2話、町に起こった失踪事件と、モンスターの存在
2. 町に起こった失踪事件
「う゛~ん・・・」
Kが、幌馬車の荷台にて、魘されていた・・・。
辺りは、草原が広がり。 所々に林や茂みが広がる。 馬車が走っているのは、草原より一段低く整地された街道の道である。 石のブロックが整然と並べられ、馬車も走り易いであろう。
空は、鉛色の曇天。 御者の中年オヤジは色黒の肌で鷲鼻の渋い顔を天に向けて、良くない雲行きを見ている。
ポリアは、イルガやマルヴェリータとKの包帯顔を見ていた。
システィアナが、横からKの身体を揺すり。
「ケイさ~ん、ケイさ~ん、だいじょ~ぶですかぁ?」
「ハっ」
Kは気づいて、大きく安堵のため息をする。
「はぁぁ~・・・夢か。 凄いデカいステーキに押し潰される所だった」
一同は、苦笑している。
今日は、チームにKが加わって2日目。 朝、Kが前日の食べ過ぎで鈍くゲッソリしていたので。 マルヴェリータが、オガートの町にいつも野菜を買い付けている自分の父の店の馬車に乗せてもらった訳だ。
Kは、水袋の水筒で水を呑む。
空の色は怪しい雲行き。 この天候はKの予測通り。 更にKは、オガートの町に入る朝からは雨と言っていた。
ポリアは、ここで昨日の中断された仕事の話を切り出した。
「ね、ケイ。 ところで、昨日の続きを話してよ」
力の抜けた包帯男は、憔悴した声で。
「あ? ・・ああ・・え~とどこまで話したっけか?」
マルヴェリータが、心配して。
「大丈夫? ラキーム氏の結婚の所までは聞いたわ。 令嬢さんと、御結婚とか」
「ああ・・・それだ。 問題の一つが、先ずラキーム氏が結婚するのに、なんで仕事を取り下げないのか・・・。 彼女を心配してといっているらしいが、ヤツの性格で普通なら有り得ない。 逆に考えるなら、探さないといけない理由があるのではないか。 仕事の内容を見図るに、クォシカの無事より生死に拘ってる気がする」
イルガは、干し肉を齧りつつ。
「確かに、な」
Kは、なるべくイルガを見ないように俯いて続ける。
「第二に、失踪したクォシカの家の中だ。 異状に気づいた人によれば、丸で強盗にでも遭ったかの様に乱れていたとか」
ポリアもマルヴェリータも、
「え?」
同時に驚いて見合う。
「本当の事らしい。 しかもその家は、ラキーム氏が・・・」
“クォシカの帰る場所は俺の所だ。 クォシカの総ては、自分が預かる!”
「と言って、家も土地も取り上げて。 しかも、家は取り壊されてしまっとよ」
「なによそれ!!」
ポリアが大声を上げた。
Kは、グッと身を潜めて小声で、
「頼む、大声は止めてくれ・・・胃に響く・・」
「あ・・ごめん」
Kは、胃の辺りを擦りながら。
「しかも、だ。 今日、クォシカの失踪を唯一誘拐されたと言っていた人物がマルタンに帰る」
マルヴェリータは、首を傾げて。
「それなら、今日に会ってから町に行けばよかったじゃない」
「その人物は、クォシカの親友であり。 クォシカの家に有った家財道具をラキームから守って持って行ったらしい。 もしかすると、事件の手がかりが家財道具にあるかもしれないから、町に先回りしておけばいいさ。 その人物は、オガートの町で大規模な野菜生産をしとる地主の娘さんだそうな。 今日は、知り合いなどと野菜の買い付け値なんかの話があるだろうから、マルタンに一泊すると思う。 急ぐ必要はない」
マルヴェリータは、Kがもう全て計画済みとでも言っているように見えた。
「他には?」
ポリアは、話を進めるために突っ込んだ。
「後は~、町に行って確かめてからですかね・・・あ゛・・腹イテ・・・」
マルヴェリータは、慌てて御者に止まるように言った。
Kがトイレに行く間。
イルガは、ポリアに。
「お嬢様、如何に思われますか?」
「さぁ、町で聞いてみないとなんとも言えないわ。 只、ケイは随分とこの事件にやる気があるみたい。 お金も多い仕事だし、事件の解明が出来なくても査定はされないんだから、のんびりいきましょうよ」
システィアナは、両手を挙げて。
「さんせ~、ポリアちゃ~ん。 しごとがんばろ~」
ポリアは、首を左右に。
「頑張るように聞こえないって・・・」
Kが戻り、また馬車は走りだした。
馬車の旅は、2泊。 夜は、野原や、茂みの近くにて寝袋にての野宿。 この街道は、兵隊がオガートからとマルタンまでを行き来して警備しているからかなり安全な道である。
