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second episode2 借金なんて聞いてないっ!!
ウィリアム編セカンドシーズン:借金王スティールの大冒険前編




1、いざっ!!! 来たの(北の)大陸へ





早朝、一日良く晴れそうな快晴の空。 初夏に相応しい爽やかな海風に運ばれて、一艘の木造貨物運搬船が北の大陸に向かっていた。

「ん~。 もう直ぐだぁ」

甲板の先で、船の向かう先を見ている若者が居る。 背丈が百七十よりやや上で、細身の青年だ。 白み掛かった灰色の髪は、クセ毛で先端でウェーブが掛かっているままに両目の脇に凭れている。 澄み切った瞳に、インテリ風の利発そうな顔立ちは柔らかく、これまた中々の好青年。 皮の動きやすい鎧を上半身に、膝には皮のプロテクターを。 具足は金属の物を履いている。 腰周りに武器は見えない。 小さい荷物を入れる小物入れがベルトのやや背中の方に二つ。 背中には、軽そうな萎んだ背負い袋があるだけである

そう、彼の名はは、ウィリアム。 五日以上前、コンコース島の交易都市ノルノーから旅立った青年である。

「お~、なんか北の大陸を目前にしてくると、来たな~って感じがするなぁ~」

枯れ声に近い迫力ある声の男は、身長二メートル・・・いやもっと高いかもしれない。 屈強な筋肉の鎧のような身体に、短い黒髪の厳しい顔つきだが歳でも無い。 黒い鋼鉄の上半身鎧を身に着けて、腰には同じ金属のプロテクターを巻く。 青い皮のズボンを含めて、圧巻と言った風貌である。 しかも、背中に背負うのは、柄の長さだけで二メートル近い戦斧だ。 先には、太い大木も一刀両断しそうな大きい斧の刃が、背を向かい合って円を画くように付いている。 一応は、皮のプロテクターを被せてはいるが。 重量はいかほどだろうか・・・。 

彼は、アクトル。 ウィリアムの“世界を駆け抜ける”と云う言葉に釣られて一緒のチームに入った。 だが、のっけからウィリアムの才能に魅せられ、リーダーとして彼を認め始めている。

「ふあああぁぁぁ~~~。 まだ、着くの後だろぉ~? ・・・もう少し寝ようぜ」

大あくびをする男性は、スラリとした身体で、青いマントを羽織る。 上半身は軽い金属の黒鎧に、下はスタイリシュなオーダーメイドの皮ズボン。 色は黒いズボンだが、中々作りがいいのか身体に似合って足が長く、背丈も百八十をどうかと言った処。 腰には、金色の柄をした剣が見える。 

彼はスティール。 中々の男前ハンサムだ。 まだ歳もそんなに上ではないだろう。 薄い唇に、切れ長の眼。 顔もキリリと引き締まり、程よい高さの鼻に加えて、顔自体にニヒルな渋みもある。 後ろ髪も長く女性受けしそうだ。 アクトルとは同郷で義兄弟の仲らしいが。

そのスティールを細めた横目で見る青年は、可愛らしい顔つきの十・・五・六歳程の若い男の子のような印象を受ける。 一瞬女の子ともとれるかもしれない。 青い全身を包むローブと云う服に身を包み、被るフードから金髪の前髪が漏れていた。 背も余り高く無い。 右手に杖を持っている。

「それは~眠いでしょうね~。 船員さんと夜遅くまでカードゲームして、深酒してヘンタイ話に花咲かせてるし」

彼の名前は、ロイム。 魔想魔術師だ。 野垂れ死に寸前をウィリアムに助けられた弱虫である。 しかし、心根の優しさと、潜在能力的魔力はウィリアムも認める逸材。 問題は、直ぐ逃げるし、隠れるし、お漏らししそうに成るし、泣く処・・・だ。

スティールは、自分を横目の不審な目で見るロイムにスススッと近寄る。 自分も、細めた目でロイムを見て。

「ほ~・・・ロイムせんせ~よぉぉ・・。 俺にナシ付けンの~? 今度は、ロイムせんせ~の初夜スト~リ~を教えて貰おうじゃんか~」

ロイムは、ビクンと目を丸くさせて顔を真っ赤に染める。

「ななななっ・・なんで僕がああああっ」

スティールは、ロイムに抱きつく。

「うわあぁ~っ」

「ロイムく~ん。 どんな感じだったか・・・事細かに教えてもらお~じゃん」

「いやだぁっ!!」

ロイムが、もがいてジタバタと暴れだす。

ウィリアム達が島を旅立った事は、前回で書いたので深くは語らぬが。 ウィリアム達は、世界を駆け抜ける冒険者に成りたくて、こうして世界へと第一歩を踏み出したのである。

ウィリアムは、水平線の先に姿を見せる太陽の光を背に、ロイムとじゃれ合うスティールを見て。

「スティールさん。 多分、そろそろ貿易都市アハメイルが見えますよ」

スティールは、ロイムとピタリ止まって。

「あ? 到着はまだだろ?」

アクトルは、呆れてスティールを見る。

「おめえ、昨日さ。 早く着くって、船長に聞いたの忘れたか? 雨の区域を早く抜けたから、少し早く到着するって言ってたろ?」

スティールは、目をパチクリさせ。

「初耳ッス」

其処に空かさずウィリアムは、ボソッと。

「船長さんが恋した女性の特徴は?」

スティールは、ロイムを開放して胸を張り。

「股に大きい黒子が有った~美人の踊り子ぉっ!!」

ロイム・アクトルは顔に手をやり。

「阿呆が・・・」

「そ~んなんばっかり覚えてる~」

言わせたウィリアムは、苦笑いであった。

さて。 船は広げた帆によって南東風を受けて速度を上げる。 朝日が、水平線から船の高さを超える角度に上がる頃。 コンコース島の大都市ノルノーを超える広い港が見えていた。

