ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
9、Kの本音と、全ての終焉。 そして、伝説は続く
9、Kの本音と、全ての終焉。 そして、伝説は続く




町に帰った私達は、Kとシェラハに全てを任せて宿に戻った。 マルタも、システィも、休ませないといけなかった。

宿の入り口からロビーへ、みんなで行った時・・・心配していてくれた女将さんが嬉しそうに迎えてくれた。

「おやっ、戻って来たんだねっ?!」

「ただいま、女将さん」

私、女将さんの顔にホントにホッとした。

ぐったりしたマルヴェリータは、今はポリアに支えられている。 シェラハの家に行くのは、K一人である。

女将は、Kが居ないのを気付いて。

「包帯男はどうしたの? まさか・・・」

と、女将が言葉を詰まらせるも。

「大丈夫じゃ、クォシカの遺体を、シェラハさんの家に持って行くと」

システィアナを背負うイルガが説明すると。

「え゛っ・・・ク・・・クォシカだってぇっ?!!!」

失踪・・それは、願いでも有ったのだ。 多分、町の人の・・・。 クォシカの自由を信じての。

ポリアは、先ずマルヴェリータとシスティアナを休ませる為に宿の中に。 二人を寝かせてから、女将の元に行こうと部屋を出る時だ。 マルヴェリータは、短く。

「ポ・リア・・」

「ん? マルタ、どうしたの?」

マルヴェリータは、潰れそうな眼で。

「夜・・声を掛けて・・クォ・シカの葬儀・・・出る」

ポリアは、自分でも気を抜いたら倒れそうな疲労なのに。 マルヴェリータが立てる訳が無いと解ってた。

「マルタ、無理しちゃダメよ。 明日、町を出る前にお花をあげていこう。 葬儀には、Kが居れば大丈夫。 クォシカを助けた彼が居れば十分よ」

マルヴェリータは、静かに瞳を瞑って頷いて。

「そうね・・・ホント・・変わった男・・・・・・・・・」

寝息に変わっていた。

ポリアは、下に降りた。 ポリアが女将にあらまし説明をするが、Kに言われた通り。 ラキームの悪行には触れなかった。 Kが、硬く言うなと口止めをしたのである。

一方、暮れなずむ町の中心の噴水広場でも。 クォシカの亡骸を抱えたKとシェラハが通った事で、野菜の取引どころでは無くなった。 葬儀の準備を急ぎだす人、棺桶を作ろうと言う人々。 クォシカの死を悼むあまりに泣いている人・・・クォシカが町の人の心にいかに残っていたか。 良く解る。

さて。 Kとシェラハは、役人の詰め所にて。 警備隊長から馬車を借り受けて、シェラハの家に行った。

シェラハの家の前に馬車を止めた隊長の元に、屋敷から飛び出して来たコルテウ氏が駆け寄る。 荷台から降りたシェラハを見たコルテウ氏は走り寄り。

「シェラハっ! 無事だったかっ!!」

「お父様っ!!」

抱き合った二人。 シェラハは、父にクォシカの亡骸の事を告げる。

「おお・・・なんと・・なんということか・・・」

コルテウ氏のクォシカの遺体を見ての涙は、クォシカを見守ってきた父性の情が溢れていたもので。 Kは、クォシカの遺体を託し。

「葬儀の時は呼んでくれ。 出席する」

「解った。 私と娘が取り仕切る。 是非、出席して下さい」

頷いたKは、シェラハを見る。

「シェラハ、コルテウ氏に全てを語ってやってくれ。 ただ、外には口外してはいけないよ。 ラキームの事は、いずれに裁きが下る」

「解りました」

Kは、馬車の御者をしている警備隊長の横に座った。

馬車が、町の中心に戻って行く。 シェラハは、それを消えるまで見送っていた。

(一体、ラキームの事・・・どうするのかしら・・・)

不安という訳ではないが、先が見えなくて心がおぼつかなかった・・・。

Kが宿に戻った時、もう夜になったばかりだ。 老いた女将の泣き顔を見たKは。

「うわ~、皴が歪んでゾンビみたいだ」

と言って、女将に怒られた。

もう、ポリアもイルガも待てずに寝てしまったとか。 食堂の椅子に座ったKは、運ばれたポテトのスライス揚げを齧りつつ。

「だろうなぁ。 明日まではまぁ~ず動けないよ。 全員、お疲れだった」

女将の見るKは、大して疲れてもいない様子。 しかし、ポリアは女将に。

「ケイが、モンスターの主を倒したのよ。 そうじゃなかったら、私達がゾンビに成る所だったわ」

と、言っていた。

(こんな包帯男がねぇ・・・見かけに由らないものだねぇ~)

と、ご飯の用意を。

Kは、食事後に果物のジュースで、シェラハをのんびりと待っていた。

シェラハが遣って来たのは、もう夜更けに近い。

「お、来たか」

黒の礼服に着替えたシェラハは、なんだか大人びて女性らしい。

「変な言い方だが、似合ってるな。 まったく、なんて事の成り行きか」

Kは、ポリアに試しに声を掛けてやろうと思ったが、止めた。

シェラハの案内で、噴水広場に。 焚き火が焚かれ、広場にはあちこちに篝火が。 随分な人数の人が集まっていた。 老若男女、家族で来ている者が大半だった。

寺院の女僧侶が葬儀を取り仕切った。 Kは、シェラハの計らいで、コルテウ氏やシェラハと同じ席にて、参列する人達の姿を見ていた。

町人の中には、ラキームに雇われているKの参列や、席に着くのを問題視する声を上げる人も居たらしい。 だが、シェラハが、それを一蹴した。 それはそうだろう、あの幸せそうなクォシカの魂を見たら・・・。

