6、森の奥に在る巨城に棲まう魔物達
6、森の奥に在る巨城に棲まう魔物達
現れたスケルトンやゾンビの数は、総勢15体。 Kは、大した数では無いと言い切る。
兵士達3人は、ラキームを守って率先した戦いは行わない様だった。
一方、スケルトン十匹に、イルガやガロンが向かう。
「ポリア、イルガに着け。 ゾンビは俺一人で十分だ」
Kの声は簡潔にして、響きがいい。
ガロンとて、ゾンビが斬ったくらいで死ぬことが無い事は承知である。 しかも、ポリアの剣が白銀製であることも。 異論を唱えようとした瞬間、Kはツカツカと歩み寄ったゾンビの首筋を掬いに斬った。
「なっ」
驚くガロンの前で、ゾンビの首から暗黒の光が飛び散って、ゾンビが倒れる。
Kは、素早かった。 直ぐに先の四体に走って行く。 一体は、腹。 二体は首。 最後の一体は咽元にエネルギーが在ったが。 全て、Kに斬り払われて、その場に崩れる。 なんと、スケルトンが半分倒される前に終わっているのだ。
「たあっ!」
「うおりゃ!!」
ポリアと、イルガが次々とスケルトンを破壊する。
「ふん!!」
ガロンが、二振りの斬り払いで二匹を破壊して。
「御主、一体どうして普通の剣でゾンビを斬れる。 しかも、急所のエネルギーが解るのか?」
Kは、口元に不敵な笑みを見せて。
「対処の仕方を考えておくのも努力のウチさ。 人間には、大抵強かれ弱かれ魔力は有る。 有るものをフル活用するのも、自分の気持ち次第だ」
だが・・・。
(どんな努力よ・・・)
マルヴェリータは、心の中で呻いた。 実は、魔力を使えるようになる訓練は生半可なことでは無い。 魔法を教える学院で教わる引き出し方ですら、ほぼ全ての魔術師の卵達が気絶するほどの訓練で引き出せるのである。 問題は、Kのやり方。 マルヴェリータは、Kに聴いてはいないが、Kが魔法学院を出ていないと思っている。 剣を極めて、Kは体術も扱える。 しかも、時間の掛かる学院の修行法など、いくらKでもやる時間は無いはずなのだ。
(おそらく、戦いの中で覚醒したのね・・・魔法を扱う精神の遣い方に)
これが、どれほどに恐ろしい事か・・・。 例えるなら、体中を縛りつけ。 水に顔を入れらて死ぬギリギリで引き上げられる行為を何百回も繰り返す。 死ぬのが先か・・覚醒が先か・・・危険はそれほどに付き纏う。 普通の精神で行えるものでは無い。
ポリアとイルガが、最後のスケルトンを半壊させて戦いは終わった。
Kは、直ぐに。
「行くぞ。 もう、相手の腹の中。 休みは、歩きながらだ」
誰もが、身体にこの場所の只ならぬ空気を感じていた。
Kを先頭に、全員が歩き出した。
森を少し行くと、川が流れる上に架けられた橋に行き着いた。 町に在る橋よりも造りが立派で、手摺りなどには、風雨で削れているが素晴らしい模様の彫刻があった。
Kは、間近に迫った城の外壁を森越しで見て。
「おいおい、昔の“神殿風雅造り”じゃないか・・・流石はなぁ~」
ガロンは、四角い土手の外壁が十メートル以上の高さを誇り。 その土手の上に建てられていると見えた巨大な塔を見上げている。
「この建物を知っているのか、ケイ?」
イルガが尋ねる。
「システィアナにはいい話じゃないな。 昔の王侯貴族は、自分の権威を神に似せる為に、建築物を荘厳華麗にして、天に近づくと云う意味で神殿と同じ物を造り始めた。 今から三百年以上前に、魔法技術が大崩壊をして世界の人口が6割減った。 時空のズレが起って、三百年前とは時間にすれば千年近い時が過ぎている。 その名残がこうゆう建物さ」
「えらぶったらいけないんです~」
システィアナは、ムクれて言う。
「当時、何が起ったのだ?」
「さ~、現実を知る者は全て消えた。 人伝に聞くのは、魔法の臨界点を超えた超魔術によって魔法を遣う者が魔法に滅ぼされてしまったとか。 世界の都市が死滅したとか・・・色々だな」
Kは、川を渡りつつ。
「言える事は、大改革が世界中で巻き起こったのは、事実か。 民衆の政治に転換したのが、その頃だろう。 この国でも、“無血の交代”と云われる改革が行われたしな」
