ。

向こうが牙剥いたら当然戦うけど。



次は…アメヤの村に〈武士〉と〈森呪遣い〉が多い理由?

んなもん、戦わなきゃ生き残れないからに決まってんじゃん。


元々あたしらが住んでるのってエッゾでも厳しい所ばっかでね。

狼に熊に虎、雪トカゲや亜人や帝国兵、あとは巨人なんかが集落襲うとか

良くあったのよ。

それ何とかして倒せないと集落丸ごと引っ越すか時期が悪いと最悪全滅すんの。


そんなところに住んでたから、やっぱ戦いの技を身に着けないとって考えが

北方狼牙の中では強くてね。

男も女も皆子供の頃から鍛えてんのよ。

それで男なら武士、女なら森呪遣いになるのが普通だから、

アメヤの村の男は武士ばっかだし、女はみんな森呪遣い。

ま、あたしとかミドリ、あとセンカみたいな家に生まれた場合はまた事情が違うけど。

とりあえずそれは後回しで、普通の北方狼牙について話すよ。


まず8つまでは何もしない。

子供って病気とか怪我とかでそれまでに死ぬことが多いからね。

その前には特に鍛えない。ま、無理して鍛えても壊れちゃうしね。

精々年の近いガキ同士で木の棒で殴りあったりするくらいかな。遊びで。


技を教えるのは、8つになったら。

男の子には刀を、女の子には森呪遣いの魔法教えて、戦の訓練を始めるの。

男の子の場合だと最初はひたすら刀振って、

父親にボッコボコにされながら戦い方を叩き込まれるね、文字通りの意味で。

後は弓。こっちも指がパンパンになるまで引かせる。

やっぱ数が揃ってる時は遠くから一斉に矢ぶち込んで、

一気に殺すほうが直に斬り合いするよか楽だから。


ただ、弓は北方狼牙ではそんなに…って感じ。

やっぱ刀で武士の技使って斬った方が強いからね。

弓で引きつけて、刀で斬り殺すのが一番多いかな。


んで女の子は、訓練でボッコボコにされた男の子とか

訓練始めていない子供の怪我とかを治して、治療術の勘を掴む。

他にも森呪の罠魔法の使い方とか、魔物に近づかれたときのために、

武器使った身の守り方とかも教える。こっちは大体母親の仕事。


んでどっちも10歳くらいになったら両親と一緒に、

幼子を他の家の一家とか成人した兄ちゃんや姉ちゃんに預けて狩りに出る。

そこで父親の戦いの間合いとか、母親の魔法の扱いとかを見て覚えんの。

まあ、最初は子供の技量に合わせて、弱っちい魔物ばっかりの場所が多いよ。

ま、運が悪いとそれでも死ぬけど、それくらい生き残れないと一人前にはなれないね。


そうして、15になったら成人。

男なら力量に見合った刀を2本貰って正式に二本差しになるし、

女なら妖精の加護が宿ったナイフ貰って、森呪遣いとしてひとり立ちする。

そうなると狩りに行くにしても同じ若手同士でやるようになる。

あとはススキノの街狼のところで『修行』するやつもいるね。

やっぱり街場でしか手に入らないものってあるから。


あとは当然だけど成人したら結婚も考えるようになるよ!

普通は同じ集落で、子供の頃から結婚約束してる同士か、

よその集落の年頃同士かな。大体親が決める。

あたしとダーリンは昔っから自分等で結婚約束した仲だったけど。

基準?…う~ん、特に気にするのは技量かな。


北方狼牙には『強き男に賢き女がつく』って言う言葉があって、

男の武士の技量と女の森呪遣いの技量が同じ位なのが大事なの。

まあ、たまに旦那に死なれた技量の高い年増が、

技量の低い若い男を娶ることもあるけど、

その場合も大体は自分の力量に見合うところまで女が男を鍛えるね。


…逆?ああ、そりゃないない。

病とかならしゃーないかも知んないけど、

戦場で女より遅く死ぬ男なんてみんな嫌がるもん。


結婚の時期?

早けりゃ成人した次の日にも結婚する娘もいるし、

遅くても大体19までには結婚するかな。

ちなみにあたしは15のときにダーリンと結婚したよ。

あたしが成人した次の日にね!



次は…政治?…ああ、まつりごとのことか!