深夜まで続いた葬儀、ラキームは現れなかった。 ま、神殿城にて、あれだけ走り回ってクタクタだったラキーム。 Kの投げた壁の破片がぶつかった痛みを、帰りにウジウジと言う姿を見ているシェラハからすれば、来たら追い返してやろうかと思った。

参列者が全てのお悔やみを終えたのは、もう朝方に近づいた頃。

シェラハやKは、埋葬に向かう為に花束を全て荷馬車に乗せる。 クォシカの棺と共に。 参列者の任意で、埋葬まで来るのは任せたが。 全員が来た。 泣く知り合いの女性や若者。 女将も、参加していた。

北の共同墓地に、クォシカの両親の墓があり。 クォシカも、そこに埋葬されることに。 空の星空が美しく、遠くの東の空には夜明けが見えていた。

さて。 Kは、全てに付き合って、明け方の早朝に女将と宿に戻る。

「うぅ・・なんで・なんでクォシカなんだい・・アタシが代わりたい・・」

戻れば、食堂に明かりを入れる女将。 Kにジュース、自分には酒である。

「おいおい、女将・・・飲むの?」

「当たり前じゃないかいっ・・こんな日でも宿は開けてなきゃいけないんだ。 酒の一杯ぐらいで潰れるアタシじゃないよっ」

「そうですか・・・」

二人で、夜明けの飲み会であった。

だが、少しして。 そこに、ポリアが起きてきた。

「あれ? 二人で何してるの?」

「ポリア、こっち来て呑むか? 女将が自棄酒してる」

「はぁ?」

「クォシカの葬儀が終わったんだ」

すると、普段着の首と背中を紐で縛る衣服一枚ながら、スリットスカートをなびかせながら髪も結わないままの姿で、ポリアもテーブルに坐る。 剣士と云うより、貴族の令嬢と見える。

「そっか・・・終わっちゃたか・・・・・・」

椅子に座ったポリアは、今日に町を出るので酒ではなく、ジュースを貰い。

「・・・なんか、凄く悲しい事件ね」

すると、酔い始めた女将が、ポリアに。

「なんだってラキームが生きてるんだい? え? どうせ、アイツの仕業も絡んでるんだろ? あんなバカ、一緒にモンスターのエサにでもしてしまえば良かったのに・・・・。 クォシカぁ・・可愛そうに・・可哀想に・・・おおおお・・」

と、泣き出してしまった。

ポリアの本心は、モンスターのエサか叩斬ってやりたい気持ちなのだが。 Kは、黙っていた。

Kは、結局一睡もしないで、朝も過ぎた頃に起きてきた皆に。

「さて、ラキームのバカたれに挨拶して、クォシカの墓行って、マルタンに戻ろう」

マルヴェリータは、もう一泊したかった。 なにせ、疲労で全身がバリバリいって、おばあさんみたいに歩かないといけないような痛みである。

しかし、Kは。

「多分、もう一泊は無理だね。 こっちがしたくても、ラキームがさせないだろう。 俺達は、最悪の目撃者だから」

と。

その意味を、ラキームの元に行く事でポリア達も理解するに至る。 町の東の外れにある丘の上、ラキームやアクレイ氏の住まう屋敷があった。 訪ねて面通しを願うと、大きな屋敷の一角にある応接間に通された。

黒いティーテーブルを前にして、Kが一人座席に腰を降ろし。 ポリア達は、ソファーに座った。 中々の広さで、椅子は上質な素材のものを使った凝った代物。 壁はモスグリーンで、春らしい今に合う部屋だ。

ティーが出されて、待つこと少し。 ラキームが、入ってくるなりに一同に言う。

「なんだ、まだ居たのか? 金を受け取りにさっさとマルタンに帰れ。 クォシカの葬儀も終わったんだろ?」

窓の前のデスクに備わったチェアーに、ラキームはどっかりと腰を降ろした。 ラキームの後ろには、ガロンが立つ。

「・・・」

ガロンは、Kをかなり警戒している眼差しだった。

Kは、早く話しを終わらせる為に、早速用件を切り出した。

「話しは、簡単だ。 ま、どうせクォシカの事件のことは公にならんだろうが。 一応、全てを知りたい。 だから、簡潔に聞く。 ラキームさん、御宅はクォシカを誘拐してどうしたかったんだ?」