フラストマド大王国。 世界最大の国土面積を誇る国であり、国の古さも世界最古。 国の人口が五億を超えていて。 世界の国のリーダー的存在の国でもある。 フラストマドの王は、代々穏健派が勤め。 世界に和平を促して、今日の安定世界が実現している。

ウィリアム達が船と共に乗りつける港のアハメイルは、世界最大の貿易・交易都市であり。 人口が二千万を優に超えている。 日中の人が一番多い頃は、四千万人に近いのではなかろうか。

交易都市ながら、各省庁の監督庁があり。 軍隊も二万が常時駐屯していると云われる。

アクトル・スティールは、この都市を中心に前のチームと活動していた。 云って見れば、古巣のような物だ。 ロイムも、前に捨てられたチームとこの街から船で旅立ったので知っている。

この都市には、船を停泊させる湾が四つある。 しかも、一つの湾で大型船を縦に2隻も船着き出来る船着場が100本以上も。 湾から外れた場所にも漁船や個人の船なども停泊外付けの港の広さが、2キロに及ぶ。

船が全ての人の唯一の移動手段であり、荷物を運ぶ輸送手段でも有る為に、アハメイルには毎日夥しい船が出港し、入港する。

ウィリアム達を乗せた船は、馬の馬蹄型の湾“ホースネイル”に入港した。

ウィリアムは、甲板の高みから周りを見るが。 島のように突き出た4つの港を見渡しきれない。 心から感心して。

「凄いですよね~。 広大な大都市を囲むように、湾が4つもあるなんて・・」

アクトルは、鴎が飛ぶ空を見上げながら。

「ああ、この都市は本当にデカい。 迷子になるぜ」

スティールは、アクトルに。

「アーク、ホースネイルだと・・・。 都市に一番離れてる湾だよなぁ?」

「あ? ホースネイルだから。 港町前の湾だから近いぞ。 遠いのは、ホワイトティース湾だな」

「ああ、そうか」

ウィリアム達を乗せた船は、積み上げ・積み下ろしをする船の出入りの激しい処から、数本船着場を離して停泊した。 

直ぐに橋が架けられ、ウィリアム達は港に降りたのである。




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船長達と別れて、ウィリアムを先頭とした一行は、忙しく積荷を載せたり、下ろしたりして人や荷物の往来が激しい渡し場に居た。 

渡し場とは、港と都市を繋ぐ広い石の道である。 波打ち際の音もする砂浜と海上の渡し場の道だ。 幅は50メートルぐらい。 木製の小さな車輪を付けた押し車に、何箱も木箱を積み上げて大急ぎで運ぶ人、運び出す人数多く。 降り立つ旅客や、これから乗る客の往来も激しい。

「おいっ、邪魔だ邪魔っ!!!」

「おか~さん、見て見てっ!!! お船が一杯あるよ~」

「荷物どっちだ~?」

「お前っ、乗り遅れるぞっ!!!!」

様々にあちこちで声が飛んでいた。

ウィリアムは、海上に港が有るのは初めて見る。 かなり大きい船などを見上げながら。

「凄いな~。 コレが、世界の最大貿易都市かぁ」

アクトルは、爽やかな風を受けながら。 中々見ない大型の船なども見える中で。

「此処は、本当に凄い。 人も物もな。 有りすぎて、溢れ返ってる感じだよ」

ロイムは、汗ばむ杖を持つ手に困りながら。

「あれ~? スティールさんは?」

この時、ウィリアムは何かすご~く嫌な予感を覚えた。

(なんだろう・・・スティールさんの名前を聞いて、嘗て無い震えを感じる・・・。 冒険者としての凄さじゃなく・・・凄く嫌な・・・)

ウィリアムのこのカンは、的中である。

ウィリアム達が見上げている大型旅客船の甲板から、数人の若い女性が降りてきていた。 皆、様々な色のドレスを着て、きゅ~てぃ~な日傘を差し、若さの弾ける声でお話しながら。