ポリアも、後を行きつつ。
「ウチの国でも、学力と政治に明るい市民が参加出来る様になったわ。 ま、貴族の権力や威光はまだ根強くあるけどね」
全員が橋を渡った後、森を抜けてKは建物の傍に来た時。
「さて、全員走る準備してくれ」
ラキームは、恐怖からやや引きつった声で。
「な・なんでだっ」
「道はこっちだ」
と、Kは森が建物の脇で洞窟のように暗黒の口を開けて茂る道を指す。
「真っ暗だわ・・」
ポリアは、シェラハを背にして道を覗く。
システィアナが、ブルブル怯えた顔で。
「このなかは~モウジャさんがい~っぱいいますよぉぉぉ・・・」
ラキームは。Kに噛み付くぐらいの勢いで。
「ふざけるなっ!!! 私を殺す気かっ!!!」
怒鳴られたKは、耳に右の小指を入れて困った様子。
シェラハは、道を見て。 Kに顔を移し。
「行かないといけないんですか?」
「当たり前だろう。 “ゴーストネスト”だ」
「それは、一体・・・」
と、問い返すシェラハの前で、ガロンが訝しげにKを見て居ながら。
「死霊の巣窟・・・暗黒の空間の中に、夥しいゴーストが居る。 道の距離はさして無いが。 立ち止ってしまったら最後・・・ゴーストに取り憑かれて死に至る」
ラキームは、怯えだして。
「い・イヤだっ!!! 私は行かないぞ」
すると、Kは。
「あ、そう。 じゃ、此処に居てくれ。 そのうち、ゴーストが痺れを切らして出てくるわな。 ちょいと、システィアナ」
と、システィアナを見て。
「なんですか~?」
「此処に残って、コイツのお守りするか?」
と、ラキーム達を指差す。
「イヤで~す。 シェラハさんのおまもり~ぬで~す」
Kは、ラキームを見ると。
「ゴーストに剣は効かない。 倒せるのは、俺と、システィアナと、ポリアのみ。 誰も此処に残らないから。 じゃ、いくか」
ポリアは、怯えるラキームがいい気味で仕方ない。
「オーケー、先に誰が入るの」
「ポリアとシスティアナが先頭だ。 次がイルガとマルヴェリータ。 走れ、止まるな。 ゴーストは、俺が潰す。 シェラハは、ポリアとマルヴェリータの間で前だけ見ろ。 決して、振り向くな」
ラキームは、勝手に動き出すK達を見て、更に慌てだす。
「おっ・おい、おいおいおいいいいいいぃっ!!! 勝手に行くなーーーっ!!!」
シェラハは、ラキームを見て。
「私は、クォシカを迎えに来たのよ。 アナタに指図される覚えは無いわ」
するとガロンは、ラキームに寄って。
「ラキーム様、此処は入ったほうが得策です。 先に入れば、殿は包帯男です。 取り憑かれるのは、あの男が最初です。 ゴーストは、人の歩く速度ぐらいしか動けませんから」
「そ・そうなのか?!! なっならいこうっ!! 物共っ、行くぞ!」
ラキームは、われ先と兵士より先に走り出す。 兵士達も、慌てて追う。
その様子にKは呆れて。
「やりゃ出来んじゃないか。 早よしろよ」
と、ポリアに光の杖を渡す。
「行くわよ」
ポリアは、みんなを見て走り出した。 走り込んだ道は、本当に森の中と云う感じでは無く。 漆黒というか暗黒と云うべき真っ暗な洞窟でしかない。
「うわっう゛わ゛−−−−っ!!!」
先で、ラキームの絶叫が上がる。
「走ってっ!!! さぁっ!!!」
ガロンの叱咤が飛ぶ。
その意味が直ぐに解った。
―あ゛あ゛あ゛・・・―
不気味な人の唸り声・・・。 嫌、“人”というのは声になっているからであって、声の質感はゾンビの声に似ている。 地の底から湧き上がる不気味な音といってもいい。
「キャッ!」
シェラハの横に、ボンヤリと人の死んだ姿が浮かび上がる。 青白い、眼球の無い顔である。
「走って!! 止まっちゃ駄目よっ!!」
ポリアの声がした。 辺りから、どんどんとゴーストが湧き上がるように現れる。
振り返るポリアと、マルヴェリータ。 直ぐ後ろで、青白い色に黄色や赤の炎の様な色の混じるゴーストが、一瞬の黄金の光によって直ぐに苦しみ悶えて消えていくのが見えた。
(ケイ!!)