ポリア、マルヴェリータは、もちろんギョッとしたし。 ガロンも、ラキームも、狐につままれた顔になった。 ガロンとラキームは、見合う。

しかし、Kは、続けて。

「貴方は、クォシカに婚約を破棄されて、頭にきて誘拐しようとした訳か?」

ポリア達は、静かに下を向いた。

ラキームは、Kを汚い光を宿した眼で見る。

「だとしたら?」

Kは、続ける。

「答えになってないな。 この仕事を頼んだのはアンタだ。 事実くらい、最後に言ったらどうだ?」

「ふん」

ラキームは、一つ鼻で笑うと。

「ま、いいだろう。 貴様等のお陰で、父上にクォシカの遺体を取り戻した私の武勇を語れたのだからな。 そうだ、お前の言う通りさ」

ポリアもマルヴェリータも、ラキームが都合良く言っているのを知った。 多分、自分達が去った後、勝手な話しを言いふらすのだろう。

ラキームは、お手伝いが出して行った紅茶を飲んでから、下劣な光を眼に宿して。

「全く、クォシカには困ったモンだったぜ。 せっかく、嫁にしてやろうと言ってるのに。 俺の女になれば、なんの不自由もなく可愛がられて生きて行けるのに。 断りやがってっ!!」

と、机を叩いた。

「じゃ、冒険者を雇った訳か?」

Kの問いに、ラキームは異常者のように嬉しそうに笑い。

「そうさぁ~。 こうなったら、フン捕まえてモノにしちまえばいいと思ったのさぁ^。 いやぁぁ、金で雇ったギーシンとか言う男。 ガロンに頭が上がらない感じだったから大丈夫だっておもったのによぉぉ。 思いっきり裏切ってくれて、サイアクだぁ~」

と、ラキームは机をさらに叩き。

「フタ開けてみれば、なんだコリャっ?!! あのバカ共のお陰でクォシカ喰い損なったわっ!!  捕まえて、服をひん剥いて、泣き叫ぶのを押さえ込んで喰い散らかしてやろうと思ったのによおおおっ」

ポリアは、悔しさと汚い言い方に怒りが全身に駆け巡る。 強く強く握る拳から、血が出た。

マルヴェリータも、もう冷めた瞳が幽霊のように生気が無くなり、人を殺す事すらいとわない目つきである。

イルガ、システィアナは、服をギュっと握り、怒りを堪えている。

Kは、予めに言ってある。

“これから、ラキームを罠に掛ける。 どんなことがあっても、怒ったり騒ぐな。 出来そうに無いなら、同席するな”

だから、誰もが堪えていたのだ。

話に呆れたKは。

「なるほど、そうゆうことか・・・。 つまり、クォシカは、捕まる前に気付いた訳か・・それであの森の奥の神殿に・・」

ラキームは、詰まらない素振りに変わり、ツメを弄りながら。

「せっかくのお楽しみ人生が台無しさ~。 ま、可愛い貴族の女見つけたし、そっち可愛がるわ・・・。 話は以上だ。 解ったら、さっさと出て行け」

Kは、頷いた。

「言われなくとも。 いや、正直、もう少し早く町に来たかった」

と、Kは立ち上がった。

「どうゆう意味だ?」

言ったガロンを見るKは。

「クォシカが生きてれば、テメエ等を斬り倒してクォシカとめでたく結婚できたかもしれん」

Kの戯言に、ポリア達が立つ。

ラキームは、Kを睨んで。

「キサマ・・・この町史にふざけた口を利く気かぁ?」

すると、Kは、意外にもにっこり。

「いいえ」

と、言った後に、眼元と口元を真顔に戻して。

「首を洗っておけ、ギロチンで斬り易いように。 よ~く垢を落としておけな」

ガロンは、ハッとした。 首切り刑は、法の中において最悪の罪人の処刑だ。 貴族などが宣告される場合は、もっとも極悪非道な事例のみ。 今此処で、Kの口からそれが出た事に、凄まじい不安感が感じられた。

「待て、キサマ・・・何か企んでるな?」

Kは、ガロンを睨む。

「だとしたら? 俺を斬れるのか?」

「くっ」

ガロンは、Kの気配の消えたのに殺気を覚えた。 今剣を先に抜けば、Kに斬られるかもしれない。

Kは、手でポリア達に“出ろ”と合図して、外に出させる間はガロンと対峙する。

「なっなんだ? ガロン? どうしたっ?」

慌てるラキームなど、二人は眼中に入れていない。

Kは、ポリア達が出て行ったのを感じて。

「ガロン、気が変わった。 黙って行こうと思ったが、少し悪戯をしてやろう」

と、口元に笑みを。

一方のガロンは、Kが目の前に居るのにその存在が感じられず。 四方八方から狙われている感覚に恐怖した。

「お前・・一体なにを?」

「簡単なこと。 死ぬまで、此処でそのバカと怯えるがいい。 もし、後で逃げたのが解った時は、俺がキサマを直々に斬ってやろう。 ガロン、死神の誓いだ。 覚えておけ」

ガロンの瞳が、グワっと見開かれた。

(やっやはりこやつっ!!!!!!)