船が着くと、移動式の階段が据えられて、旅客が降りる訳だが。

その若い女性達の先頭では、三人の女性の中でも一番の美女が降りる時だ。

「お嬢さん、お手を」

スティールが、何時の間にやらウィリアム達から離れて船の横側に移動していたのである。

「え?」

美人女性は、後一段降りれば港だと云う処で、前に男が現れて手を差し伸べて来るのにキョトンと。

スティールは、キザッたらしく目を細めて。

「お嬢さん、下を御覧なさい」

美女達の集まりは、降りる港の足元を見れば、港の建設に使われている船着場の石材にヒビが入り。 ハイヒールの先が細い物はヒビに挟まりそうなのだ。

スティールは、女性達を見て。

「せっかくの楽しい観光を、怪我などで台無しにしてはいけない。 さ、お手を貸そう。 跳び避けて」

その現場を、ウィリアム達は船の前の方から見つけて見ている。

「好きだねぇ~」

同郷で付き合いの長いアクトルは、もはや病気と割り切っている。

「ですね・・・。 あんなお金持ちみたいな女性まで落とすんだ」

ウィリアムは、幅の広さに呆れ感心した。

ロイムは、恥ずかしそうに。

「歩く痴人・・・生けるヘンタイ・・・人型モンスター・・・」

三人が見ている中で、スティールは跳び超える女性をサッと抱き上げた。

ロイムが、

「出た・・・お触り変質者」

と、横を向く。

「きゃーーーーーっ!!! 離してぇぇぇぇっ!!!」

と、嬌声が上がる。

「やってるな・・」

と、呆れて他人のフリを決め込むアクトル。

「もはや、犯罪レベルですねぇ~」

と、傍観のウィリアム。

女性は暴れて、スティールは叩かれる前に女性を下に下ろした。

が。

「ヘンタ~~~~~~~~イっ!!!!」

と、女性が日傘をスティールに投げる。 

「褒め言葉かな・・フッ」

スティールは、開かれた日傘を難なく避けた。

だが、その日傘は転がって女性の降りた船の反対側に停泊している積荷の真っ最中の船の方に、サッと強く吹いた風で転がりに勢いが・・・。

その時、赤い宝箱のような箱を抱える二日酔いのショぼけた顔をした船員の足元にその日傘が
ぶつかった。

「おわああっとおおおっ!!!」

足と足の間に日傘が入り、大きくバランスを崩す船員。

積荷を行う船の船長が、上からその状態を見ていて目をギョッとさせる。

「おいお前っ!!!!! それは最後に積むやつと言っただろうがああああああッ!!!!!!! 落とすなあアアっ!!!!」

と、ドデカイ声で叫ぶのだが。 バランスを崩した船乗りの真後ろに迫っていた、大きい荷物を抱えた別の船員が気付かずにぶつかってしまった。

「あわあああああ・・だああああっ」

宝箱のような箱を持っていた船員は、前に押されて大きく倒れた。 ポ~ン投げ出された箱は、激しく船着場の床石の上に落ちて転がり、借り置きしてあった碇のスペアに“ガツン!!!”と音を上げて当たったのである。

その光景を見た船長が、瞬時に死に物狂いの形相で、

「魔法爆弾に衝撃が入ったぞおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!! 全員海か遠くに逃げろおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!」

と、大絶叫を上げた。

途端。

「うぎゃあああッ!!!!」

「おかあああちゃーーーーーーーんっ!!!!!!」

「死にたくねえええええっ!!!!!!」

何十人と云う船員達が死に物狂いで逃げ出した。 船から海に飛び込む者。 全力ダッシュでウィリアム達の脇を走り去る者。

「へ? 何だって?」

スティールが、船長を見上げる時。

ウィリアムが、辺りに聴こえる様に全力の声で。

「鉱石発掘に使う強力爆弾だああああーーーっ!!!!!! 皆さん逃げてえええええっ!!!!!!」

スティールが、その声にハッと気付けば、下りて来た美女達はスカートの裾を両手で捲くり。 下着のスッリプが丸見えに成りながら、必死にウィリアムの方に走っていた。

スティールは、ニヤケて。

「あ、ヘイッ。 ハニ~、そんなに驚いて逃げるのさ~。 下着が丸見えだぜぇ~?」

と、ヘラヘラした顔でランニング程度に走り出した。

ウィリアムは、もう気が狂いそうで、スティールに喉が壊れんばかりに叫び上げた。

「スティールさんっ!!!!!!! 全力で走ってええええっ!!!!!!」

アクトルも、スティールの様子に気が狂いそうな顔で。

「バッカ野郎ぅぅぅっ!!!!!!! ハッパが弾けるんだよおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」

スティールは、その鉱山の抗夫言葉で初めて気付いた。

「うおおおおおおおおおおおっ!!!!! チョットまああああてえええええええっ!!!!!!」

と、いきなり全力疾走に成った。

ウィリアムは、転がった箱の蓋がパキンと外れて開いたのを見た瞬間。

「膨張したぞおおおおっ!!!!!! 海に飛び込めエエエエっ!!!!!!」

と、周りに大声を出して、先に逃げたロイムの方を向くと。 走りながら、

「伏せてえええええええええっ!!!!!!!」

と、前の石の道に飛び込んだ。

アクトルも、ウィリアムの脇に倒れて伏せる。

スティールが船の先端にたどり着いて飛ぼうとした瞬間。


“ドッッッッッカアァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンン!!!!!!!!!”

凄まじいと云うべきか・・・・。 噴火でも起こったような空気を揺るがす大爆音が起こり、瞬時に爆風が当たりに襲い掛かった。

「ウオアアアアアアアアアアっーーーーーーーーっ!!!!!!!!!」

スティールは、地面に飛び着くより先に爆風に攫われて飛ばされた。 ウィリアム達の頭上を越えて、港とビーチの間の海の中に放り込まれたのである。

ウィリアム達の身体を撫でる爆風・熱風は、砂浜のビーチまでに及んだ。

「ううう・・・・耳・・・・が・・・・」

ウィリアムは、耳を劈いた爆音が引いた後。 直ぐだか、少し時間が経過したような感じで、朦朧とした様子で起き上がる。 

その時、遠くで。

“バキバキバキバキィィィ・・・・”

と、鈍い木でも倒れるような音がするのを辛うじて聞くのだ。 

頭を振り、前を見れば。 離れた先の渡し場の道上で、何人もの人がウィリアム達が見ていた船の方を指差し驚いている。

「・・・・」

アクトルが起き上がる横で、ウィリアムは振り返った。

「あ゛っ!!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!!!」

ウィリアムは、振り返って目の前の光景に驚いた。 停泊していた船4隻が、バラバラに砕けて海に沈んで行くのが見えたのである。 耳が爆音で遠退いて、音が聞こえ難かったのだ。

(そん・・な・・・・コレは・・ないよ・・・・スティール・・・さん・・・)

見上げるばかりの大型の船が、大破して真っ二つに割れて沈む様子など・・・有り得なかった。 全身から力が抜けて、クタクタとその場に沈んだウィリアムである。




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昼前、ウィリアム達の身柄は、都市の東に広がる行政地区に有った。 行政地区の中心には、軍の総司令本部が有る。 石の建築ながら、威風堂々とした黒い大きな城の様な佇まいは。 素晴らしいの一言。

その指令本部北西部の離れに、この総司令部を治めるリオン氏の私室と、お客用の応接室がある。

リオン・・・。 北の大陸でこの名前の知名度は絶大だ。 彼は、フラストマド大王国の第二王子にして、総身優美の武人として知られる軍部総司令・近衛騎士団総師団長の肩書きを持つ天才剣士として有名なのだ。