どうやって倒しているのか。 二人にはさっぱり解らない。
「どんどん走れーーーーーーーーっ!!!!!!!! 遅いっ!! 追いつかれて死にたいかっ!!!!!!」
暗闇の空間に、Kの大喝が。
「わっ!!、なんて声よっ」
ポリアの方が、その声に震えるぐらいである。
前のガロンは、闇の中で走りながら。
(なんて声だ・・・余程の者だな、あの男)
これは、手練を積んだ者なら解る。 腹からの声は、その鍛え方に比例するからだ。 現に、走り去る脇に居たゴーストが、Kの声に怯えたようで動けずに蟠っていた。
兵士の一人が、前に出口が見えて。
「ラキーム様、あと少しです!」
「おっおわおわおわお」
情けない声のラキームだった。 杖の光で見えるラキームの顔は、鼻水と涙で酷い間抜け面である。
どんどん出口に近づいて、ラキームと兵士が出た。 ガロンも、出た。
「ん?」
ガロンの脇で息の荒いラキームは、転がり這いつくばっている。 ガロンは、ラキームよりも目前に広がる森に囲まれた湖が気になった。
(なんと不気味な湖だ)
まず、臭い。 腐った水の匂いが漂う。 水面すら濁り、突き出している木の枝なども、苔生しているのではなく。 なんとなく腐って爛れているように見える。
「うは~、でれました~」
と、システィアナが。
「早く早くっ!!」
ポリアが、声を出しながら出た。
イルガとシェラハが出て、マルヴェリータが出る。
そして・・・。
「うわっ!!」
あお向けて空気を貪っていたラキームの前に、ゴーストに纏わり憑かれたKが出てきた。
「あわあわあわわわわ・・・」
ビックリして、腰抜けた這い蹲りで逃げ出すラキーム。
Kは、気にもしてない様子で、
「全員出たか?」
と。
「ケっ、ケイ!!」
ポリアが声を上げる。 ゴーストの顔が歪み悪鬼の様になって、Kに襲い掛かった。
が・・・。
Kの剣が閃いた。 五・六体のゴーストは、瞬時にバラバラに斬られた。
―お゛お゛お゛・・・―
気持ちの悪い呻きか唸り声を上げ、ゴーストは消えていく。
Kは、消滅するゴーストを気にも留めず、湖に歩み寄ってを見て。
「厄介だな。 湖全体が、腐って死霊の巣になってる」
ガロンは、この稀に見る腕前の包帯男を見て。
「やはり、取り憑かれてるか?」
「ああ、早く中に入る所を探そう。 その内、湖からモンスター共が這い上がってくるぞ」
ラキームは、鼻水に土が着いて汚れた顔で。
「そんなの、どこにあるっ?!」
Kは、建物の土台にして下の階層を持つ、四角い巨大建造物を指差して。
「“ゴーストネスト”になってるのが、建物の南側の茂みだ。 湖の前が、建物の西側」
「だからどうしたっ!!!!」
怒鳴る声すら、泣き声のように聞こえてくるラキームに、ポリア達はうんざり。
Kは、詰まらなそうに続けて。
「昔の建造物は、太陽に窓を向けて光を拝む造りになってるんだ。 入り口は、全て西側」
「早く言えっ!!! この愚か者っ!!!」
ポリアは、イライラしてきた。
「うるさいわね~、その汚い顔はなんとか成らないの?」
ラキームはハッとして、急いで服の袖で拭うも。
マルヴェリータが、冷たく。
「あら、余計に汚い顔になったわね。 土の方が、綺麗だったわ」
と、歩き出すKの後に続いた。
シェラハなど、ラキームの顔すら見えてない。
さて、森と湖に囲まれた神殿城は、巨大な正方台形であり。 その土台の中心にして、土台の上に円錐の山のように聳える塔を有する。 土台の下の壁は、真っ白い石だったのだろうが。 今は不気味な苔と蔦が外壁に生えて見栄えは悪い。
ガロンは、その塔の上に雲が渦を巻いているのが気になった。
「あんな風に雲が渦を巻くのか・・・初めて見る・・・」
Kは、ガロンに。
「あんなの、今に出てきたら大問題だよ。 此処は、怨霊によって異世界化した幻想空間だ」
「な、なんだとっ?!! 現実の世界では無いのか?」
「ああ。 此処は城に居る主がテリトリーとして、過去の世界を生み出す為に時間の流れを移したんだろう。 凶悪なゴーストモンスターが持つ能力さ」
冷や汗を顔に滲ませたガロンは、驚いてKに近寄った。
「お前っ!! こんな能力のモンスターなどそうそう居ないだろうっ?!!」
Kは、苦く笑って。
「当たり前だろう。 最高位のゴーストモンスターさ」
ガロンは、ゴーストが倒すのに面倒なモンスターなのは十二分に承知だ。 ゴーストの上位モンスターの恐ろしさも知っている。 ガロンの顔が焦りに染まり、怒鳴り声が出る。