それなら戦の仕切りとかの外側は『狼王』、

北方狼牙の内側については『大母(おおはは)』がやるね。

ちなみにセンカが今の『狼王』ね!

センカはよく村長って呼べって言ってるけど!


で、それはどうやって決めるのか、ねぇ…


まず『狼王』は簡単だよ。

先代が死んだり戦えなくなったら狼王になりたい奴等が

ススキノにある地下の決闘場で1対1で戦って、

最後まで勝ち続けた奴が狼王になるって掟だから!

あたしらはそれを『代替わり』って呼んでるんだけど、すごいよ。

お互い、本気で殺すつもりで戦うし、降参するくらいなら死ぬって人も多いから。


つっても、意外に平気なんだよね。

代替わりに出る奴等って大体凄腕…Lv50越えてるような武士ばっかだし、

その男の妻とか、優秀な女…つまり森呪遣いも沢山集まってる。

もちろん、代替わりが決着してすぐなら確実に死にたて!


つまりさ…死んでも『魂返し』が大体上手く行って生き返るんだよね!

4人に1人くらいは、首がもげちゃったとか生き返りようないくらい

酷い損傷でどうしようも無いけど。


センカなんか、わざわざ生き返れるように、最低限の損傷で勝つようにしてたんだよ。

代替わりでセンカは15人殺したけど、全員生き返らせるの成功したくらいだもん。


…へ?蘇生魔法が存在する世界だと死生観がおかしくなるのかって?

あはは、何言ってんの!

冒険者なんてあたしら以上に無茶してポンポン死んで

それでも生き返ってんじゃん!


ま、それはさておき次は『大母(おおはは)』ね。

これは、いわば女の頂点。長生きした長老が話し合って、

北方狼牙全体の『母親』を決めるの。

んで『母』って位だから大母は女しかなれない。

…ココだけの話、結構ドロドロしてんのよね。長老同士って。


ここでも重視されるのは技量ね。

仕切りの腕とか信用とか身内に『狼王』がいるかとかも関係するけど、

なんだかんだ言っても飛びぬけて〈森呪遣い〉の技量が高い女が

大母になるのが基本。

大体長生きしてるから大母は技量だけなら大抵狼王以上…Lv60越えてるよ。

ま、成るまでに歳取っちゃって体力は落ちてるから真っ向から戦ったら

狼王のが強いけど。


え?なんで森呪遣い限定なのかって?


それはね、大母は北方狼牙の母であると同時に『神威(かむい)の巫女』でもあるから。

あ、神威って言うのは動物の魂が寄り集って神に成ったものね。

多分、冒険者より強いよ。

癒しの女神ユーララ様とか刀の神フツマサ様程じゃないにせよ、神は神だから。

森呪遣いは、北方狼牙を支える長老になると

神威が住んでる森の場所を教えてもらえる。

そして長老たちから選ばれた大母は、年に1回そこに行って、

神威が荒ぶってないかを見る。

神威が荒ぶっていれば、凶兆だから備えろって言われてる。

…あたしも森の場所は知らない。

たとえ語り部であっても、『神威の森』のことは教えてもらえないんだ。

長老達は神威をほっとけないからってアメヤに来ないで

エッゾの帰らずの森に残ってるから、知ろうと思ったらエッゾまで行くしかないね。



じゃ、次はあたしたち…特殊な血縁について教えようかな。

私たちみたいな特殊な血縁を紡いできた家の女はね、他とは違う技を伝えんの。

そういう、他には無い特別な技を扱うものたちだから常に代々の狼王に仕えてきたし、

他とは違うものとして他の北方狼牙からは特別のものとして扱われる。

…いわゆる貴族に近いかな。

他より特別だけど、大母にはなれないんだよね。

ほら、チェスってあるじゃない?