だが・・・、このリオン。 まだ26歳ながら内面が中々の錬れた人物で。 信用の置ける者に軍部の仕事を任せては、秘かに冒険者として名を馳せる砕けた一面も持つ。 チーム“スターダスト”のリーダーで、剣士リファランス・ハピルマッハが、リオンその人であり。 時折、姿を変えて市政の中に一般人として紛れて活躍する。

ま、今。 ウィリアム達と、船主の男の前に居る総司令リオンは、緑の軍服に身を包む威厳の漂う若者として。 起こった事件の収拾に動いている訳だ。

柔らかい金髪、スティールよりやや高い背丈、整った顔は凛々しき王子と云う形容そのままである。

「双方の言い分は、しかと聞いた」

総司令リオンは、眉間に僅かばかり皺を寄せて頷く。 応接室のリオンの座る椅子から、右手に船主のホロー・オフグリが、四十半ばを超えた、太り捲くった巨体を揺らして怒りを込めて被害を更に訴える。

リオンの左手、四人掛けのソファーには、ウィリアムと、スティールとロイムが座り。 アクトルは、後ろに大きな椅子を用意してもらって座っている。

ウィリアムは、終始弁解はせずに謝罪を続けた。

リオンは、ウィリアムに厳しい顔つきで。

「全く、いくらなんでも女性に絡んでこんな被害を出すなんて前代未聞だ。 あの船着場は、来月の修理予定地だから、壊れたとしても直せばいいが。 船四隻の弁償は、此方では到底手に負えぬ。 死人が出なかったのが幸いだが。 怪我人が、四十名。 中には妊婦が衝撃で破水して大変だった。 とにかく、ホロー氏に対する弁償金の二十万シフォンは、なんとか自分達で用立ててくれたまえ」

リオンは、ウィリアムに最後の口調を強めて言い渡した。

「はい、了解しました」

ウィリアムは、頭を下げる。

リオンは、更にホロー氏を冷めた目で見ると。

「しかしだ。 落ち度は、あんな爆弾を通常荷物として用意したホロー氏にもある。 輸送荷物の運搬規定に反する訳だ。 船長の誤判とは云え、貴方にも監督不行きの責任で罰金を払って頂くから。 そのつもりで。 喧嘩両成敗で、法的な罪には不問とする、以上」

業つく因業商人を絵に描いたようなと云った顔のホロー氏。 黒い髪は気味悪く長い、脂ぎった顔、デカイたらこ唇。 唾を飛ばしてウィリアム達を罵り、金・金・金と吐く様子には、ウィリアム以上に、リオンも醜さと見ただろう。

リオンが、脇に控えて立っていた黒い軍服姿で五十近い印象の軍人を伴って応接室を後にした後だ。

商人ホローは、立ち上がり。

「お前等っ!!!! 良くも私に大損害を与えてくれたなっ?!!!! この弁償は命を捨ててでも返して貰うぞっ!!! いいかっ、三ヵ月だっ!!! 三ヵ月で二十万シフォンを耳揃えて返せっ!!! 返せないなら、命で償わせてやるぞっ!!!!!!」

と、言いたい放題怒鳴って、怒りに身を包みながら出て行った。

「ふぅ~・・・・・」

ウィリアムは、全身から力が抜けて前にのめる。

「す・・・スイマセン・・・・・」

スティールは、まだ濡れてる服や髪のままにパッとソファーの上に正座して土下座した。

ロイムは、ほぼ気絶状態で、後ろに凭れて天井を見ながら白目を向いて死んでいる。

アクトルは、音も少なく立ち上がり。 ムンズと、スティールの首根っこを掴み上げた。 スティールの身体が軽々と持ち上がり、そのままの体勢でグル~っと怒りの形相のアクトルに顔に対面した。

「あ・・・あはははは・・・・アーク・・・そんなに、コア~イ顔しないでよ・・・。 な、俺・・・悪気ないしさぁ~・・・あは・あははははは・・・」

鬼の顔のアクトルは、ギラギラ光る目をスティールに睨みつけて。

「オマエ・・・は・・・。 死にたいか? 何時も何時も・・・・女で迷惑かけてよぉ・・あぁっ?」

取り繕う間も無いスティールは、涙顔で。

「アークぅ~・・・御免よおぉぉ~・・・・。 爆弾なんて有るなんて知らなかったんだよぉ~」

「うるせえっ・・・・知る知らん以前の問題だっ!!!!!!」

アクトルが、殺気すら孕む怒声を上げた。 その時だ。

「フッフッフッ・・・・・」

と、ウィリアムの声が。

パッと、アクトルもスティールも、気絶し掛けていたロイムですら危ない気配を感じてウィリアムを見る。

ウィリアムは、前屈みで髪が顔に掛かり見えない。 不気味な印象だ。

「・・・女性に絡んで・・・・船四隻大破・・・・借金が・・・二十万・・・・たったの三ヵ月で返済・・・・・。 在り得ない・・・在り得無すぎる・・・・」

アクトルは、ウィリアムがぶっ壊れたと確信した。 背筋に汗が流れる。

「ウィリアムっ、コイツも反省してる。 その~・・・何だ。 殺すなら、金を作る過程で抹殺しよう・・・・な?」

ロイムは、ウィリアムの不気味さに脅えて股間を抑えて反対を向く。

(ごっ・ごごゴアイよおおおお・・・・ウィリアムが・・・壊れたよおお~・・・)

ウィリアムの顔が、チラリとスティールに向く。 顔は見えないが、目の辺りがギラリと光って。

「当然・・・命捨てる気は在りますよねぇ~?」

スティールは、首根っこを捕まれたままの体勢で、空中で姿勢を正して土下座した。

「在ります。 満々です。 このスティール、ウィリアム様の為ならば、例え火の中水の中、棺桶の中まで行かさせて頂きます。 へへぇ~」

と、言葉を並べ立てるが、内心。

(ウィリアムっておっかねええっ!!!!!)