内乱など起こっている他の国だと、街道にすら盗賊や強盗が現れることも多いとか。
さて、旅立って3日目、朝からシトシトと雨が落ちてくる。
「ふぅ、ケイの予報通りね」
ポリアが、馬車の荷台から幌を捲って外を見る。
Kは、静かに。
「風、雲、土の温度を感じれば誰でも出来る」
「アタシ出来ないし・・」
もう、街道の両側は景色が変わり、広大な畑が耕されて黒い肥えた土が見えている。 畦と水路により区分けされた畑は見事。 ここで育った野菜は、近隣諸国世界に流通していく。 この国の、大切な財源であった。
昼を前にして、ポリア達を乗せた馬車はオガートの町についた。 大きな楡の木があるアーチの下を越えれば、そこから町の中。 土のむき出した道が先に伸びて、右も左も林が広がった。
Kは、御者に。
「建物が見えたら、右の3軒目に木造の建物は見える。 そこに止めてくれ」
「あいよう、宿だね」
「そうだ、温泉あるから、前に来て気に入ったのさ」
すると、御者のオヤジが、
「ああ、あそこはいい。 “美人の湯”って有名な温泉だから」
ポリア、マルヴェリータは、ピクッと反応した。
「え? 美人?」
「まあ、良い所だわ」
Kは、関わり合わないようにしていた。
林の間を抜ければ、開けた町並みが見える。 マルタンのように建物だらけではない、大木や木々を間に挟む町並み。 Kの言った宿は、石造りの家の二つ先にあった。 石の低い塀が囲い、敷地に生える大きな木々に囲まれるように、木造の立派で大きい屋敷の様な建物だった。
御者の男は、5人を降ろすと。
「それじゃ、私はここで別れます。 お嬢様、みなさんもご無事に」
マルヴェリータが、手を上げて。
「ありがとう、父によろしくね」
「へい、では」
馬車は、町の奥に向かって行った。 この先には、噴水を中心とした広場があり。 広場は倉庫や店などで囲まれており、北側の1階が吹きぬけに成っている集会所のような場所で、日々野菜や果物の取引が行われる。 この集会所の地下には、蔵のような倉庫が何十も階層式に造られており。 毎年、雪が降るとこの蔵の部屋に運んでは温度を下げて野菜や果物を貯蔵するのだ。 各蔵の持ち主は決まっていて、雪入れの作業は町の人の総出で行われる。
野菜の取引で人が訪れる客の足は、多くないが絶えることもない。
町には、5軒ほどの宿があって、微妙に鄙びていて落ち着けるとマルタンの街に住む人は言う。 祭りや、暑い夏には、マルタンから貴族や旅行者が来る。 避暑地にもなっていると言えばいいところか。
Kは、先に開かれている木の門を越えて、石畳に沿って宿に向かう。 門より宿までは、石畳を道にしてよく手入れされている小降りの木々が佇む。 今は、桜が一番高い所で咲いているが、桃の花が奥でひっそり咲いている。 苔むした庭石、枝垂れている古木が、この宿の味わいを深くさせていた。
宿は木造だか古めかしいという印象よりは、どっしりとした大きい邸宅のようである。
Kは、入り口から入って受付のあるロビーで前掛け姿の老いた女性に声かけた。
「どうも、また泊まりにきましたえ~」
小柄で、目の大きい老いた女性は、Kを見て。
「あら、また来たのかい?」
そう言う老いた女性の目には、Kの後ろからポリア達も来て内装を見ているのが映る。 ポリア達の井出達を見た老いた女性は、半ば呆れた顔を見せて。
「なぁ~んだい、冒険者だったのかい」
この女性、この宿の女将である。 なかなか肝っ玉の据わって居そうな顔で。 痩せているが馬力はありそうだ。
「ああ、女性三人に、男二人。 四・五日泊まると思う」
女将は、ポリアやマルヴェリータを見て、
「随分な美人じゃないか。 ウチの風呂に入ったら、男が虜になって死んぢまうんじゃないのかい。 あははは」
ポリアとマルヴェリータは、笑う。
だが、Kは小声で。
「どっちの親もそれを願ってらぁ」
横に来ていたシスティアナが、
「ねがってら~」
と、復唱する。
「いいよ、別で用意してあげよう」
そう言った女将は、働いている手伝いの女性に声を掛けて案内を頼む。
女将は、Kに向かって男のような口調で姉御のように。
「で? クォシカの事でも調べに来たって訳かい?」
「ああ」
Kは、素直に頷いた。
が。 ポリアやマルヴェリータは、なにも言ってないのに自分達の来た理由を知っていた女将に驚いた。
「女将さん、なんで知ってるの?!」
女将は、呆れてポリアを見ると。
「伊達に歳は食っちゃ居ない。 それくらいは解るよ」
すると、Kも。