「見当がついてるなら言えっ!! 一体、どんなモンスターなんだっ!!」
「遭うまでは、コレとは言えないが。 多分・・・赤い炎のような人型なら“ジェノサイスホロウ”。 黒い人型で、骸骨姿ならアビレイス・インフェルノ”かな」
「な゛っ・・・」
ガロンはその場に震えて黙りだす。 モンスターの名前を聞いて、目の前が真っ暗に成る思いがする。
ラキームは、ガロンに寄って。
「な・・なんだ? ガ・ガロン? アビレなんとかとか・・ジェノなんとかホロウってなんだ?」
涙目のシスティアナが、ブルブル震えて。
「そんなのかてませ~ん。 どっちも、死霊の最強モンスターです~」
ポリアも、事態の意味が解ってきた。
「待ってよ・・・死霊って・・・高位に成ると、人を呪い殺す呪術を遣うんじゃないの?!」
Kは、頷いて。
「ああ。 種類にも由るが、ここのボスなら、訳無く使えるんじゃないか?」
全員が、アッサリ言うKを見た。
もう、恐怖に気が狂いそうな顔のラキームが。
「かかか勝てるかぁっ?!!!」
Kは、歩いて。
「何で、死にに来るんだ? 早くいくぞ。 日が暮れると、それこそ俺以外は死んじまうぞ」
ガロンは、Kに確かめたかった。
「お前っ、全て知っていたのかっ?!!」
Kは、其処に落ちた物でも拾うかの様にあっさりとしていて。
「ああ、此処で起った事件の歴史は知っていたからな。 大体の想像はついてるさ」
「何で一人で来なかったっ?!!!!!!」
ガロンは、Kの今に悪意染みたモノを感じていた。
Kは、立ち止まって横を向くと。 ガロンやラキームを見る訳でもない素振りながら、やや間を置いてから。
「・・・・・・・・・・、決まってんだろうが。 テメエと、そのバカの町史のお陰で死ぬハメに成った女の弔いだからよ。 しかと見ておけ、自分達の撒いた悪行の末をな」
そう言って、ガロンとラキームに向くと。
「雇った冒険者達がクォシカを誘拐したとして、お前達はどうした? クズ野郎共が」
すると、ラキームが慌てて、
「ううううウルサイっ!! クォシカが悪いんだっ!! 俺の女になれば良かったモノを・・・断りやがって!!!」
すると、シェラハが堪らずにラキームに寄った。
「やっぱり・・やっぱりクォシカを襲わせたのねっ?!! 最低よっ!!!!」
ラキームは、シェラハにヒステリックに怒鳴り返す。
「ウルサイっ ウルサイっ ウルサイっぃ!!!!!!!! 俺は町史だぁーーーーー!!! お前等とは違うんだぁーーーーっ!!!!」
その時、誰よりも先に、ポリアが剣を引き抜いてラキームの首に突き付けた。
「はぁっ」
ラキームが、息を呑んで声が出なくなる。
「貴様っ!!」
兵士とガロンが怒鳴って剣に手を掛ける。
ポリアは、ガロンや兵士を睨んで。
「勘違いしないで、煩いのよコイツ」
と、言ってからラキームを見て。
「もう、帰れないんだから。 死なないように協力しなさいよ。 アンタの撒いた種でしょ? 死にたくないなら、コッチの妨げにならないでよね」
「はっ・・はいっ」
言ったラキームの首から、剣は離れた。
「シェラハ、行こう。 クォシカを見つけるのが先よ」
ラキームを睨んだシェラハだが、ポリアの言葉に従った。
Kは、それを見て。
(いい冒険者になるな~。 ま、まだまだ経験が足りないがな)
そのまま歩いて、入り口を探した。歩く西側の壁伝いの湖の全体を見渡せるまん前付近で、大きな二枚の木の扉がある。 高さが三メートル以上はありそうだ。 だが、風化してが、朽ちて壊れかかっている。
ラキーム達は、K達より離れて歩いていた。
「ケイ、開きそう?」
見ているKは。
「こんな扉、もう中身が腐ってるから蹴り倒すしかないさ」
と、おもいっきりでもない足蹴を見舞えば・・。 “ギギギぃ~”と建物の中に扉が倒れて、“バタァ~ン!!!”と、埃を舞い上げた。
Kは、中を見て。
「ほ~、流石だね。 建物の中は、昔の芸術品の塊だこりゃ」
と、中へ。
「学者って、こんな非常時に知識欲が沸く訳?」
と、ポリアはKの知識欲に呆れた。
「ですな~」
イルガは、シェラハを気遣いつつ中に入った。
入った中は、何百年も経っているのに、当時の権威を窺わせるものだった。 広がるロビーは、埃と蜘蛛の巣が体積してゴミばかりなのに、床に見える絵は、天地創造の大作である。