涙が本気で出そうである。

アクトルも、

(本気だな・・・・義兄弟だが・・・そろそろ今生のお別れか? ウィリアムを怒らせるのだけは・・・辞めたほうがイイ・・・・俺は・・・しない)

と、脅えた。

さて、ウィリアム達一行は。 軍司令部を出て一路また港に戻った。 

(おいおい・・・なんだアレ?)

(しらねぇ・・・罪人じゃないか?)

待ち行く大通りの溢れ返った通行人が、ウィリアム一行を見てボソボソと話している。

それも、そのはずだ。 スティールの腕は、アクトルの持つロープでグルグル巻きにされて拘束されていた。 アハメイルの商業区は、非常に人がごった返す。 馬車の入れない歩行者天国になっている道では、晴れた日ならば歩く人が込み合い流れが出来る程。 その街中を、スティールの様な人物を連れていては目立つ事目立つ事。

スティールの姿に恥ずかしがるロイムを他所に、ウィリアム一行は商業区を通り抜け、港に向かう浜辺前の海岸大通りへと。 丁度、商店区と宿泊区の境で、海岸に並ぶ倉庫群が見える。 此処は、湾ホースネイルと、湾サンライズハーバーの間で。 突き出た島や岩場を埋め立てた倉庫群を形成する場所なのである。 

この倉庫群は、貯蔵庫でもあるが。 一部には、船員の仮泊まりの宿泊施設もあるのだ。 ウィリアムは、あの船の船長さんが此処に居ると聞いて遣って来た訳だ。

白い石壁の倉庫から荷物を出し入れする船乗りや、運搬業の働き手などに訪ねつつ。 ウィリアム達は、三階建ての古い木造の箱型宿舎に着いた。

ウィリアム達は、仕事の足を失わせた事で船長には酷く怒られるのを覚悟した。 中に入って。 二階ハンモックの並ぶ男の汗の匂いがする部屋の外れで、後始末に残っていた船長と面会した。

「あんた達、さっきの?」

倉庫群を望める窓。 ガラスなど入っていない、木枠のみの窓の前。 昼下がりも過ぎた頃、青い空が少し赤みを帯びた中で、ボロい机の前に座っていた船長がウィリアム達を見て声を上げた。

「先ほどは、大変すみませんでした。 船のお金、必ず弁償しますし。 皆さんが受け取る筈だった賃金も、立て替えます」

ウィリアムは、先頭に立って頭を下げる。 後から、一同頭を下げた。

日に焼けた、四十超えの燻し銀と言った印象の船長は、白髪混じりの髭を動かして。

「ああ・・・。 ま~派手に遣ってくれたぜアンタ等は・・・・・・。 でも、少し気が晴れたがな」

と、力なく笑う。

ウィリアム以下、皆は顔を上げて船長を見る。

「は? “気が・・晴れた”って・・・どうして?」

すると、船長は外の空を見る。

「俺ぁ~、雇われ船長さ。 元々、大型じゃ~無いが船持ちでやってたんだが、あのホローに船もみな取られた。 船の無い船長なんて、その辺の雑務やってる船員に毛が生えたようなモンだ・・。 ホローのバカ垂れに安い賃金で雇われて・・・毎日毎日ギリギリの生活と、仕事の毎日・・。 だがら」

船長は、ウィリアムに顔を戻して。

「船がぶっ壊れて、開放感は有ったな」

ロイムは、難しい顔で。

「そんな・・・船を動かせて、安全に航海してるのに・・」

スティールは、何とも言えない顔で。

「皆・・・クビか?」

船長は、疲れた顔で俯き。 首を左右に振る。

「いやいや~。 俺達船乗りは、船主との契約で働いてる。 ホローとは、無期承諾契約させられてる。 船が用意出着次第に、もっと安い賃金で働かされるだろうよ・・・。 アイツは、そうゆう事を有耶無耶にする金は惜しまないが。 人を雇う金には、尋常じゃ~ないケチだから」

ウィリアムは、船長の前に進んで。

「この国にも、海運省と労働省はあるはずですよね? そちらに、もう袖の下が回ってるんですか?」

船長は頷いて。

「俺も、二重契約書を書かされるとは思わなかった・・・。 少し相場より安いが、仕方無いと思ったら。 ホロ~の野郎、俺等を騙しやがって・・・」

アクトルは、鈍い顔で。

「酷いな。 だが、証明が出来ないなら、どうしようも無い・・・。 鉱山の抗夫の契約と変わらないんだなぁ~」

船長は、アクトルに目を向けて。

「その通りさ。 とにかく、アンタ等。 ホローに弁償金を請求されたろ?」

ウィリアムは、仲間を見て。

「ええ、二十万ほど・・・」

船長は、横を向いて。

「ケっ、そこまで価値なんぞあるか・・・。 ホローめ、今回を機に新しい船にするつもりかよ」

スティールは、驚いて船長に寄る。

「そっ・それは・・・どうゆう事だよ」

船長は、呆れた顔でスティールを見て。

「俺達が今まで使わされていた船は、お払い箱に成った廃棄船だ。 ホローは、一・二万シフォンで買いって来て、俺達に渡した。 航海で沈んだら、俺達の死んだ後に遺族へ弁償を請求するって言いやがる。 皆、必死で修理して、この二年も使ってた。 もうそろそろ限界だった筈だ。 アンタ等の破壊は、奴にしたら渡りに船だったのかもな」