「解り易いと思うがな・・・」
案内に着いて行こうとするKに、ポリアは、
「嘘っ?」
Kは、肩をすくめてから案内に着いて行った。
去って行くKを見ているポリア達。
女将は、そんなポリア達に呆れて、
「いいかい、此処じゃ狭い町の中だ。 マルタンとは違うんだよ。 噂なんて、少ない町の中で直ぐに広まる。 冒険者達が、祭りもなんにも無い時期に、こんな町に長逗留なんて仕事しか無いって思うよ。 今のところ、仕事で町が頼んだのはラキームのアレぐらいなもんだ。 しかも、あっちの包帯のアンちゃんは、前にクォシカの事を聞きまわっていたし。 人数が増えてくれば、大体想像つくだろうさ」
と、助け舟を出してやる。
「そ・・そっか・・」
ポリアも他の皆もやっと飲み込めた。
女将は、人の少ない時期だからか。
「お昼を出してあげるから、下に下りてきな。 クォシカについて話してあげるよ」
「あ・ありがとうございます・・」
「うん、だから。 納得したらさっさとマルタンにお帰り。 クォシカを探すなんて、詰まらない事なんだから」
女将は投げ遣りみたいに言う。
一同は、その素っ気無さに見合ってまた女将を目で追った。 女将は、階段ではなく、廊下の先の開けっ放しのドアの奥に消えていった。
「なんか・・・私達って要らないみたい・・」
マルヴェリータの言ったことは、ポリアも同感だった。
みんなが案内されたのは、三階の窓側部屋のだ。 女性三人は、五人部屋に案内された。
「うわ~、広~い」
ベットは、間隔をゆったり取った感じに窓前に並んでいる。 洗い晒しの白いシーツは清潔感がある。 丸テーブルに、椅子は三つ。 壁には、町の風景を鮮やかな緑の森に包まれた風景画が掛けられている。
案内の若いそばかすの多い町娘さんが。
「この宿の絵、全部がクォシカの絵なんですよ。 女将さん、クォシカの絵が好きだったから」
「へぇ~」
答えたポリアやシスティアナもマルヴェリータも、その優しい筆使いの絵が一目で好きになる。
荷物を置いて、三人は各部屋の絵を見ながら下に降りた。
一方、イルガとKは個室だ。 簡素な部屋だが、掃除はきちんと行き届いている。 Kの部屋に、公孫樹の森が描かれている大きな絵が壁に。 黄色の森が、夕方の日差しで陰の部分と陽に当たった部分のコントラストの美しい様子を見せている。 森の中で、見て描いた絵である。
「いい絵だな・・筆に描いた人物の心が宿ってるみたいだ」
「えっ?!」
案内する大人びた化粧っ毛の無い女性は、顔の解らない包帯顔の不気味なKを警戒していたのか、言葉に驚いた様子を出してKを見る。
「あ、ああ。 それね。 それ、クォシカの絵よ」
「なるほど、前は春の中央広場の噴水が描かれた絵の有った部屋だったが。 こっちはなんとも哀愁を感じる・・・」
案内の女性は、Kが絵を見る力が有ると視たのか。
「クォシカの絵は、どれもいいのよ。 女将は、絵の代金払おうとしてたけど、クォシカは貰わなかったみたい。 絵・・よっぽど好きだったのね」
「なるほどな・・失踪なんてさせる方が気違ってるわな」
「ホント、ラキームは大嫌いよ」
Kは、荷物を置いて一階に降りた。
女将が先ほど消えた所は、食堂である。 丸テーブルが、三~五人掛けで、10個ほど。 長テーブルで、席に就ける場所が7列の四十席前後ある。
「いい絵ばかりだったわね。 一つ欲しいかも」
と、先頭で、階段を下りるマルヴェリータ。
「でも、この絵はこの場所が合ってるわよ」
ポリアが、後ろから言えば。
「そうで~す」
と、イルガと並んで降りるシスティアナが言った。
イルガは、ポリア達に合流して降りてきた。
四人は、ポリアを先頭に喋りながらその食堂に入った。 そして、先に来ていたKを見て四人は立ち止まった。
「ケ・イ・・?」
奥の窓の前にある丸テーブルに腰を降ろしていたKは、足を組んで肘を着いて外を見ている。 だが、その姿はとても優雅であるように見え、いつも見る冒険者の人々とは明らかに違う雰囲気が漂っていた。
「Kって・・品があるのね・・」
「みたいね・・不思議な人」
と、ポリアと、マルヴェリータが言い合えば。
そこに、女将が料理を運んできて。
「ほら、何をボサっとしてんだい。 こっち来な」
四人は、Kの居る席に着く。
「奮発していっぱい作ったよ」
言う女将にして、Kは。
「この人達喰うよ。 こんなんじゃ~足りない。 まず」
女将は、ポリア達を見て。
「そりゃ面白い。 た~んと作ってあげるよ」