ガロンは、全身から汗を噴き出して振るえが止まらなくなった。

ラキームなど見ずにKは、退席して行った。

「ガロンっ? どうした? なにか知ってるのか?」

ラキームは、このガロンの怯える姿に、自分が恐ろしくなる。 立って、ガロンの肩を掴んで揺さぶったが・・・。

外に出たKは、普通のKだった。

「さて、行くか」

玄関先の櫻の大木から、ハラハラと淡い桃色の櫻が舞い落ちる。 櫻の雪の中、ポリアを先頭にクォシカの墓参りに向かう。 ラキームの敷地内の並木道の櫻は、儚げでキレイであった。

行く途中、ポリアは、ラキームの言動にイライラしながら。

「ケイ、一体どうするつもりなの?」

マルヴェリータは、呆れた声でポリアに。

「教えてくれないわよ。 着いて行きましょ。 解るわ」

Kは、マルヴェリータを見て、

「解ってきたね~・・・。 しっかし、歩き方がおあばさんだぜ?」

「う゛、うるさいわよ」

マルヴェリータは、マルタンへの帰りも馬車で帰ると。 荷馬車をもう手配してしまった。 なにせ、歩くのが苦痛なのだ。

しかし、イルガもシスティアナも、ラキームの話しを聴いているだけに笑えなかった。

昼過ぎ。

五人の姿は、墓地にあった。 花束に囲まれたクォシカ一家の墓石。 春の風に乗り、辺りに咲く桜や桃の花が舞っていた。

「・・・、」

Kは、碑に花を手向けて。 

システィアナは、懸命に祈っていた。

ポリア達は、Kの言う通りに直ぐに王都マルタンへ戻るべく、オガートの町を後にした。 見送りに、シェラハと、宿の女将の娘が来てくれた。 町の入り口の大きな楡の木の下。 シェラハは、みんなを乗せた荷馬車が消えるまで見送ってくれた。

Kは、馬車に乗っかるなり寝る。

疲れているのは、皆同じ。 ポリアやイルガとて、全力を出し切って筋肉痛が襲ってきていた。 それぞれが、食事くらいしか起きない。

御者の男は、老練の無口だが。 マルヴェリータの家に雇われたしっかりした人物だ。 なんもしないようで、水場に寄ったり、夜の夜営場所は抜かりのない場所にする。 

夜。 Kとこの老練な男性が、世界事情で話しが合えば。 様々な、文化、流通、名勝などが話題に上って、聴いていて暇にならなかった。

さて、マルタンには、約二日半。 着いたのは、オガートを経って4日目の朝である。 マルヴェリータの体調に合わせた結果だ。 もう、マルタンに近づくと、あちこちから来た荷馬車や乗用馬車が街道に列を作り出す。 

今日は、少し雲が多い。 Kは、空模様と風を感じて。

「あ~あ、こりゃ夜は雨くせ~な」

ポリアは、内心。

(雨に匂いは無い)

マルタンの街に入るための巨大な城門のような鉄の扉を潜り抜けた先は、海の香りが漂うマルタンだった。 道を歩く人の多さ。 通りを右往左往する馬車。 賑う雑踏、帰ってきたのだ・・・この大都市に。

街に入って、協力会の斡旋所【蒼海の天窓】がある道に入る手前で降ろしてもらった。

斡旋所に向かう途中、知り合いの冒険者達に会うポリア達だが。 チョットだけ仕事の出来が上だから、ポリア達よりマシな仕事を貰うだけで自慢する者達だ。 リーダーの男に絡まれたポリアだが、今までなら苛立つのが、妙にからかわれても気に為らなかった。

なにか気の削がれた彼らは、去るポリア達を逆に見送っていた。

さて、協力会の館の前に来た一行。 館の前からいきなり港を一望できる。

「なんか・・戻って来たのね」

マルヴェリータが、漏らした。

ポリアも、

「だね。 なんか・・・半月くらい戻ってない気がしてた」

システィアナは、海を見て。

「ここからの~うみさんは~とお~~ってもキレイですぅ」

イルガは、しみじみと。

「悲しい仕事じゃったわい」

それぞれが。 クォシカの事件が衝撃的過ぎたのだ。

だが、Kは。

「まだ終わってないぞ~」

と、館の中に。 

館の中の一階。 中央に有る丸いカウンター内から、K達を見たあの剥げた館の主人が席より立ち上がった。

「オイオイ、良く帰って来たな」

Kは、カウンターに近づきながら。

「どうやら、俺達より噂のほうが早かったか?」

主人は頷いて。

「ああ、行方不明の女の遺体見つけたんだろ?」

「解ってるなら話しは早い。 金」

ポリア達は、Kの捌ける姿に言葉が出ない。 今、金だのと貰うキモチには成れないのだが・・・。

主人が、カウンターの下に在る金袋を出して、

「しかし、凄いな~ポリア。 まさかとは思ったが、こんな難事件解決するたぁ~驚いた」

ポリアは、詰まんない様子で。

「解決したのは、ケイよ。 アタシは、モンスターと戦っただけ」

「ほぉ。 どんなのだ?」

マルヴェリータと、ポリアが見合ってから。 ポリアが、

「ゾンビとレヴナントとスケルトン。 あ゛~・・・紅いスケルトン?」

Kは、透かさずに。

「紅いスケルトンは、“ブラッディロア”。 死肉を喰らう大蛇の牙から生み出されるゴーレムだな」

金を小袋に入れる主人の手が止まり。 カウンターの内側に居る30くらいのバンダナ姿の男もポリアを見たし。 話しを聞いていた回りの冒険者達も、カウンターを見た。

大男の主人は、Kやポリアを見て。

「嘘・・・言ってないよな?」

ポリアは、あの激戦を思い出すと呆れてしまう。

「嘘言ってどうすんのよ」

「お前、“ブラッディロア”なんて生み出せるモンスターなんかそうそう居ないぞ?」

Kは、呆れた様子で。

「アホ。 クォシカに、ラミア・リベラルド掛けるぐらいの奴だぜ」

主人はギョっとした顔で、Kを見て興奮した言葉で。

「あっ・あんだと? 誰と戦ったんだ?!!」

Kは、あっさりと。

「根城に巣食ってたのがジェノサイスホロウ。 地下には面倒なガーディアンレウス居たし。 全く、疲れる仕事だった」

主人の手が完全に止まり、Kを凝視している。

「おい、早くしろ。 今日は忙しいんだ」

Kに言われて、ハッとした主人は、Kを見返しながら。

「おっおお・・・す・すまん・・」

(ふざけるなよ・・・そんな凶悪なモンスターを倒せる奴がいるのか?)