スティールは、顔を怒らせてウィリアムを見て。

「おい・・・なんだコレ」

しかし、ウィリアムは冷静だ。

「証明が出来ません。 しかも悪いのがこちらですし、言い訳出来ません」

「クソっ・・・何で爆弾なんか・・・」

スティールは、悔しくなって横を向く。

船長は、スティールの背中を見ながら。

「あのホローって奴は、裏に回るとかなりの黒いツラが有る。 奴を告発しようとした奴が、今まで何人も暗殺されたか・・・。 馬鹿な考えは止めたほうがいいぞ。 とにかく、俺達の事はいい。 自分達の心配をしてくれ。 キチンと謝ってくれたなら、それでいいさ」

スティールは、生じ自分が貧乏なだけだったから。 船長に向いて。

「だがよっ、こっちの事はいいがっ・・・、アンタ等船員が給料下げられたら・・・一体ど~すんだよ」

船長は、弱弱しく笑い。

「ま~ったくだな。 実は、あの港で爆破した爆弾は、俺とホローしか知らない積荷だった。 あんな危険な積荷は、本来は金を掛けてさ。 輸送するんだよ。 だが、金をケチったホローが、俺に秘かに運ばせようとしたって訳。 海運省や商務省のお役人には、どうせ金掴ませて黙らせるが、悪者は必要だ。 だから、間違って俺が船に積もうとしたって事になるらしいな」

ウィリアム達は、とんでもない爆弾を爆発させてしまった事に後悔の念が浮ぶ。

ロイムは、暗い顔で。

「酷いね・・・。 スティールさんの・・・バカ・・・」

スティールは、堪らず。

「すまねえ・・・」

と、洩らす。

船長は、頷くと笑って。

「成るようにしかならねぇ~さ。 さ、アンタ等も殺し屋にヤられたくないなら。 稼ぐ手段を探しな」

ウィリアムは、船長に一礼すると。

「では、お言葉に甘えます。 それから、コレは前の仕事で多めに貰った報酬の一部なんですが。 船員さん達の生活の一部にして下さい」

と、モルビットから渡された三千シフォンの入った金袋を机に置いた。

船長は、片手で持て無い様な膨らみに。

「おいおい・・・コイツは・・・」

ウィリアムは、笑い。

「人助けで得たお金です。 自分達の行動で迷惑に成った方に、是非」

船長は、ウィリアムを見上げて。

「いいのか?」

「ええ。 船長は、船員を養って何ぼとか・・。 これ以上賃金下げられたら、船長さんの立つ瀬も無いと思います。 どうか、一時金みたいな物ですが。 納めて下さい」

船長は、金袋を見て頭を下げる。

「済まない。 船員の中には、まだガキが小さい奴が一杯居る。 俺も、な。 有り難く、受け取る」

こうして、ウィリアム達は夕日の中で。 砂浜の倉庫群から去った。




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さて、また繁華街の雑踏を歩くウィリアム達。

アクトルは先頭に立ち、斡旋所に向かいながら。

「全く、とんでも無ぇ~紐を引っ張ったモンだぜ。 “藪を突いたら、モンスター”、みたいだなぁ。 ・・・しっかし、買った倍以上の値段吹っかけるなんざぁ~相手もやり手だ」

後ろのウィリアムは、店頭に人だかりを作る店などを見回りながら。

「ですね。 とにかく、あのホロー氏は評判悪そうだ。 よりによって悪辣非道な方に喧嘩売りましたね」

スティールは、船長・船員達に悪い事をしたと塞ぎ気味である。

ロイムは、二十万をどう返せるか、不安を超えて胃が痛い。

さて、商店通りを抜けて。 更に、分岐したYの字の路地を右に。 人が通る数が少なくなり、行き違える人の姿に冒険者が目立つ。 冒険者達の中には、アクトルやスティールを知っているのか。 手を挙げて来たり、挨拶して来たりする一団も。

だが、スティールの顔は冴えないままだった。

さて、その通りの行き止まりには、“ダンス・カエサール”と、デカデカ大きく看板を掲げたショーパブ劇場が店構えを現した。

ウィリアムは、キワドイ衣装の踊り子の挿絵が入り口に置かれ、街灯の下にてチラホラと客が集まりだすショーパブを見て。

「此処・・・ですか?」

アクトルは、ショーパブ入り口に見える、両開きのガラス戸が八枚も対合わせで並ぶロビー前を指差し。

「外ドアを潜ると、ショーパブに入る内ドアと、地下の斡旋所に行く階段に別れてる」

「成る程、地下ですか」

「ああ」

ロイムは、別の道からショーパブ目当てに来る客達を見て。

「凄い構造だよね・・、何時見ても」

ウィリアムは、進みだして。

「ま、お金を稼ぐ場所と使う処が融合してるんですからね。 客観的には、合理的ですね~」

アクトルも歩き出しながら。

「かもなぁ。 でも、高いぞ~。 パブは」

ウィリアムは、呆れ笑いで。

「ぼったくりバーですねぇ~」

スティールは、今はパブを見ても何も言えない様子であった。

さて、曇りガラスの外ドアを引いて開けると、中央には進行出来る廊下が有って。 先には、お客の案内をするバニーちゃんが二人。 曇りの無いガラス戸の内戸越しに見えていた。

そのショーパブに行く直進通路の両サイドには、下に下る階段がある。

ウィリアムは、ウサちゃんの女性を一瞥して脇の階段に向かう。 ロイムは、何故か顔が赤くなっていた。

さて、夕方も大分暮れた中、暗くなる階段を下に降りれば。 フカフカのマットを壁にした様な、重厚な合わせ扉がある。 ドア前の天井には、グラスランプの灯り二つが灯っていた。

ウィリアムがドアを押して開けば・・・。 いきなり、雑踏が出迎えてくる。

「へぇ~」

シャンデリアの灯りが、あちらこちらに煌々と光って降り注ぐ。 丸で、広々とした立食パーティー会場の様な広いフロアに出た。 フロアには、入り口から波状型に十歩ほど距離を離して、レストランの様に、大小の円卓テーブルと、椅子を備えた席が奥まで広がる。