システィアナは、喜んだ。
「おいし~のだ~い好きですぅ~」
「いただきます」
と、ポリア。
Kは、一同を見て。
(遠慮しろよ・・・食ってばかりだろうが・・)
と、呆れるばかり。
まずは、野菜のスープと、野菜のグリルに始まり。 魚の生切り身のオリーヴオイル和え。 ステーキ、炒めたご飯、などなどどんどんでてくる。
Kは、自分に合った分量しか食べないが、ポリア達は食べ方は普通なのに、片っ端から皿を空けていく。
女将は、嬉しい笑い顔。
「いい食べっぷりじゃないかい」
デザートは、果物と野菜で作ったケーキや、冷たいジュースだった。
さて、料理を終えた女将は、グラスに紅茶を注いでKの横の椅子に腰を降ろした。
「美味しかったかい?」
「ええ、野菜が美味しかったです」
マルヴェリータが答えた。
「おなかい~っぱい」
システィアナが、ローブの上からお腹をパンパンする。
ポリアは、恥ずかしそうに。
「システィアナ、止めなさいって。 アンタ、アタシと同じ、二十歳なんだから」
「は~い」
Kは、十五・六歳にしか見えないシスティアナを見ては。
「ほう、多分四十になってもこんな感じだな」
と、口元を笑っていう。 嘲笑っているのでは無く。 システィアナに合わせているようだ。
女将は、Kを見て。
「で? 一体、クォシカの何がそんなに気になるんだい? あの子は、ラキームの手を逃れて消えた・・・それでいいじゃないか」
ポリア達も、それでいいと思った。
だが、Kは。
「それなら、いいんだ。 そんな気がしないから、引っ掛かるのさ」
「そうかい? あたしゃそんな気がしてるし、町のみんなもそう思ってる」
Kは、ケーキをつまみつつ。
「クォシカは、自分が父親の病気の為に婚約してしまった事で、父親を死なせてる。 芯が強く、口数の少ない慈愛精神の強い女性だ。 逃げるなんて、余程の事が有ったか・・・有った後だろう。 そんな事、有ったのか? 婚約破棄した後に?」
Kが言って、女将は考えるように黙る。 皴の多い顔、白髪の頭の女将がグッと老け込んで見える。
ポリアは、むしろその話自体が驚きだ。
「お父さんを・・ってどうゆうことよっ?!」
「うん・・」
女将が応えて、語ってくれる。
クォシカは、ラキームに十四・五の頃からアプローチを受けていたが、怒る事も無くかわしてきた。
しかし、だ。 クォシカが十六の冬、父親が病気で倒れた。
クォシカの父親は、元々から病気がちで農作業はあまり出来なかった。 畑は、クォシカが手伝い。 父親は、森に入って薬草取りと薬師として収入を得ていた。 慎ましやかに、親子二人で支え合って生きてきたのだ。
クォシカの母親は、クォシカが幼い頃に病気で死んでいる。 クォシカにしてみれば、父親が唯一の家族であり。 父親の為に生きていると一緒の様なものだったらしい。
そこに、ラキームが弱みに付け込んだ訳だ。 ラキームの父親も病気になっていて、マルタンの街から交代で来る腕のいい医師によって養生している。 クォシカが自分と婚約するなら、その自分の所に来ている医者に口利きすると言ったのだ。
父親思いのクォシカは、ラキームの言いなりに成り掛けた。
だが、娘を思う強さは父親とて娘の気持ちに負けていない。 クォシカの自由の為に、父親は自らその命を絶った・・・。
―クォシカ、私の最愛の娘よ。 私と、妻の分まで幸せに・・、父の犠牲になっていけない―
そう置手紙が在るベット。 その横で、首を吊った父親の姿が在った。
クォシカの嘆きは非情なものだった。
しかし、この二人の親子に町のみんなが世話になっていた。 薬を施し、病人の為に深夜でも起きて駆けつけるクォシカと、父親。 町のみんなが、クォシカに励ましを言い。 クォシカを支えてやろうとした。
クォシカは、そのお陰もあり。 父親の分までも生きる意味で、薬師の仕事も継いだのだ。
クォシカは、ラキームに婚約の解消を言って、この町にある寺院に薬草を届けたり、病人を診ながら暮らしていた。
ポリアは、父親の一件で頭に血が昇った。
「なんて奴なのよ・・・仕事を請けて損したわっ!!!」
と、吐き捨てる。
Kは、冷静に。
「ポリア、勘違いするなよ。 俺達は、あくまでもクォシカを探しに来たんだ。 ラキーム氏の為の見つけるんじゃない」
ポリアは、キッとKを睨み見て。
「でもっ、依頼主はソイツじゃない! 見つけるのは、手を貸しているのと一緒じゃないっ!!」