主人は、どう捕らえていいか解らない。 話しに出たモンスターの一部は、冒険者時代かなり有名だった主人自身だって戦った事が無い相手・・・・。 ただ、仕事は成功している。

「ほら・・五千シフォン」

Kは、金の入った袋を受け取るとポリアに渡して。 主人に、

「嘘だと思うなら、明日にでもジョイスに聞け。 これから、ジョイスの所に行くから」

主人は、聞いたことが有る名前だ。

「ジョイス? ん? 聴いたことあるが・・・?」

そこへ、マルヴェリータが、声を震わせてながら。

「ケ・・ケイ、まさかっ、ジョイスって・・・・王国宮廷魔術師総師団長の・・・ジョイス・・・様?」

Kは、主人やマルヴェリータを見て。

「他に誰が居るんだよ。 七年前はモンスター見て気絶しかけてたジョイスが、偉い身分に成ったもんだぜ」

と、言うと。 Kは、主人に。

「じゃな、お世話様」

と、背を向けた。

ポリアは、辺りを見る。 駆け出しの冒険者達が俄に騒ぎ始めていた。 今まで、ポリアが向こう側だったのに・・・。

イルガが。

「お嬢様、Kが出て行きますぞ」

「え? あ、あぁ、うん」

Kの後に続いていたシスティアナが、ドアを開けて待っている。

Kは、外に出ていた。

館の外に出たポリアは、Kに。

「なんか、中凄くなっていたわよ」

「そ」

マルヴェリータは、半信半疑の面持ちで。

「本当に、ジョイス様を知ってるの?」

「疑うなら、着いてくるか? ジョイスのゴミ屋敷」

「え?」

「アイツ、片付けられない男だから、屋敷ン中足の踏み場も少ない。 それでもいいなら、来るか? 本の津波に呑まれも、俺に文句言うなよ」

「イクっ!」

ポリアは、勢いで言った。

Kは、通りを戻ってマルタン最大の大通りに出ると、ひたすらに王城の方に歩き出した。 マルタンの商業中心地から、王城にはかなりの道のりがある。 歩いて半刻(1時間くらい)か。

空はウォーターブルーで、雲が多い。 政治の行われる行政区と、商業区の狭間には、広大で緑の豊かな植物園が在る。 毎日、何十万と云う人が訪れて、憩いの一時を過ごしていく。

噴水をベンチが囲む緑の女神広場が中心で、温室公園、野原公園、花園、林間公園の四区に分かれていて。 訪れる時期に合わせて四季折々の草花が楽しめる。

街を貫く大通りは、その一角も通り抜けている。 春の陽気がまだ続いて、蝶が何種類も花に止まっていたりするのどかな様子を見て歩く。

さて、行政区に入るとその景色は一変。 兵士の大きな宿舎や、日々の訓練所、各行政詰め所など、夥しい数の建物が、王城から街に向かって波状方に区画正しく整理されて並ぶ。 道に歩くのは、繋ぎの制服に身を包む兵士や、役人たち。 大通りの真ん中には黒い乗用の馬車が行き交う。