「あら、アクトル。 また、戻って来たのかい?」

赤い髪を長く伸ばしたスカート姿で、見るからに男っぽい感じの女性が声を掛けて来た。

ウィリアムは、その女性を見て。

「どうも」

と。

短い膝上のタイトな黒スカートに、上は黒皮のジャンパー。 左の腰の辺りに、打たれたら痛そうな刺付きの鞭が見える。

アクトルは、奥を見ながら。

「アジェンテ、ま・・・そんな所さ」

スッキリとしたボディーラインを、開かれたジャンパーの隙間から下に着るカジュアルシャツや生足に魅せるアジェンテと云う女性は、勝気な顔を微笑ませて。

「港で派手にやったらしいね。 もう、噂だよ」

アクトルは、呆れたため息一つ吐いて。

「はぁ、御蔭で借金地獄さ」

と、応えてから、ウィリアムに。

「奥に、カウンターがある。 そこで、聞こう」

「はい、解りました」

ウィリアムは、そう返してアジェンテを見ずに。

「失礼」

と、脇を通った。

ロイムや、アクトルも続く。

アジェンテは、最後に行くスティールに。

「浮かない顔ね。 ま、お荷物チームに加わったみたいだから、借金は大変ね」

すると、スティールは笑顔になり。 塩に汚れた髪をゴワゴワさせていながらに。

「アジェンテ。 俺を甘く見るなとは言わないが。 ウチのリーダーを甘くは見ないほうがイイゼ」

アジェンテは、ウィリアムを見て。

「彼?」

スティールは、アジェンテの脇を行きながら。

「一ヶ月。 それで、十分だ。 アジェンテのチームを抜くのはな」

「え?」

アジェンテは、スティールの言葉に動きも表情も止まった。 アジェンテのチームは、彼女をリーダーにした五人編成の“サルヴァートゥーレ”。 この都市では、中級の知名度が有る。

(私達を、一ヶ月で抜くですって? あの女狂い、遂に強がりしか言えなくなったの?)

アジェンテは、耳を疑った。 まだ、四・五十人ほどの冒険者達が、席に座ったり。 立ち話で情報交換したり、仕事についてチームで話し合ったりしている中に。 ウィリアム達が消えて行くのが見えた。

しかし、スティールの言った事は、決して強がりでは無かった。

ウィリアムが、一番奥に有る半円形のディーラーカウンター前に来て。 黒髪をオールバックにした白いYシャツに赤いベスト姿のダンディな中年男を見ると。

「すみません。 仕事の紹介お願いします」

ダンディな受付の男性は、鋭い目線でウィリアムを見返す。

「チームの名前は?」

「はい、セフティー・ファースト」

ウィリアムが名前を名乗ると。 男性の顔は少し窺う面向きに成り。

「待て、その名は・・・。 悪いが、こっちでは難しい。 地下二階に行ってくれ」

と、男性の後ろの壁の右手側に有る。 白いチェック模様をした扉へ促される。

アクトル・スティールは、お互いに向き合って。

「アークっ、“開かずの子供部屋”へ・・・だぞ」

「ああ・・・初めてだな・・」

そう、地下二階は、上級依頼を受ける場所だ。 通称が、“開かずの子供部屋”。 殆どの冒険者達が入れない奥。 スティールやアクトルは、世界に名を馳せると云った有名チームのみが潜れる場だと思っていた。

ウィリアムは、ダンディな受付に冷静な声で。

「解りました。 奥ですね」

と、白い扉に向かう。

後から追ってきたアジェンテは、ウィリアム達が地下二階に消えて行くのに驚いた。

(えッ?)

周りでも、初めて地下二階へ入る冒険者を見た者も居るのだろう。

「おい、今・・・」

「ああ・・・地下二階行ったな・・」

「アレ誰だよ・・・」

「よそ者が何で?」

冒険者達の声が飛ぶ中、アジェンテは受付のダンディな男性に詰め寄った。

「コーデュっ!!! 何であの四人が下に行くのよっ?!!! 何処の有名チームよっ!!!」

受付の男性は、アジェンテに鬱陶しい様な顔をして。

「コンコース島でチームを結成したばかりのチームだな。 活躍の度合いが早すぎて、チーム名の広がりが追いつかないみたいだ」

アジェンテは、意味が解らない。

「チョット待ってよっ!!! 結成仕立てで、何で地下二階に行ける訳っ?!!! こっちは、結成して三年っ、仕事だって五十はこなしてるわっ!!!!」

アジェンテの方が、ウィリアムやロイムよりキャリアは上だろうし。 腕っ節だけのアクトルやスティールより、難しい仕事を遣ってきた自負がある。

すると、受付の男性コーデュは、呆れた顔でアジェンテを見る。

「アジェンテ、お前・・・何か勘違いしてるな」

アジェンテは、これほどにプライドを傷つけられた事は無いと思い。

「何がよっ!!!!!」

と、吼え上げた。 周りの冒険者達も、コーデュと云う男性を見た。

だが・・・。

「いいか。 仕事を何百やろうが、何千やろうが。 それだけじゃ、上には行けないんだ。 たった一回の仕事でも、最良の方向に運んだチームと。 ただ、クリアーの評価だけを狙ってやるチームでは、評価そのものが根底で食い違う。 お前の遣り方は、その辺に幾らでも居るチームの仕事の仕方。 今、下に行ったチームは、短時間に二つの仕事を、最良の方向に運んでいる。 お前さんには、悪いが。 比べるに値しないんだ。 理解してくれ」

冷静に言われたアジェンテは、握る拳でスティールの言葉が浮ぶ。

“ウチのリーダーは、甘く見ない方がイイゼ”