周りを見れば、入り口の壁に沿って入った直ぐの左右に廊下が広がり。 少し行った二階へ上がる大階段の脇に左右へドアの有った枠だけが口を開けていた。
二階は、高く七・八メートルは上に上がっていて。 埃塗れで朽ち掛けながらに、分厚い最上質の絨毯が敷かれていた。 上がった先は踊り場になり、前方に上へ行く階段と左右に二階の壁に設けられた円形の廊下に行く為の回廊が。 二階の廊下は、グルリとロビーを見下ろせるバルコニーの様だ。
「凄い・・・かもね・・・」
ポリアも、その広さと造りの全てに圧倒されそうだ。
「お嬢様、こんな建物はお城でも在りませんぞ」
イルガも圧巻だった。
この時、ラキーム達も中に入って来た。
「な・なんて広い建物だ・・我が屋敷など蟻のようだ・・・」
誰もが、ロビーだけで圧倒される雰囲気に呑まれている。
そこに、Kが気付けのように言葉を投げる。
「さて、檻に入った俺等を殺しに亡者共が現れるぜ」
全員が辺りを見て警戒した。 廊下・・・ドアの先・・・階段・・・二階・・・。
しかし、Kは前を見たままに。
「違う。 湖さ」
全員の顔が外に向いた瞬間。
―う゛う゛・・・あ゛あ゛・・・―
「なっ!!!! なんだぁっ?!!」
ラキーム、不気味な声に反応する。
湖より、一体・・また一体とモンスターが這い上がってくる。 ゾンビ・・・スケルトン・・・ゴーストに加えて、蒼い色の肌をしたゾンビも現れた。
「ケっケイっ!! 数が尋常じゃないわっ!!!!」
マルヴェリータの声が、建物に響いた。
現れたモンスターも群れは、ざっと数えても四・五十以上。
「どどどうするんだっ?!!!」
ラキームが、ガロンと共に階段に来た。
Kは、皆に。
「周りに隠れてろ。 俺に照準を合わさせるんだ。 息を殺して、声を出すな。 早く、散れ」
と。 一人、皆の間を抜けて入り口に向かった。
「ラキーム様っ、早くこちらへ」
兵士とガロンに連れられて、もう腰砕けのラキームは右のドア枠の先の部屋に隠れた。
シェラハを庇い、隠れるマルヴェリータやイルガ達。
ポリアだけ、Kの傍に居て。
「一人で大丈夫なのっ?!!!」
「足手纏いが邪魔だ。 お~ば~かちゃんのポリアに心配されるとは、俺も引退期が近いかね~」
ポリアは、もう入って来ようとしているモンスターの群れを見て。
「駄目だったら化けて出てやるんだからっ!!」
と、隠れる為に離れる。
(駄目なら、俺も死んでるってよ・・・)
Kは、詰まらなくも笑えた。
ゴーストが、壁を突き抜けてKに襲い掛かる。 Kの剣は腰から抜かれていて、二体のゴーストが斬られて掻き消されるように薄れて消える。
一方、隠れたシスティアナが、ガタガタ震えて。
(アワアワアワ・・レヴナントまでいましゅ~こ・こわい・・)
マルヴェリータは、知らない名前に。
(なんなの? 蒼いゾンビ?)
(そ・そそ・・憎しみでゾンビしゃんになったモンスターで・・人のオニクかすきなんですぅぅ。 たべられちゃうと・・死んだ人は呪いでゴ~ストになちゃうんですぅぅぅ)
(ちょっと、嫌ね)
(しししかも~、レヴナントは猛毒をツメと~歯にもってましゅ・・ドクドクネイルとドクドク噛み噛みですぅ~)
(システィ、ここでもそんな言い方出来る余裕あるのね)
(くっクッセ~でしゅ)
(クセでしょ?)
こんな話の中でも、Kは先行するゴーストを斬り払いつつ、ゆっくりと後退する。
ガロンは、態と後退しているのは解ったが・・・。
(一体、どうするつもりだ)
Kは、左手だけで斬っている。 右手は、ダラリと背中のコートの下に入れているだけだ。
二十体以上のゴーストを倒した時、スケルトンやゾンビ達が全てロビーに入って、何十もの群れとなってKに襲い掛かるべく歩みを速めた。
するとKは、一気に大階段まで走って、三段目ぐらいまでに駆け上る。
(何っ?!!)
見ていたガロンを始め、ポリア達も固唾を呑む気持ちから、手に汗握る息の詰まった状態に来た。
「そら、喰らえ!」
Kは、モンスターの群れに向かって、右手の何かを投げた。
(あ゛)
(何っ?!)
白い、拳大の真珠のような珠であった。 流れる様に放物線を描く珠が、見ている皆にはゆっくりとした光景に見えたのは、一瞬の事。 吸い込まれる様にモンスターの群れの中に落ちた後。
「うわっ」
「キャ」
「ちょっ」
白い目映い光が、落ちた場所から零れだす。 光は一気に膨張して、ポリア達もラキーム達も見ていられなくなった。
(ケイっ!)