あれで言うビショップとかルークとかみたいなもんでさ、

最初から特殊な動きが出来るけど、代わりに絶対に女王にはなれないのよ。

さっきも言ったとおり、大母になれるのは〈森呪遣い〉だけだから。


ま、それはさておいて、大まかに家系の説明するね。


まず、あたしは『語り部』

北方狼牙におきた沢山の出来事と、歴代の狼王たちと帝国の戦いの歴史、

今まで狼牙が戦い、倒してきた魔物の知識に北方狼牙の集団戦闘術…

そういう知識を覚えて、狼王に教えるのが仕事。

北方狼牙の知識は殆どが本じゃなくて『歌』にまとめられてるから、

私の家系は歌唄い…〈吟遊詩人〉の技を代々伝えんの。

一応武器の扱いも一通り覚えるよ。

語り部は戦のときも狼王に侍って、狼王やその配下を鼓舞するのも仕事だからね。

狼王の隣…最前線に立てなきゃ役に立てない。

アタシだってこれでも昔っから弓使わせたら男よりうまかったんだから。


次は…『守人』かな。

狼王とその家族を守る最後の盾。

得意なのは結界術。まあ、つまりは〈神祇官〉の一族だね。

大体、歴代の狼王と、その血縁に1人ずつつくことが多いかな。

うちだとセンカの側仕えしてるミドリが守人だよ。

後はセンカの妹にもミドリの妹が守人としてついてたんだ。

今はちょ~っと事情があってそっちはお休みしてるけどね。

ま、そこは村の秘密ってことで!


後は『魔術師』も特殊な家系になるかな。

刀が効き難い特殊な魔物を殺すにはやっぱり〈妖術師〉の魔術が頼りになるし、

〈付与術士〉の魔術は群れで行う戦では大活躍するからね。

ただ、魔術師は癒しの術が使えないから、結婚がちょっと難しいんだよね。

やっぱ男は後ろから癒しの術で援護してくれる娘のが好みってのが多くてさ。


んで、アメヤの村だとセンカが魔術師の家系だよ。

冒険者に言うのもなんだけど、すっごく強い妖術師なんだよ…うん?なに?

なんで女で妖術師のセンカが『狼王』なのかって?

話を聞く限り男の頂点が狼王になるものではって?

う~ん、まあ、そうだよね。じゃ、次はセンカについて話そうか。



まずさ、センカが狼王になれた理由は、15年前の『女帝事件』まで遡るんだ。


今から15年前、私たちが『女帝』って呼んでる、

南方から流れてきた狐尾族の女……

後で調べたところによると『アイギアの雌狐』って言う、

凄腕の暗殺者だったらしいんだけど、その人が当時の狼王と戦ったの。


なんでも、親を亡くした狼牙の子供を集めて暗殺の技を教えこんでたのを、

当時の狼王が北方狼牙の恥さらしとして皆殺しにしたせいで、

師匠筋に当たる女帝が仇を討ちに来たんだけど…


当時の狼王がよりにもよって女帝との正々堂々の一騎打ちで負けて、殺されたの。


当時の狼王だって代替わりを征した凄腕の武士だったし、強かったんだけどね。

女帝が更に上に行った。


んで、そのせいで、本当にもめたんだ。

女帝が狼王を倒した以上、彼女こそ狼王になるべきなんて話も出たくらい。


結局いつも通り代替わりは行って、狼王を決めたんだけど、

そんときに『狼王は男女を問わず強きものがなるべし』ってなった。

それまでは一応男限定だったんだけどね。


それで、センカのお母さんが、考えたんだ。

今の掟ならば、自分は無理でもセンカを狼王にすることが出来るかも知れないって。

それで、ものすごく厳しい訓練を重ねて、センカは強くなった。

…幼なじみのあたしから見ても異常だったよ。

時々、同い年のセンカが怖かったくらい。


それで、3年前の代替わりの時、センカは妖術師でありながら参加した。

そして…色々あって最後まで勝った。

それでセンカが狼王になったの。


…まあ、お陰で『大母』からは随分と嫌われてたんだけどね。

嫁と姑みたいなもんで、若い女が北方狼牙の頂点に立つのが、

許せなかったんだと思う。

ただまあ、センカは2年前の帝国人との戦に勝ったから発言力が強かったし、

大母にも好き勝手はさせなかったよ。


…ん?帝国人と北方狼牙について詳しい話を聞きたい?

先ほどから端々に対立してるように聞こえるし、

シブヤで聞いた限りでも随分怖がられてた?