(何よ・・・・何よコレ・・・・・な・・何なのよぉぉ・・・・)





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地下への螺旋階段を降りるウィリアム一行。

スティールは、上を見て。

「あ~あ、アジェンテは多分ブチ切れるな~」

ウィリアムは、スティールの声を聞いて後ろに声を。

「そうなんですか?」

アクトルが、六十段ほど階段を下って来て、先に見えた降り立つ床を見定めておいて。

「後で話してやるよ。 アジェンテと俺等の因縁」

すると、ウィリアムは、頷きながら微笑み。

「大体、解りますよ」

と、赤い絨毯が敷かれた少し証明の暗い、ムード感溢れるバーラウンジの様な場所に来た。 

「ふ~ん」

アクトルは、それだけ返した。

ウィリアムは、降りた所の左右にさり気無く置かれた観葉植物の鉢を見たり。 フカフカしていそうなソファーと、テーブルの組み合わせを見て。

「雰囲気ありますね~」

と、感想を述べた。

其処に。

「ようこそ、いらっしゃいませ」

左手から、紳士風の言い回しで声が。

「・・・」

一同、左に向くと。 赤い蝶ネクタイに、黒いモーニングを着た落ち着いた雰囲気の初老の男性が佇んでいた。

ウィリアムを先頭に、その男性の前に歩いて行った。 丸で、接待を受ける高級バーのような部屋の中で、その初老の男性と対峙する一同。 初老の男性は、手入れの行き届いた鼻髭を蓄え、朗らかな微笑みを湛える優しそうなジェントルマンだ。

「失礼致します。 チーム、セフティー・ファーストのリーダーでウィリアムと申します。 上に仕事の斡旋を窺ったら、コチラへと案内されまして」

「ほほほ、そうですか。 急激にコンコース島で活躍されたチームが現れたとお聞きいたしましたが。 随分とお若いリーダーですな」

ウィリアムは、その流れに沿い。

「スミマセンが、今日この都市に着きまして。 港で少し大事を起こしまって、どうしてもお金が欲しいのですが」

すると、初老の紳士は一同を見て。

「ま、お掛けに」

と、右のソファーを進めて来る。

ウィリアムは、皆を座らせて自分が最後に座った。

四人でテーブルを囲う前に初老の紳士は佇み。

「どうやら、港の一角で爆発騒ぎが有りましたと噂が・・・。 皆様でしたか」

ウィリアムが、

「お恥ずかしい限りです」

と、一礼すれば。 皆も頭を下げる。

「嫌々、あのホロー氏の船を壊されたとか。 中々の勇気、寧ろ面白いかと思いますよ。 ま、死人が出ていないのが幸いで・・・と云う前提になりますが。 ほほほ」

スティールは、ロイムの耳に。

(イヤミンだよな・・・)

(云われても仕方無いでしょ)

(うぬぬ・・・)

ウィリアムは、仲間を見ないで。

「我々に出来る仕事は、ありますでしょうか?」

すると、初老紳士は頷き。

「ハイ。 ま~、仕事は多く依頼を承っておりますが。 貴方のチームに是非任せてみたい御仕事が一つ」

一同が、紳士を見上げる。

紳士は、スッと後ろに回した手を前に戻せば黒皮の書物を持っていて。

「本来なら、スターダストやスカイスクレイバーの方々にお任せしようかと思っていた御仕事なんですが。 実はこの仕事、依頼の前提に早くに済ませて欲しいとの注文付きでしてな」

と、聞いた瞬間。

「いいいええぇっ?!」

「スッ・スターダストやスカイスクレイバーだってええっ?」

アクトル・スティールが驚いて見合い。

ロイムは、名前の出たチームに驚いて。

「あわあわあわあわあわあわあわ・・・・」

と、うろたえる始末。

ウィリアムは、初老の紳士を見上げて静かに。

「その御仕事は、其処までのチームに任せなくとも出来ると御思いで? それとも、仕事を出来る冒険者チームが今居ないからですか?」

初老の紳士の目が、ウィリアムの目を受けて見返してくる。

「ほほう。 そう読まれますか。 御自分のチームを過信しないのですね?」

「ええ、十日とちょっと前に結成したチームですから。 此処に来るのも驚きですね」

「確かに、確かに」

ウィリアムは、驚いている一同を見ながら。

「どうやら、ご主人は確かめたいのですね。 我々の力量を・・・。 ですから、仕事の按配のあえて計れぬ御仕事を回そうと。 出来れば、問題なし。 出来なくとも、必要な情報を持ち帰るならば、それで良し。 我々に、斥候代わりをしろと仰せですか?」

「・・・・・」

沈黙が、皆に広がる。

アクトル・スティール・ロイムは、恐る恐る初老の紳士を見上げると・・・。

「・・・」

初老の紳士は、ウィリアムを見て微笑んでいた。

そして。

「其処まで読まれるならば、是非お任せ致したい。 実は、仕事の内容が曖昧過ぎるのですよ。 この仕事、中級のチームに任せましたら、八人のチームが再起不能に近い大怪我で戻りましてな。 有名なチームが不在の今に、こちらも困り果てていたのです」

ウィリアムは、初老紳士を見上げて。 にこやかに。

「構いません。 お受けしましょう。 仕事の説明、頂けませんか?」

その返答に、

「いえッ?!!」

「うそおっ?!!」

「マジかよ・・・」

仲間三人は、ビックリしてウィリアムを見た。

初老紳士と、ウィリアムだけ。 静かに・・・意味深に・・・微笑んでお互い見合っていた。
どうも、騎龍です^^

ウィリアム編のシーズン2ですね〜^^

時間があれば、どんどん更新していきますのでよろしくお願いします^^

ご愛読、ありがとうございます^人^


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