と、ポリアが一瞬だけ見たKは、光に背を向けて。 立っていたのだった・・・。
光の中からは、白い鳥の羽が溢れんばかりに現れて飛び散り降り注ぐ・・・。 光は、モンスターの身体を貫いて、舞い降り降り注ぐ羽はモンスターの身体を溶かすように光を放つ。
すると・・・どうだろう。 スケルトンは剣を落として崩れて逝き。 ゾンビやレヴナントも、憎しみ苦しむ歪んだ顔が、心なしか穏やかに成って塵になって逝く。
「・・・」
見直す全員の前で、羽に浄化されたモンスターは塵と成り果てて、床に落ちて消える羽と共に姿は消えた・・・。
全てが消える中で、ポリアがロビーに出て来た。
「き・・・キレイ・・・な、何?」
Kは、ポリアの方を向いて。
「“天使の羽ばたき”と云う魔宝珠だ。 光の上位精霊が、天使でな。 その力を、三百年前はこうして宝珠に出来たらしい」
マルヴェリータは、最後の羽を見て。
「なんか・・ゾンビの顔が穏やかになったけど・・」
すると、システィアナは喜んで出てきた。
「み~んなみ~んな開放されたんですぅ。 にくしみやうらみから~。 フィリア~ナ様みたいですぅ」
出てきたラキームは、Kに向かって胸を張った。
「フン、いいもの持ってるじゃないか。 後は、主だけだろう?」
「バカ、まだ居るよ」
「あ?」
「この建物の上部の階層から、雑魚モンスターの気配がしてる。 此処まで倒した数で、ざっと全体の七割くらいか」
「なんだとぉ・・・まだ残ってるのにあんなもん使ったのかっ?!!!」
「ああ、最後の群れは、町史さまの武勇伝に取っておいてやった。 頑張って、倒してくれ」
「うむむむ・・・ふざけるなぁっ!!!」
と、怒鳴ったラキームに、ポリアが青筋を立て、
「首斬られないと解んないかしらね」
と、唸る。
ラキームは、殺気を感じてガロンの後ろに隠れた。
さて、此処でおかしい点に気付いたのはマルヴェリータだった。
「ケイ、待って・・・なんか変じゃない?」
「マルタ、どうしたのよ急に」
ポリアに問われるが、マルヴェリータは包帯男に問う。
「ケイ、モンスターの数が多すぎるわよ。 だってそうでしょ? 百年近く前に行方不明に成った町人は五・六十人でしょ? ゴーストの数にしたって、ゾンビの数にスケルトンの数を足したら、ゆうに二百は超えちゃうわ」
Kは、然して驚く事も無く。
「だねぇ」
ポリアは、それを見て。
「まさか・・・この城って・・・主だけじゃないの?」
Kは、呆れたように。
「ポリア、世界の城で主だけの城なんてそうそう有る訳ないですぜ」
マルヴェリータは、確信した。
「やっぱり・・・アナタ、此処がどうゆう所か知ってるのね?」
「ああ、此処は知られない惨劇の舞台さ。 そう、“アデオロシュの惨劇”のな」
誰も、聞いたことが無い言葉だった。
Kは、続けて。
「この国の国民が知る歴史・・・“無血の交代”。 アレには裏が在ってな。 この場は無血の中に語られぬ、ある流血惨劇があった場所さ」
“無血の交代”は、ホーチト王国の誇れる歴史転換事件。 この国生まれのマルヴェリータは、この国の歴史を汚された気がして。
「嘘よっ!!。 レブセテイル王の行った革命に血なんて流れてないわっ!!!」
すると、Kは不敵に笑って口元を変えた。
「おいおい、そんなに人間がキレイなモンかよ・・・ま、改革の旗印になったんだ。 それくらいの伝説も必要だわなぁ~」
Kは、階段を上がって踊り場にいった。
“無血の交代”・・・それは、このホーチト王国の栄光だ。 三百年前の或る時まで、この王国も絶対王政にして、厳しい階級制度と、貴族政治が上に君臨していた。 革命前の王は、専横の激しい冷血人間だったが。 自分の息子の中でも、第八子のレブセテイルを可愛がっていた。
その当時、ホーチト国の北に在る国は、内戦状態にあり。 ホーチト国は、国境を封鎖していたのだ。
しかし・・、北の国の解放軍も、王国軍も、ホーチト国に戦争介入してもらい泥沼にして、勝機を得ようとしていた。 その手は、当時の王に子供に対しての不信感を与える事に繋がっていて。 この国王は、息子八人の内、五人を疑心暗鬼から殺していた。
レブセテイルは、新しい国の構想を持っていた。 階級制度を緩和して、商業・農業を一般国民に開放しようというのである。 当時、全ての土地・商業・農業の権利は貴族が持ち。 一般の民は生きてるだけの奴隷に近かった。
転機は、レブセテイルの結婚にあった。 皇族の遠縁にて、当時の軍事権の大半を持っていた大将軍の娘が妃である。 この将軍は、レブセテイルこそ新たな国を創る王に成ると信じて、レブセテイルの父親が死んだときに、殆どの貴族が集まった時に合わせてクーデターを起こしたのだった。
レブセテイルを王と認めさせて、民衆に開放を宣言。 自由の息吹に湧いた国で、新たな政策が産まれた。