人も多いから、活気はあるが。 やはり、規律の中に生きる場所と云う雰囲気が強い。

「へぇ~、始めてきた。 結構、雰囲気あるわ」

ポリアが、周りを見て口にする。

一方、ポリアとマルヴェリータの美貌は、こんな所でも人目を引く。 歩いている兵士や役人も目を奪われていた。

しかも。

一同の歩く脇で馬車がいきなり止まり、黒い車体の窓が開く。 真横で止まるから、Kですら立ち止まると。 髭を持った初老の紳士が顔を出して。

「貴女は、ミス・マルヴェリータ?」

マルヴェリータも、父親の事が在る手前。

「はい、そうですが」

「おお、やはりトルメイニ氏のご令嬢で有りましたか。 私、お父上の知人です。 お見知りおきを」

「それは、わざわざ立ち止まってのご挨拶、ありがとうございます」

と。

Kは、馬車が行ってから。

「ま、この国一番の商人だものな、トルメイニ氏は」

マルヴェリータは、詰まらなそうに。

「私が継ぐわけじゃない家よ。 関係ないわ」

Kは、歩き出して。

「関係無い訳に行かないだろう。 キミと結婚すれば、政界にも、商業界にも幅が利く。 野心家や強欲な者からすれば、なまじに絶世の美人なキミを放っておかないさ」

マルヴェリータは、黙った。

ポリアは、話題を変えようと。

「ジョイス様の家ってまだなの?」

と、その時。 Kは、通りをすれ違うように近づいてきた紅い車体の馬車を見るなり、いきなり馬車前に出た。

「うわっ」

ポリアが驚き。

「どうっ、どうどうっ」

御者が、馬車を慌てて止めた。

「こら、危ないじゃないかっ!!」

御者の横に座る刺繍派手やかな高官の服装をした男が怒った。

だが、Kは気にしていない。

「おい、ジョイス。 何所行くんだ? この忙しいときに、また本屋巡りか?」

いきなり、馬車に言う。

「え゛?」

「はあ?」

ポリアと、マルヴェリータが見合って、また馬車を見る。

高官の男が、

「こらっ!! ジョイス様を呼び捨てにするとはなんたる輩だ!!!」

と、怒った時。

「ん~?」

馬車の窓から、ボサッとした頭の男性が顔を出して。 Kを見るなりに顔を明るくさせて。

「あ~、リーダーっだ!!」

と、驚く。

高官の男は、馬車から顔を出す男性を見て。

「ジョイス様、お知り合いでしょうか?」

「うん、私の師匠だ。 今、降りる」

ポリアとマルヴェリータは、声を合わせて。

「しっ師匠ぉ?!!」

Kは、降りるジョイスの元に行くなり、まだ降りきらぬジョイス氏の頭を“ペシっ”っと叩く。

「アイタっ!」

つんのめって出てくるジョイス氏。

ポリアもマルヴェリータも驚いて。

「ちょちっちょっとっ!!」

高官の男も驚いて。

「きっキサマっ!!!」

だが、立ったジョイスは、Kに腰が低くて。

「リ~ダ~怒らないでよぉ~。 ちゃんと待ってたじゃ~ん」

しかし、ジョイス氏を見るKは、呆れた口調で。

「お前が俺に話しを持ってきたんだろう。 また、タラ~ンと読書と研究ばっかりしてたんだろうが」

ジョイスと云う男性、Kよりも頭一つは高い背で、見ればまだ30前後の優しそうで知的ないい男なのだ。 しかし、Kに敬礼して。

「そんなことありませ~ん。 ちゃんと待ってました。 ハイ、仕事して待ってました」

「はっ、お前の粗方知ってる俺が、信じるかっ~の」

言い訳が通じないのでジョイスは、Kに縋って。

「リ~ダァァ~、マジですって」

普段、王国宮廷魔術師総師団長ジョイス=クライムスレイとしての威厳は・・・・どこにも無い。 マルヴェリータは、パーティーなどでこの男を何度か見ている。 しっかりした姿で、王の横に居た姿しか知らない。

結局・・・ジョイスの据え膳上げ膳の謝りで、Kを含めてポリア達も馬車に乗って、ジョイスの屋敷に戻る事になる。

馬車の中 キリリと姿勢を正したジョイスは、確かに風格があった。

「こんにちわ、ポリアと申します」

ポリアが挨拶すれば。

「ご丁寧に、ジョイスです」

と、頭を下げるジョイス。

「ちょちょっと、頭など下げないで下さい」

慌てるポリア。

だが、Kは。

「コイツに遠慮はいらね~よ。 お前、またネコ被ってやがるな」

と、また頭を叩く。

「ういてっ、リィ~ダ~。 仕事上、建前もいるってぇ~」

と、ジョイスが弱々しくなる。

マルヴェリータは、興味深深になった。

「ジョイス様、マルヴェリータと申します。 商人トルメイニの娘です」

「ん? あぁ、見た事ありますね~。 一年前の王の誕生パーティーかな?」

「はい、お見知りおきありがとうございます。 あの・・・ジョイス様は、ケイを知ってるんですか?」

すると、ジョイスは笑って。

「知ってるも何も、リ~ダ~は、私の最初の入ったチームのリ~ダ~だもの。 いやぁ、いい思い出だぁ~。 あの、一生懸命に冒険した頃・・・」

感慨深いジョイスの横で、Kは口元をワナワナさせて。

「ほぉぉ・・・。 モンスター見て気絶して、知ってる魔法を間違って唱えるし、挙句にパニックで女風呂に突入したお前の日々が、一生懸命だったか?」

「へ?」

「はぁ?」

「ほう」

「う~ん」

ポリア、マルヴェリータ、イルガ、システィアナが眼を細めてジョイスを見る。

ジョイスは、パッとKを見て。

「リーダーっ、それは言ってはいけませんっ!!」

シレ~っとするKは、横を向いた。

ジョイスは、七年前にKと一年近く冒険者のチームに居たらしい。 その後、Kは抜けて。 チームは解散し、ジョイスは残った仲間と新しいパーティーを組んだ。 

【ライアットウィング】

今から二年前まで、世界を駆け抜けたジョイスの超有名チームである。 こう見えて、ジョイスの魔法は、世界五指に入ると謳われる。 特に、幻術や魔想魔術の補助魔法に掛けては世界一だとも・・・。 冒険者の引退と云うか、活動休止をした時、この国の宮廷魔術師の下っ端として仕官することを条件に入ったのだが。 やはり腕が良すぎるために、逆に閑職のこの地位に据えられたと云われる。

しかし、一見自由気ままのジョイスだが、その知性と正義感は並の思いでは無い。 だから、王に土下座されてこの地位に。

さて、くだらない話しは途中で終わった。 そう、ラキームの調査をKに依頼したのは、なんとジョイスであった。 事の始まりは、二ヶ月前。 クォシカの失踪前にまで遡る。 ラキームは、他にも問題を起こしていたのだ。