「冷静になれ。 義務は、報告だ。 受け渡しじゃない・・・見つけても渡さなければいいんだ。 それより、クォシカがなんで失踪しなければならないのかが解らない。 必要が無いのに失踪・・・意味の解らない部屋の荒らされ方・・・余計なラキーム氏の行動・・・どれも不自然過ぎる」
「そんなのラキームって奴が強引に言い寄ったのよっ!!」
ポリアが、感情的に怒鳴った時、Kは静かに。
「冷静になれと言ったのが聞こえなかったのか?」
と、低い声で言う。
「う゛・・・」
ポリアは、それ以上二の句が繋げなかった。 Kの気配が、一瞬だけガラっと変わったのが怖かった。 体中に、悪寒が走る。
女将も、驚いてしまったが・・・・。
「アンタ、そんなにクォシカが心配なのかい?」
Kは、窓の外の雨模様を見て。
「嫌な予感がしてる・・・とにかく、一番の気がかりは依頼主が仕事として冒険者に依頼している事だ」
「どっ・どうゆう事だい?」
女将はKの言った事が胸に蟠る。
「簡単な事だろう。 ラキーム氏は、新たに女性を見つけて、しかも婚約した。 二ヶ月後には結婚するんだ。 もう、クォシカなんかどうでもいい筈。 もし、クォシカが失踪したなら好都合だ。 結婚する女性に、前の婚約者を知られなくていいんだからな。 なのに、探してる」
イルガは、腕組して。
「探す理由が解らなくなる上に、依頼主の真の意図も解らないのぉ」
「そう。 もし、仮にラキームがクォシカをどうにかした・・・つまりは誘拐とかしたとしよう」
ポリアは、びっくりして。
「ゆっ誘拐ですってっ?!!」
みんなも驚いて、Kを見る。
「仮にと言っている。 なんにせよだ。 探すフリをするなら、町史なんだから役人に探させて、“居なかった”と有耶無耶にしちまえばいい。 権力を持っているんだからな」
女将は、深く頷いて。
「なるほど・・。 確かにラキームは、クォシカを探すと役人にも命令したけどね。 有耶無耶にするどころか、直ぐにマルタンにクォシカ捜索の仕事を出したよ」
「だが、態々に冒険者に頼むなんて人に知られる事なんかするんだ?。 俺達には解らないが、ラキーム氏には意味が在るんだろう。 しかも、ラキーム氏の意図の矛先は生死だ。 ・・・クォシカの失踪に、ラキーム氏は身に覚えが在る様な感じがするんだ」
マルヴェリータは、そこが良く解らない。
「でも、身に覚え在るなら・・・普通は隠したいから逆なんじゃない?」
「そう、・・・だがそうしないといけないとしたら? 理由はサッパリ解らないが、どうも裏が在るぞ」
女将は、Kを見る目が穏やかなものに変わっていた。
「あたしゃ、アンタが金欲しさにクォシカを探そうとしてると思ったけど、そんなに本気で考えるなんて思わなかったよ。 正直、心配なんだよ・・町のみんな・・・もし見つけたら、此処に連れてきておくれ。 ラキームなんかにやりたくないからね」
Kは、目を窓に向けたままに、頷くと。
「ああ、彼女も働ける場所があり、絵を飾れる場所が在る此処なら落ち着きやすいはずだ。 見つけたら、連れてこよう」
「ありがとう。 前に来てた冒険者とは違うね」
すると、Kは鼻で笑って。
「ふん。 ラキーム氏の仕事請けて来てるんだ。 違いなんかあるものかよ」
と、毒ついた。
ポリアは、Kに対して複雑な気分が湧いた。 なんで、見も知らずの女性に対して、こんなに動くのか解らない。 しかし、その頭の回転の良さや思考能力の鋭さは凄いと思った。
マルヴェリータは、Kに尋ねてみる。
「ねえ、ケイ」
「ん?」
「見も知らない女性に、なんでもこまで考えて行動するの? 貴方を見ていると、お金目的じゃない気がするわ」
「さぁ・・・探究心かもしれないし、御節介かもしれん。 ただ、何かに巻き込まれてしまっているなら、助けてみてもいいんじゃないか。 どうせ、生きている間は、人生は暇つぶしだ。 働いて、暇つぶせて、上手く行けば人助け・・・美味い生き方さ」
「他人に時間遣っても?」
「ふん。 自分に時間遣ったって、他人が居ないなら独りよがりじゃないか・・・どうせ遣うんだ・・・誰かの為でもいいじゃなかいか。 俺ら冒険者は、仕事をくれるのも、認めるのも、全部他人だぜ? 自分本位で、何が出来るって言うんだ?」
「そ・・それは・・・」
誰も、反論が出来なかった。
雨の曇り空・・・春の長雨の到来であった。
Kは、紅茶を飲み干すと。
「クォシカの親友と言うお嬢さんは、多分は明日の町への到着だろうな。 今日は、のんびりしよう」
女将は、それが誰か解った。