レブセテイル王は、商人の崇める王であり。 無血の改革の象徴として世界に有名な王となった。 だからこそ、レブセテイルをバカにする者など、ホーチト王国には居ないのだ。 悪く言うのは、貴族だけである。
今や、商人達が力を持ってしまい。 貴族出の大臣達とて、商人達を無視できない。 国政に入る半分の政治役人は、商人や学者などの知識人だからだ。
マルヴェリータは、焦りの篭った眼差しを包帯男に向けて。
「ケイ、一体どうゆう事よ?」
「あのさ。 普通なら、レブセテイルが王位に就くんだ。 クーデターなんか必要ないだろう? 必要だから、クーデターを起こしたんだ」
イルガも。
「して、その必要とは?」
「この国の人で、アデオロシュ家を知る者は殆ど居ない。 知っていても、改革当時に居た皇族ぐらいしか知らない。 何でだと想う?」
マルヴェリータは、首を振った。
踊り場にて、Kは上を見た。
「アデオロシュ家・・・改革直前の当時、第三の王位継承権を持ち。 武勲で有名な皇族だった。 当時、貴族達はレブセテイルの性格を知っていてね。 専横政治を続ける為に、このアデオロシュ家の当主、アデオロシュ十四世を王にしようと画策していたんだよ」
「まさか・・・」
「当たり前だろう? 貴族の誰もが、権力の上で楽園人生だもの。 なんで、手放したいと全員が想うんだ? 例えば、今の商人達で、自分の財力を全て捨てていいって想うの何人居る?」
誰もが、黙った。 商人の娘であるマルヴェリータは、返す言葉など見つかる訳もない。
「アデオロシュ十四世は、非常に気性の激しい人間で。 貴族・絶対王政に拍車を掛けたいとすら想っていた野心家だ。 北の内戦状態の国も、アデオロシュの王位を望んでいただろう。 だから、大将軍としては、アデオロシュを生かしておけなかった。 いや、クーデター直後に殺しておかないと、貴族の加担で反旗を翻す事は確実だった・・・。 だから、無血の為に必要な流血を行った」
ガロンは、階段の前に来て。
「お前・・・なんで知っているんだ?」
「アデオロシュのこの神殿城へ、クーデターの在った夜に将軍の配下の軍勢が押し寄せた。 町の民にはこれからの自由を説いて、緘口令を敷き。 深夜に攻めた。 その時、唯一この城に知らせに走った者がいたのさ。 この城に、自分の家族が奉公していた学者だ。 だが、間に合わなかった・・・」
ポリアは、起ったことを想像して、ゾッとした。
「ま・・・まさか、無血の改革の為に・・・生き証人は作らなかった?」
「その通り。 レブセテイル王すら知らない事実。 この城は、その日は死んだ王の為に葬儀に行く仕度のアデオロシュ一族を始め、迎えの貴族も合わせて数百名が居た。 その全員が襲われた。 そして、アデオロシュの子供も、使用人も、住み暮らしていた奉公人も、女中も全てが殺された」
「嘘・・・本当なの?」
「信じられない・・」
マルヴェリータもシェラハも、愕然とした。
Kは、言う。
「この呪い・・この亡霊が何よりの証拠であり。 アデオロシュ家は、交差する二本の剣と燃え上がる炎が家紋なんだ」
と、後ろを指差して。
「ポリア、杖を高く掲げてみろ」
ポリアは、みんなを見ながら杖を掲げると・・・。
「あっ」
ポリアやマルヴェリータは声を上げ、シェラハは口を手で押さえた。
Kの後ろにあるステンドグラスには、紅い炎に交差する青白い二本の剣があった。
Kは、その家紋を振り返って見て。
「唯一の生き証人。 知らせに走った学者は、一人で逃げた。 家族を殺されて・・・改革の波に飲まれて事実を語れず、そして落ちぶれて友人の家で死んだ。 その時、彼を愛して居たのが友人の娘であり、俺に証拠のアデオロシュの内情を語った学者の母親だ。 ある仕事で、家に取り憑いた幽霊を払った時に、成仏させる為に色々と知る事に成った。 まさか・・・その惨劇の地に来ようとは想わなかったがな」
ポリアは、Kの立つ階段を上って。
「アナタが、成仏仕切れなかった生き証人の学者さんを・・・?」
「ああ、仕事だもの」
Kは、そう言ってから一呼吸おいて。
「ま、こんな事を世間で語っても、誰も信じはしないがな」
マルヴェリータは、アデオロシュの事が気になった。
「ケイ、そのアデオロシュ家の当主が、何でモンスターに?」
「考えてみろ。 家臣を殺され、家族を皆殺しにされて・・・。 当時、オガートの花と歌われた彼の妃を自分で殺した男だ。 話は、こうだ・・・。 血で染まった城のこの階段で、アデオロシュ候は叫んだ」
―おのれっ!! 下衆な将軍の兵士共めっ!! この高貴たるわが身体に貴様らの刃を入れて死ぬなど出来ぬわっ!!! 覚えていよっ・・・全てを呪い・・全てを怨み・・命の全てを滅する怨念と成ってくれるわっ!!!!!!!―