野菜の取り引きに来ていたある商人が、マルタンから来ていた別の商人の娘にちょっかいを出していたラキームに対して、勇敢にも怒って叱責をしたのだ。 ラキームは、その時はかなり酒に酔っていたらしく。 商人に剣を抜いたらしい。

その場は、ラキームの付き人らしき剣士が抑えたというから、ガロンが抑えたのだろう。  しかし、その商人は、その二日後に死体となってしまった。 オガートから半日と離れていない畑の中で。

しかも、十日前にKがそれを聴きに行ったら、穿り出てきたのがクォシカの事件。

ジョイスの屋敷に着いて、話しは中断した。

まるで森の中に家を建てたような、そんな印象のジョイスの屋敷。

Kは、

「野人か」

と、言い捨てる。

二階建てながら、奥行きもある大きな屋敷、、白い石壁の外見はステキな家とポリア達は褒めたのだが・・・・。

「ちょっと散らかってるけど、どうぞ~」

と、玄関を潜ると・・・。

「あの~・・・」

ポリアもマルヴェリータも、眼が点に。 玄関から、もう人一人歩くスペースを残して、本や研究にでも使っていそうな素材が塔を作っていた。

マルヴェリータは、本の上に脱ぎ捨てた服があったり、自分ぐらいの長さをした何やらモンスターの角みたいなものが、本の塔と塔の間に入っていたりするのを見て。

「“片付けられない”んじゃないわ・・・片付ける気が無いのよ・・・」

と、頭痛がする。 なにせ、ジョイスはこう見えてモテる。 もう噂によれば、見合いの話しも半端な数では無いモノが来ているとか。 だがこの様子では、その気が無いのか。 結婚は難しいだろう。

さて。 本の塔で出来たうねくる迷路を、なんとか抜けると。 ソファーやダイニングの見え隠れするリビングに。

「さ、どうぞ。 楽にして」

「・・・・」

ポリア達は、返す言葉が出てこない・・・・本の塔に囲まれている。 かなりの圧迫感がある。 しかも、座れば背後に、だ。

Kは、さっさとソファーに座りつつ。

「アホ、最初でゆったり出来ンのはお前ぐらいだ。 後ろに不安定な本の山があるのに、オチオチ背もたれも出来ね~よ」

ポリア達は、そ~っとソファーに座る。

「え゛~、僕は毎日此処にすんでるんだよぉ~」

「テメエを基準にすんな」

ジョイスがお茶を入れる間、Kは皆に。

「いいか、デカイ声出すな。 本の雪崩が襲ってくる」

ポリアは、恐る恐る。

「倒れるの?」

「前来た時、ポリア達に会う半日前に。 あのバカが大声上げて、この一帯が崩れた」

「ふっ、ふふ」

珍しく、イルガが笑っていた。 顔はかなり引き攣っている。

さて、紅茶のカップが回り。 Kは、ジョイスに。

「ホレ」

と、何かを渡す。

「は~い」

ジョイスは、真四角な拳大の水晶を受け取る。

それを見たマルヴェリータは、驚いた。

「ええっ!! メモリアリー・ジュエルっ?!!」

大声が上がったその時、離れた隣の部屋で、“ズズズズ~ン!!”と云う音が。

「あ」

「あ~あ」

ジョイスと、Kが。

マルヴェリータは、音の方を見て。

「え?」

Kが、先に。

「崩れたな・・・山一つ」

「うん・・・確実・・」

と、投げやりのジョイス。

「ご・ごめんなさい」

マルヴェリータが、口に手を当てて謝る。

「いいのさ~、どうせゴミ屋敷だから・・あはは~」

ヤケクソの様に笑うジョイスだった。

ジョイスは、直ぐにクリスタルを手に眼を瞑った。

ポリアは、マルヴェリータに小声で。

(ね、メモリアルジュエルって、何?)

(オールド・レア・アイテムの一つよ。 魔法の解呪の魔法を受けると、肌身離さず持っている人物の見たままの映像を記憶出来るの。 記憶出来る長さは、長くて二日ぐらいって聞くわ。 解呪と、封呪の呪文で、記憶する時を自分で決められるの)

(そんなアイテム在るの?)

(今では、とても造れないアイテムよ)