「それって、町一番の大地主でコルテウさん所ろの、お嬢さんかい? 名前は、シェラハっていうんだよ」
「そうそう、そのお嬢さん。 彼女が、荒らされたクォシカの家の家具を持って行ったとか」
「ああ、ラキームに噛み付くぐらいの気迫で守ったよ。 流石のラキームも、コルテウさんの所には頭が上がらないからね」
ポリアは、地主の権力じみたものを感じて。
「へぇ。 やっぱり、地主だからかな?」
すると、女将は笑って。
「それもあるけどね。 コルテウさんは、町の英雄だし。 ラキームの父親とも親友なんだよ」
「え・・英雄・・、町史の親友?」
Kが、ポリア達では解らないだろうと説明をしてやる事に。
「元々、この町の野菜の取引は、商人と町史の間での賄賂で仲良しの談合取引でね。 農家や地主に儲けなんて殆どな無かったのさ。 だが、今の町史で、ラキームの父親ってのは、私腹を肥やす役人を排除した。 地主のコルテウ氏と、町史アクレイ氏は二人で農家や地主の生活を守る為に全力を尽くした。 権力に負けず、終に農家や地主の自由取引を国に認めさせて、賄賂・談合を弾劾したのさ。 だから、二人は町の英雄であり、共にした戦友のような絆がある。 アクレイ氏が生きている間は、ラキームの専横は悪戯止まりだろうな」
「へ~、詳しいのね」
と、ポリアが言えば、女将も。
「良く知っておるね」
と、関心。
Kは、淡々と。
「画期的な事だもの、まぁ、国の面子保つために、表向きの功労者は内政大臣になってるだけだがね。 町の人は、その苦しい二人を見ていたから真実を知っているでしょうよ」
女将は、嬉しくなったのか。 当時、まだうら若い宿屋の看板娘だった当時を語ってくれた。
Kの言う通り、のんびりと過ごせそうな午後だった。 女将から、クォシカの事や町の昔が聞けて、ポリア達は知らない事の連続で、いい勉強になったようだ。
一方のKは、雨の中なのに宿の庭先に出て。 春雨に濡れる桜を見た。 淡いピンクの花びらが濡れて涙の様な雫を落とす。
(もう・・・半年・・・か)
宿の裏庭に行けば、花の色の違う桜の木が広がっていた。 木の下には、座って眺めることも出来るようにと、木製の腰掛があちこちに。 庭木は、梅に桜に桃に柳で、塀を見せないようにと囲う木々には、椿に牡丹に梔子・・・。 春先から、秋まで花が咲いている庭なのだとKは感じさせられた。
「花が・・・好きなんだな・・」
ポツリと、漏らす。
だが、夕暮れで暗く成り始める中、いきなり血の匂いが風に乗って漂って来た。
「?」
Kは、風の来る方に向かって歩く。 宿の裏手を奥に歩いて行けば。 裏の小道に出る裏出口に着いた。 丁度、食堂の左になるから厨房だろう。
「う・・うぅ・・」
人の呻き声。
Kが見れば、裏出口の先の小道に人の手が・・。 Kは走り小道に出れば、血まみれの中年男性が倒れていた。
「おい、しっかりしろっ」
見塗れの男を助け起こせば、全身に傷を負っている。 服が何か獣の爪にでも切られたかのような切り裂かれ方だ。
「うぅ・・・ば・・化け物・・・も・いちょ・・う森に・・ば・・」
「公孫樹の森に、化け物か?」
Kの問いに、男は頷く。
Kは、男を抱えて厨房に行き、裏の勝手口に向かって。
「大変だっ!! 怪我人が居るっ!!」
Kの身体に似合わない大喝の一言。
「どうしたのっ?!!」
丁度、女将が居て出てきた。
「怪我人だ」
女将は、怪我をした男を見て。
「なんて、ドルインじゃないか。 さっ、こっちへ!」
Kは、大急ぎで食堂に運び込んだ。
その中で、
「女将、ポリア達を呼んでくれ」
「え?」
「システィアナは僧侶だ。 傷の治癒をして貰ってくれ」
「あ、ああ・・解ったよ」
この騒ぎに、他のお手伝いさんも顔を見せる。
「きゃーーー!! アンタっ!!」
Kの部屋の案内をした女性が、驚いて寄ってくる。
「奥さんか?」
「そうよ・・なんで・・こんな・・」
Kは、調理台で使う長テーブルに男を寝かせる。
ドルインは、うわ言でしきりに。
「ば・・化け物が・・ば・・化け物が・・」
と、呻く。
「化け物?」
と、奥さんが聞く。
Kは自分の代わりに、傷を押さえ出す奥さんに
「公孫樹の森に出たらしい」
「そんな、この町にモンスターだなんて?!!」
奥さんは、女将が色々と他の手伝いと動くので、おろおろしてしまう。 町には、医者がいない。 丘の上の寺院に行って、寺院の僧侶に言わないといけないのだ。
Kは、仲間に僧侶がいることを言ってから。