「彼は、そう言って自分で自分の首を斬った。 そして、将軍の兵に紛れて居た当時の魔術師が、この神殿城を森ごと封印したんだ。 時間を掛けて埋葬したら、事件が明るみに出るからな。 この場所に誰も入れないようにした。 だが、返ってそれが亡者の温床となり、遂にアデオロシュ候が怨霊のモンスターに成った」
ポリアは、その無情な仕打ちに顔を歪める。
「最低じゃない・・・勝手に殺しておいて」
「レブセテイル王に知られるのが、何よりまずいからね。 知られたら、あの王の性格からして弔うだけじゃなく。 何らかの処罰を自分に下しただろう。 無血の改革に流血の事実は必要無く、新しい国の維持に向かう王には無粋な現実は必要無かった訳さ」
「ケイ・・・」
悲しそうなポリアだ。
だが、Kはハッキリしている。
「だがな、今のアデオロシュは人でもなんでもない。 生命を憎んで、人を亡霊に変える怨霊でしかない。 俺からすれば、時代そぐわず。 時代に逆らった愚か者だ。 自分の寿命も、一家の寿命も消したんだ。 地位の為にな」
すると・・・いきなり上から声が。
―言うてくれるな、侵入者の分際で―
「わっ」
「な・何っ?!」
「こわいです~、人じゃないですぅ!」
システィアナには、その声の主が生きているか、いないかが解る。
Kは、上に伸びる塔を見上げて。
「声だけか? アデオロシュ」
誰もが、Kを見て驚く。
上からの声は、威厳に満ちた男の声である。
―我が名を口にするな、下等の民がっ―
「ひぃっ!!」
ラキームは、その場の平伏した。
(なんて圧力のある声なの)
ポリアも、皇族に近い家だが。 こんな威厳のある声は聞いたことがない。
だが、Kだけは恐れも無いらしい。
「家柄に縛られてる戯け者よりマシだよ。 これから、払いに行ってやる。 上で待つか? それとも、こっちの手間省きに降りて来るか?」
上から響く声は。
―大そうな自信だな。 我が、貴様の身体を八つ裂きにしてくれよう。 上って来い、我は最上部で待ってやろう―
せせら笑う顔のKは、
「どこまでも上からだね~」
ポリアは、ポツリと。
「似てるわ・・・」
Kは、ガロンを見て。
「俺は、上に行く。 御宅も来るか? それとも、此処の調査でもしてるか?」
ガロンは、Kの腹を読んでみたように。
「貴様の手には乗らん。 我々は、この場の調査と、退路の確保をする」
Kは、あっさりと頷いて、上を目指すようだ。
「ちょ・ちょっと!!!」
ポリアは、Kに待ったを掛ける。
「ん? どうした?」
「“どうした”じゃないわよ。 私達はどうするのよっ?!!」
Kは、頭を掻いて。
「さあ~。 ラキームと手分けして調査してていいぞ。 クォシカの遺体が何所にあるか解らないから。 目的は、それだ」
ポリアは呆れた。
「目的って、当たり前じゃない。 クォシカの遺体が、その主のところに在ったらどうするのよ?」
「それは、持って来るが・・・」
「こんなデカイ城みたいな場所を、私達だけで探してたら明日になるわよっ!!!!」
「なら、待ってろよ。 こんなデカイ城ですから。 上に行く“魔法床陣”はあるだろう」
ポリアは、ここまで来て一人で行くとは想わなかった。
Kは、ラキームを見て。
「ま、俺が抜けても。 この人数なら、そのバカ殿を守れるだろう。 一番の心配は、クォシカの今の姿だ」
マルヴェリータは頷いて。
「まだ・・・モンスターとして出てきてないものね・・・」
Kは、上を向いて。
「アデオロシュは、元々から烈気激しい上に今は魔物・・・。 クォシカみたいな者には、どんな事をするか解ったものじゃない。 そして、アデオロシュの呪いを終わらせる事が、倒して直ぐに出来るとも限らないし・・・」
ガロンは、それが聞き捨てならない。
「お前、主を倒せば終わると言ったではないかっ」
Kは、頷く。
「確かに、言った。 正しく言うなら、倒して手順を踏めば終わる。 だから、足手纏いは今は困るのさ」
「“手順”だとぉ?」
「この辺り一帯を異空間と変える結界を張った魔方陣が何処かにある。 奴の元に在るならいいが。 無いなら、探さないと・・・。 問題なのは、野郎が態と怨念を見せびらかすようにして、魔方陣の波動を消してやがる。 奴の元に無いなら倒してから、波動を探さないと。 俺は、上の始末をして、探すよ」
ラキームは、唸りながら。
「我々は、下からか・・」
「ああ、アデオロシュを倒せば、マルヴェリータやシスティアナが感じられるはず。 死人が出ても困るし、そっちに手は多いほうがいい」
Kは、あくまでも勝った後を考えていた。 その言動、ポリアやガロンには受け入れ難い。
しかし、Kは上に上がって行ってしまう。 Kが三階より、螺旋階段となる塔の上部へと消えて行くのをポリア達は見上げていた・・・。
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