ポリアは、あの最後の旅立ちの日、どうしてKがラキームに事件の真相を言わせたかが解った。

黙る中で、どんどんジョイスの顔が見ている他人にも解るくらいに険しいモノに変わった。

紅茶が・・湯気を上げなくなった頃。

「リーダー・・・これは、捨て置けないね・・・王に言わなくては・・」

と、ジョイスが眼を開けた。

Kは、静かに頷くと。

「最後のラキームを見たか?」

「うん」

「あの笑うツラ、死んだ曽祖父に当たるクソジジイにそっくりだ。 全く、血は争えない」

「そうか、リーダーはあの5年前の事件・・・当事者だもんね」

「まぁな」

ジョイスも、全てを知る人物であるようだった。

ポリアは、ラキームのこれからが、Kのお陰で台無しになるのだと悟った。

ジョイスは、Kを見ると。

「リーダー、変わったね。 女性を救うなんて、僕とは大違いだ」

「はっ、生きてりゃ人も変わるさ。 お前だって、不幸にした訳じゃないだろう? ただ、運が悪かったのさ・・・」

二人の語り合う姿が、少し侘しいモノになったのをポリア達は見た。

「うん・・・コレ、預かる」

「ああ、早く処理しちまいな。 遅々としてたら、ラキーム親父が死ぬ。 息子の不祥事だ、下手すると事がバレる。 お前が早急に動けば、王の心の痛みも少なくて済む」

「オーケー、リーダーは頭がいい」

「お前が、悪いんだ」

「クぅ~、勝てない」

「お前に負けたら、もう墓に横になるしかないな」

「うわ。 酷い言い方だなぁ~。 傷付いた、僕のピュアハートが傷付いたぁ~」

二人の下らない言い合いが始まった時、ポリアは。

「あの・・」

と、声掛けるのだが・・・。 ジョイスとKは言い合いを始め。

「だいたいなぁ~、お前は・・・」

「りーだーはさぁ・・・」

ポリアは、また聞きたくて。

「すいませんが・・」

だが、二人の掛け合いはエスカレート。

イラっとしたポリアは、本気になって。

「ちょっとっ!!!!」

と、机を叩いた。

瞬間。 Kと、ジョイスが止まって。

「あ」

「え?」

いきなり、周りが揺れた。

「うわっぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」

ジョイスの屋敷から、皆の大声が絶叫じみて上がったのは、地震並みの振動と雪崩のような音が物語る出来事。

「ふぅ~・・・」

少しして、痣だらけのジョイスが、山に戻った周りを見て言う。

Kは、ソファーの周りを見て。

「お前・・・魔法で元に戻せるなら片付けろよ」

「い~や、コレを片付ける権限は、僕の奥さんになる人だけ~」

「はぁ~?」

ジョイスは、デコを摩りつつ言う。

目の前のポリア達は、痣だらけでワナワナしている。 

Kだけが、全くの乱れが無い。

ジョイスは、ポリアに。

「で? お話はなあに? キレイな剣士さん」

と、笑ってお世辞も込めた。

腕組むポリアは、引き攣る口元を隠さずに。

「アデオロシュ様の城は如何に?」

ジョイスは、Kを見て。

「そうだね~。 ラキーム氏の事後、王国の学者と魔術師に調査させるよ。 無論、亡骸は王に申し上げて丁寧に葬らせてもらう。 これ以上、悪霊になられても困るし」

ポリアは、それを聞いて安心した。

「それは、安心したわ。 Kから聞いて、なんか人事のように思えなかったから」

Kは、立ち上がった。 部屋が暗くなり始めた。 外が、夕方になって、雲が多くなったようだった。

ジョイスも、ラキームの事を政務官と話し合う為、K達と外に出る。 屋敷の前が、王国の馬車が止めてある駐車場である。 紅い馬車は、ジョイス専用車だ。

「便利な立地だわなぁ」

Kが言えば。

「うん。 直ぐに本を買いに行ける様に」

と、ジョイスが言うなり。

「おいおい、私的流用じゃね~か」

Kは、呆れた。

ポリア達を、乗せて街に送るようにジョイスが計らってくれた。

馬車に乗る前、マルヴェリータはジョイスに。

「ジョイス様、一つ・・・お伺いしてもよろしいですか?」

「ん? なんだい?」

マルヴェリータは、一瞬躊躇うように下を向いてから。

「私・・・魔術師として、仲間を助ける知識を持ちません。 たまにお伺いして、色んなお話を聞かせていただけませんか? Kを見て・・・そう思ったんです・・・」

ジョイスは、最後に残るKを見る。

「ジョイス、真面目にこのお嬢さんは知識無い。 魔術師になる目的が、みんなと違ってた。 駆け出しの魔術師と変わらない」

ジョイスは、マルヴェリータを見ると。

「何時でも訪ねて来ていい。 もし、冒険や仕事で手に余るような事や、知らない事には知識を貸してあげよう」

マルヴェリータは、ホッとしたように笑った。

「ありがとうございます」

「うん」

ジョイスは、その時、初めてマルヴェリータがキレイと思えた。 今までは、キレイさがキツイとすら思えるような冷めたモノだったのに。 今の笑顔は、とても無防備でよかった。

Kは、ジョイスに寄って。

「お守りは代わったぜ」

と、言って馬車に乗った。

(お守りかよ)

ジョイスは、納得した。 何故、Kがポリア達を連れてきたのか。

こうして、全ては終わる筈だった。 Kとポリア達が別れて、全ては終わると・・・。 Kも、ポリア達も。

だが、 全ては夜に一変した。 霧雨が煙り、夜の天気はKの予想通りに。

風呂に入り、寝る前の晩酌を楽しむK以外のポリア達四人が居る宿の一階のバーカウンター。 オガートの仕事の感想や、思い出に浸り出している時。

「おいっ!!、此処に包帯を顔に巻いた男は居ないかっぁ?!!!」

宿に泊まったポリア達の元に、夜中近くになって斡旋所の主人の使いが遣って来たのだ。 宿の従業員の案内よってバーカウンターに現れた斡旋所の手伝いの男の顔は、必死の形相で、全身が汗か降る雨なのか解らないくらいに湯気立って濡れて息が荒かった・・・。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー前半完ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。