「公孫樹の森にはどう行けばいい?」
「え? 町の広場前の道を東に・・・」
「解った」
Kは、一人で裏口に飛び出した。
「あっ、ちょっと!」
Kが出た後直ぐに、システィアナがトコトコとやってきて。 怪我人を見るなり、慌てて。
「まぁ、大変ですう~」
と、魔法を唱え始めた。
「神よ、慈愛と優愛を抱くフィリアーナ様・・この傷に苦しみし者に癒しを与えたまえ」
システィアナの身体が淡い光に包まれ、その手の翳す傷口が見る見る塞がる。 だが、その塞がるときに、煙がフワッと上がり。
「え? 闇の力で傷ついたのですか?」
システィアナが、驚く。
「モンスターだそうです。 包帯男の人が、モンスターの所に」
「まぁ、こんな町で・・」
そこに、ポリア達が走って来た。
「どうしたのっ?!!」
システィアナは、ポリアに向かって。
「ポリア~、モンスタ~です。 Kさんが、一人でいってしまったそうです~」
「ええっ?!!」
マルヴェリータは驚いた。 この十数年オガートにモンスター騒ぎなど聞いたことが無い。
ドルインの奥さんが、
「東の公孫樹の森ですっ。 ウチの人が、何度も言うんですっ!!」
そのときも、
「ば・・ばけ・・もの・・ば・・」
と、男はうわ言を。
イルガは、ポリアに。
「お嬢様、直ぐにケイを追いましょう」
「うん」
ポリア、イルガ、マルヴェリータは武器や杖だけ取りに行って、直ぐに雨の外に出て行った。
システィアナは、ドルインの怪我の治療に専念した。
ポリア達は、雨の外に出て、噴水の在る広場に入る前の大きい道を東に曲がって走っていく。 野菜や肉を売る店がチラホラ見えるので、どうやら町の目抜き通りらしい。 雨もあってか、通りに人も居ないし、店頭に人の姿も無い。
「全くっ、なんで一人で出て行くのよっ!!」
と、ポリアは唸る。 病気をしたKが、モンスターと戦えるとは思ってもいないからだ。
少し行くと道の左右の建物が、庭の在る民家に変わりる。 そのとき、道の反対側から槍を持ったチェーンメイル(チェーンを編んだ鎧)を着た男が歩いている。 どうも、足を引きずる歩き方だ。
「おーい、どうしたのっ?!!」
ポリア達が走り寄れば、顔や腕に引っかき傷を付けた役人であった。 この国の役人は、長槍にチェーンメイルの皮長靴が基本装備なのだ。
「おお、冒険者か?」
役人の男が、イルガに支えられた。
「そうよ、包帯男を見なかった?」
「ああ、君達の仲間か。 あ・あっちの公孫樹の森に来てくれた。 ゾンビの群れに遭ったんだっ、俺は・・助けを呼びに来たんだ」
群れたゾンビと聞いて、ポリアは驚いた。
「むっ群れ?」
「ああ、10体以上居た。 もう、見回りの一人が殺されたっ。 クソっ、何だってこんな・・平和な町にっ?!!」
「解った、私達が加勢に行くわ」
「た・頼む、町の詰め所に居る仲間を呼んでくる」
マルヴェリータは、役人の男が右膝に酷い怪我をしているのを見て。
「大丈夫なのっ?」
「町の非常時だ、生きてる限り行く」
役人の男は、気丈にもそう言うのだが。 どう見ても、無理そうだ。
ポリアは、イルガに。
「イルガ、この人を町に連れて行って」
「お、お嬢様っ」
「つべこべ言わないっ!!」
ポリアは、森が見えている左手の民家の先に走り出した。
マルヴェリータも。
「イルガ、大丈夫よ。 早くもどってね」
と、ポリアの後を追う。
イルガは、肩を貸して役人の男を見てから、
「連れていくが、ワシは直ぐに戻るぞ」
と、町に戻る。 ポリアの命令は絶対なのだとイルガは決めていたのだ。
ポリアは、マルヴェリータと走った。 道がどんどん泥や水溜りのある野道みたくなり。 道の周りに家が見えなくなって、林と牧草の生える野原に変わった頃、左の林に森の方に曲がる狭い野道が見えた。 馬車が一つ通れるぐらいで、道の真ん中には雑草が生えている。
「こっちねっ!!」
「ポリアっ、早すぎよっ」
マルヴェリータは、もう息が上がっている。 魔法使いで、運動の得意な者は人による。 マルヴェリータは、不得意のほうだ。
「もうちょっとよっ!」
ポリアは、そう言って道を走っていく。 すると、いきなり開けた。 左右に、やや広い砂利道が伸びていて、正面には公孫樹の原生林が広がっている。
「んんっ、どっちよっ。 もうっ!」
と、困った時。
「あと一体だけですっ!!」
と、女性の声が左の方から。
「あっちっ!」
ポリアは、走った。