ん~まあ、良いけど。



まずさ、あたしたち北方狼牙の祖先は、当時のウェストランデ古王朝の手で、

北方に送り込まれた兵士の末裔なんだ。


当時のエッゾは、巨人とか魔物が今以上に多くて、どこも厳しくてね。

ま、その頃古王朝が本気でボロボロになってたせいで充分な兵站が

無かったってのもあるんだけど。


そんな状態でもあたしらは何とか戦に勝って、森を切り開いて、開拓して暮らしてた。

さっき言ったみたいに、苦しい森や山での暮らしを始めたのはもっと後。

…あたしらが帝国に負けてから。


帝国はさ、元々は古王朝の人間族と、

更に北方の大陸の人間族が交じり合って出来たんだ。

帝国の初代皇帝アル=ラーディルは大陸の血を引いてる。

奴等は最初アキバみたいな『冒険者の遺跡』を発見して、

それを起動させて最初の街…帝都であり冒険者の街であるススキノを作った。


今にして思えば、その時点で北方狼牙に勝ち目は無かったんだよね。

だって、冒険者と衛兵が常にいる時点でススキノはどうやっても

あたしたちには攻略できない。

今から57年前に、巨人の王に率いられた巨人の群れが衛兵を無力化した上で

ススキノを襲ったときも、結局は冒険者が集まって殲滅したくらいだもん。

ちょっと強い程度の大地人であるあたしらじゃ絶対勝てない。

…まあ、そのせいで今ススキノがあんな酷いことになってるのは、皮肉だと思うけど。


ま、それで絶対落とせない城があって、更に数に勝る人間族相手じゃ

あたしらも勝てなくてね。

作物育てるのに向いた平地とかは帝国の領土になって、

あたしらは森とか山とか、守りやすいけど暮らすのには向かない場所で

暮らすようになった。


それでも帝国人は満足しなくてね。

あたしらを定期的に襲うようになった。

森を焼いたりして探し出して殺したりね。

そんな状況だから、北方狼牙もどんどん強くなって言ったんだ。


んで、今だと並の帝国の兵士程度なら北方狼牙の子供でも殺せるってくらい

技量に差がついた。

戦術も何回も戦っていくうちにどんどん磨かれてきたんだ。

数で圧倒的に勝るから守りに入られたらどうしようもないけど、

襲い掛かってきたら返り討ちに出来るくらいの力はある。

実際2年前にも5倍の帝国兵相手に戦って、戦術とか駆使して何とか勝ったからね。

こっちもボロボロだったけどさ。


…まあ、最近は帝国人の村襲って略奪する、山賊まがいの北方狼牙もいるから、

帝国人に恐れられてるのも分かる気はする。

あ、でもさっきも言ったとおり、アメヤとしては帝国人とことを構えるつもりは無いよ。

そもそも冒険者のお膝元でそんなことするのは愚の骨頂だし、

そもそも略奪なんかしなくても普通に暮らしてけるからね。このアキバの近くなら。



…ふぅ。

とりあえずはこんなところでいい?

…分かった。正宗はありがたく貰っとくよ。


また、聞きたいことがあったら依頼出してくれればいいよ。


ただし!


もう正宗が報酬ってのはナシ!

あ、言っとくけどだからって村正とかでも困るかんね!?

じゃないとまた揉めるから。いい?


…ん。よろしい。

本日はここまで。

実は帝国云々は『大地人にとっての中心都市=プレイヤータウン』

なのがエッゾだけなところから考えた話だったり。

(イースタルはマイハマ、ウェストランデはキョウが

 中心と考えています。ナインテイルは何ともいえませんが)


以下、正宗の設定。


正宗


装備レベル50の秘宝級太刀。武士専用。


武士が装備できる武器としてはエルダー・テイル

最高の攻撃力を誇り、攻撃速度上昇の特殊能力は

武士に暗殺者や盗剣士に迫る総合火力を与える。

レア度の高さも相まって正宗二本差しは全武士の憧れ。


……だったのはおよそ20年前の話。


度重なる追加拡張が行われた現在では、

少なくともLv90の武士が使う武器としては見劣りする。

(ちなみに現在でもLv50代の武士が使う武器としてならば

 最上級の刀ではある)


が、大地人武士にとっては今なお憧れの1本。

これを巡って殺し合いが起きても決して不思議ではない。


ちなみに正宗には『正宗改』『Masamune-Millennium』『真・正宗』

『正宗零式』『正宗(妹)』など数々のバリエーションが存在する。

そのため通常の正宗はそれらと区別するため『無印正宗』と

呼ばれることが多い。

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