直ぐに水の流れが聞こえて、ポリアは用水路の流れる上に架かる石橋の前に出た。 橋の先は少し馬車の止める引き込みの在る所だった。
「ケイっ!!」
Kは、一番長い短剣を抜いていたままに、その広がった場所に立っていた。
「やっと来たのか? 遅い」
と、脇目にポリアを見るK。
ポリアが見れば、Kの周りには、生前の姿を残したした死体や腐敗が進んで人の形だけをした肉人形のような遺体が倒れている。
「大丈夫ですか?」
ポリアの見ている前で、システィアナと同じローブを着た大人びた女性がKに歩み寄った。
「ああ、ゾンビに遣られるくらいじゃ、もう引退だ」
Kは、そう言って人の姿が残る遺体の傍らに屈む。
「ポリア、見てみろ。 ゾンビの姿に、違いがある」
そこに、マルヴェリータも来た。
「ハァ、ハァ、ケ・・ケイ、だいじょう・・ぶ?」
息も絶え絶えのマルヴェリータ。
「どっちが大丈夫だよ? そっちこそ大丈夫か?」
ポリアは、Kの元に寄る。 Kは、息も乱れていないし、慌てた様子もない。 ずぶ濡れながら、余裕があった。
「ケイ、これ全部・・貴方が倒したの?」
「三体、そっちの僧侶さんが」
「俺は、7体ほどか」
Kは、ゾンビの身に着けている物を検める。
「なんも持ってないな・・小銭が・・60シフォンくらいだな」
“シフォン”とは、この世界の共通通貨で、銀貨だ。
ポリアは、死体を見て。
「なんか、冒険者みたいね。 ボロいけど、皮の胸当て着けてる」
Kも頷いて。
「ああ、冒険者の姿をした死体が、3体。 僧侶の姉さんが倒したのは灰に成っちまったが。 俺の倒した7体は消えない。 コイツは、暗黒魔法か屍霊呪術タイプのゾンビだ。 問題は、なんでこんな所に出るのか・・・だ」
「なんで、解るの?」
ポリアは、ゾンビに違いがあるのなど知らない。 初耳だった。
「ゾンビには、2タイプあってな。 一つは、呪術の人工生物型。 もう一つは、怨霊型。 怨霊型は、恨みや妬みが闇の力に結びついてなるから、倒すと時間の経過が襲ってきて直ぐに塵に成る。 しかし、人工生物型は、呪術師の魔法でゾンビに成るから、倒してもただの死体に戻るだけ」
「知らなかった・・」
マルヴェリータは、倒された死体を見て。
「どうやって剣で倒せるのよ? 魔法じゃないと無理なんじゃないの?」
「ゾンビの倒し方は色々ある。 共通なのは、怨霊に然り、人工に然り、身体の何処かに身体を動かす闇のエネルギーの塊があるんだ。 ソイツを、聖なる力で斬ってしまえばいい」
「聖なる力って、貴方は僧侶でもなんでも・・・」
「別に、僧侶でなくてもいい。 聖水を剣に流してやれば、一時的に聖なる力が宿る。 その剣でもって斬ってやれば、この通り倒せる。 ま、ポリアの持ってる白銀の武器は、聖なる力が最初から宿ってるから要らないがな」
Kは、後ろを見て。
「シスター、マルヴェリータ、木の下にいろよ。 濡れ過ぎると風邪ひくぞ」
と、言う。 役人の来るのを待つ気なのだろう。 Kは、全ての死体を見て回る。
ポリアは、雨の中でそれを見ている。
マルヴェリータは、ポリアに寄って。
「ポリアも、木の下に行きましょう」
すると・・。
「マルタ・・一人でゾンビを7体も相手に出来る?」
ポリアは、真剣な目で見てくる。
「さあ、私は無理よ」
「だよね・・・私も・・無理・・」
ポリアは、前に一回ゾンビと戦った経験がある。 何処かを斬り付けたくらいでは全く倒れもしないし。 痛みも感じていないのか、凄い力で掴みかかってくる。 イルガと二人で苦戦し、システィアナの魔法で倒したのだ。
Kは、そのゾンビを7体相手にして一人で全て倒している。 Kが、並みの冒険者では無いことが解った。
「ねえ、ケイ。 一人、役人が死んだって聞いたけど?」
ポリアがこの開けた辺りを見回せど、そんな死体は無い。
「ん? あっちだ。 木の影に隠した。 それに、まだ死んでない」
Kは、公孫樹の木を指差した。
ポリアは、マルヴェリータと近寄ってみれば、初老の役人が木の裏側に凭れさせてあった。
チェーンメイルが壊れているが、怪我のあったらしい胸などは傷が塞がっていた。 おそらく、シスターの魔法だろう。
雨の中、Kは死体を見回して。
「こいつは大変なことになった。 町にモンスターが出るなんて誰も予測してないんだからな・・・」
渋い言い方で、雨の暗くなりそうな空を見上げたKだった。
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